黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

36 / 48
第36話

「んー、一護帰ってけーへんなぁ。誰か知らん?」

 

怪物祭の日の夜、ロキ・ファミリアの面々は共同スペースで一護について話していた。

 

「どーせどっかに遊びに行ってんじゃないの?」

 

「確かに、それかもうこの街からでてったのかもよ?言ってたでしょう?突然消えるかもって。」

 

「っ…。」

 

その言葉を聞いた瞬間アイズがピクリと反応した。

 

「どうしたんですか?アイズさん。」

 

「ううん、何でもないよ。」

 

「何か彼に用があるのかい?ロキ。」

 

「今日のうちに話したいことがあったんやけど帰ってけーへんかったから。」

 

「まぁ、ダンジョンに行ったとしても、彼がそう簡単にやられるとは考えにくい、ティオナの言った通り遊びに行っているのかも知れないしな。」

 

「んー、明日までに帰ってこんかったら探しに行ってや。」

 

ロキはそう言い、皆が頷いた。しかし翌日の夜になっても一護は帰ってこなかった。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「う…。くそ、朝か…。昨日は一体…っ!!あのフードの野郎!」

 

一護は立ち上がり周りを見渡す。

 

「ここは…まぁ、帰り道の途中だな…。身体中いてぇ…。斬月は…あったあった。ふぅー…。帰るか…。」

 

一護はホームに帰るために歩き出し、途中でベルにあった。

 

「あ!一護さーん!!」

 

「べるじゃねぇか。これからダンジョンか?」

 

「はい!一護さんはどこに?」

 

「ちょっと用があってよ、これから帰るところだ。」

 

「そうなんですか?ならこれからダンジョンに行きませんか?」

 

「んー…。まぁ、良いぜ。」

 

こうして一護はダンジョンに潜り、帰りが夜になった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

一護がダンジョンからホームに向かうと、反対からアイズが来た。

 

「あ……。」

 

「何やってんだ?こんな時間からダンジョンに入んのかよ?」

 

「違う。一護を探してた。」

 

「ん?俺?」

 

「昨日すぐ帰るって言ったのに、帰って来なかったから。」

 

「あぁー…悪い悪い。ちょっとな。」

 

「ロキが色々一護に聞きたがっていたよ。」

 

「そうだな、とっとと帰るか。」

 

こうして一護とアイズはホームへと戻った。ホームに入ると、共有スペースでロキが座っていた。

 

「一護ぉー。遅いで。」

 

「悪い、ちょっとな。」

 

「まぁ、ええわ。アンタに聞きたいことあんねん。」

 

「昨日のことだろ。」

 

「そーや、ま、ちょっと部屋まで来てくれへんか?」

 

「わかった。」

 

ロキは部屋へ向かい、一護とアイズはその後をついていった。

 

「よし、ってアイズたん。アイズたんはみんなに一護が見つかったって報らせに行ってきてや。」

 

「え…。でも…」

 

「ええから、ほら!」

 

ロキはアイズの背中を押して外に押しやった。

 

「ほな一護。入り。」

 

「あぁ、邪魔するぜ。それで?話しって具体的に何話せば良いんだよ?」

 

「別に話す必要はあらへん。覗かせてもらうわ。」

 

「覗くって…、記憶をか?」

 

「そーや、不都合あるか?」

 

「いや、まぁ、驚かねぇでくれよ。」

 

「アホ、もう既に驚いとるわ。昨日の戦闘で使われたウルキオラの砲撃…。あれはマズイわ。あんなものが下界の子供達に使えてええもんやない。あんなん平気な顔して放ってるなんて頭おかしいわ。それにアンタは微塵も驚いてへんかった…。寧ろ、アンタはあれを何度も受けた事があるように感じた。せやなかったら、あの時アンタはウチら3人のこと助けられんかったはずや。」

 

「あぁ、あんなの平気で使う奴ばっかだったぜ。俺が戦ってきた奴らは。」

 

「難儀やなぁー…。仰向けで横になって目閉じ、覗くで。」

 

一護は言われた通り、ベッドの上に仰向けで寝そべり、目を閉じる。ロキは一護の額にで乗せて集中する。

ロキは一護が小さい頃に母親を亡くしたこと。高校生になって死神の力を手に入れたこと。友を助ける為に死神の本拠地尸魂界に乗り込んだこと。朽木白哉を倒したこと。藍染惣右介が死神を裏切ったことを見て、集中を解いた。

