ハイスクール・フリート 世界に翼が舞い降りた   作:アジアの大提督

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皆さん本当にお久しぶりぶりです…
今回は私が2月に大阪で開催された同人誌即売会の時に晴風支援艦隊の合同誌に掲載した作品を出します。
この作品は初めてちゃんとした文章校正された作品なので完成するまでとても時間がかかり、とても大変でした。
でも私の二次創作の中で一番しっかり文章がまとまった作品だと私は思っており、私の集大成だと思ってます!
そしてTwitterの方では言いましたがこの話の後にアップ予定の本編で私の二次創作は引退します。
次の作品は悔いのない作品したいと思うので待っててくだい








Extra edition コミコン南大阪125作品「水平線の先へ」

晴風が沈んで二ヵ月が経過し、横須賀女子海洋学校は夏休みになっていた。

明乃ともえかは生まれ故郷である長野県松本市に帰省しており、二人はある所に向かう為に歩いていた。

「ごめんねミケちゃん。少ない休みなのに私の用事に付き合ってくれて」

「そんな事ないよ。私も帰ってからやる事なかったから平気だよ」

「ありがとうミケちゃん」

二人はしばらく談笑しながら歩いてるともえかの目的の場所の海が一望できる所に作られた霊園に着いた。

「ここはいつ来ても綺麗な場所だね」

明乃がそう呟くと二人は霊園内に入り、ある墓石の前で足を止めた。

止めた先の墓石には「知名 優香」と書かれており、それはもえかの亡き母親の名前であり、今日は優香の命日である。

二人は持って来た水で墓石を洗い、持って来た花を備えて二人は手を合わせる。

明乃はある事を思い出してもえかに質問する。

「そう言えばもかちゃんのお母さんってブルーマーメイドだったんだよね? 」

「うん。でも私が小さい頃にお母さん死んじゃったから私もお母さんがどんな人だったかも分からないの」

もえかが一歳ぐらいの時に優香を亡くしており、もえかはあまりにも小さかった為優香の事をあまり覚えてない。

「そうなんだ……」

明乃は少々悪い事を聞いたなと思い軽く反省していた。明乃自身も両親を幼い頃に亡くしている為、もえかの気持ちも分かる。

「艦長? 」

そんな時に明乃は聞き覚えのあはる声が聞こえ、声のした方に向くとそこには明乃と同じ晴風所属で晴風副長のましろがいた。

「なんでシロちゃんがここに? 」

「それは……」

ましろが理由を話そうとした時ましろの後ろからある人物が花を持って現れた。

「私が連れて来たのよ」

それは明乃ともえかが通ってる横須賀女子海洋学校の校長であり、ましろの母親である宗谷 真雪だった。

「「校長先生! 」」

明乃ともえかはまさかの人物の登場に驚く。

真雪は持って来た花を備えて、真雪は手を合わせる。ましろもそれ見て急いで手を合わせる。

真雪は手を合わし終えると明乃ともえかの方を向く。

「今日は優香さんの命日でしょ?だから私もお参りに来たのよ」

真雪は優香の墓を訪れた理由を話すともえかはもしかしたらと思い、真雪にある質問をする。

「校長先生。母の事を知ってるんですか? 」

真雪はやっぱり聞かれたかと思うような顔をし、数秒空けてもえかの質問に答える。

「えぇ、知ってるわ。あなたの母親である優香さんとは学生時代からの同期で、ブルーマーメイドでも一度同じ艦で勤務した事もあるわよ」

まさかの人物が母親の事を知っている上に同じ艦で勤務している事にもえかは驚いた。

「そして良きライバルであり、良き親友だったわ。まさか優香さんの娘が今年の主席として入学した事には名簿を見て驚いたわ」

真雪は普段と同じ様に話してるがどこか特別な思いがある様に話してる。

そしてもえかは真雪にある事を頼む。

「校長先生。母の事をもっと詳しく教えてくれませんか? 」

真雪はもえかの真剣な顔を見て、真雪もある決意をする。

「分かったわ。 私も貴方には優香さんの事を分かっててほしいから話すわ」

真雪はもえかの頼みに応える。

「ありがとうございます! 」

もえかは真雪に頭を深々と下げて礼を言う。

「とりあえず一旦ここから落ち着いて話せる場所を移しましょう。霊園の入り口にカフェがあったからそこに行きましょう」

そして一行は霊園の入り口のカフェに移動し、中に入ると席に座り、各々が注文したメニューが来ると真雪は語り始めた。

「私が優香さんと出会ったのは今の横須賀女子海洋学校の前身である国立関東海洋学校に入学した後の事だわ」

 

