黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第30話

「達也!こっちは片付いたぜ!」

 

「こっちもやっつけたよ。」

 

「私の方も終わった。」

 

レオと幹比古とエリカはそれぞれ任された敵を倒し、達也の元へと報告へ行く。それを見ていた雫、ほのか、美月は少しだけ顔色が悪くなっていた。

 

「すまない、刺激が強過ぎたか…。」

 

「いえ…大丈夫です。」

 

「それより今は…っ!!?」

 

ドカン!!!!

 

入り口付近に爆発音が響く。

 

「なんだぁ!?」

 

「油断するなレオ!皆構えろ、敵だ。」

 

「その通りだ、構えを崩すなよ?」

 

煙が晴れ、そこから現れたのは角の付いた気味の悪い仮面を被った長身の男だった。その中で美月が眼鏡を外すと顔色を変える。

 

「どうした?美月。」

 

「あの人の周りにプシオンが吹き荒れています…。まるで、初めて会った時の一護さんみたいです…。」

 

「一護くん?」

 

「はい…。とても似ています。ただ…。あの人から吹き出るプシオンの色が…とてもどす黒いんです…。」

 

「柴田さん。もう見ない方が良い。僕も少し感じるけど、アレは良くないものだ。」

 

達也が顔色を変えずに謎の男に問い掛ける。

 

「何者だ?」

 

「何者だ、か。詰まらねぇこと聞くんじゃねぇよ。お前たちに土産を持ってきてやったのによ。」

 

「土産?なんのことだ?」

 

「ほらよっ!」

 

謎の男は何かを達也達の足元に投げる。

 

「「「「ひっ…。」」」」

 

そこ置かれていたのは血塗れになった腕だった。

 

「なんのつもりだ?」

 

「その腕をよく見てみろよ。それくらいは待ってやるぜ?」

 

達也たちは警戒を解かずにその腕を見る。

 

「「っ!!!」」

 

皆がその生々しさに吐き気を感じていた中、2人だけ表情が違う者がいた。

 

「達也くん?深雪?どうしたの?」

 

「まさか、この腕が知り合いの……だったとかか…?」

 

「……。」

 

深雪が震えだし、涙を流す。ほのかが心配した声を出す。

 

「みゆ…き……?」

 

「貴様……。」

 

「「「っ…。」」」

 

達也の底冷えするような声に皆の体が硬直する。

 

「ど、どうしたの?達也さん?」

 

達也は雫の声に反応を示さずに謎の男に言葉を発する

 

「その腕についているCADはかつて穂波さんが使っていた物…。そして、今は一護が使っているものだ。その型のCADは二世代前のもの。今更同じものを持っている者などいまい…。」

 

「「「っ!!!!」」」

 

その言葉に皆が察し、顔が青くなる。

 

「お、おい……達也…。この腕の持ち主は……。」

 

「一護のだ…。」

 

「そ、そんな…一護さんが……。」

 

「え……あ…え?」

 

「あぁ、俺が殺してやったんだよ。随分と詰まらねぇ死に方だったぜ。何も出来ずにただ殺されただけだ。」

 

美月、ほのか、雫、幹比古たちの絶望のあまり、それぞれが膝を付く。

 

「あの時……あの時止めていれば……。」

 

「そろそろ話は終わったか?」

 

退屈そうちこちらを見ていた仮面の男が問いかけた。

 

達也を中心に動ける者が動けない者を囲むように陣を組んだ。

 

「レオ、エリカ、深雪。お前たちは俺のサポートと守りを頼む。あいつは俺が殺そう。」

 

「ハッ、人間風情が舐めた口聞くじゃねぇか!」

 

達也がシルバーホーンを構え男に向かって引き金を引く。男は射線上から逃れ、姿を消した。次の瞬間達也の腕を掴み、引き千切った。

 

「お兄様!!!!」

 

「「「っ………。」」」

 

深雪と達也とエリカ以外は顔を引きつらせ真っ青になり息を飲んだ。達也は片手でバク転しながら後退し、エリカが入れ替わりでCADで殴り掛かったが、男が腕を振った瞬間に砕け散った。

 

「なっ!!」

 

「エリカ!下がって!」

 

