黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第37話

「今日はどうすっかなぁー…。」

 

「迷ってるなら私たちと行く?」

 

一護の独り言にティオネが反応した。

 

「ふざけんなよ。お前らと一緒に行ったらモンスターと戦えねぇじゃねぇか。」

 

さらにティオナが反応する。

 

「あー!!ソレ酷い!私たちが戦闘マニアみたいじゃない!!」

 

「間違ってねぇだろうが!」

 

「こんな美人になんてこと言うのよ!!」

 

「自分で言うなって言ってんだろ!!」

 

「うっさいわね!!」

 

「んだと!?」

 

「なによ!!」

 

「何をしている?お前たち。」

 

するとそこにリヴェリアがやってきた。

 

「一護が私たちのこと戦闘マニアって言うの!!」

 

「はぁ…全くそんなことはどうでもいいだろう。それより準備は住んでいるのか?」

 

「準備ってなんだよ?」

 

「今日このあとに軽くダンジョンに潜る予定なのだ。」

 

「リヴェリアも行くのか?」

 

「今の口ぶりでわかるだろう?」

 

「今日はねぇー、主要メンバー全員で行くから一護もどう?って話!」

 

「そういうことか。」

 

「それで?どうするんだ一護。私達と共に行くか?」

 

「いや、今日はベルと行くわ。」

 

「今日も。だろ?」

 

「うるせぇよ。じゃあな。」

 

一護はホームを出ていった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「お、ベル!リリ!」

 

一護はバベルの塔の前に到着すると、その場から去ろうとする二人を見つけた。

 

「あ、一護さん!」

 

「一護様!」

 

「どうしたんだよ?今ダンジョンから帰ったのか?」

 

「いえ、リリと待ち合わせをして、これからリリを僕の神様に紹介するんです。」

 

「へぇ…、ベルの主神か。興味あるな。」

 

「なら一護さんも来ますか?」

 

「いいのか?」

 

「はい、是非来てください!」

 

「わかった。サンキューな。」

 

三人はこうきてベルのホームに歩いて行った。

 

「スゲェところに住んでんだな…。」

 

一護たちはベルのホームが視界に入り、そのボロボロさに唖然とした。

 

「アハハ…僕たち貧乏なんですよ。神様!リリと一護さんが来ました!」

 

ベルがホームの扉を開ける。

 

「なにぃ!?ロキのところの子供までくるなんて聞いてないぞ!ベルくん!!」

 

「すぐそこで偶々会いまして…。」

 

「まぁいい、初めまして!僕はベルくんの主神。ヘスティアだ。よろしく頼むよ、子供達。」

 

声のする先には低身長で髪型はツインテール。そして、目を引くほどの巨乳で、露出度の高い服を着ている少女がいた。

 

「リリルカ・アーデです。」

 

「黒崎一護だ。」

 

「君たち2人のことはベルくんからよく聞いてる。今回は君に話があったんだ。」

 

ヘスティアはリリを見つめる。

 

「じゃあ、僕はお茶を入れてきますね。あ、でも2つしかないや…。」

 

「俺の分は別にいいぜ。喉乾いてねぇからな。」

 

「リリも今回は遠慮しておきます。」

 

「すみません、一護さん。リリもごめんね。」

 

「気にすんなよ。」

 

「お気になさらず。」

 

「じゃあ、神様。お茶入れてきますね。」

 

「うん、頼んだよ。ベルくん。」

 

ベルは茶を淹れる為に地下へと降りて行き、それを見届けたヘスティアは仕切り直すように声をだし、話しをした。

 

「さて、今回のことはベルくんから聞いている。」

 

「っ…。」

 

「今回のことってなんだよ?」

 

「今回、そこの娘はベルくんの持ち物を盗む為に、ベルくんを殺しかけたということさ。」

 

「っ!? 本当なのか?」

 

「……はい。」

 

「一護くん、この件に関してはベルくんが許したんだ。」

 

「あぁ、口は出さねぇさ。」

 