 

「ん?まだ全部終わってねぇだろ?」

 

「アホ、いくらウチかて疲れるわ!一護。お前この世界の人間とちゃうやろ?」

 

「…あぁ、そうだ。」

 

「やっぱな…。通りでよう知らん力な訳や。ウルキオラもアンタの世界の住人やな?」

 

「あぁ、もう少し先まで見たら分かる。」

 

「なぁ、アンタ、何で虚の力を持ってるや?」

 

「多分だけど…。母親が虚に襲われた事があるからだと思う。」

 

「なるほど…。まぁ、これは扱いに困る事やなぁ。」

 

「別に他の奴らに言ってくれて構わねぇぜ。」

 

「アイズが心配やな…。」

 

「なんでだよ?」

 

「それはアンタは知らんでええねん。」

 

「なんだよそれ?」

 

「あぁー!!今日は疲れた!とっとと出て行き!」

 

ロキは一護を立たせて背中を押し、部屋の外へと出す。

 

「あ、おい!ちょっと!!」

 

バタン!

 

「ったく…。」

 

一護はそのまま自室へと戻った。そしてロキは椅子に深く座り、らしくない溜息をついた。

 

「はぁ〜…。一護が消えたらアイズが悲しむやろなぁ…。フィンとリヴェリアにだけは一護の記憶見せとこうかなぁ…。二人に話したとして、アイズたんにはどう誤魔化すかなぁ…」

 

ロキはベッドにうつ伏せた。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「一護が………。」

 

「まさか異世界の人間だったとはな……。」

 

後日、ロキはフィンとリヴェリアに一護の記憶を見せた。

 

「虚…。この世界にいたらとんでもないことになるな……。」

 

「私の魔法が奴らに効くのか……?」

 

「まぁ、落ち着き、今は別に来たりしてへん。」

 

「だが、一護が来ているということはいつ来てもおかしくないということだ。」

 

「確かに……。とりあえず知識のないものだけで話し合うのは無意味だ。一護も交えて話し合いしよう。」

 

「そうだな…。」

 

こうして三人は一護を呼び、ロキの部屋で話し合った。

 

「それで、どうなんだ?虚の心配はないのか?」

 

フィンは一護に尋ねた。

 

「虚の心配はねぇ。」

 

「何故そう言い切れる?」

 

「コレを見てくれ。」

 

一護は着物を崩し、胸に埋め込まれた崩石を見せる。

 

「それは崩玉!!!」

 

「何故一護がもっている!?」

 

「これは崩玉じゃねぇ。それよりも下位のもんだ。これは崩石だ。今は今までにないくらい安定してるから心配すんな。」

 

「崩石?」

 

「あぁ、崩玉に似たものだ。ただ、効果は崩玉とほとんど変わらねぇ。下手に扱えば、世界をひっくり返る可能性だってある。」

 

「せやろーな…。あかんわソレ。」

 

「ロキ…何かわかるのかい?」

 

「その存在感、圧迫感、尋常やない。神であるウチを押しのけようとしとる…。ウチの存在を認めん気か…。一護。それは誰にも見せんとき。フィンもリヴェリアもや。このこと誰にも言うんやないで?」

 

「分かった。」

 

「了解した。」

 

「あぁ。」

 

「とりあえず、直ぐに遠征があるんやろ?今はそっちに集中しーや。」

 

「そうなのか?」

 

「あぁ、君は中々帰っている時間が読めなかったから話していなかったね。僕たちに初めて会ったときのことを覚えているかい?」

 

「あぁ、ミノタウロスを退治したときのことだろ?」

 

「あぁ、あの時僕たちは遠征の帰りでね、その時に厄介なモンスターがいたんだよ。」

 

「厄介なモンスターだと?」

 

「あぁ、僕たちは下層の素材を回収するクエストを受けていたんだけど、イレギュラーモンスターがいたんだ。溶解液を吐くモンスター。」

 

「溶解液か…。まぁ、俺の斬月には効果ねぇだろうけどな。」

 

「それは頼もしいな。それで、そのモンスターの調査を行いたいんだ。もしかしたら、今のダンジョンの生態系が変わっているかもしれないからね。とりあえず、そのモンスターについて説明するよ。モンスターの姿は芋虫に似ている。そいつの溶解液を浴びると結構派手に溶けるんだ。僕たちの武器もそのとき結構やられてね。取り敢えず魔法で攻撃できるリヴェリアとレフィーヤ、魔法を体に纏って溶解液に触れずに倒すことの出来るアイズ。そして、魔法の特性を吸収出来るベート。そして、アイズやロキから聞いた斬撃を放つことの出来る君。今言った5人が今回の主要メンバーになると思う。」