エリカは転がりながら離脱し、深雪がCADを操作し、男を凍らせる。だがそれも、男によって砕かれた。

 

「何なんだよコイツ!!」

 

「か、勝てないよ……。」

 

「ほのか、ダメ。気を確かに持って。」

 

「た、達也。大丈夫なの…?」

 

「あぁ。」

 

幹比古が達也の腕を確認しようと目を向けると、そこには五体満足の達也がいた。

 

「へぇ……。やっぱりそれはスゲェな。」

 

「た、達也。腕をちぎられたんじゃ…。」

 

男は感心したように達也を褒める。

 

「貴様…。コレを知っているのか?」

 

「知っているのか、だと?んなもん決まってんだろ。俺はお前から聞いたんだぜ?」

 

「何を言っている?」

 

「わからねぇなら見せてやるよ。」

 

男は角の付いた仮面を取り素顔を見せる。

 

「「「っ!!!!」」」

 

その瞬間皆の顔が今までにない程に青くなる。

 

「そ、その顔……。」

 

「…一護…なのかよ……。」

 

「ならどうして!こんなことをするわけ!?一護くん!!」

 

「おいおい、あんまり怒鳴んなよ。楽しくやろうぜ。」

 

「ふざけないで、貴方本当に黒崎くんなの?」

 

「見てわからねぇならお終いだな。」

 

一護らしき男は仮面を被り直し、手に持つ白い刀を構える。

 

「気を引き締めろ。」

 

達也の声に皆が構える。その瞬間達也と男の間に攻撃が入り、2人の人間が降りてきた。

 

「惑わされるな!あれは一護ではない!」

 

「いやぁ〜、スミマセン。ここはアタシたちに任せてもらえませんか?」

 

そこには、下駄を履き、帽子を被り、全身が緑で統一された男と、背中の開いている体にフィットした服を着ている女がいた。

 

「何者だ?」

 

「なに、お主らの味方じゃよ。」

 

「味方!?いや、待ってくれ!!あいつには魔法が効かねえんだ!逃げた方が良い!」

 

その瞬間女の姿が消え、相手を蹴り飛ばした。

 

「「「なっ!?」」」

 

皆が驚き固まる。

 

「何を驚いておるんじゃ?一護の奴と今までおったのだろう?」

 

「夜一さん。やりすぎっすよ。できるだけ生け捕りが理想なんでやり過ぎないで下さいね。」

 

「分かっておるわ。儂を誰だと思うとる?」

 

「いや、だから心配なんス。」

 

「なんじゃと?」

 

「「っ!?」」

 

軽口を叩いていた2人の間に敵が現れる。そして浦原と夜一に攻撃するが、2人は瞬歩で逃れる。

 

「今のは…。」

 

「響転ッスね。」

 

「厄介じゃのぉ。」

 

「夜一さん、ここは任せます。アタシは黒崎さんを回収しますんで。」

 

「わかった。さて、少しだけ本気を出してやろう。」

 

浦原が戦線を離脱し、夜一が達也たちの前に立つ。

 

「ねぇ、貴女。大丈夫なわけ?」

 

「なに、心配要らんぞ小娘。」

 

「さっきの話を聞いてた限りだとあなた方は一護のお知り合いですか?」

 

「後で纏めて話してやる。」

 

夜一が達也たちにそういうと敵へ意識を集中させる。

 

「お主、あまり強くないのぉ。」

 

「たかが一撃入れただけで、何調子に乗ってんだぁ?」

 

敵の一護は夜一に響転で近付き刀を振るう。夜一は躱すが腕に少しだけカスってしまった。

 

「おいおい、速えって言ってもその程度かァ?あぁ?ヌリィんだよ!!」

 

「調子に乗るなよ?小僧。」

 

 

瞬閧

 

 

夜一から雷が放電される。そして夜一の体が消えた瞬間敵の一護の体が吹き飛んで行った。

皆が呆然とし、美月がポツリと呟いた。

 

「い、一体なにが……?」

 

「チッ、逃したか…。お主ら無事か?」

 

「は、はい!大丈夫です!!」

 

「そうか、良かった。」

 

夜一は返事をしたほのかの頭を撫でる。

 

「はわわわわ」

 

