「今日はどうすっかなぁー…。」
「迷ってるなら私たちと行く?」
一護の独り言にティオネが反応した。
「ふざけんなよ。お前らと一緒に行ったらモンスターと戦えねぇじゃねぇか。」
さらにティオナが反応する。
「あー!!ソレ酷い!私たちが戦闘マニアみたいじゃない!!」
「間違ってねぇだろうが!」
「こんな美人になんてこと言うのよ!!」
「自分で言うなって言ってんだろ!!」
「うっさいわね!!」
「んだと!?」
「なによ!!」
「何をしている?お前たち。」
するとそこにリヴェリアがやってきた。
「一護が私たちのこと戦闘マニアって言うの!!」
「はぁ…全くそんなことはどうでもいいだろう。それより準備は住んでいるのか?」
「準備ってなんだよ?」
「今日このあとに軽くダンジョンに潜る予定なのだ。」
「リヴェリアも行くのか?」
「今の口ぶりでわかるだろう?」
「今日はねぇー、主要メンバー全員で行くから一護もどう?って話!」
「そういうことか。」
「それで?どうするんだ一護。私達と共に行くか?」
「いや、今日はベルと行くわ。」
「今日も。だろ?」
「うるせぇよ。じゃあな。」
一護はホームを出ていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「お、ベル!リリ!」
一護はバベルの塔の前に到着すると、その場から去ろうとする二人を見つけた。
「あ、一護さん!」
「一護様!」
「どうしたんだよ?今ダンジョンから帰ったのか?」
「いえ、リリと待ち合わせをして、これからリリを僕の神様に紹介するんです。」
「へぇ…、ベルの主神か。興味あるな。」
「なら一護さんも来ますか?」
「いいのか?」
「はい、是非来てください!」
「わかった。サンキューな。」
三人はこうきてベルのホームに歩いて行った。
「スゲェところに住んでんだな…。」
一護たちはベルのホームが視界に入り、そのボロボロさに唖然とした。
「アハハ…僕たち貧乏なんですよ。神様!リリと一護さんが来ました!」
ベルがホームの扉を開ける。
「なにぃ!?ロキのところの子供までくるなんて聞いてないぞ!ベルくん!!」
「すぐそこで偶々会いまして…。」
「まぁいい、初めまして!僕はベルくんの主神。ヘスティアだ。よろしく頼むよ、子供達。」
声のする先には低身長で髪型はツインテール。そして、目を引くほどの巨乳で、露出度の高い服を着ている少女がいた。
「リリルカ・アーデです。」
「黒崎一護だ。」
「君たち2人のことはベルくんからよく聞いてる。今回は君に話があったんだ。」
ヘスティアはリリを見つめる。
「じゃあ、僕はお茶を入れてきますね。あ、でも2つしかないや…。」
「俺の分は別にいいぜ。喉乾いてねぇからな。」
「リリも今回は遠慮しておきます。」
「すみません、一護さん。リリもごめんね。」
「気にすんなよ。」
「お気になさらず。」
「じゃあ、神様。お茶入れてきますね。」
「うん、頼んだよ。ベルくん。」
ベルは茶を淹れる為に地下へと降りて行き、それを見届けたヘスティアは仕切り直すように声をだし、話しをした。
「さて、今回のことはベルくんから聞いている。」
「っ…。」
「今回のことってなんだよ?」
「今回、そこの娘はベルくんの持ち物を盗む為に、ベルくんを殺しかけたということさ。」
「っ!? 本当なのか?」
「……はい。」
「一護くん、この件に関してはベルくんが許したんだ。」
「あぁ、口は出さねぇさ。」
「うん、ありがとう。それで…君はどうしてそんな事をしたのかきいてもいいかな?」
「…はい。リリは…ソーマ・ファミリアに多額の借金があります…。親は神酒を求めるあまり、レベルに見合わない階層におりて死にました…。ソーマ・ファミリアを抜けるためにお金を貯めていて、今回のような盗賊紛いの事を繰り返していました…。」
「…理由はよくわかった。」
「どんな罰も受ける所存です…。」
「…そうか…なら、僕は君に罰を与えよう。…これから先、ベルくんを支えてやってくれ。もう、他の悪い奴に騙されないようにね。」
「っ!?それが…罰?軽すぎます!」
「軽いものか。これからあのお人好しの冒険者を支えるんだぞ?逆に大変過ぎると思うけどね。」
「ですが…それではリリの気が!」
「君が納得のいく罰を与えてどうするんだい?」
「っ!」
「心配しなくても君はしっかりと罰をうける。君自身の罪悪感によって。だから、これでいい。」
「…ありがとうございます。」
「一件落着か。」
「いや、まださ!」
「「え?」」
「くれぐれも!僕のベルくんにちょっかいは出さないでくれたまえ!わかったかい!?」
「「……。」」
すると、扉が開き、ベルがやってくる。
「すみません。遅くなっちゃいました。」
「良いんだよベルくん。」
すると、ヘスティアはベルの腕に抱きつく。
「ちょーーーー!!神様!?」
「なぁー!!!」
「はぁ…。」
三者三様の声を出す。
「ぼ!く!の!ベルくんがお世話になってるね。」
するとリリも対抗するように、ヘスティアが抱き着いた腕の反対側に抱き着く。
「なっ!!」
「ちょ、リリ!?」
「…。」
「いえいえ、ベル様はわ!た!し!に!いつも優しくして頂いて感謝しています。」
2人の視線が交錯し、火花を散らす。そんな中ベルは耐え切れずに大声を出した。