「うん、ありがとう。それで…君はどうしてそんな事をしたのかきいてもいいかな?」

 

「…はい。リリは…ソーマ・ファミリアに多額の借金があります…。親は神酒を求めるあまり、レベルに見合わない階層におりて死にました…。ソーマ・ファミリアを抜けるためにお金を貯めていて、今回のような盗賊紛いの事を繰り返していました…。」

 

「…理由はよくわかった。」

 

「どんな罰も受ける所存です…。」

 

「…そうか…なら、僕は君に罰を与えよう。…これから先、ベルくんを支えてやってくれ。もう、他の悪い奴に騙されないようにね。」

 

「っ!?それが…罰?軽すぎます!」

 

「軽いものか。これからあのお人好しの冒険者を支えるんだぞ?逆に大変過ぎると思うけどね。」

 

「ですが…それではリリの気が!」

 

「君が納得のいく罰を与えてどうするんだい?」

 

「っ!」

 

「心配しなくても君はしっかりと罰をうける。君自身の罪悪感によって。だから、これでいい。」

 

「…ありがとうございます。」

 

「一件落着か。」

 

「いや、まださ!」

 

「「え?」」

 

「くれぐれも!僕のベルくんにちょっかいは出さないでくれたまえ!わかったかい!?」

 

「「……。」」

 

すると、扉が開き、ベルがやってくる。

 

「すみません。遅くなっちゃいました。」

 

「良いんだよベルくん。」

 

すると、ヘスティアはベルの腕に抱きつく。

 

「ちょーーーー!!神様!?」

 

「なぁー!!!」

 

「はぁ…。」

 

三者三様の声を出す。

 

「ぼ!く!の!ベルくんがお世話になってるね。」

 

するとリリも対抗するように、ヘスティアが抱き着いた腕の反対側に抱き着く。

 

「なっ!!」

 

「ちょ、リリ!?」

 

「…。」

 

「いえいえ、ベル様はわ!た!し!に!いつも優しくして頂いて感謝しています。」

 

2人の視線が交錯し、火花を散らす。そんな中ベルは耐え切れずに大声を出した。

 

「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!」

 

そしてベルは走り去って行った。

 

「「ベルくーん(さまー)!!!」」

 

「ったく…。」

 

一護もベルの後を追うように歩いて外へ出た。

 

「もういねぇ…。多分塔か?」

 

こうして一護はバベルの塔に向かった。すると、そこでベルはアイズと話していた。

 

「何話してんだ?」

 

「い、一護さん!!えっと、あの。」

 

「私がこの子に戦い方を教える。」

 

「お前が!?そんなことできんのかよ?」

 

「出来る。」

 

「おい、ベル。やめるなら今のうちだぜ?」

 

「え、で、でも。折角アイズさんが教えてくれるって言うのなら…。」

 

「ほら、彼もそう言ってる。」

 

「んー…。しょうがねぇか…。」

 

「あ、一護さんもアイズさんに戦い方を教わるのはどうですか?」

 

「俺が?」

 

「そうだ…。一護も一緒に来ればいい。不安なら見てて。」

 

「はぁ…。そうするのが一番安全か…。」

 

「じゃあ、明日の夜から。あそこの城壁の上で待ってる。」

 

「わかりました!」

 

こうして、一護、ベル、アイズの3人で稽古をすることになった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

夜になり、ベルよりも早く集合場所についた一護とアイズは、稽古内容について話していた。

 

「それで?お前はベルをどうやって鍛える気だ?」

 

「そんなの簡単、見本を見せればいい。」

 

「どうやって?」

 

「私と戦う。」

 

「ベルが死ぬわ!!」

 

「ちゃんと手加減するよ?」

 

「お前は手加減してもヤバイだろうが!要するにお前…何も考えてねぇのか。」

 

「……。」

 

するとそこに、ベルがやってくる。

 

「お待たせしてすみません!!」

 

「いや、平気。」

 

「心配すんな。」

 

「えと、初めは何をすれば?」

 

「私と戦う。」

 

「はぁ…。」

 