ほのかは顔を真っ赤にして硬直してしまった。その中で達也は夜一へと問いを投げ掛ける。

 

「あの敵は何者なのでしょうか?」

 

「それも含めて先の下駄男が帰ってからにしよう。」

 

「仕方ない…。まずは情報が欲しいな。」

 

「それならVIP会議室を使えば良い。そこなら政治家とかの会議室に使われてるから、大抵の情報にはアクセスできる。父から暗証キーもアクセスコードも知ってるよ。」

 

「ナイスだ。雫。貴女もそれで構いませんか?」

 

「あぁ、構わぬよ。」

 

夜一を含め、達也たちは雫の案内するVIP室へと入り、モニターで戦況を確認した。

 

「成る程、戦況はこういう状況か…。」

 

「うわっ、なにこれ!」

 

「ひっでぇなこりゃ…。」

 

「この辺でグズグズしていたら、敵に補足されてしまう。」

 

モニターは交戦中を表すバツだらけだった。その中幹比古が提案をする。

 

「シェルターに避難かな?」

 

「それが現実的だろうな。」

 

「じゃあ地下通路から避難だね。」

 

「いや、避難は地上からだ。」

 

「あ、そうか。」

 

「それと先の男が帰ってくる前にしておかなければならないことがある。」

 

「え?何をですか?」

 

「デモ機のデータを処分する。」

 

そうして皆がデータを消去しに向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

達也たちがデモ機の置いてある部屋へ入ると既にそこには、七草、市原、千代田、五十里、桐原、壬生がいた。達也は驚き、問いかけた。

 

「何をしているんですか?」

 

すると市原は作業を止めずに背を向けたまま答える。

 

「データが盗まれないよう、消去しています。」

 

「では、七草先輩たちは?」

 

「私たちだけ逃げ出すわけにはいかないでしょ?それで…」

 

七草が夜一の方に視線を向け何か言おうとすると、ドアが開き、十文字と服部、沢木が入ってきた。」

 

「司波、七草。」

 

「十文字先輩…。」

 

「お前たちは先に避難していなかったのか?」

 

「データの消去をしているの。」

 

「そんな大人数でか。」

 

服部が七草に向け報告をする。

 

「他の生徒は中条に連れられて地下通路に向かいました。お前たちも地下通路に…」

 

「地下通路?」

 

達也は服部の言葉を遮りつぶやく。それを沢木が拾い尋ねる。

 

「何か拙いのか?」

 

「いえ、ただの懸念に過ぎませんが、地下通路は直通ではありませんので、ほかのグループと鉢合わせになる可能性があります。つまり…」

 

「遭遇戦…!?」

 

「はい。そうなった場合、地下では正面衝突を強いられる可能性があります。」

 

「っ!服部、沢木。直ぐに中条を追え!」

 

「「はい!!」」

 

指示を出した十文字が夜一に視線を向け尋ねる。

 

「それで、そちらの女性は……?」

 

「黒崎一護の知り合いじゃ。」

 

「戦えるだけの力はお持ちで?」

 

「無論じゃ。」

 

「分かりました。ならば何も言いません。」

 

「ふむ、中々切り替えの速い小僧じゃの。」

 

「お褒めに頂き有り難い。では俺はこれから逃げ遅れが居ないか見回ってこよう。桐原、ついてこい。」

 

十文字と桐原はそのまま部屋を出ていった。五十里が司波へ指示を出す。

 

「司波くんは他の部屋にある機器を頼むよ。」

 

「よし、とりあえずはデータの消去をし、終えたら控え室に集まろう。そして、そこで今後の方針を練る。」

 

摩利の言葉に皆が頷き各自作業に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

皆が部屋に入り、静かな空気の中、摩利が第一声を放つ。

 

「さて、これからどうするかだが…。」

 

「港に侵入した敵艦が一隻。海岸はほとんど制圧されちゃったみたい、陸上交通網も完全に停止してるみたい。こっちはゲリラの仕業じゃないかしら。」

 

「少し待っていただけないでしょうか。」

 

真由美の現状の考察を遮り達也が口をはさんだ。

 

「どうしたんだ?あまり余裕はないのだぞ?」

 