 

十六年前

ブルーマーメイド地方支部局 第三管区本部横須賀港

「ちょっと優香さん! まだ書類できてないの⁉︎ 」

真雪の所属であるブルーマーメイド新型艦である「改フリーダム級沿岸戦闘艦来島」の艦内に真雪の声が響き渡ると通路から慌ただしい音を立て、真雪のもとにくる一人の女性がいた。

「ゴメン、ゴメン。今日提出だった事忘れてたよ。でも期限に間に合ったから平気だよね? 」

それはもえかの母親である優香だった。

「全く副長ならしっかり提出ギリギリなる前にだしてよね」

「分かったよ。次はしっかりだすよ」

そう言って優香は自分の持ち場に戻る。

真雪は毎回期限ギリギリになって書類を提出してくる優香に呆れてたが、それでも真雪は優香に絶大な信頼を置いてる。

真雪と優香の出会いは今から三年前に遡る。

 

真雪と優香は横須賀女子海洋学校の前身である国立関東海洋学校の同期で成績でも試験でも一位と二位を争うほどの優秀な生徒であり、二人は良き親友であり良きライバルでもありながら互い切磋琢磨し合い、同じ教育艦で海に出た事もある。

そして海洋学校の卒業の日が来て、二人は卒業式の後夕焼けで赤くなってる横須賀を一望できる諏訪神社に来てた。

「私はこれから士官になるための勉強する為呉本校の配属になったわ」

真雪は目標であるブルーマーメイドの艦長になるため呉本校でさらに自分を磨く道を選んだ。

「あたしはダイバーの適性があるからその力を発揮できる第十二管区の配属ってなったよ」

優香はダイバーの適性があるため海洋学校では救助隊及び臨検隊の隊長を務めた事からその力を必要とする第十二管区の配属となった。

「じゃあ……当分会えないわね」

真雪は優香と別々の進路を歩む事に寂しくなり、目から涙がにじみ出てくる。

「そうだけど。でも数年後には絶対立派なブルーマーメイドになって真雪が艦長であたしが救助隊の隊長の艦で海を守ろうよ! 」

しかし優香は真雪とは反対でまた真雪と同じ艦になれる事を望む。

「そうね。絶対立派になって同じ艦で海を守りましょう! 」

真雪は涙を拭き取り、優香に手を差し出すと優香も優香も手を出し、握手をする。

「じゃあ、また会う日まで」

真雪と優香はまた同じ艦で海を守る事を夕焼けで赤く染まる横須賀を背景に握手をしながら誓う。

 

それから十五年間二人な別々の道で自分を高め、色々な艦に乗り経験を積んでいく。

その間二人は互いに結婚をして真雪は真霜、真冬、ましろの三人の子供を授かり産むが優香は長年の不妊治療の末にもえかを授かり産む。

そして真雪と優香はましろともえかを産んでからの産休明けで新型艦の配属先で再開し、あの日の約束を果たし、今に至る。

 

(約束は果たせたけど優香さんはもうちょっとしっかりしてくれればいいのだけ……)

真雪はもう少し優香が成長してくれる事を心の中で願いながら艦橋の艦長席に座る。

「艦長、出航準備整いました」

真雪が艦長席に座ってると航海長が真雪に出航準備が整った事を報告しにくる。

「ありがとう。じゃあ出航するわよ」

「了解。アンカーを上げー舫放てー!機関始動! 」

航海長が艦内放送マイクで叫ぶと、来島のアンカーが上がり、航海科要員が舫を解くと甲高い機関音が響き渡り、来島は徐々に速力を上げ横須賀港から離れて行き、任務に就く。

来島はアメリカが建造したフリーダム級沿岸戦闘艦を日本向けに改造し、試験的に日本に配備された最初の艦であり、真雪は艦長で優香は副長兼救助隊及び臨検隊の隊長として来島の初代クルーに選ばれたのだ。

来島は配備されたから様々な任務をこなし、その年のブルーマーメイド年間最高練度艦となり、順風満帆に歩んでいた時にあの事故が起きたのだ。

 

十五年前

日本海

この日は大型勢力を誇った台風が九州沖に接近しており、台風の影響で雨風が強く波が高くなってる時にアジア最大級の豪華客船「クアンタム・オブ・ザ・シーズ」が暗礁に乗り上げ座礁するという海難事故が発生した。

