黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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おかしなところあったら教えてください



第42話

「テメェは離れて詠唱を始めろ!」

 

「は、はい!」

 

ベートはレフィーヤにそう指示を飛ばすと、自分はゴライアスの足元から駆け上がり顔面に付いている仮面を攻撃する。がしかし、

 

「かってぇ!!何だこりゃ…。さっき出てきた雑魚どもの仮面とは強度が桁違いだな。これじゃあ仮面を壊すのは無理くせぇな。やっぱあいつの魔法しかねぇか…。チッ。時間稼ぎなんて柄じゃねぇのによぉ!!」

 

ベートは再びゴライアスに殴りかかっていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ティオネ、あいつの目をお前のナイフで狙えるか?」

 

「目?んー、少し遠いし、動きも以外と早いからもう少し近付かないと無理そうだけど効果あるの?」

 

「さぁな、目をピンポイントで狙うシーンは一護の記憶で見ていないからなんとも言えないが、潰せることができれば相当有利になるからな。」

 

「そうね、確かに試す価値は有りそうね。とっとと倒して団長助けに行きたいし。やってるわ。」

 

ティオネは左右ジグザグに動きながら素早く接近し、ゴライアスの膝まで飛び、そこから更にゴライアスを足場にして飛び上がり、目に目掛けてナイフを数本投げると、ゴライアスの左目に三本突き刺さる。

 

「やった!」

 

「よし、これで…なっ!!?」

 

喜びの表情を見せた2人だが、ゴライアスの左目が生々しい音を立てながら傷が塞がり、元通りになった。

 

「これは…超速再生というやつか…。」

 

「それって…。それじゃあコイツ、どうやって倒せば良いのよ…。」

 

「魔法で跡形もなく消し飛ばすしかないな。」

 

「やっぱりそうなったか…。あぁ!!もう!!ムカつく!!!!」

 

ティオネは発狂しながら両手にナイフを持ちゴライアスを突き刺しまくる。

 

「落ち着けティオネ!その攻撃じゃ意味がないぞ!!」

 

「時間は稼ぐ。リヴェリアは魔法の用意よろしく!」

 

「チッ、無茶をして…。仕方ない。」

 

リヴェリアは魔法の詠唱を始めた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「僕たちじゃ決定打に欠ける。取り敢えずは注意を引きながら周囲になるべく被害が出ないように遠くに離れよう!」

 

「分かりました。」

 

フィンとリューは脚や腹、胸、腕、肩のそこら中を斬りつけながら少しずつその場を離れていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「足手纏いがいる状態では、その程度か…。期待外れだな。」

 

ウルキオラの前には腹部から血を流しながらうつぶせに倒れているティオナと身体中に切り傷があり、片膝をついているアイズがいた。

 

「そんな……。前よりも速くなってる…。」

 

「当然だ。今の俺のLevelは6。もはや貴様がどうこうできる問題ではない。もっとも、黒崎一護ですら今の俺と同レベルになることなど不可能だがな。確かに奴の潜在能力の底は見えん…が。それは時間あっての話だ。」

 

「Level…6…。そんな……。」

 

「…時間を無駄にした。」

 

ウルキオラはそう言うと興味を失くしたかのように振り向き、そのまま去ろうとする。

 

「どこへ…行く気…?」

 

「貴様にもう用はない。失せろ。」

 

ウルキオラはそう言うとそのまま暗闇に消えていった。

 

「弱い……。私は弱い…。っ、そうだ、ティオナ…。ねぇ、起きてよティオナ。しっかりして。」

 

アイズはティオナの体を揺らすが、全く反応が返ってこない。

 

「どうしよう…。私じゃ治療なんて…。」

 

自分の無力さに涙しながら頭を抱える。

 

「どうしよう……どうしよう……どうしよう……。」

 

アイズの体は最早人を抱えて歩くどころか自分1人だけですらも歩けない状態。途方に暮れていると、アイズの後ろから足音が聞こえてきた。

 

「っ!誰…?」

 

力を振り絞り、立ち上がって剣を構える。

 

「すまぬ。霊圧を感知して飛んできたのだが少し遅かったようだ。」

 

そこには七の文字を背負う狛村の姿があった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「グハァ!!」

 

ベートはゴライアスに殴り飛ばされ、丘へ物凄い勢いで突っ込んだ。

 

「く…そ…。まだか…?」

 

ベートはレフィーヤのところに目を向けると、レフィーヤが光り輝き、そこから何発もの光の光線がゴライアスに向かって行くのを目にする。そして、ゴライアスの左腕以外の全てを消しとばした。

 

「へっ…。遅えんだよ、雑魚が…。」

 

ベートは安堵した顔で全身を地面にあずけた。

 

「ふぅー…。こりゃ骨の二、三本逝っちまったな…。っ!?おい…嘘だろ…?」

 

ベートの視線の先で、倒したはずのゴライアスの左腕から黒い霊圧が包み、消しとばしたはずの体が全て元通りとなった。

 