「先ほど、容姿が黒崎一護に酷似した謎の男と交戦しました。その際こちらにいる女性が撃退しましたが、ここまで大人数になると彼女でも守りきれない可能性があります。」

 

「それってどういうことなの?」

 

「黒崎によく似たってどういうことだ?幻影か何かじゃないのか?」

 

「おそらくその線は薄いかと…。すみませんが、ご説明願えないでしょうか?」

 

「ふむ、よかろう。あれは確かに黒崎一護じゃ。」

 

「「「っ!!」」」

 

先ほどの戦闘に参加していたものが息を飲む。

 

「慌てるな。あれは一護の一部じゃが…。儂にもよくわかっているわけではなくての~。現状浦原…先の男が解明するはずじゃ。」

 

「ちょっと、僕に丸投げッスかぁ~?」

 

その瞬間血まみれの一護を背負った浦原が現れた。

 

「「「一護(黒崎)!!!」」」

 

皆が一護の容態を見て顔を青ざめる。

 

「一護くん…腕が……。」

 

「安心してください。」

 

浦原が皆に向けてそういう言うと、片手に持っていた一護の腕を元の場所にあて、注射器を打つ。すると傷口が塞ぎ始め、しばらくすると完全にくっついた。

 

「な、治ってる…。」

 

「魔法でもそんなことはできないぞ…?」

 

皆が口々に驚きの声をあげる。

 

「まぁ、これについてはあとで話しましょう。それでこれからどうするかですが…。」

 

するといきなりドアが開き、女性が一人入ってきた。

 

「お待たせ。」

 

「も、もしかして響子さん!?」

 

「お久しぶりね。真由美さん。」

 

すると藤林の後に風間が続いて中へ入ってきた。藤林が達也に向かって報告をする。

 

「特尉、一時的に情報統制を解除されています。」

 

達也はそれを聞き、敬礼をする。すると後ろから十文字、桐原、真田が入室する。

 

「司波……?」

 

「国防陸軍少佐風間玄信です。」

 

「貴官があの、風間少佐であらせられましたか。師族会議十文字家代表代理、十文字克人です。」

 

風間と十文字は挨拶を終え、風間は目線を達也へ向けると、達也は敬礼を止め、休めの状態に入った。風間は浦原と夜一に視線を向ける。

 

「あなた方は?」

 

「アタシは浦原喜助と申します。こちらは四楓院夜一さん。アタシたちは黒崎一護さんの知り合いです。」

 

「黒崎くんのですか…。余程の技術力と権力をお持ちになっていると見えます。かつて黒崎一護くんの事を調べても、全く情報が出てこなかった…。」

 

風間の言葉に皆は驚き、詳細を求めるように浦原と夜一に視線を向ける。すると一護が目を覚ます。

 

「う……。こ、ここは…?」

 

「「「一護(さん)!!!!」」」

 

「っ!!!あいつは!!?」

 

一護は軽いパニックに陥りかけたが夜一が蹴り飛ばし、一護は壁にめり込んだ。

 

「戯け!少し落ち着かんか!」

 

皆が呆然と見ている中、一護は壁から這い出て浦原と夜一を視界に収める。

 

「浦原さん!夜一さん!」

 

「お目覚めのようッスね。黒崎さん」

 

「何でここに…。って風間さんに藤林さん、それに真田さんまで!!」

 

「やぁ、一護くん久しぶりだね。君に少し聞きたいことがあるんだ。」

 

「聞きたいこと?」

 

「あぁ、先ほど衛星のカメラで君によく似た男が特尉たちと交戦しているのを見つけてね…。詳細を聞きたいのだが?」

 

「そういうことか……。簡単に言っちまうと、アレは俺の一部だ。」

 

「一部ってどういうことなの?」

 

「二重人格とかか?」

 

「それに近いな、俺の中にもう一人の俺がいて、それが外に出てきた。これを介してな。」

 

一護は服を捲り上げ、胸に埋め込まれている崩石を皆に見せる。

 

「「「っ!!」」」

 

崩石の存在感に皆が気圧され、レオが声を上げる。

 

「なんだよそれ……。何で一護の体にそんなもんが埋まってんだ!?」

 

浦原が一歩前へ出て、皆に視線を向ける。

 