この日海難事故にはブルーマーメイドとホワイトドルフィンの部隊が救助にあたり、統合救助隊が編成されてた。

この時に統合救助隊を指揮していたのが来島の艦長である真雪だった。

「酷い有り様ね……」

真雪が来島の艦橋から双眼鏡で座礁船の方を見ると、座礁船は暗礁に乗り上げ軽く傾斜してうえに難破船の周りにはまだ無数の救命ボートがあり、統合救助隊の救助ボートとスキッパーを使って救助活動してるが全然間に合ってない。

座礁したクアンタム・オブ・ザ・シーズは総トン数一万六千トンを超え、乗員乗客合わせて五千人を超える大型客船であった。

「外がこの様子だと船内はもっと酷いんでしょうね」

そう言い真雪は通信機を取り優香と通信を取る。

「優香さん。船内の様子はどう? 」

その時船内に入り、救助活動してる来島の救助隊の隊長である優香の通信機がなり、通信に応える。

「今、逃げ遅れた人達の誘導をしてるわ。乗務員に聞いた限りだと、まだかなり逃げ遅れた人達がいるみたいだからこれからもっと奥に入るよ」

優香達来島の救助隊は船内の逃げ遅れた人達を脱出口まで誘導する事と身動きできない人の救助にあたってる。

優香からの報告を聞いた真雪は。

「分かったわ。あなたはいつも無理する時は無茶するからくれぐれも奥に行く時は気をつけてね。それとあなたには帰るべき所があるのよ」

真雪は優香に無理しないように催促する。

「分かってるよ。私は平気よ……うわっ! 」

優香が返答しようとしたその時突然大きな音共に通信が乱れる。

「どうしたの! 」

真雪が異常を感じ状況確認をする。

「報告!座礁部に十メートルを超える大波が当たり、その際座礁船内で火災が発生し何か引火し爆発したと思われます! そして傾斜が進みます! 」

航海長が状況を真雪に報告すると真雪は急いで通信機の周波数を変えて、統合救助隊全体に通達する。

「通達!現時点にて船内捜索を打ち切る船内捜索をしてる救助隊は直ちに脱出を!付近の救助ボートに乗ってる救助隊も急いで座礁船内から離れるように! 」

真雪が通達すると座礁船の周りにいた救助ボートは座礁船から離れ、船内捜索をしてた救助隊も自分たちのボートに乗り脱出を始めた。

その時真雪の通信機が鳴り、その通信の相手は優香だ。

「真雪何言ってるんだよ! まだ中には救助を待ってる人達がいるんだよ! 」

優香が真雪の指示に納得いかないと通信してきた。

「これ以上捜索すると救助する側の私達も危険だからよ。さぁ早く優香さん達も脱出して! 」

真雪が優香を脱出させよとするが優香は捜索を続けるとしか言わない。

「目の前で助ける人達を救わないで何かブルーマーメイドなんだよ!真雪頼む捜索をさせてくれ! 」

優香がそう言うと真雪は少し怒った口調で返答する。

「あなたは一人の人間であり!一人の母親でもあるのよ!わからないの? 」

真雪の言葉に優香の頭のの中で生まれてもうすぐ一年になるもえかの姿が移り、優香は冷静になる。

「分かったよ……これから脱出を始めるよ」

優香は真雪の指示に従い脱出をすると言った。

「なるべく早く脱出してね。もう船はかなり限界を迎えてるから」

真雪は安心して、最後に一言を言い通信を終える。

通信を終えた優香率いる救助隊は脱出を始めて、自分達が入ってきた脱出口に戻り救助ボートに乗り始める。

そして優香が救助ボートに乗ろうとした時

「ん?いまの声は……」

優香が船内から何か聞こえたが他の隊員は気がついていない。

「隊長早くボートに! 」

「待って!聞こえない? 」

救助隊の副隊長が優香をボートに乗せようするが優香はボートに乗らず優香は何かに気がついている。

優香が集中して船内から音を聞いてると僅かに小さな声で

「たす……け……て」と聞こえた。

「やっぱりまだ近くに待ってる人がいる! 」

優香は船内の声がする方向に向かって走ってしまった。

「た、隊長!何をしてるんですか!うわっ! 」

副隊長が引き留めようしたが優香は聞かずどんどん船内に入っていき、その時また大波が座礁船を襲って大きく揺れる。

副隊長ここで苦渋の決断をとる。

「くっ!ボートをだして!このままじゃ私達も巻き込まれるから急いで! 」

ボートが脱出口から離され離脱していく。

(隊長ご無事で! )

