黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第33話

「それで、一護。本当の事言いや。」

 

「なんだよ?本当の事って。」

 

「ウチら神に嘘は通じん。嘘は見破れるんや。あんた、出身はどこや?」

 

「参ったな…。そんなことまでわかんのかよ。」

 

「そうや、ほんの少しだけ力を使うて記憶を覗くんでもええんやけどな。」

 

「流石神様だな。そんなことまで出来んなんてよ。」

 

「こんなん誰でも出来るわ。ただ、やろうっちゅう発想がないだけや。ウチはな子供達が大好きなんや。それを壊すようなことがあったら……ウチはあんたを許さへんで?」

 

ロキは一護を威圧する。

 

「あぁ、分かった。約束する。」

 

「ん、ならええわ。ほれ、ここにうつ伏せになり。」

 

ロキはそのままベッドの近くまで行き、うつ伏せに寝るように一護に言う。

 

「記憶は見なくて良いのかよ。」

 

「ええわ、アンタの約束は嘘やないって分かったからな。」

 

一護はうつ伏せになり、ロキはその上に跨り、血を垂らす。恩恵を受ける。

 

「あんまり変わった感じはねぇな。」

 

「そらそうや、フィンがゆーてたやろ?アンタには今種を渡した。それを育てなあ、どんなに綺麗な花を咲かそうと、結局は種や、これから頑張りや、一護。」

 

「あぁ、ありがとな。」

 

「アンタはもうウチの子供や。礼なんてええわ。」

 

ロキは笑顔で一護にそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一護はロキから色々な説明をしてもらい、下へ降りるとアイズが話しかけてきた。

 

「少し、良いですか…?」

 

「どうした?」

 

「恩恵も貰わずにどうしてそんなに強くなったんですか?」

 

「どうしてって言われてもな…。」

 

「…それじゃあ、何のために…強くなったんですか?」

 

「大切なものを守るためだ。」

 

「大切なもの…守るため…?」

 

「あぁ、お前のことはロキから聞いたぜ。オラリオでもトップクラスの実力なんだろ?お前は何のために強くなったんだ?」

 

「私は……。」

 

「お前は要するにどうすれば強くなれるか知りたいって感じか?」

 

「はい…。アドバイス…とか、ありますか?」

 

「んー、わかんねぇ。」

 

「えっ…?」

 

「俺は別に強くなりたくて強くなったわけじゃねぇからよ。誰かを守るために力が必要だった。それだけだ。俺の戦いはいつもそうだったぜ。勝てる勝てないじゃない、勝たなきゃならねぇから戦ってた。だから、多分お前の参考にはなんねぇかもしれねぇな。」

 

「そう…ですか…。ありがとうございました。」

 

「あぁ。」

 

アイズはそう言いその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイズが廊下を歩いていると、影からフィンがアイズに話しかける。

 

「どうだい?アイズ。彼の助言は参考になったかい?」

 

「…わからない。ただ、無視していいことじゃないとはわかった。」

 

「うん、今はそれでいいさ。君は急ぎ過ぎている。それは皆が言っていることさ。でも、言葉じゃ理解は出来ても納得出来ないだろう。だから彼を見てるといい、きっと答えが見つかるはずだよ。」

 

フィンはそう言い残して去っていった。

 

「黒崎…一護くん…。」

 

アイズは一護の真っ直ぐな目を思い出しながら部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ある日の一護はロキから夜は外食に行くからどうだ?と誘われ行くこととなった。

ロキ・ファミリアの面々と目的の店へと向かう最中に一護はティオネとディオナに声を掛けられた。

 

「ねぇねぇ、ウルキオラってどんな奴なの?」

 

「ウルキオラ?なんでいきなり?」

 

「私たちは会ったときから少し怪しいと思ってたのよ。」

 

「どうしてだよ?」

 

「何て言うかさぁ〜、まるで死んでるみたいじゃん?」

 

「こら、ティオネ。失礼だろ。」

 

「あ、ごめーん。それで、どんな人なの?」

 

「俺も別に知ってるわけじゃねぇんだけどよ、感情の起伏があんまりねぇ奴だな。」

 

「それで?実力とかは?」

 

「あいつはかなり強えよ。」

 

その言葉に前のアイズがピクリと反応し、フィンが呆れたように声をかける。

 

「全く…。アイズは戦いのことに関することにはすぐに反応するな。」

 

「それじゃあ、一護とそのウルキオラはどっちが強いの?」

 

「ウルキオラだな。」

 

「そんなに…強いんですか…?」

 

「あぁ、俺はあいつと二回やったことがあるけど、優勢だったことはねぇな。最初の一回は刀を抜かずに素手で殺されかけたし、二回目も実質殺されたようなもんだな…。」

 

「よく生きてるねぇ。」

 

「まぁな。」

 

「でも、何で戦うことになったの?」

 