 

「まぁ、そりゃ分かったけどよ。別に俺1人でも平気だぜ?」

 

「それは分かるが、できるだけ君に頼る癖は付けたくなくてね。」

 

「なるほど。そういうことか。」

 

「あぁ、だから申し訳ないけど、今回は僕たちに合わせて進んで欲しい。」

 

「あぁ、わかった。いつ行くんだ?」

 

「今月末だ。」

 

「マジかよ。案外すぐじゃねぇか…。」

 

「仕方ないだろう。お前がその話をするときに限って居なかったのが悪い。」

 

「へいへい、それで?なんか特別に必要なものとかあんのかよ?」

 

「いや、お前には帰りにドロップアイテムや魔石を持ってもらう。なるべく私用の荷物は置いていくようにしてくれ。」

 

「あぁ、わかった。」

 

じゃあ、俺はこれからダンジョンに行ってくる。

 

「なんや?また行くんか。」

 

「あぁ、ベルも昨日これぐらいの時間に行くって言ってたからよ。」

 

「まーたドチビんとこの子供かいな。」

 

「別にいいだろ?じゃあ行ってくるぜ。

 

「はいよー。」

 

「心配要らないだろうけど気を付けてね。」

 

「今日はちゃんと帰るんだぞ?」

 

「わかってるっつの!」

 

一護はそのままダンジョンへと出かけて行った。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

一護はダンジョンの前でベルを発見した。

 

「おい!ベル!」

 

「あ、一護さん!」

 

「よぉ、これから入るのか?」

 

「はい!」

 

「ベル様。こちらの方は?」

 

「あぁ、この人はロキ・ファミリアの黒崎一護さん。」

 

「初めまして、この度はベル様のサポーターを務めさせて頂く、リリルカ・アーデと申します。どうぞリリと呼んでください。」

 

「あぁ、よろしくな。リリ。」

 

「一護さんもこれから入るんですよね?」

 

「あぁ、それじゃあ行こうぜ。」

 

「はい!」

 

こうして三人はダンジョンへと入った。一護とベルの2人は次々にモンスターを倒し、リリが魔石を拾っていく。

 

「驚きました!一護様はとてもお強いのですね!」

 

「お、おい。様付けは勘弁してくれよ。」

 

「いえ、なりません!サポーターと冒険者の区別は付けなければはりません!!」

 

「お、おう…。わかった。」

 

「やっぱり一護さんがいるとかなりはかどる気がします。」

 

「そうか?んー、でもここのモンスターじゃ少し物足りねえんだよな。」

 

「でも、エイナさんからこれ以上下に行くのは止められてるし…。」

 

「ま、仕方ねえか。なら、もう少し狩ろうぜ。」

 

一護たちはそのまましばらくモンスターを狩り続けた。

 

「はぁー…。疲れたー!」

 

「おい、とっとと換金行ってこいよ。」

 

「はい…わかりましたー。」

 

ベルとリリは魔石を換金するとホクホク顔で戻ってきた。

 

「一護さん!!やりました!!今迄で一番稼げましたよ!!」

 

「こんなに沢山換金できたのは初めてです!!リリもおどろきました!!」

 

「良かったじゃねえか。なら早く2人で分けちまえよ。」

 

「はい!!」

 

「え? 一護さまは?」

 

「俺は要らねえよ。」

 

「ですが、今回一番敵を倒したのは一護様です!」

 

「別に要らねえって。金なら1人で潜ってる時に死ぬほど稼いでるし。」

 

「ですが…。」

 

「無駄だよリリ。」

 

「ベル様…。」

 

「僕も前はずっと言ってたんだけど、一度も貰ってくれた事がないからね。」

 

「そういうことだ。オメェらで分けろよ。」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 

「礼なんていいって。取り敢えず飯でも食いに行こうぜ。」

 

「そうですね!豊饒の女主人に行きますか?」

 

「そうだな、ここんところ行ってなかったし。行こうぜ。」

 

「「はい!」」

 

三人は豊饒の女主人に向かい、店に入った。

 

「ん?おめぇらここに来てたのか。」

 

一護が店に入ると、ベート、ティオネ、ティオナ、レフィーヤ、アイズがいた。

 