そのまま救助ボートは来島に戻り、来島のウェルドックから船内の格納庫に収納される。

格納庫には真雪の姿があり、救助隊を見るや血相を変えて救助ボートに寄ってきた。

「優香さん……隊長はどうしたの!」

真雪は優香がいるはずの救助ボートにいない事に気付いていた。

「隊長は脱出する直前に船内から声がすると言い、船内に戻ってしまいまし。私達も座礁船が大きく揺れ隊長を待ってるのは危険だと判断し、離脱しました! 」

副隊長が真雪に優香がいない事を説明すると真雪の表情は固まった。

(優香さん一体何をしてるの!あの中を一人で戻って行ったっていうの)

真雪がそう思ってるその時、座礁船は大きな爆発音と共に爆発し、沈没が始まった。

その時真雪の元に見張り員からまさかの報告が入る。

「艦長!新たに10人ほど乗った救命ボートが座礁船から出てきました! 」

「なんですって! 」

まさかあの状況でら脱出する人達がいるとは思っておらず真雪は驚きを隠せない。

「すぐに救助隊は救命ボートに乗ってる人達の回収に向かって!

真雪は驚きを隠せないまま救助隊に新たな指示を出す。

「了解! 」

救助隊のボートは再度ウェルドックか発進し、救命ボートに乗った人達の回収に向かい回収して来島に戻ってくる。

その後救助された人達は来島の後部甲板に集められて待機されられた。

救助された人達は爆発音と共に沈んでいく豪華客船を後部甲板から静かに見ていた

そんな中優香はいっこう帰って来ず、真雪は最後に脱出してきた人達の一人の所の横に座り、声を掛けた。

「あなた、船内を一人で救助活動してるブルーマーメイドの隊員を見なかった? 」

声を掛けられた人は恐怖と寒さで震えながら応えた。

「その一人で救助活動してるブルーマーメイドの隊員人が瓦礫に埋もれて身動きが取れない私達を見つけてくました」

真雪は息を呑みながら救助された人の話を聞き続ける。

「その後瓦礫をどかして私達を脱出口まで誘導してくれて、用意してくれた救命ボートに乗れって言われて乗って脱出しましたがブルーマーメイドの隊員の人はまた船内に戻っていきました」

「なんですって! 」

真雪は救助された人の話を聞き驚いて大きな声をあげて、立ち上がり沈みゆく座礁船を見えるとこに向かうと

「嘘でしょ……あの中に一人でまた戻って行ったっていうの?あなたには生まれたばかりの子供もいるのにどうして! 」

そのまま真雪はあまりの事に気を失ってしまった。

その一ヶ月後、この海難事故は収束を迎えた。

この事故は今回沈没した客船「クアンタム・オブ・ザ・シーズ」の船長による無理な航海日程と事故が起きた時に船長の責任を放棄して先に脱出した事によって、船内の避難系統が混乱したため避難が遅れた。

それと救助活動中に立て続けに座礁部に十メートルを超える大波が当たり、被害を悪化させ沈没スピードを早まった。

この海難事故で乗員乗客三百人の死者行方不明者と船内を捜索していた統合救助隊からも二十名の殉職者が出るほどの史上最悪の海難事故となった。

その殉職した救助隊の一人が「知名 優香」だった。

優香は最後まで船内を捜索し、船内にいる要救助者の救助をして沢山の人々を救った事から葬式の時にブルーマーメイドから名誉勲章が贈られた。

その葬式の時真雪は参列しており、その時まだ一歳頃のもえかの姿を見るや真雪は優香の家族には罪悪感から逃げてしまった。

 

そして現在に戻る。

「じゃあお母さんは…… 」

もえかは真雪から母がどの様な人か語られていって人物像が出来上がっていくが少し複雑な気持ちであった。

「あなたのお母さん。優香さんは最期までブルーマーメイドの役割を全うして亡くなったのよ」

真雪が注文したコーヒーを一口飲んでからもえかに伝えていく。

「それと優香さんがある物を残していったのよ」

まだ真雪の話は終わっていなかった。

「ある物とは? 」

もえかは優香が残していったものが気になる。

「それは私が知名さんがこの話をする決心をつけてくれたものであり、今の私を作ってくれたものでもあるのよ」

 

