黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第29話

「おい、達也。聞いたぜ?一護が倒れたんだって?」

 

達也は深雪や雫、ほのかと昼食を摂っていると、レオ、エリカ、幹比古、美月がやってくる。

 

「あぁ、今丁度その話をしていたんだ。何故かはわからんが今朝、一護が床で倒れていてな、症状はサイオン枯渇。しかし、俺も深雪もサイオンを感じていない。理由をきこうにも、一護の意識が戻っていないから聞きようがなくてな。」

 

「一護さん……。」

 

「大丈夫なんでしょうか…。」

 

「一護程のサイオン量が枯渇するってどうなってんだ?」

 

「それは俺も疑問に思っている。誰かが侵入するのも考えられない、しかし、一護がサイオン枯渇を起こすほどの魔法が発動させたのなら、俺か深雪が気付かないはずがない。」

 

「確かに、達也と深雪さんが感知できなかったなんて考えられないね。」

 

「なんにせよ、一護が意識を取り戻さない限り真相はわからないな。幸い命に別状はないと聞いているし、心配はいらないさ。」

 

「まぁ、一護は頑丈だからな。平気だろ。」

 

「でも、一護くんは怪我をしないってよりは、怪我をしても倒れないって感じよねー。」

 

「そういう意味では、安心できない。」

 

「確かにそうかも…。」

 

「平気よ。お兄様がそういうのだもの。」

 

「そうだね、達也さんが言うんだもの。」

 

「そんなに信用されても困るが…。」

 

チャイムがなり皆が教室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修、その……すまない。忙しいいのに一高の問題に付き合わせて…。」

 

摩利は恋人の千葉修次と共に国立魔法大学附属立川病院に来ていた。

 

「水臭いなぁ、僕が摩利と一緒に居たかったんだ。」

 

「そんな恥ずかしいこと……言わなくていい……。」

 

 

すると突然病院内に警報が鳴り響く。

 

「っ!?火事?」

 

「いや…これは暴対警報だ。場所は四階だ。」

 

「四階!?」

 

「まさか、摩利の後輩が入院しているのも……。」

 

「あぁ、四階だ。」

 

二人は魔法で四階へ駆け上がって行った。

 

「っ!!人食い虎、呂剛虎!!」

 

「クッ、イリュージョンブレード、千葉修次!」

 

呂剛虎は修次のところへ突っ込んでいった。

それを修次はナイフを取り出し、魔法で長さを伸ばして迎撃するが、腕で防がれてしまう。互いにナイフと腕が鍔迫り合いをする。そこから呂剛虎が押し切り、拳と足でラッシュを仕掛ける。

修次は壁際まで追い詰められるが、敵の一撃を逸らし脇を斬りつけたが、いなした腕が切り裂かれた。

互いに硬直していたところを摩利が後ろから魔法を放ち、呂剛虎に痛手を与えた。

それで戦況を不利とみた呂剛虎は撤退しようと飛び降りた瞬間、上から誰かが降ってきて、呂剛虎を下へと蹴り落とした。

 

「誰だ!?」

 

「誰だって、ひどくねぇっすか?渡辺さん。」

 

四階へ降り立ったのは患者服を着た黒崎一護だった。

 

「黒崎!?なんでここに!?」

 

「いや、俺もいまいち分かんねぇけど、気づいたらここの病室で寝ててよ。」

 

「彼は摩利の後輩かい?」

 

「あ、あぁ。一年の黒崎一護だ。」

 

「君が黒崎くんかよろしく。」

 

「あぁ、それよりさっきの逃げちまったけどいいのか?」

 

「あぁ、僕も結構深手を負ったし、君も見るからに入院していたみたいだからね。深追いをする必要はないよ。それにしても君結構強いんだね。あの呂剛虎に蹴りを食らわすなんて。」

 

「いや、多分防がれたと思うぜ。ほら。」

 

そういい一護は蹴った足を二人に見せる。

 

「なっ!!黒崎!お前!!」

 

一護の右足は真っ青になっていた。

 

「あぁ、折れちまったみてぇだ。」

 

「馬鹿!!魔法も使わずに魔法師に向かっていくなんて死にたいのか!?」

 

「まぁまぁ、摩利。落ち着いて。」

 

「う、修が言うなら…。」

 

「それにしてもさっきの高速移動も魔法を使ったようには見えなかったけど?」

 

(まずい…。ここは達也から教わった言い訳を…。)

 

「あれは九重八雲先生に教わった体術だ。」

 

「あぁ!あの忍術使いの!」

 

「お前も習っていたのか!?」

 

「ま、まぁ…そういうことっす。」

 

「へぇ、すごいね。」

 

「そ、それじゃあ俺は病室に戻るから。」

 

「あぁ、お大事に。」

 

「お大事にね。」

 

「あぁ、じゃあな。」

 

こうして一護は二人と別れ、病室へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お加減はどうですか?一護さん。」

 

「別にもう大丈夫だ。」

 

達也と深雪は一護のお見舞いに来ていた。

 

「何があったんだ?」

 

「いや、全くわかんねぇ。正直普通に寝て、気付いたらここにいたって感じだ。」

 

「原因はわからずか…。」

 

「いつ退院いつですか?」

 

「今日にでもいいって話だ。」

 

