黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

40 / 48
第40話

「一護!!」

 

「アイズも無事でよかった。」

 

一護、アイズ、そして浦原はダンジョンを抜けてロキ・ファミリアのホームに到着した。

 

「どうやら、救援は不要だったようだな。」

 

「えっと、そっちの人は??」

 

ティオナの問いかけに皆の視線が浦原へと集まった。

 

「初めてまして〜、アタシは浦原喜助と申します。黒崎さんのお友達です。」

 

「僕はロキ・ファミリアの団長をしているフィンだ。それで、早速だが、少し来て欲しいのだが。」

 

「えぇ、構いませんよ。」

 

フィンが浦原を呼び奥へ行こうとした瞬間、ホームの玄関が勢いよく開き、ロキが入ってくる。

 

「お、皆帰ってきたんか?」

 

「ロキか、どこに行ってたんだ?」

 

「ちょいとな。そんで、その男は…。」

 

「どうも、ロキさん。アタシは浦原喜助です。ご存知でしょう?」

 

「成る程な、見た通り胡散臭そうな奴やな。」

 

「手厳しいッスねぇ。」

 

「浦原さん!頼みがあるんだ。」

 

一護はロキと浦原の会話に割り込む。

 

「ん?頼みッスか?」

 

「あぁ、俺を強力な結界に閉じ込めて欲しいんだ。」

 

「それは…何故?」

 

「どうせ今までのことは見てたんだろ?ならわかるはずだぜ。」

 

「Level上げ、ってやつッスか…。正直あまりお勧めは出来ません。貴方の場合は負ける事とは虚に飲み込まれる事と同意義ッス。危険過ぎる。」

 

「んなことはわかってる!ただ、もう時間がねぇんだ!ウルキオラが人間を実験台にしようとしてる!俺が止めなきゃなんねぇんだ。」

 

「そこまで焦らずとも平気ッスよ。」

 

「なんでだよ?」

 

「崩石と融合するには本来ゆっくりと体に慣らし、そこから自分の霊圧と同調させるものッス。一護さんは何でかはわからないッスけど、慣らしの期間が存在しなかった…。」

 

「なら、猶予はあるのか!?」

 

「最短でも一ヶ月はあります。おそらく、ウルキオラさんはこれから崩石の制御に取り掛かるはずです。」

 

「そうか…。」

 

浦原と一護の話を聞き、リヴェリアが疑問を口にする。

 

「ウルキオラとは一体何者なのだ?死神というわけではあるまい。」

 

「あぁ、アレは虚だ。」

 

「「「っ!!?。」」」

 

事情を知る、ロキ、フィン、リヴェリアは息を飲む。

 

「虚だと!?我々が知っているのとは全く違うぞ!?」

 

他のロキ・ファミリアのメンバーは一護たちの話の要領を得ず、首をかしげる。

 

「ロキ、俺の記憶をみんなに見せてやってくれ。」

 

「しゃあないわな。ほな、みんな、こっちへ寄り。」

 

ロキは、アイズたちを手招いた。

 

「え?どうゆーこと??」

 

「話がまったくわからないわ。」

 

「一護の…過去…。」

 

「見ればわかるわ。」

 

ロキは目を閉じ集中すると、皆の頭に直接一護の記憶が流れていった。

 

死神の力を得てから、恩人であるルキアが連れ去られ、救い出すために尸魂界に乗り込み、阿散井恋次、更木剣八、朽木白哉と戦い、藍染が現れ、崩玉を奪いって去っていくところまでを見て、皆は唖然とした。

 

「「「………。」」」

 

「悪かったな。今まで黙ってて。」

 

「っていうことは…本当なんだ…これ…。」

 

「なら、別世界の人間ってことよね…?」

 

「チッ、そういうことかよ…。」

 

「……。」

 

皆が驚いたように、しかし、どこか納得したような顔をした。そんな中、アイズ1人だけは唖然としたままだった。

 

「アイズ…?大丈夫?」

 

「……。」

 

「おい、アイズ。しっかりしろよ。」

 

ベートとティオネの言葉にも返事をせずに、ひたすら虚空を見ていた。

 

「ロキ、続きを頼む。」

 

「わかった。」

 

ロキは再び同じように目を閉じて集中し、続きをそれぞれの頭に映し出す。

 

そこから、ウルキオラとヤミーが現世にきたこと。

十刃という存在を知ったこと。

一護の仮面が制御出来なくなり、平子真子たちに協力を得たこと。

グリムジョーと戦ったこと。

井上織姫が藍染たちに攫われたこと。

井上を助ける為に虚圏へ突入したこと。

虚夜宮でグリムジョーを倒したこと。

 

そして、ウルキオラとの最終決戦。

 

「「「……。」」」

 

皆は思考が追いつかず再び唖然としてしまった。

 

「あいつの相手は俺がする。」

 

一護は皆にそう言う。

 

「無理だよ!それに…一護ばっかり傷付いてばっかりじゃん……。」

 

フィオナは涙を流し、一護を止めようとする。

 

「確かに、アレを倒すのは無理よ。前よりも更に強くなってるんでしょ?」

 