「なんだありゃ…?一護の記憶の超速再生とは次元が違えそ!」

 

ベートは痛む身体に鞭を打ち、レフィーヤを回収して戦線離脱を試みる。

 

「ベートさん…なにを…!?」

 

「馬鹿が!わからねぇのか!?俺にテメェを庇う余裕はねえ!テメェはマインドダウンギリギリだろうが!あれはリヴェリアじゃねぇと無理だ!」

 

「ですが…ここで倒さなければ…。」

 

「今のテメェがいる方が邪魔で仕方ねえんだよ!」

 

ベートは離れたところにレフィーヤを置き、すぐに踵を返す。

 

「ベートさん…!駄目です…そのままでは…。」

 

ベートはレフィーヤの言葉を無視し、そのまま先程のゴライアスの元へと駆けた。

 

「チッ、使うつもりなんてなかったんだがな!」

 

ベートは胸元にしまってある魔剣を取り出し、自分の装備に魔剣の火を吸収させる。

 

「これでテメェをぶっとばす!」

 

ベートは再び敵へと向かって行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「この戦い…これ以上はもう…。」

 

ベートのところもリヴェリアのところも健闘し、虚化したゴライアス相手に互角の戦いをしている。が、それ以上の事は何も出来ず、少しずつ皆の体力は削られ、終わりが見えてくる。

 

「フィン殿。これからどうする?」

 

ファンと共にゴライアスを引きつけているリューがフィンに尋ねる。

 

「やはり脱出しかないか…。ベート達やリヴェリア達も良くやっているが、ゴライアスの再生は想定外だ。これじゃリヴェリアでも倒せて一体だ。それ以上はマインドダウンを起こしてしまう。かと言って出口があるわけでもない…。万事休すか…。」

 

ドゴオオオン!!!!

 

「何だ!?」

 

天井が轟音を鳴らして崩れ落ち、フィンとリューはそちらへ目を向ける。

 

「あれは…。」

 

「狛村殿!?」

 

「遅くなって済まぬな団長殿。」

 

そこにはアイズとティオナを抱えた狛村が空中に立っていた。

 

「アイズも無事でよかった。ティオナの容態は?」

 

「狛村さんが傷を手当てしてくれたから大丈夫。ウルキオラ…来てたよ。」」

 

「それは良かった…。やはりか…。だが今はあいつらをどうにかしないと。」

 

フィンすぐに切り替え狛村へと目を向ける。

 

「状況は…聞くまでもないようだな。」

 

「あぁ、絶体絶命だ。ゴライアスの再生力は尋常じゃない。腕一本でも消し損ねたらそこから再生するし、弱点の仮面も硬すぎて壊せない。」

 

駒村はリューとフィンに降り立ち、アイズを降ろし、ティオナを寝かせる。

 

「壊せぬと…。そんな筈はない。」

 

轟け 天譴

 

狛村の頭上に巨大な腕と刀が出現する。

 

「これは……。」

 

「これが…狛村さんの、力…。」

 

狛村は腕を大きく引き、不用意に近づいてきたゴライアスの顔面に目掛けて突き出す。

 

「ふんっ!!!」

 

すると、天譴がゴライアスの仮面を突き破り、そのまま顔面を貫通させる。ゴライアスは悲鳴をあげることも出来ずにそのまま消失した。

 

「儂はこのまま他の二体も倒そう。今の不意打ちはもう効かぬようだ。ここからは派手になる。下がっていた方が良いだろう。」

 

他の二体のゴライアスは一体倒された事に気付きこちらに向かって来ていた。

 

「申し訳ない。頼り切ることになって。」

 

「いや、元はと言えば儂等の世界が原因だ。此方こそ謝罪せねばならぬだろう。」

 

「まぁ、これが終わったら、ゆっくり貴方と一杯やりたいね。」

 

「では、早々に片付けよう。」

 

卍解 黒縄天譴明王

 

「す、すごい……。」

 

「では、行くぞ!」

 

こうして、狛村対ゴライアス二体の戦いが始まった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ありゃなんだ!?」

 

遠くで巨大な何かがゴライアスの顔面を貫き消失したのをベートの視界の端に捉えた。すると突然目の前のゴライアスが動きを止め、その場を去る。

 

「あ?なんだ?あそこは確かフィンとフードの奴の…。フードの奴が何かしたのか?あそこに合流した方が良いか。」

 

ベートはレフィーヤの元へ行き、肩に担ぐと、俊足を生かしてフィンの元へと向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「アレは…。」

 

「団長の所の!?ねぇ!戻った方が良くない!?」

 

リヴェリアとティオネは突如相手取っていたゴライアスがフィンたちの方へと向かっていき、唖然としたが、すぐに気持ちを切り替えた。

 

「待て、あの巨大な刀の形。一護の記憶で見た覚えがある。狛村殿のモノだろう。私たちが行くと邪魔になるかもしれん。」

 

「でも団長が!」

 

