黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第6話

浦原からの電話を終え、部屋に戻った一護は寝巻きのスウェットから制服へ着替え、既に準備万端だったセシリアと2人で歩いて食堂へ向かっていた。

 

「今朝は一体何処へ行っていたんですの? 私が起きた時には既に部屋から出ていたので、寝坊したのかと思ってしまいましたわ。」

 

「ちょっと知り合いと電話しててな。」

 

一護がそう言うとセシリアは少しだけ不安そうな顔をしたが、一護は気が付かなかった。

 

「その電話のお相手は女性ですの?」

 

「ん?いや、男だ。それもおっさん」

 

と言いながら一護は苦笑する。

 

「年上の方と親交があるのですか」

 

「あぁ、俺の仲間は冷静に考えれば年上の奴らばっかだな。」

 

「どんな方がいらっしゃいますの?」

 

「そうだな…。黒いショートヘアの女でルキアって奴がいんだ。そいつには正直頭が上がらねぇな。俺が道に迷ったり、挫けそうになったりした時、決まってあいつは俺の背中を押してくれる。そういうやつだ。」

 

一護の顔は少しだけ笑みを浮かべていた。それをみたセシリアは少しだけ胸が痛むような気がしていた。

 

「大切な方なのですね…。」

 

「あぁ、女の中ではお袋の次に尊敬してんだ。」

 

「一護さんのお母様…ですの?一体どんな方なのですの?」

 

「あぁ、俺が小せぇころに事故にあってさ、そん時にお袋が庇ってくれたんだ。」

 

「っ!!す、すみません!」

 

「いや、気にしないでくれ。正直あんまし覚えてねぇんだ。でも唯一覚えてることがあるんだよ…。」

 

「覚えてること…?」

 

「お袋はいつでも優しく微笑んでくれてた。その優しい笑顔だけはしっかりと目に焼き付いてんだ。」

 

「私は一護さんのお父様の事は知らないのですが、きっと一護さんの性格はお母様似ではないでしょうか?一護さんはとてもお優しいと思います。」

 

「俺の親父はただのアホだから全く知る必要はないぜ。寝起きの息子に飛び蹴りかますような奴だからな。」

 

「うふふふふ、それはきっと随分と賑やかですのね」

 

「まぁ、確かに常にウチはうるさいな。」

 

そうして話してるうちに食堂につきメニューを選んでいると何やら声が2人の元へ聞こえてきた。

 

「もう!!信じらんない!!」

 

スパァン!!!

 

誰かの頬が叩かれた音がして、2人はその音の出所に目を向ければ、そこには箒と、頬を叩かれて唖然とした一夏がいた

 

「一夏のやつなにやってんだ…?」

 

「物凄い音でしたわね…。

 

「セシリア、一夏と箒の所で食わねぇか?」

 

「ええ、わかりましたわ」

 

そういい2人は一夏と箒の元へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

「いてぇ〜…鈴の奴本気で…。」

 

顔を抑えてうずくまってる一夏に一護が話しかけた。

 

「おい、大丈夫かよ?叩かれた音が飯受け取る所まで聞こえたぜ?」

 

「全然大丈夫じゃねぇ…。」

 

「箒さん、一夏さんは一体どうしたのですか?」

 

とセシリアは隣でプンスカ怒っている箒の耳に顔を寄せ小声できいた。

 

「いや、実は一夏には私以外にもう1人女の幼馴染がいて、そいつが今日からこの学園に通うことになってるのだ。それでその女が一夏と別れる際に“帰ってきたら毎日私の作った酢豚を食べてくれ”と言ったのを、どう聞き間違えたのか。毎日酢豚を奢ってくれるなどと勘違いしていたのだ。もう1人の幼馴染の存在はこの際置いておくとして、女に同情してしまった。」

 

するとセシリアは心底呆れたという表情で

 

「最低…ですわね……。」

 

箒も似た表情をして

 

「全くだ…。」

 