15年前

真雪は、葬式の後海難事故で多数の死者をだした事から責任を取るため辞表を出したが、ブルーマーメイド上層部は優秀な人材である真雪の辞表を受理しなかった。

そしてこの時とある事案がブルーマーメイドを悩ませていた。

それは「領海内武装船団襲撃事件」である。

武装した船団が領海内で貨物船やタンカーを襲う事件がここ最近多発しており、ブルーマーメイドの強制執行課による制圧作戦も行われたが制圧できなかった。

そしてブルーマーメイドは武装船団に対してなんも手をつけられないままでいる中、真雪率いる来島は海上哨戒任務に就いた。

任務を開始して数日後、真雪は艦内巡回でまだ誰も着任していない優香がいた副長室にいた。

部屋の中は沢山の来島クルーとの写真が額縁に入れて飾られており、部屋はあの日のままであった。

「やっぱりあの時私がもっとしっかりしてれば……!」

真雪はまだあの日事を忘れられず眠れない日が続いていた。

そんな時真雪は部屋の机の上にある一冊のノートを見つけた。

「これは航海日程?いやこれは優香さんの個人的なノートだ」

真雪がノートを開くと来島に着任してからの事が書かれていた。

 

九月二十五日

「今日は産休明けで、最初に配属されたのがまさかの最新鋭で驚いたけど、それ以上に驚いたのはまた真雪と同じ艦で働ける事だった」

優香が配属される来島を見学してる時に同じく見学して真雪と再会しあの日の約束を果たした日だった。

「これはあの日ね」

真雪がページを捲る。

 

 

九月三十日

「今日は来島の初出航の日。真雪がものすごく緊張した顔してて、横から見てて笑いそうだった」

この日は今の来島のクルーが集まり来島の初任務の為の出航の日だ。

「余計なお世話よ」

真雪はそんなすごい顔をしてたのかと思いつつページを捲る。

 

十月十四日

「来島での初の実戦任務は転覆した漁船の乗組員の救助だった。私が現場で救助隊の指揮をし、真雪が艦から全体の指示をして無事に救助に成功した。急な任務だったけどみんなよく動けていたと思う」

来島は演習を終えて、横須賀に帰港中に近くで海難事故が発生し、急遽救助任務をやることになった。

「確かにあの時は急だったけど確かにみんなよく動いてくれたわ」

 

十月二十五日

「今日は来島に配属になってから最初の休日!寄港地の海上アウトレットモールで真雪と沢山買い物とランチができてとてもいい一日だった! 」

この時来島は沖縄方面の任務担当しており、その時寄港した海上フロートで一日だけの休日が設けられた。

「私はあの時はゆっくり本を読みたかったけど優香さんのおかげで楽しい一日なったわ」

真雪は優香との楽しい思い出を思い出しながらページを捲る。

 

十一月六日

「今日は……何もなく平和な一日でした! 」

おそらく書くネタがなかったんだろうと分かる一ページだ。

「ふふっ、優香さんらしいわ」

真雪は優香らしい事に納得してページを捲る。

 

十一月二十七日

「今日は領海内でおける不審船対処でとても疲れた……でも何事もなく過ぎてよかった」

この日は来島は南シナ海の日本の領海で海上哨戒中に不審船が領海に進入し、そのまま航行し続けたため来島が警告射撃などをし、何事もなく領海外に追い出した。

「そうね。あの時は私も最悪の事を考えていたわ」

真雪は大変だった事を思い出しながらページを捲る。

 

一月二十日

「今回の任務はオーストラリアのブルーマーメイドとの合同演習があり、今日はオーストラリアに向かうため航行してる。ちょうど赤道も超えたし赤道祭をやるか! 」

この後優香が赤道祭をやると言い始めて艦内で急遽赤道祭を開催し、各自が持ち寄ったネタで艦内は笑いに包まれた。

「赤道祭はとても楽しかったわ。あれのおかげオーストラリアとの演習でもとてもいい成績を出せたしね」

真雪はページを捲る。

 

二月十七日

「今日は横須賀基地で来島の一般公開があり、その時に真雪の子供の真霜ちゃんと真冬ちゃんが来てくれた。二人ともすごく可愛いけど一番可愛かったのは一歳になるましろちゃんだったわれ!あ〜私も早く松本に帰ってもえかを抱きたいわ」

この日真霜達がお母さんの働いてる艦が気になり、真雪に内緒で横須賀基地に来たのだった。

「私もあの時に真霜達が来たのは驚いたけど、私も早く優香さんの子供に会いたいなと思ったわ」

そしてページを捲る。

 

三月二十七日

「今日は呉の本部で今年度の最高練度艦の表彰式があるため呉に来てた。貰った認定楯を見るとみんなで頑張った甲斐があったと思う。みんなおめでと! 」

ブルーマーメイドではその年度の演習成績が優秀な高練度艦に表彰されるブルーマーメイドでも名誉ある事である。

「本当にみんなよく頑張ったわ。あれはとても一人の力で取れるものじゃないからみんながいたから取れたものよ」

そして真雪はページを捲り続けると、あの海難事故の日のページとなった。

 