一護は黙って隅へ移動する。アイズは剣を地面に刺し、鞘を使って構えを取る。その瞬間に空気が変わり、ベルは咄嗟にナイフを抜いた。

 

「うん、そう。今君が反応したみたいに、戦いの中で色んなことを感じて。そうすれば、戦い方は嫌でも身につく。」

 

「くっ…。」

 

ベルはアイズに気圧され、ずるずると下がって行く。

 

「君は臆病だね。身を守る為に臆病でいるのは大切なことだと思う。だけど、君はそれ以外にも、何かに怯えてる。」

 

「っ!」

 

ベルはその言葉に反応し、アイズに斬りかかるが、簡単にカウンターを受けた。アイズはベルがヨロケている間にベルの背後へと回り込む。

 

「自棄になっちゃダメ。死角を作っちゃダメ。視野を…広く!」

 

アイズはベルに突きを放ち、ベルはまたもやヨロケる。そして再びアイズがベルに襲い掛かる。一護は隅で訓練を見ていた。

 

(ベルの奴…完全に呑まれてる…。動きが単調すぎだ…ん?躱したか!って馬鹿!気を抜くな!)

 

ベルはアイズに手痛い一撃を喰らい、意識を失った。

 

「あっ…。」

 

「……おい。」

 

「……。」

 

「手加減しろって言ったじゃねぇか…。」

 

「いや、言ってない。私に手加減ができるのか?って言った。」

 

「屁理屈言うな。どうすんだよ…?」

 

「……どうしよう?」

 

「はぁー…。取り敢えず、持ってきたタオルを枕にして寝させとくか…。」

 

一護はタオルを畳んで厚みを出し、ベルを仰向けにして頭の下に入れる。

 

「んで?どうすんだよ?まだ開始五分だぞ?」

 

「……ごめんなさい…。」

 

「それはベルに言えよ。」

 

「今日はこれで終いだな。」

 

「まって…。」

 

ベルを抱えようと一護が腰を下ろした瞬間にアイズが呼び止める。しかし、アイズは中々次の言葉を紡ごうとしない。

 

「…?どうした?」

 

「えっと…。一護って、あのエルフの店員さんと付き合ってるの?」

 

「はい!?何だよいきなり!?」

 

「良いから答えて。」

 

「いや、付き合ってねぇけど…。」

 

「本当?」

 

「あ、あぁ、本当だ。」

 

「本当に本当?」

 

「本当だって、どうしたんだよ?」

 

「ううん、別に。何となく聞いてみただけ。それより、私と模擬戦しよ?」

 

「はぁ…。お前も、って言うか。お前が一番戦闘馬鹿だな。」

 

一護はそう言いながら、背中の斬月を包帯を解かずに手に持つ。

 

「今日は剣を使ってくれるの?」

 

「まぁな、お前は強いからな。」

 

「お世辞は要らない。まだ一護に一撃も入れられてない。」

 

「別に気にすんなよ。お前は相当強いぜ。」

 

「駄目、一護は絶対に私が倒す。」

 

「何のためにだ?」

 

「強くなるため。」

 

「俺もお前と同じで言葉で教えるのは苦手だからよ。それじゃあ強くなれないって行動で教えてやるよ。」

 

「やれるものなら…!!」

 

 

テンペスト エアリエル

 

 

アイズは地面に刺してある剣を素早く右手に取り、魔法で剣を覆い、鋒を一護に向けて襲い掛かる。

 

「ベルにあれだけ言ってた割に、お前が読まれやすい攻撃してどうすんだっ!」

 

一護はアイズの剣を左から右へ薙ぎ払う。するとアイズは簡単に剣を離し、右手に覆っていた魔法を左手に移し、一護を殴り飛ばす。

 

「ぐっ!」

 

一護はそのまま10m吹き飛ばされ、受け身を取る。

 

「…当たった。私は間違ってない。今まで当たらなかった攻撃が当たった。私は強くなってる。そして、これからももっと強くなる。」

 

アイズの目には決意が宿っていた。

 

(ヤベェな…。今のは瞬歩を使ってでも避けるべきだった。油断したか…いや、今のは駆け引きに負けたんだ…。ベルに教えるってのはアイズのプラスにもなってたのか。っ!!!)