「ごめんなさぁぁぁぁぁぁぁい!!!」
そしてベルは走り去って行った。
「「ベルくーん(さまー)!!!」」
「ったく…。」
一護もベルの後を追うように歩いて外へ出た。
「もういねぇ…。多分塔か?」
こうして一護はバベルの塔に向かった。すると、そこでベルはアイズと話していた。
「何話してんだ?」
「い、一護さん!!えっと、あの。」
「私がこの子に戦い方を教える。」
「お前が!?そんなことできんのかよ?」
「出来る。」
「おい、ベル。やめるなら今のうちだぜ?」
「え、で、でも。折角アイズさんが教えてくれるって言うのなら…。」
「ほら、彼もそう言ってる。」
「んー…。しょうがねぇか…。」
「あ、一護さんもアイズさんに戦い方を教わるのはどうですか?」
「俺が?」
「そうだ…。一護も一緒に来ればいい。不安なら見てて。」
「はぁ…。そうするのが一番安全か…。」
「じゃあ、明日の夜から。あそこの城壁の上で待ってる。」
「わかりました!」
こうして、一護、ベル、アイズの3人で稽古をすることになった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
夜になり、ベルよりも早く集合場所についた一護とアイズは、稽古内容について話していた。
「それで?お前はベルをどうやって鍛える気だ?」
「そんなの簡単、見本を見せればいい。」
「どうやって?」
「私と戦う。」
「ベルが死ぬわ!!」
「ちゃんと手加減するよ?」
「お前は手加減してもヤバイだろうが!要するにお前…何も考えてねぇのか。」
「……。」
するとそこに、ベルがやってくる。
「お待たせしてすみません!!」
「いや、平気。」
「心配すんな。」
「えと、初めは何をすれば?」
「私と戦う。」
「はぁ…。」
一護は黙って隅へ移動する。アイズは剣を地面に刺し、鞘を使って構えを取る。その瞬間に空気が変わり、ベルは咄嗟にナイフを抜いた。
「うん、そう。今君が反応したみたいに、戦いの中で色んなことを感じて。そうすれば、戦い方は嫌でも身につく。」
「くっ…。」
ベルはアイズに気圧され、ずるずると下がって行く。
「君は臆病だね。身を守る為に臆病でいるのは大切なことだと思う。だけど、君はそれ以外にも、何かに怯えてる。」
「っ!」
ベルはその言葉に反応し、アイズに斬りかかるが、簡単にカウンターを受けた。アイズはベルがヨロケている間にベルの背後へと回り込む。
「自棄になっちゃダメ。死角を作っちゃダメ。視野を…広く!」
アイズはベルに突きを放ち、ベルはまたもやヨロケる。そして再びアイズがベルに襲い掛かる。一護は隅で訓練を見ていた。
(ベルの奴…完全に呑まれてる…。動きが単調すぎだ…ん?躱したか!って馬鹿!気を抜くな!)
ベルはアイズに手痛い一撃を喰らい、意識を失った。
「あっ…。」
「……おい。」
「……。」
「手加減しろって言ったじゃねぇか…。」
「いや、言ってない。私に手加減ができるのか?って言った。」
「屁理屈言うな。どうすんだよ…?」
「……どうしよう?」
「はぁー…。取り敢えず、持ってきたタオルを枕にして寝させとくか…。」
一護はタオルを畳んで厚みを出し、ベルを仰向けにして頭の下に入れる。
「んで?どうすんだよ?まだ開始五分だぞ?」
「……ごめんなさい…。」
「それはベルに言えよ。」
「今日はこれで終いだな。」
「まって…。」
ベルを抱えようと一護が腰を下ろした瞬間にアイズが呼び止める。しかし、アイズは中々次の言葉を紡ごうとしない。
「…?どうした?」
「えっと…。一護って、あのエルフの店員さんと付き合ってるの?」
「はい!?何だよいきなり!?」
「良いから答えて。」
「いや、付き合ってねぇけど…。」
「本当?」
「あ、あぁ、本当だ。」
「本当に本当?」
「本当だって、どうしたんだよ?」
「ううん、別に。何となく聞いてみただけ。それより、私と模擬戦しよ?」
「はぁ…。お前も、って言うか。お前が一番戦闘馬鹿だな。」
一護はそう言いながら、背中の斬月を包帯を解かずに手に持つ。
「今日は剣を使ってくれるの?」
「まぁな、お前は強いからな。」
「お世辞は要らない。まだ一護に一撃も入れられてない。」
「別に気にすんなよ。お前は相当強いぜ。」
「駄目、一護は絶対に私が倒す。」
「何のためにだ?」
「強くなるため。」
「俺もお前と同じで言葉で教えるのは苦手だからよ。それじゃあ強くなれないって行動で教えてやるよ。」
「やれるものなら…!!」
テンペスト エアリエル
アイズは地面に刺してある剣を素早く右手に取り、魔法で剣を覆い、鋒を一護に向けて襲い掛かる。
「ベルにあれだけ言ってた割に、お前が読まれやすい攻撃してどうすんだっ!」
一護はアイズの剣を左から右へ薙ぎ払う。するとアイズは簡単に剣を離し、右手に覆っていた魔法を左手に移し、一護を殴り飛ばす。
「ぐっ!」
一護はそのまま10m吹き飛ばされ、受け身を取る。
「…当たった。私は間違ってない。今まで当たらなかった攻撃が当たった。私は強くなってる。そして、これからももっと強くなる。」
アイズの目には決意が宿っていた。
(ヤベェな…。今のは瞬歩を使ってでも避けるべきだった。油断したか…いや、今のは駆け引きに負けたんだ…。ベルに教えるってのはアイズのプラスにもなってたのか。っ!!!)