「それはアタシ説明しましょう。これの名は崩石。周囲の心を取り込み具現化するという能力を持っています。」

 

「心を具現化ですって!?」

 

「はい、それによって先の偽物の黒崎さんが出て来てしまった…。ただ、力は想像を絶するものがあります。それは先ほど戦闘したあなた方がよくわかっているはずだ。」

 

浦原の説明にエリカが疑問を挟む。

 

「なら、どうして一護くんの二重人格はあんなに強いわけ?」

 

「簡単な事ッス。本来黒崎さんもあれ程の力を持っている。ということッス。」

 

「「「っ!!??」」」

 

先ほど交戦した達也たちは驚き、そうでない真由美や十文字たちは首をかしげる。

 

「あたし達は見てないのだけれど、一体どれくらい強いのかしら?」

 

「確かに、敵の実力を把握しなければならんな。」

 

「それは私たちが映像を見せましょう。」

 

風間がそう言い、真田に目線を移すと、真田は敬礼し、何か機械を準備し始めた。

 

「それでは今からこのモニターに映像を映します。」

 

真田がそう言って、スイッチを押すと、モニターに映像が流れ始めた。

 

一護の腕が投げ捨てられてから戦いが始まった。達也の腕が千切られ、更にはエリカのCADが腕で破壊され、最後に深雪の魔法が破られた。そのに2人の助太刀が入り、夜一の瞬閧で敵を吹き飛ばし、映像が終了した。

 

「……なんなのあれ…魔法なんかないじゃない!!」

 

「確かに、あれに勝つ事は厳しいかもしれないな。」

 

「安心してくれ、あれは俺が倒す。」

 

七草と十文字の言葉に皆が不安がっていたところ、一護が皆に向けて言い放つ。すると、摩利が一護を怒鳴る。

 

「馬鹿かお前は!!腕を千切られたのを忘れたのか!!?あれはお前1人で片付けられる問題じゃなくなったんだ!!」

 

「ま、摩利、落ち着いて。一護くんも1人では無理だわ。」

 

「大丈夫だ、俺は今まで色んな奴と戦ってきた。掟に縛られた奴、一族の繁栄を望んだ奴、見下されるのが嫌な奴、心を探していた奴、世界の真理を知ろうとした奴、偽物の自分が本物になり変わろうとした奴、裏切られて復讐しようとした奴。どいつとやる時も勝ち目があったから戦ったわけじゃねぇ。勝たなきゃなんねぇから戦ったんだ。」

 

「「「……。」」」

 

「一護さん……。」.

 

今までずっと黙っていた深雪が口を開いた。

 

「ちゃんと…ちゃんと帰ってくると約束して頂けますか?」

 

「あぁ、約束するさ。俺は負けたりしねぇ。」

 

すると、一護の胸元が光り輝く。

 

「なんだぁ!?」

 

「一護くん!崩石が!!」

 

「……そうだ…悪かったな…。」

 

一護はそう呟き胸の光に手を突っ込み、そして一気に引き抜く。するとそこには斬月が握られていた。

 

「俺たちは負けたりしねぇ。」

 

「なるほど、CADをあの形にしたのがようやく理解できた。それが本物の斬月か。」

 

達也が納得したように呟き、七草が疑問を挟む。

 

「それは一体…?」

 

「俺の本当の相棒だ。それじゃあ行ってくる。」

 

「一護さん、ちゃんと帰ってきて下さいね。」

 

「あぁ、わかった。」

 

そして一護は偽一護の討伐、達也は軍の戦線に入り事態の鎮圧、十文字は義勇軍の救援、他の皆は避難をする事になり、皆で行動を開始し、会場の外に出た。

 

「みんな、無事に逃げ切れよ。俺の方も速攻倒して手助けに行くからよ。」

 

「君は自分の心配をしろ。本当に助けはいいんだな?」

 

「あぁ、大丈夫だ。浦原さんたちは?」

 

「すみませんが、アタシたちは戻ります。異なる世界を繋げる穿界門は、あっちの世界でないと作れないので、今出現しているのが閉じない内に帰ります。」

 

「そうか、わかった。それじゃあなみんな。後で会おうぜ。」

 

一護は背を向けて飛び立った。


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