七月事故当日

「今日はこれから長い仕事になると思うから先に書いとく。この天候の悪い中で救助活動するのは私はとてもやりたない」

「! 」

真雪は驚いた。

まさかいつもどんな任務であろうが全力で先頭に立ってやって来た優香が任務をやりたくないと言ってるのだ。

「まさか嫌々任務をやったんじゃ……」

真雪は続きを読み進める。

「こんな暴風雨と高波に加え、あの大きさの船で救助活動するのは救助する側も大きなリスクを背負う。しかし私は行かなければならない何故ならあそこには私達の助けを待ってくれてる人達がいる事を思えば暴風雨や高波なんて関係ない!もし助かる可能性が僅かでもあるなら助ける!そして全員必ず助け出す!そして来島のみんなと共に横須賀に帰るんだ! 」

ノートはそこで終わっていた。

そして真雪がノートの表紙を見るとボールペンで微かに「海に生き、海を守り、海を行く」と書かれていた。

「本当にあなたって人は……」

真雪はあの日の優香のどのように思って任務に当たったのかよく分かった。

優香は強い信念を持ち任務に当たっていた事がよく分かり、優香は真雪が思ってるよりはるかにしっかりしていた。

真雪は優香の信念を知り、優香が亡くなって以来泣けなかった涙がやっと出てきた。

その時艦内で航海長が艦内放送を入れた。

「艦長!哨戒船が武装船団を発見!現場から近い本艦が対処に当たれとの命令が下りました! 」

なんと近くで領海内を荒らしてる武装船団が現れたのだ。

真雪は涙を拭くと艦長帽を正す。

「こんな事で泣いてたら天国の優香さんに怒られるわ。さぁ行くわ! 」

真雪は優香のノートを片手に副長室を出て艦橋に向かう。

艦橋についた真雪は艦長席に座り航海長から現在の状況を聞く。

「先ほどブルーマーメイド本部からの入電で本艦から五十キロの所で哨戒船が武装船団を発見しました。数は四十ミリ機関砲を搭載した武装ボート十五隻ほどと短距離SSMを搭載した旧式フリゲート一隻が陣形を組んでます」

航海長が武装船団の現在の状況を真雪に報告すると真雪はすぐに指示をだす。

「分かったわ。本艦はこれより武装船団に対する海上警備行動として制圧作戦を行う。対水上戦闘よーい!臨検隊は臨検準備! 」

真雪が指示を出すと来島の機関音が上がり、徐々に来島自慢の速力を上げて武装船団に接近して行く。

主砲五十七ミリ一基と格納庫上の三十ミリ機関砲二基も制圧用の低炸薬弾を装填し、射撃準備に入る

救助隊兼臨検隊も臨検装備をし、後部格納庫で即時待機をし、来島は制圧作戦に向けて着々と進む。

そして来島が武装船団との距離四十キロになった時レーダー員が武装ボードが来島に向かって接近してくるのを探知する。

「対水上レーダー探知!武装ボード十隻が本艦に向けて接近してきます!距離十五キロです! 」

レーダー員からの報告を聞いた真雪は来たなと思うような顔し、新たな指示を砲雷長に出す。

「砲雷長。射撃用意、目標武装船団の武装ボード。射撃指示は全て砲雷長に任せるわ」

「了解! 」

指示を聞いた砲雷長は艦橋からCICに入り、戦闘指示をとる。

「武装ボードとの距離十キロ!目視圏内に入りました! 」

レーダー員が武装ボードとの距離を伝えると砲雷長はすぐに指示を出す。

「対水上戦闘! 目標武装!主砲撃ちぃ方始め! 」

砲雷長からの指示を聞いた砲術士は主砲発射トリガーを引き、主砲五十時ミリ砲が火を噴く!

放たれた砲弾は武装ボードに命中し、無力化する。

「命中弾と無力化を確認!残りの武装ボード接近してきます! 」

来島のウィングにいる見張り員が報告する。

「そのまま無力化していって! 」

真雪が報告を聞き、そのまま射撃を続けさせる。

その後武装ボードは来島に接近するも来島の主砲と機関砲により無力化され、臨検隊によって武装ボードの乗員は完全制圧されて艦内に収容させられる。

 