「落ち着けティオネ。フィンがあそこに留まり続けるとは思えん。一度街の方に戻るぞ。」

 

「どうしてそんなことがわかるのよ?」

 

「死神の戦いを思い出せ。そんな場所の近くに留まるなぞ、私たちでは死にかねん。それよりも早く移動するぞ。ウルキオラが近くにいないとも限らん。」

 

「わかったわよ。」

 

二人は街へと走って向かって行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「クッ!厄介だ。」

 

狛村は二体のゴライアスを前にし、中々トドメを刺しきれずにいた。

 

「腕を犠牲にして徹底して仮面を守り、腕はほぼ無制限に再生をするか…。ここであまり力を出し過ぎれば崩落の危険もある…。仕方あるまい。」

 

狛村は塞がっている出口に刀を突き刺して通れるようにする。

 

「皆の衆!死にたくなくばこの場から立ち去れ!」

 

何が起きたのか分からないといった風に唖然としていた冒険者たちは、狛村の声を聞いた途端に我先にと逃げ出した。

 

「さて、ここからは派手に行くとしよう。ハアアァァ!!」

 

狛村は霊圧を高め、二体同時に敵の顔を着るために横に刀を薙ぎ払う。ゴライアスらは腕を犠牲にして顔を守りきる。

 

「ハァ!!」

 

狛村は刀を返して相手二体の腹を真っ二つに切り裂く。上半身が地面に落ち、狛村は刀を離して地面にある二つの顔に向けて両手を突き出して顔を鷲掴みにする。そのまま握力を強め、狛村はゴライアスの顔を握り潰した。

 

狛村は卍解を解き、瞬歩でフィン達の元へと向かった。その場に到着すると、皆が集まっており、リヴェリアが礼を言う。

 

「狛村殿!済まない。助かった。」

 

すると、目を覚ましたティオナが駒村の元へと駆け寄った。

 

「あ!ありがとね!狛村さん!」

 

「礼は要らぬ。それよりも気を引き締めよ。」

 

その瞬間にここにいる全員に対して霊圧をぶつけられた。

 

「まさか、護廷十三隊の隊長格がいたとはな。想定外だ。」

 

「「「っ!!」」」

 

上から声が聞こえ、ロキ・ファミリアの面々とリューはそちらへと構えをとり、いつでも動けるようにする。

 

「貴殿が第四十刃のウルキオラか。」

 

「…そうだ。」

 

ウルキオラはポケットに手を入れたまま狛村たちの前に降り立つ。

 

「なんの真似だ?」

 

「何のことだ?」

 

ウルキオラの問いに狛村が問い返す。

 

「何故刀を抜かない。」

 

「儂の刀は敵を斬る為にある。貴殿を斬るつもりはない。」

 

「なら、後ろの奴らをどうするつもりだ。このまま俺に殺されるのを指を咥えて見ているつもりか?」

 

「貴殿の倒すのは黒崎一護だ。」

 

「…なるほど。だが、今ここにいない人間の話は無意味だ。」

 

「感じぬか?ここに向かってきている霊圧を。」

 

すると突然辺り一帯に霊圧がかかる。するとロキ・ファミリアの面々とリューが反応する

 

「っ!?なんだ!?」

 

「馬鹿ベート!わからないの!?」

 

「えぇ、これは…。」

 

「もしかして…。」

 

「あぁ、間違いないな。」

 

「彼か。」

 

「「一護(さん)!」」

 

リューとアイズが名前を呼んだ瞬間ウルキオラと狛村達の間に一護が降り立った。

 

「悪い。少し遅れた。」

 

一護はウルキオラに体を向けたまま皆に声を掛けた。

 

「いや、よく来てくれた。ここから先は頼めるかい?」

 

フィンの言葉に一護は笑って答えた。

 

「当たり前だろ、その為に来たんだ。絶対倒す。場所を変えるぜウルキオラ。」

 

「好きにしろ。」

 

2人は高速歩法でその場から姿を消した。

 

「一護…。」

 

リューは一護の立っていた場所しばらく見ていると後ろから声がかかる。

 

「黒崎一護が心配か?」

 

「あなたは…。」

 

リューの後ろには狛村が立っていた。

 

「儂は黒崎一護の友人の狛村左陣だ。案ずるな。先ほど、黒崎一護の目を見たはずだ。」

 

「…ですが。それでも心配です。彼は無茶ばかりするから…。」

 

「ふむ、確かに無茶が過ぎることはある。だが、彼は約束を守る男だ。今までもそうだった。そして、これからもそうに違いないと、そう思わせる男だ。」

 

「それは…わかる気がします。」

 

「さて…フィン殿。儂はやる事がある。ここは任せる。」

 

狛村は近くにいるフィンに話しかけた。

 

「やること?それは一体…。」

 

「ウルキオラの崩石を剥がす。その為の道具は浦原喜助から貰っている。そして、連れて行きたい人間がいる。」

 

狛村はそう言いながら2人の人物に目を向けた。

 


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