と2人して呆れていた。

 

「そりゃ、全面的にオメェが悪いだろう…。」

 

「なんでだよ!?俺は再開早々に叩かれたんだぞ!?」

 

「そんだけのことをしたってことだ一夏。」

 

「納得いかねぇ〜…。」

 

一夏は苦い顔をし、叩かれた頬をさすっていた。

 

 

 

 

 

 

教室で休み時間のとき一夏のいる一組に来訪者がいた。

 

「一夏!」

 

「なんだよ鈴」

 

「あんたのことだからどうせ何が悪いかわかってないんだでしょ!?だから折衷案!!次のクラス代表戦で決着をつける。勝ったほうが負けた方になんでも命令できる。それでどう?」

 

「わかった。そういう分かりやすい方が好きだぜ。」

 

「フンッ!せいぜい首を洗って待ってなさい!」

 

「そっちこそな!」

 

勢い良く啖呵を切った一夏。だが…

 

 

 

 

 

 

 

「頼む!!一護!俺にISを教えてくれ!!」

 

「オメェ…。アレだけ立派に啖呵切っておいてそれかよ…。」

 

絶賛一護に土下座中であった。

 

「お前ならセシリアとアレだけ戦えるんだからコツとかないのか!?」

 

「ない」

 

「頼むよ!そう言わずに…!!」

 

「俺よりも適任がいるだろう。おい、セシリア!少し良いか?」

 

近くにいたセシリアを呼ぶ一護。

 

「?はい、なんでしょう?」

 

「一夏にISの操作を教えてやって欲しいんだけどさ」

 

「何故ですの?」

 

少しだけ嫌そうな顔をするセシリア

 

「こいつクラス代表戦で鈴と決着付けるみてぇでよ。レクチャーして欲しいんだと。」

 

「そういうことでしたの。仕方ありませんわ。一護さんの頼みですので引き受けさせて……。少しお待ちを、一護さん?鈴とは誰のことですの?」

 

「ん、そういえば。一護、お前鈴のこと知ってるのか??」

 

「あぁ、昨日の放課後に偶々あって少し話したんだよ。」

 

「なんですの!?きいてませんわ!!」

 

「いや、別に聞かれなかったから…。」

 

「納得いきませんわ!!」

 

「悪かったって。」

 

ムスッと頬を膨らますセシリア。

 

「まぁ仕方ありませんわね…。そうですわ!一護さん。」

 

「な、なんだ?」

 

「一護さんの頼みを引き受ける代わりに、今度の日曜日、私と一緒にで、出かけましょう!!」

 

「わ、わかった…。」

 

「では一夏さん、今日から早速特訓を始めますわ!」

 

「わ、わかった。」

 

セシリアに気圧されながら一夏は了承した。

 

 

 

 

 

 

一護とセシリアの約束の日。

一護は待ち合わせの場所でセシリアを待っていた。

 

「なんで一緒に行かないで外で待ち合わせんだ…?」

 

そうぼやきながら待っているとセシリアが来た。

 

「一護さん!すみません。お待たせしてしまいましたでしょうか?」

 

「いや、大丈夫だほんの数分しか待ってねぇからよ。それで行くところ決まってるのか?」

 

「はい!私の完璧なプランが御座いますので御安心を。」

 

「わ、わかった。あの、セシリアさん?これは一体…?」

 

セシリアの右手が一護の左手に繋がれており、左腕が一護の腕に絡み付いていた。

 

「休日は人が多いのではぐれなようにするためですわ。それでは行きましょうか、一護さん。」

 

こうして2人は人混みへと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

クラス代表戦当日。

一護は廊下で前を歩く一夏を見つけ、声を掛けた。

 

「よぉ、一夏。調子はどうだ?」

 

「おう、一護!。まぁ、ボチボチかな。基本操作はセシリアのおかげでどうにかなったし、瞬時加速も教えてくれたからな。後はどうやって自分の土俵に相手を誘い込むかって感じだな。」