武装ボードが来島に制圧され、収容されるのは武装船団のボスが乗ってるコニ型フリゲート艦でも確認された。

「ボス。先に向かわせた武装ボードが完全制圧され、ブルーマーメイドの艦艇に乗員が収容されました」

武装船団の部下の一人がボスに言うがボスに慌ててる様子はない。

「ほぅ、骨のあるブルーマーメイドがきたようだな。これならSSMも使えるな」

ボスはむしろやっと戦えるブルーマーメイドの艦と戦闘ができて、楽しんでる。

そしてボスは来島に向けて短距離SSMを放つ

「対水上戦闘!目標ブルーマーメイド艦艇!短距離SSM発射始め! 」

そう言うとコニ型フリゲート艦の艦首の方からSSMが発射され、来島に向かう。

 

「対空レーダー探知!アクティブレーダー波も探知!SSMが距離二十五キロで接近してきます! 」

来島のレーダーもコニ型が放ったSSMを探知し、レーダー員が報告する。

レーダー員から報告を聞き、すぐに真雪は砲雷長に新たな指示を出す。

「砲雷長!対空戦闘始め! 」

砲雷長は真雪の指示を聞いたら対水上戦闘から対空戦闘に切り替えさせる。

「了解!対空戦闘用意!目標短距離SSM!SeeRAM始動!迎撃始め! 」

砲雷長がそう言うと格納庫上の個艦防空ミサイルSeeRAMが始動し、コニ型が放った短距離SSMに向かってSeeRAMが発射される。

「インターセプト五秒前、四、三、二、一マークインターセプト! 」

見事にSeeRAMがSSMの迎撃に成功した。

その後もコニ型から二発目と三発目のSSMがくるがSeeRAMが全弾迎撃する。

そしてコニ型フリゲート艦が搭載してる最後のSSMが発射される。

「四発目来ます! 距離二十キロ! 」

来島の対空レーダーも最後のSSMを探知し、迎撃体制にはいる。

「SeeRAM迎撃始め! 」

砲雷長がそう言うと四発目のSeeRAMが最後のSSMに向かう。

「インターセプト五秒前、四、三、二、一ターゲットサーヴァイヴ! 距離十キロでSSM突入して来ます! 」

来島が放ったSeeRAMがコニ型フリゲート艦からのSSMを迎撃に失敗し、来島に向かって突入してくる。

「くっ!SeeRAMじゃもう間に合わない!主砲全力射撃で迎撃して! 」

砲雷長はすぐに迎撃をSezwebRAMから主砲に変えて、迎撃を始めるがなかなかSSMに命中しない。

「距離五キロ! 」

「総員衝撃に備え! 」

真雪はレーダー員から報告を聞くと万が一に備えて、衝撃に備えさせる。

そしてコニ型フリゲート艦から放たれたSSMは来島の手前一キロの所で迎撃した。

「衝撃波と爆風が来ます! 」

しかしSSMを迎撃するも迎撃した距離が近かったため衝撃波と爆風が来島を襲い、衝撃波で艦を大きく揺らし、 爆風で艦橋の風防が割れる。

「くっ!被害は! 」

真雪は割れて飛んで来た風防の破片に当たりながらも被害状況を確認する。

「武器システム、レーダー共にには異常なし!船体に迎撃したSSMの破片によって多数の傷がつきましたが戦闘に支障はありません! 」

航海長が被害状況を報告する。

「分かったわ。直ちに持ち場の体制を整えて、戦闘を続行するわよ」

真雪が確認をとると、すぐに戦闘体制を戻す。

 

一方コニ型フリゲート艦の武装船団のボスは。

「流石ブルーマーメイドの艦だな。この距離のSSMを全弾迎撃するとはな。しかし最後の一発は効いただろう?ならば最後は砲撃で引導を渡してやる! 」

ボスが部下に続いて、砲撃指示を出しコニ型フリゲート艦の七十六ミリ連装砲二基を向けて、砲撃を開始する。

 

「砲弾四つ探知!着弾します! 」

レーダー員が言うと来島の周りに四つの水柱が立つ。

「航海長。回避行動して! 」

「了解! 」

真雪が航海長にコニ型フリゲート艦からの砲弾を避ける為の回避行動をさせる。

それでも砲弾の量は激しく、一発の砲弾が来島の近くに着弾する。

「艦尾方向に至近弾! 」

見張り員がそう言うと来島の速力が若干落ち始めた。

「艦長!今の至近弾で推進器の一つが故障!速力落ちます! 」

航海長が速力が落ちる原因を真雪に報告する。

「まずいわね。このまま速力が落ちると相手からは絶好の的ね」

真雪はどうすればこの状況を打破できるかを考えた。

(やはりここは一旦撤退して、増援部隊と合流すべきか、でもそうしたら必ず相手は逃げる。どうすれば……)

真雪は悩んだ推進器が故障して、満足な速力が出せない今戦闘続けるべきか、一旦撤退して増援部隊と合同で制圧作戦をすべきかを。

(真雪の信じた道を選びなよ)