「おい一護、オメェが倒せんのかよ?あのバケモンを。」

 

「あぁ、倒す。必ずだ。」

 

「一護!無理だって…。アイズも何か言ってよ!一護止めなきゃ絶対死んじゃうって!」

 

「……一護…。」

 

「大丈夫だ。安心してくれ。絶対倒す。浦原さん、頼みがあるんだ。」

 

「はい、何でしょう?」

 

「内在闘争の為に俺の動きを封じて欲しい。」

 

「……良いんスか?」

 

「あぁ、最低でも同じレベルにならなきゃ話になんねぇ。」

 

「わかりました…。だとすると少なく見積もっても三週間。多ければ二ヶ月は掛かるでしょう。その間にウルキオラさんが動かないとも限りません。」

 

「一ヶ月だ。一ヶ月で終わらせる。」

 

「…わかりました。では早速やりましょう。」

 

皆は鍛錬場へ行く。そして一護は鍛錬場の中央に立つ。

 

「では、行きますよ。」

 

「あぁ、やってくれ。」

 

 

初曲 止繃

 

弐曲 百連閂

 

終曲 卍禁太封

 

 

大きな布が一護に巻き付き、更に鉄串が一護に刺さる。そして最後に卍の文字が刻まれた巨大な石が一護の上に降りかかり、一護を押し潰した。

 

「ちょ!一護!!」

 

「安心して下さい。あんなんじゃ、黒崎さんは死んだりしませんので。」

 

「安心しろって言われても…。」

 

「みんな聞いてくれ!これからのことを話し合いたいと思う。」

 

フィンが不安そうな顔をした皆に声をかける

 

「僕らは夜間にパトロールを行いたいと思ってる。当番制で、四人一組で動いてもらう。第一級冒険者を班のリーダーとしてこちらでメンバーを選抜しておく。」

 

「確かに…民間人が実験材料として攫われるかもしれないからな…。」

 

「だんちょー!公にはしないの??」

 

「あぁ、信じる人がいないと思うし、仮に信じたとしたらパニックになる。それに、ウルキオラの行動が読めないうちは派手に動くのはよした方がいい。他のメンバーたちには僕が上手く言っておこう。」

 

「わかりました!」

 

ロキ・ファミリアの面々は今後の方針を決め、早速今夜から動き出した。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

一護は見慣れている精神世界で目を覚まし、辺りを見回す。

 

「誰もいねぇな…。」

 

一護なそう呟き、歩き出す。すると、横向きにそびえ建っている沢山のビルの1つに扉がついていた。

 

「なんだ?」

 

一護はそれに近付き、手を伸ばし、扉を開いた。すると何もない場所に出る。一護は辺りを見回すと、予想通りの人物がそこにいた。

 

「やっぱり、今回もテメェと戦うのか。」

 

「当たり前だろうが。俺はテメェ何だぜ?一護!!」

 

そこに立つのは、全身が白い一護が立っていた。

 

「悪いが、急いでんだ。行くぜ。」

 

「ハッ!テメェに俺が倒せるかよ!一護!!」

 

白と黒の霊圧がぶつかり合った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「狛村隊長、例の物を…。」

 

浦原は狛村に黒い液体の入った小瓶を渡した。

 

「これがアレか…。効果は?」

 

「流石に崩玉は無理ッスけど、崩石なら何とかなりそうッスね。」

 

「わかった。では預かろう。」

 

狛村は受け取った小瓶を懐に入れ、そのまま立ち去ろうとする。

 

「ん?どこかに行くんですか?」

 

「あぁ、儂もダンジョンとやらに行こうと思ってな。戦場になり得る場所をある程度把握しておきたい。貴殿はこれからどうするつもりだ?」

 

「僕はこれから現世に戻って、時間の停止装置を完成させるつもりッス。」

 

「何故そのようなものを作る?」

 

「黒崎さんが帰ってこれる時間が把握出来ないからです。崩石がある限り、何らかの力が作用して黒崎さんの体は老いてないみたいッスけど、黒崎さんが異世界にいる間はあっちの現世でも時間が流れています。」

 

「なるほど、下手をすれば黒崎一護が我々の世界の現世に戻る頃には何十年も経っている可能性があるというわけか。」

 

「はい、涅隊長と協力して装置を作っていますのですぐに出来るはずです。」

 

「それは良い。護廷十三隊でも、1日の休暇が異世界へ行けば数ヶ月休暇をとることも可能というわけか。」

 

「京楽隊長や平子隊長は泣いて喜びそうッスね。」

 

「ふむ、では頼んだぞ浦原。」

 

「はい、お任せください。」

 

浦原は空間に扉を作り、元の世界へと帰って行った。残された狛村もダンジョンへと向かって行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「ねぇー、一護大丈夫かなぁー?」

 

ティオナは、浦原の卍禁太封に抑えられている一護を見つめてながら、隣に立つアイズに尋ねる。

 

「心配だけど、今は一護を信じるしかないよ。」

 

「そうだけどさぁ〜…。やっぱり気になるよ。もう1人の自分を倒すなんて…。」

 

「一護は絶対に諦めたりしない人だから大丈夫。」

 