 

「一護。もう一回やろ?」

 

「悪いが、もう終わりだ。」

 

一護は斬月の包帯を解き、闇に向かって剣を向けて問いかける。

 

「誰だ?隠れてねぇで出てこいよ。」

 

すると、闇の中からどんどんと近づいて来る気配がした。そして、街灯の元に照らされた姿を見て、一護は驚く。

 

「あんたは!狛村さん!!」

 

「黒崎一護か。漸く見つける事が出来たか。」

 

そこに居るのは柴犬の顔と巨大な身体を持つ、護廷十三隊七番隊隊長狛村左陣がいた。

 

「何であんたが!?」

 

「なに、浦原喜助が私が適任だと言って、貴殿の援助を依頼したのだ。元柳斎殿から許可を頂き、5日ほど前に着いていたのだが、浦原喜助が貴殿とは全く別の場所に穿界門を開いてしまってな。あちこちを飛び回り、漸く貴殿の霊圧が感じられるほど近付くことが出来たという事だ。」

 

「あんたも苦労してんだな……。」

 

「い、一護…。この犬は…?」

 

「この人は俺の知り合いの狛村さんだ。狛村さん、こいつはアイズだ。」

 

「この娘が浦原の言っていた候補の1人だな。」

 

「候補?」

 

「あ?ちょ…候補ってなんだよ?」

 

一護は狛村の側に近寄り、小さな声で狛村に尋ねる。狛村は一護の耳に顔を寄せ、同じく小さな声で話す。

 

「それはもちろん嫁の候補だと聞いている。」

 

「はぁー!!!?」

 

「浦原が言うには、今の所、ラウラ・ボーデヴィッヒ、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、司波深雪、桜井穂波、アイズ・ヴァレンシュタイン、リュー・リオンと聞き及んでいる。」

 

「候補が多過ぎる!!ってかあの人こっちに来てからずっと見てたのかよ!!?」

 

「男児たる者いつまでも保留というわけにはいかんぞ。」

 

「決められるか!!」

 

「一護…?」

 

「あ、いや!何でもない!」

 

「それで、狛村さん。これからどうするんだよ?」

 

「取り敢えず、貴殿がここにいる限りは儂もいることになるだろう。」

 

「ならロキ・ファミリアに来ればいい。」

 

「大丈夫なのか?アイズ。」

 

「うん、一護の知り合いなら平気だと思う。」

 

「じゃあ、取り敢えずベルを送り届けてから行くか。」

 

「ふむ、よろしく頼む。」

 

こうして3人はベルを送り届け、ロキ・ファミリアのホームへと向かった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「なるほど、確かに一護の記憶の中におったな。」

 

一護と狛村はロキの部屋におり、そこにはロキ以外にリヴェリアとフィンもいた。狛村は事情を知っているような3人の口振りを疑問に思い、一護に尋ねる。

 

「黒崎一護。彼らには事情を話しているのか?」

 

「あぁ、記憶を覗けるらしくてよ。流石神様って感じだ。」

 

「成る程。理解した。」

 

「ほんで、アンタが来たっちゅうことは一護が帰るっちゅうことか?」

 

「いや、そうではない。我ら護廷十三隊と黒崎一護が世界を跨ぐとき、使った道が異なっている。それぞれの道を通らなければ帰ることは出来ない。」

 

「なるほどなー。まぁ、それならええんや。気にせず泊まっていき。ただ、いくら色んな種族がおったちゅーても、あんたのその格好は目立ち過ぎる。兜でも被っとき。」

 

「では仕方ない。」

 

狛村はいつの間にかその手に持っていた顔の全体を覆う兜を被る。

 

「なんや、ええのがあるやないか。」

 

「あぁ。」

 

こうして、狛村はロキ・ファミリアに滞在することとなった。


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