「一回あいつに仲間が拉致られたことがあってよ。それで取り返すために戦ったんだ。」

 

「え!?そんな相手とよく一緒にいれたね…。」

 

「まぁ、あいつは別に拉致したくてしたわけじゃねぇからな。そういう命令だからしただけだと思うぜ。」

 

「命令って…。あんな人に命令できる人なんているわけ?」

 

「あぁ、今はいなけどな。」

 

「おーい、もう着いてるから早よ入り!」

 

ロキの呼び掛けに気付き一護は目の前の店を見上げる。

 

「豊饒の女主人…。」

 

「ここの料理は美味しいんだよ!」

 

「そうなのか…。」

 

ティオネの言葉に相づちを打ちながら、一護は中へと入っていき、その内装に驚く。」

 

(スゲェな…まるでゲームの中に入ったみてぇだ。)

 

「ほら一護!ボサッとせんと早よ座り!」

 

「あ、あぁ。」

 

一護はリヴェリアとアイズの間に座った。

 

「今日は一護の歓迎会や!みんな飲め飲めーー!そんじゃあ乾杯!!」

 

「「「乾杯!!」」」

 

「どうだ?うちのファミリアの様子は。」

 

「こういうのは初めてで、よくわからねぇけど悪くはないな。」

 

「まぁまぁ、遠慮せずに食べなよー!」

 

「おい!あんまり盛り付けんなって!」

 

こうして夕食を食べ始める。

 

「あ、やべ。フォーク落としちまった。」

 

「酔ってるのか?」

 

「飲んでねぇよ!ったく。」

 

一護はそう言い席を立つ。

 

「店員を呼べばいいじゃないか。」

 

「俺が落としたんだから自分で行くさ。」

 

「見た目に似合わず謙虚なんだな。」

 

「うるせぇよ。」

 

一護はそのまま落としたフォークを持ちカウンターの方へと向かった。

 

「すいません、フォーク落としたんで、変えてもらって良いっすか?」

 

「あぁ!少し待ちな!シル!頼む!」

 

女店主は料理をしながら指示を出す。

 

「わかりましたー!」

 

店員の女はは新しいフォークを取り出し一護へ渡す。

 

「悪いな。」

 

「いいえ、貴方はロキ・ファミリアに新しく入ったのですか?」

 

一護は店員に話しかけられ振り向こうとした体を戻して答える。

 

「あぁ、つい最近入ったんだ。」

 

「そうでしたか。お得意様の中に初めて見る顔がありましたから、つい気になってしまいました。」

 

「俺は黒崎一護だ。あんたは?」

 

「私はシル・フローヴァと言います。よろしくお願いしますね!」

 

「あぁ、フォークありがとな。シル。ん?」

 

一護はそう言い戻ろうとした時、視界に白いものが写り、それを再び見てそこに近付いて行った。

 

「よぉ、お前怪我はなかったか?」

 

白髪の少年はどこか一点を顔を赤くして見ており、一護の声にハッとして振り向いた。

 

「あ!あなたは!あの時助けてくれた!」

 

「俺は黒崎一護だ。お前は?」

 

「ぼぼ、僕は!ベル・クラネルです!」

 

「何でそんなにガチガチなんだよ?」

 

「い、いえ、だってあのロキ・ファミリアの人ですよね?」

 

「あぁ、だけど入ったのはつい最近だ。俺はあいつらよりも全然凄くねぇぜ。」

 

一護がそうフォローするとベルは肩の力が少しだけ抜けた。

 

「いえ、それでも凄いですよ。あのロキ・ファミリアに入れるなんて。僕は今のファミリアに入るまでどこのファミリアにも断られたんです。」

 

「ロキのところにもか?」

 

「はい、ロキ・ファミリアには試験があるのは知ってますよね?」

 

「お、おう。」

 

(知らねぇわ)

 

「それで一目で弱そうだって。」

 

「本当かよ?あとで行ってやらなくちゃな。」

 

「いえいえ!!大丈夫です!!今はちゃんとファミリアに入れましたから!!」

 

「おう、なら良いんだけどよ。」

 

「思ったりよ良い人なんですね。一護さんって。最初見たときは怖そうだなって思ったんですけど。」

 

「あぁ…。よく言われたな…それ…。」

 

「す、すみません!」

 

「いや、気にすんなって。お前も冒険者になったばっかなのか?」

 

「はい。まだLevel1ですけど、もっと頑張って強くなってLevel上げたいです。」

 

「Level上げるのって大変なんだってな。」

 

「はい、そういう風に聞きます。」

 

「なぁ、今度一緒にダンジョンにいかねぇか?」

 

「え!?良いんですか!?」

 

「あぁ、俺もよく勝手とか分からねぇからよ。」

 

「そ、それは是非!!」

 

「俺は多分ホームで暇してると思うから気が向いたら呼んでくれよ。」

 

「はい!おねがいします!一護さん!」

 