 

「なら勝機はあるんだな。」

 

「あぁ、千冬姉が乗ってたISの機能を引き継いでるからな。あとは乗り手次第ってことだ。」

 

「言うじゃねぇか。なら、楽しみにしとくぜ。」

 

「あぁ!」

 

会話を終え、一護は観客席へ、一夏は試合場へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

観客席についた一護は席を探していた所、セシリアを見つけその隣に座った。

 

「よぉ、来てたのか。」

 

「一護さん!はい、短くとも一応私がお教えしたのですから、せめて結末くらいは見ておこうと思って。」

 

「面倒見良いんだな。」

 

「いえ、そんなことありませんわ…。」

 

セシリアは顔を赤くして俯く。

 

「おい、大丈夫か、熱でもあるんじゃねぇのか?」

 

「だ、大丈夫ですわ!!あっ、ほら!2人が出てきましたわ。」

 

「そうか、大丈夫なら良いんだ。無理すんなよ?」

 

「は、はい。」

 

『試合を開始する。位置につけ……始め!!」

 

始まった瞬間一夏が瞬時加速を使い斬りかかる。

しかし、いきなり一夏が吹っ飛んでしまい、奇襲は失敗に終わった。

 

「? なんだ今のは?」

 

「あれは中国で採用されている龍砲と呼ばれる装備ですわ。圧縮した空気を相手に向かって打ち出すものです。」

 

「確かにそれなら攻撃が見えねぇのも頷ける。」

 

「それだけではありませんわ。」

 

その時背後を取った一夏が最初と同じように再び吹っ飛んでいった。

 

「!?完全に背後をとったはずだぞ!?」

 

「今のは敢えて背後を取らせたのですわ。」

 

「敢えて?どういうことだよ?」

 

「龍砲は見えないだけではありませんの。砲身がない為、その砲撃角度は360度。つまり死角がありませんの。」

 

「ISってのは出鱈目だな…。」

 

ドゴオオオオオォォォン!!!!!!!

キャーーーーー!!!!!!!

 

一夏と鈴音が戦っている最中に轟音が鳴り響き、周りがパニックに陥った。

 

「なにが起きたんだ!?」

 

「わ、わかりません…。い、一護さん…アレ……。」

 

そう言ってセシリアが指を差した先を見ると、全身を黒で覆われ、所々に白いツノが突き出ているISが一夏と鈴音に襲いかかっていた。

 

「クッ!あいつら何やってんだもうエネルギーが殆ど残ってねぇだろ!さっさと逃げろ!!」

 

「いえ、一護さん周りのシールドを見てください」

 

「閉じ込められてんのか…。セシリア。これ壊せねぇか?」

 

「厳しいですわ…。このシールドは最高レベル。ISでの破壊は不可能です…。」

 

<おい、一護。>

 

(なんだ!?今は余裕がねぇんだ!)

 

<まぁ、落ち着け、あの機械から虚の霊圧が漏れ出してる>

 

(漏れだしてる?どういうことだ?)

 

<さぁな、ただこのまま放っとくと、あいつら死ぬぜ。>

 

「一護さん…?」

 

「悪いセシリア。俺の体頼む。」

 

そういうと一護は代行証を体に当て、死神化をする。

 

「い、一護さん…?その格好…、そ、それに…体が2つに……。」

 

「悪い。後で説明する。」

 

そう言って一護はシールドへ向かうそして斬月を手に取って、大きく振りかぶる。

 

「月牙天衝!」

 

白い刃がシールドへ飛んで行きヒビが入り攻撃を受けた場所が割れた。そして、一護はその隙間から中へ入り、謎のISを蹴り飛ばし、地面に衝突し砂埃がまう。一護は一夏と鈴音の2人の首の根っこを引っ張り距離をとる。

 

「い、一護!?どうやって中に!?それに…その格好…。」

 

「アンタ、それになったんだ。悪いわね、手間かけさせて。」

 