「あ、一護じゃん!!」

 

「ダンジョンからもどってきたの?」

 

「お疲れ様です。」

 

「ん。」

 

するとベートは赤い顔をして一護にからむ。

 

「テメェー。んな雑魚どもとつるんでんのかよー。ギャハハハ。」

 

「グ、酒臭え!ったく。酔ってんのかよ…。」

 

「酔ってねえー、酔ってねえーぞ俺ァ!」

 

「ベ、ベートさん!!」

 

「悪いな。ベル、リリ。こいつ根は悪くねえんだ。口は悪いけど。」

 

「い、いえ。大丈夫です…。」

 

「り、リリも…。」

 

「んじゃ、あっちのカウンターで食うか。」

 

「あれー?一護こっちで食べないのー?」

 

「お前らと食ったらうるせえじゃねぇか。」

 

「まぁ、そういうことにしておいてあげるわ。」

 

一護たち三人はカウンターの方へと向かっていった。すると、アイズがティオネに近寄り、尋ねる。

 

「そういうことって、どういうこと?」

 

「ん?あぁ、知らないの?一護。ここの店員に結構ご執心なのよ。まぁ、本人は否定してるんだけどね。」

 

「一護が…?」

 

「意外そうな顔してるわね。一護だって団長に比べたらそりゃ及ばないけど。中々良い男に部類されると思うわよ?あ、ほら!あの娘!」

 

ティオネはそう言い、一護たちの方を指差す。アイズはその指の先をみると、一護に話し掛けているエルフの店員がいた。

 

「あ、あの人…。」

 

「ん?知り合いだった?」

 

「あの人、怪物祭の時に一護と一緒にいた。」

 

「え!?それじゃあもう確定じゃないの!」

 

「なにが?」

 

「わからないの!?もうあの二人きっとデキてるわよ。」

 

「デキてる?」

 

「鈍いわねぇー、付き合ってるって言ってんのよ。」

 

「え…?」

 

「だってそうでしょう?同じファミリアでもない男女が二人きりで祭りに行くと思う?」

 

「ん……。思わない…。」

 

「残念。アイズ。一護はとられちゃったわね。」

 

「別に……。」

 

「素直じゃないなぁー。」

 

こうしてアイズは飲みまくった。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

「おい…。なんだよこれは…。」

 

一護は食事をを終え、アイズたちの方へ向かうと、そこには顔を真っ赤にして倒れたアイズとベートがいた。

 

「いやぁー…。ベートは知らないけど、いつもは飲まないアイズまで狂ったように飲み始めてね…。こうなっちゃった。」

 

「なっちゃったじゃねぇよ…。どうすんだコレ…。」

 

「一護が運べばいいんじゃない?」

 

「ったく、お前らが運べよ。ステータス的に問題ねぇだろ?」

 

「あー!そういう問題じゃない!」

 

「いいから運びなさい!!」

 

「ったく、わかったよ!!運べばいいんだろう!」

 

「そう、運べばいいのよ。」

 

一護はアイズを背負い、店から出る。

 

「お、おい…。大丈夫かよソレ…。」

 

一護の視線の先には気絶して、サッカーボールの如く蹴り飛ばされながら進んでいくベートがいた。

 

「平気平気。それじゃあアタシたちは先に行くねー!!」

 

「え、でもアイズさんが…」

 

「いいから行くわよレフィーヤ。それじゃあね!」

 

「え、ちょーーー!!」

 

こうして一護とアイズをおいて四人は先に帰っていった。

 

「ったく…先に帰んなよ…。」

 

「ん…。」

 

「ん?起きたか?」

 

「うぅ…あれ?ここは?」

 

「お前、酒普段飲まねぇのに飲んだんだって?」

 

「うん……っ!!!!」

 

アイズは一護に背負われている事に気付き暴れだす。

 

「うお!ちょ!おい!!暴れんな!!」

 

「く…離して!!」

 

「わかった!!わかったから!!」

 

一護はアイズを離すと、アイズはものすごい速さで3m距離をとった。

 

「……!!!」

 

「何もしてねぇよ!!」

 

「………。」

 

「信じやしねぇかよ。まぁいいとっとと行くぞ。」

 

「う、うん……。ねぇ、一護。」

 

「あん?なんだよ?」

 

「う、いや…なんでもない…。」

 

「変なやつだな。」

 

こうして二人は無言のまま帰った。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。