「あぁ、それじゃあ戻るから。また今度な、ベル。」

 

「は、はい!!」

 

一護はその場を後にし、ロキ・ファミリアの元へと戻っていった。

 

「あぁー。アイズさんとの関係聞けなかったなぁ〜…。」

 

ベルは頭を抱えて小さく唸った。

 

 

 

 

 

 

 

 

ロキ・ファミリアは夕食を終え、自分たちのホームへと帰っている途中、アイズが一護を呼び止めた。

 

「一護さん。私と手合わせして下さい。」

 

「……。」

 

一護はジッとアイズの目を見た。

 

「おい、アイズ。何を言っている?」

 

「別に構わねぇぜ。」

 

「一護!」

 

「まぁまぁ、落ち着いてくれ、リヴェリア。ロキも構わないだろう?」

 

「ん、ええんとちゃう?ただ一護!アイズたんに怪我させたら眉毛全部抜くで!!」

 

「はいはい、今ここでやるのか?」

 

「いえ、ホームにある鍛錬場で。」

 

「わかった。」

 

ロキ・ファミリアの面々はホームへと戻り、アイズは鎧と剣を装備し、鍛錬場に立った。

 

「…それでやる気ですか?」

 

「あぁ、そうだけど。」

 

一護の格好は先程と変わらず死覇装のままで手には少し頑丈そうな木の棒を持っていた。

 

「…。」

 

アイズは黙って剣を構える。

 

「意外だな。絶対に切れると思ったんだげどよ。」

 

フィンが横から声をかける。

 

「アイズはそれでもかなり怒ってるよ。」

 

「そうなのか。全然分かんなかったぜ。」

 

リヴェリアが開始の合図のために片手を上げる。

 

「お前たち、やり過ぎるなよ?それでは…始め!!」

 

リヴェリアが手を振り下ろした瞬間に、アイズは一護に向かって切り掛かる。一護は木の棒を構えず全てを見切り、そして躱していく。それを見たファミリアの面々は言葉を零す。

 

「やはり凄いな…。アイズの攻撃が当たらないとは…。」

 

「確かに…初めに会ったときミノタウロスを一撃で屠っていたからパワーでは一護が有利だと思っていたが…。まさかスピードまでアイズと同格とは……。」

 

「アイズさん…。」

 

「ったくよ!あんな野郎に負けてんじゃねぇぞ。」

 

「でも確かに凄いかもね〜。私もミノタウロスくらい一撃で殺せる自信はあるけど、あのスピードは出せないかも。」

 

「すごいわね…。でも、あのウルキオラって人はアレより凄いのよね。」

 

アイズは剣が当たらないと感じると蹴りを繰り出す。しかし、一護はそれをいなすと、木の棒で腹部を殴る。その瞬間アイズがポツリと呟く。

 

 

テンペスト

 

 

 

一護の持っていた木の棒が細切れになり使い物にならなくなる。

 

「っ!?なんだそりゃ…。」

 

「魔法…。」

 

一護の独り言にアイズが律儀に答える。

 

「魔法……。」

 

一護は自分の左手首に付いている穂波のCADを見て、右手で自分の胸元を確認する。

 

(CADに崩石。行けるか?)

 

一護は着物の裾を破り、CADを操作して破った裾を硬化魔法で硬くし、それを投げ飛ばす。

 

「「「っ!?」」」

 

「っ!!!なにそれ…?」

 

「手品みてぇなもんだ。」

 

アイズは物凄い勢いで飛んできた裾をブリッジに要領で躱そうとするが、アイズの顔を通り過ぎる瞬間、硬化魔法が解けアイズの顔にかかる。一護はその隙にアイズの背後に周り、相手の首に手を当てる。

 

「終わりだ。」

 

「…参りました……。」

 

「ふぅー、スゲェなアイズ。かなり強かった。」

 

「一護。それは何だい?」

 

「手品みてぇなもんさ。大したものは使えねぇ。今のは硬化だ。ただ手元から離れると一瞬で元に戻っちまう。」

 

「なるほど…。それで突然解けたんですね…。」

 

「面白い能力だな。それに使い方も。着物を硬化させるか…。中々の柔軟性だな。」

 

「戦闘に関してはそれなりに場数だけはあるつもりだぜ。」

 

「そうだな。アイズ、今日はもうゆっくり休むといい。」

 

「……わかった…。」

 

アイズはフィンからの言葉に返事をする。表情こそ変わらなかったが、手にはめられているグローブがギリギリと音がなっていた。

 

「一護さん。これからも手合わせをして欲しい。」

 

「別に構わねぇけどよ。さん、なんて付けなくて良いぜ。それも敬語も。むず痒いからよ。」

 

「ん、わかった。これからは一護って呼ぶ。」

 

「あぁ、よろしくな。」

 

こうして一護の慌ただしい一日が終わった。

 


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