「気にすんな。後で説明してやる。あとは任せてくれ。」

 

「1人でやるつもりかよ!無茶だ!!」

 

「一夏の言う通りだわ、あの時のデカ物とは速さも力も段違いなのよ?ここは協力した方が良いと思うんだけど?」

 

「心配すんな。すぐに片付ける。」

 

砂埃が晴れ、相手のISが姿を表す。その瞬間にとてつもないスピードで一護は相手のISの頭部を鷲掴みそのまま外へと連れ出した。

 

「は、速い…。」

 

「それに片腕だけで…。何てデタラメなの…?」

 

「っ、追うぞ!鈴!!」

 

「何言ってんの!?あんなのに追いつけるわけないじゃない!!仮に追い付いたとしても足手まといになるだけだわ。」

 

「だからって指加えて見てろって言うのかよ!そんなことできるか!」

 

そう言って一夏は一護を追いかけて行った。

 

「あぁー!!もう!!仕方ないわねぇ!!」

 

そう言い鈴音も飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

一護は鷲掴んだ相手をそのまま海に向かって投げ込んだ。

 

ピュー!!バシャン!!!

 

<やっぽり間違いねぇ、中にいるやつ人間じゃねぇな。>

 

「人間じゃないってどういう事だ!?」

 

<やり方はしらねぇが、あの機械には虚がくみこまれてやがる。まるで部品の一部みてぇにな。」

 

「なんだと!?」

 

<ちっ胸糞悪りぃ話だ。ちんたらしねぇでとっととかたづけなぁ!一護!」

 

「あぁ、行くぜ」

 

「ハァ!!」

 

一護の剣圧が海を割る。するとISは海から離脱し一護に左肩から右わき腹へと斜めに斬りかかる。それを一護は左側へ沈み込むように躱し、すれ違いざまに剣を持っていたISの右腕を斬り上げ、さらに連続で相手の背中を斬りつけ海へ再び落とした。そこへ一夏と鈴音が飛んできた。

 

「大丈夫か一護!!」

 

「ちょっと待ちなさいって!!って、もう倒しちゃったわけ??」

 

「来るなって言ったのによ…。まぁ良い、まだ倒したわけじゃねぇ。だから気抜くなよ。」

 

「一護、セシリアとやった時みたいな技で倒せないのか?」

 

「あれだと跡形もなく消し飛ばしちまうからよ。何とかして中身を残して倒してぇんだ。」

 

「あ、跡形も…って…あんたISよりよっぽど危険じゃない。」

 

「鈴、一護上がってきたぞ!!」

 

(どうやって倒すか…。なるべくこれ以上傷つけたくねぇ一夏の単一仕様能力を使えば無傷で相手を無力化できる…。よし!)

 

「一夏!鈴!俺が隙を作る。鈴が一夏をサポートして白式の単一仕様能力で相手を無力化する」

 

「わかった(わ)!!!」

 

最初に一夏が斬りかかる。しかし相手のIS上に飛んで躱す。それをそれを一護が斬魄刀の峰の部分で下に叩きつけるように打撃を加え、そこから鈴音が龍砲で一夏の方向に飛ばす。

 

「今よ!一夏!!」

 

「オラアアアアァァァァ!!!!!」

 

一夏は相手のISを無力化し、一護が無力化されたISの足をつかみ宙釣りにする。

 

「よっしゃあ!」

 

「やるじゃない!一夏!」

 

「おい、早くもどるぞ」

 

「わかったわ。」

 

「ちゃんと説明してくれよ一護。」

 

「あぁ、わかってる。それじゃあ先に行くから早く戻ってこいよ」

 

シュッ

 

「先に?ってな!?もう向こうに消えてった!?」

 

「ISのサポートを受けてもちらっと見るのが限界だなんて、相変わらずデタラメね…また聞くことが増えたわ…。」

 

「俺たちも早くもどるか。」

 

「そうね。」

 

こうして一夏と鈴音は学園へと戻っていった。


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