「一護。もう一回やろ?」
「悪いが、もう終わりだ。」
一護は斬月の包帯を解き、闇に向かって剣を向けて問いかける。
「誰だ?隠れてねぇで出てこいよ。」
すると、闇の中からどんどんと近づいて来る気配がした。そして、街灯の元に照らされた姿を見て、一護は驚く。
「あんたは!狛村さん!!」
「黒崎一護か。漸く見つける事が出来たか。」
そこに居るのは柴犬の顔と巨大な身体を持つ、護廷十三隊七番隊隊長狛村左陣がいた。
「何であんたが!?」
「なに、浦原喜助が私が適任だと言って、貴殿の援助を依頼したのだ。元柳斎殿から許可を頂き、5日ほど前に着いていたのだが、浦原喜助が貴殿とは全く別の場所に穿界門を開いてしまってな。あちこちを飛び回り、漸く貴殿の霊圧が感じられるほど近付くことが出来たという事だ。」
「あんたも苦労してんだな……。」
「い、一護…。この犬は…?」
「この人は俺の知り合いの狛村さんだ。狛村さん、こいつはアイズだ。」
「この娘が浦原の言っていた候補の1人だな。」
「候補?」
「あ?ちょ…候補ってなんだよ?」
一護は狛村の側に近寄り、小さな声で狛村に尋ねる。狛村は一護の耳に顔を寄せ、同じく小さな声で話す。
「それはもちろん嫁の候補だと聞いている。」
「はぁー!!!?」
「浦原が言うには、今の所、ラウラ・ボーデヴィッヒ、セシリア・オルコット、シャルロット・デュノア、司波深雪、桜井穂波、アイズ・ヴァレンシュタイン、リュー・リオンと聞き及んでいる。」
「候補が多過ぎる!!ってかあの人こっちに来てからずっと見てたのかよ!!?」
「男児たる者いつまでも保留というわけにはいかんぞ。」
「決められるか!!」
「一護…?」
「あ、いや!何でもない!」
「それで、狛村さん。これからどうするんだよ?」
「取り敢えず、貴殿がここにいる限りは儂もいることになるだろう。」
「ならロキ・ファミリアに来ればいい。」
「大丈夫なのか?アイズ。」
「うん、一護の知り合いなら平気だと思う。」
「じゃあ、取り敢えずベルを送り届けてから行くか。」
「ふむ、よろしく頼む。」
こうして3人はベルを送り届け、ロキ・ファミリアのホームへと向かった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「なるほど、確かに一護の記憶の中におったな。」
一護と狛村はロキの部屋におり、そこにはロキ以外にリヴェリアとフィンもいた。狛村は事情を知っているような3人の口振りを疑問に思い、一護に尋ねる。
「黒崎一護。彼らには事情を話しているのか?」
「あぁ、記憶を覗けるらしくてよ。流石神様って感じだ。」
「成る程。理解した。」
「ほんで、アンタが来たっちゅうことは一護が帰るっちゅうことか?」
「いや、そうではない。我ら護廷十三隊と黒崎一護が世界を跨ぐとき、使った道が異なっている。それぞれの道を通らなければ帰ることは出来ない。」
「なるほどなー。まぁ、それならええんや。気にせず泊まっていき。ただ、いくら色んな種族がおったちゅーても、あんたのその格好は目立ち過ぎる。兜でも被っとき。」
「では仕方ない。」
狛村はいつの間にかその手に持っていた顔の全体を覆う兜を被る。
「なんや、ええのがあるやないか。」
「あぁ。」
こうして、狛村はロキ・ファミリアに滞在することとなった。