「……アイズは凄いね。……やっぱり勝てないや…。」

 

「ん?何が?」

 

「ううん、何でもない。それより、今日の夜から見回り始まるんでしょ?今の段階でウルキオラに張り合えるのはアイズと狛村さんしか居ないんだから休んでおきなよ。」

 

「うん…。でも、後少しだけ…。」

 

「わかった。でも、本当に少しだけだよ?」

 

「うん、ありがとう。ティオナ。」

 

「アイズの気持ち分かるもん。」

 

「ティオナ…。」

 

二人はこうしてしばらく一護の様子を見ていた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「貴方…一体何を考えているのかしら?」

 

美の女神であるフレイヤは目の前に立つ全身を白に包んでいるウルキオラに対して質問をする。

 

「何度も言わせるな。貴様と俺の契約には互いに不可侵を結んでいたはずだが?」

 

「私の可愛い子供達や、お気に入りの子に被害が加わるのは流石に見過ごせないわね。」

 

「だったら何だ?」

 

ウルキオラは霊圧を解放すると、フレイヤも神威を少しだけ解放して対抗する。

 

「貴方ごときに御されるほど私は容易くはないわよ?」

 

「いや…想定内だ。」

 

ウルキオラは手に持つ崩石に霊圧を当て、瞬間的に覚醒させる。すると、フレイヤの四肢が見えない何かによって椅子に固定された。

 

「っ!?これは…」

 

「貴様ら神に対する対抗策を考えていないとでも思っていたか?貴様ら神は所詮は自身が戦うわけではない。俺を侮ったな。フレイヤ。」

 

「こんなもの…!!」

 

フレイヤは神威解放するが、何も起こらず、ビクともしなかった。

 

「な、なぜ…?」

 

「その手足についているものは貴様ら神の力をその場に留める力を持っている。貴様らの力が何かの形を成そうとしても、ソレで固定し、阻害する。つまり、貴様ら神はこの俺になす術が無いということだ。もっとも、こんな回りくどいことをする必要など本来は無いのだがな。」

 

「それは…どういうことかしら…?」

 

「簡単な話だ。俺に奥の手があるということだ。」

 

「それは…王虚の閃光のことかしら?残念だけれど、アレでは私たちの存在を消すことは出来ないわ。侮りすぎよ。」

 

「何度も言うが、侮っているのは貴様だ。王虚の閃光など、奥の手ですらない。俺には二段階の変身形態が残されている。」

 

「バカな…そんな筈は…。貴方の記憶にそんなものはでてきていないわ!!」

 

「当然だ。奥の手を簡単に見せるバカはいない。いずれ袂を分かつとわかっている相手には尚更な。」

 

「私の力を妨害したというの…?それこそあり得ない!」

 

「貴様ら神の力と滅却師の力は似た力だと言ったな。」

 

「それが何かしら…?っ!まさか!」

 

「そのまさかだ。貴様ら神の力と虚の力の相性は最悪だ。貴様らの力で俺は存在ごと消されかねん。だが、それは逆も然りだ。貴様ら神の力など、俺の力で貴様の力を妨害するなど容易い。ましてや力を封じている神などゴミも同然だ。お前の敗因はただ1つ。力無しでも俺を御せると思い違ったその驕りだ。」

 

ウルキオラはそう言うと再び崩石に霊圧を当て、覚醒させるとフレイヤを箱の中に完全に封じた。

 

「これで邪魔者は居なくなったか…。」

 

ウルキオラはフレイヤを封じた箱を床に置き、その場を立ち去っていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「んー、困ったなー。」

 

ロキは共有スペースにある椅子に頭を抱えて座っていた。それを見つけたフィンとリヴェリアとレフィーヤはロキに声をかける。

 

「どうしたんだい?ロキ。悩み事かい?」

 

「珍しいものだな。こうして目に見えて困っているのは。」

 

「何かあったんですか?」

 

「それがなぁー、ウルキオラを止めるためにフレイヤに連絡取ろうとしてるんやけど、全然返事がこーへんのや。」

 

「それって、ただ単に行方をくらませただけじゃないのか?」

 

「いいや、あのプライドの高いフレイヤが隠れるなんてありえへん。あの色ボケ、何か企んでるな…。」

 

「厄介だな…。ウルキオラだけではなく、神フレイヤまでもが敵か…。」

 

「いや、それはわからんで?」

 

「どういうことだい?」

 

「怪物祭でフレイヤに会ったとき、あいつとウルキオラの間に信頼関係は無かった。互いに互いを利用してる感じやったで。せやから上手くいけば敵はウルキオラだけに減らせる。その為の布石を打とうと思っとったんやけど…。まさかフレイヤが見つからんとは思わんかったわ。」

 

「今の段階では打つ手なしだな…。我々はせめて少しでも力を付けることに専念しよう。」

 

「それもそうだな。今回は大火力の魔法が必須だ。リヴェリアとレフィーヤには頑張ってもらうからな。」

 

「あぁ、当然だ。」

 

「が、頑張ります!!」

 

こうして、各々は来るべき決戦のために準備へ取り掛かった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。