「えっ? 」

その時真雪の耳に突如優香の声が聞こえ、真雪は周りを見たが優香は絶対いない。

真雪ははっと優香のノートを見るとまた優香の声が聞こえてくる。

(真雪の信じた指示を出しなよ。来島のクルーなら必ず真雪の指示に従ってくれるから、自分の信じた指示をだして! )

真雪は優香からの声を聞き、真雪は決心する。

「これよりコニ型フリゲート艦に対して、反航戦を行う!突撃用意! 」

それは真雪がだした指示は大胆な反航戦だった。

来島は進路をコニ型フリゲート艦と正対し、武装船団に突撃する。

 

「ボス!ブルーマーメイドの艦艇が突撃して来ます! 」

「なに! 」

武装船団のボスもまさかの来島の行動に混乱を始める。

「とにかく撃て!撃って撃って撃ちまくれ! 」

コニ型フリゲート艦は主砲を撃ちまくったが突撃してくる来島には当たらず、残ってた武装ボートも来島に向かって突撃するが、来島の主砲によって無力化される。

「砲雷長!コニ型フリゲート艦の前部主砲を黙らせるわ!射撃目標前部主砲撃ち方始め! 」

「了解! 」

来島の主砲はコニ型フリゲート艦の前部主砲に向かって砲撃し、コニ型フリゲート艦の前部主砲を破壊する。

 

「うそー! 」

ボスはまさかの砲撃で自艦の主砲を破壊された事に驚きを隠せない。

「逃げろ!撤退だ! 」

ボスは撤退指示を出して、来島から逃げようとしたが、艦尾方向を見せた時に来島からの砲撃で、後部主砲と推進器を破壊されてコニ型フリゲート艦は正対された。

最後は真雪の大胆な反航戦によって、コニ型フリゲート艦は制圧された。

その一時間後増援部隊が駆けつけた時、増援部隊はその光景に驚いた。

たった一隻で武装船団を完全制圧し、来島も全くダメージを負ってなかったからだ。

 

その後来島のクルーには今回の功績を讃えられて、特別勲章を与えられて、真雪はブルーマーメイド関係者からは「来島の巴御前」と呼ばれる伝説のブルーマーメイドとなった。

 

そしてその一年後真雪は優香の墓を訪ねていた。

「優香さん。今度私達の母校国立関東海洋学校が横須賀女子海洋学校になって私そこの先生になるの。先生になってあなたみたいな「海に生き、海を守り、海を行く」未来のブルーマーメイドを育てるから。見守っててね」

それ以来真雪は優香の命日なると墓を訪ねてる。

そして優香のノートは真雪が優香の子供にこの事を話す時まで大切に保管していた。

 

そして現在に至る。

「これが話しの全てよ。そしてこれが私を変えてくれた優香さんのノートよ」

真雪はバックの中から大切に保管されていた優香のノートをだしてもえかに渡す。

「これがお母さんの遺したノート……」

もえかはノートを見ると自分の母親の名前が書かれてる事を見る。

「本当はもっとあなたに早く渡したかったけどなかなか決心がつかなくてごめんなさい」

真雪はもえかに向かって頭を下げる。

「いえ、校長先生頭を上げてください。私は今まで知らなかったお母さんの事を知れて感謝してます。しかも校長先生がしっかりお母さんのノートを保管してます。本当にお母さんの事を教えてくれてありがとうございます」

今度はもえかが真雪に向かって頭を下げる。

「いえ、礼を言われる事はしてないわ。むしろそれが無ければ本当に私はブルーマーメイドを辞めていて、今の立場はなかったと思うわ」

真雪は優香のノートに感謝してる。

その後四人は喫茶店から出て、真雪とましろは横須賀に帰るため車に乗る。

「それでは夏休み明けに元気な姿を見せてくださいね」

「「はい! 」」

明乃ともえかは元気な声で返事をする。

「艦長はしっかり宿題やって来てくださいね」

ましろが明乃にしっかり最後は注意をする。

「分かってるよー。じゃあねシロちゃん! 」

「では夏休み明けに」

そして真雪とましろは帰っていった。

「じゃあ私達も帰ろうか」

「そうだね」

明乃ともえかも帰路につき帰り始める。

その後ろで夕日で赤く染まる空で優香が四人を見守ってるように見えるのは気のせいかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたか?
おそらくハーメルンで書いてる文書とは大きく違ってたと思います。
読みやすかった人と読みにく人や面白いと思った人や面白くないと思った人もいますがこれが私の作品でした
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