「そうか、ならどうする?俺も深雪も今から帰るが。」

 

「なら、俺も帰るぜ。すぐに退院の手続きをしてくるから待っててくれ。」

 

こうして一護は退院し、帰っていった。次の日、一護は久し振りの登校をし、皆から声をかけられていた。

 

「一護大丈夫なのか!?」

 

「あぁ、大丈夫だ。ちょっと疲れがたまっててよ。それで倒れちまっただけだ。」

 

「一護は無理をするからね。気をつけてよ。」

 

「あぁ、悪いな。」

 

そして一通り話をした後、達也と深雪と一護は下校していた。

 

「ってか達也!コンペってなんだよ!俺初めて聞いたぞ。」

 

「当たり前だろう。ずっと寝ていたんだからな。呂剛虎を退けたと渡辺先輩から聞いて次の日に深雪と見舞いに行ったらまた意識を失ったんだぞ?」

 

「悪かったって。だけどもう大丈夫だからよ。原因もわかってるし。」

 

「それならばいいが…。」

 

「そんで?幹比古から頼みてぇことがあるって聞いたけどよ。なんだ?」

 

「明日のコンペ、お前も会場に来て欲しい。」

 

「それは構わねぇけどよ。なにかあんのか?」

 

「あぁ、カンでしかないが、なにか起こるような気がしてな。」

 

「なるほどな、いいぜ。」

 

「悪いな。あまり病み上がりのお前に頼みたくはなかったが。」

 

「気にすんなって。深雪も行くのか?」

 

「はい、お兄様が行くのであれば私も行きます。」

 

「そりゃ当然か。」

 

「では、早く寝るとしよう。明日は準備があるからな。」

 

こうして三人は眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、三人は朝早くに目的地に到着し、一高の控え室にいた。

 

コン コン

 

「はい、どうぞ。」

 

ノックがし、達也が入室を促す。

 

「どうも。」

 

「藤林さん!お久しぶりです。二月にお目にかかって以来ですね。」

 

「ええ、お久しぶりね。」

 

「それで、君が黒崎一護くんね。」

 

「俺のこと知ってんのかよ?」

 

「ええ、沖縄のときのことを風間大尉から聞いているわ。なんでも相当な障壁魔法を使うとか。九校戦も見てたしね。」

 

「そういうことか。席外すぜ。一般人が聞いてていい話でもねぇだろ。」

 

「別に聞いていても構わないのだけれど、まぁ、その方がいいかもね。」

 

「それじゃ、俺はレオたちのところに行くから頑張れよ。」

 

「あぁ、お前も無茶はするなよ。」

 

一護は控え室を出てレオたちのもとへ向かって行く。すると一護は後ろから声をかけられる。

 

「黒崎一護。」

 

「ん?おぉ、一条じゃねぇか。それと十三束か。」

 

「やぁ、一護くん。」

 

「なんだ、お前ら知り合いなのか。」

 

「いや、クラスが一緒でよ。」

 

「まぁ、少ししか話さないけどね。」

 

「お前は共同警備隊には参加しなかったのか。」

 

「まぁな、病み上がりだし、自由に動けるようにしておきたいからな。それじゃあ、俺は行くぜ。」

 

「あぁ、またお前とやれるのを楽しみにしてるよ。」

 

「あぁ、じゃあな。」

 

一護はレオ、エリカ幹比古、美月のところへ向かった。

 

「よぉ、お前ら。」

 

「おっす、一護。」

 

「体の具合は大丈夫かい?」

 

「あぁ、心配すんなって。」

 

「なんの話してたんだよ?」

 

「いやぁね、美月が一護くん並にプシオン放ってる奴がいるって騒いでて。」

 

「ん?誰だよ?」

 

「あそこにいるキョロキョロしている髭が特徴的なオジさんなんですけど。」

 

「あ……。」

 

「ん?どうかしたの?」

 

「いや……なんでもねぇ…。」

 

「あ、あの人手を振りながらこっちへ向かってきたよ?」

 

「一護さん?」

 

「いや、向くな。あれは知らない人だ。」

 

「何たる言い草だぁ!!!一護ぉ!!!」

 

髭のオジさんは一護の横っ腹をドロップキックした。

 

「ゴフっ!!!」

 

「い、一護!!?」

 

「ちょ、ちょっと!!!何すんのよ!!」

 

「平気平気。あいつはこれぐらいでやられるほど柔な鍛え方してないから。」

 

「いや、思いっ切り伸びてるんですけど…。」

 

一護はそのまま壁に衝突し気を失っていた。

 

「チッ、浦原の言ってたことは本当だったか。おい、そこの赤髪のネェちゃん。」

 

「な、なによ?」

 

「悪いんだけど、コレ。一護が起きたら飲ませてやってくれ。」

 

髭のおじさんはエリカに紅い丸薬を渡した。

 

「ちょ、ちょっとなんであたし!?」

 

「いや、だって赤いから。」

 

「色で決めんなぁ!!」

 

「そういうことだからよろしく。」

 

そう言い、髭のおじさんはあっという間に去っていった。

 

「「「「………。」」」」

 

「あ、嵐みたいな人だったな…。」

 

「そんなことよりも、一護を医務室へ運ばないと!」

 

「そうだった。レオあんた一人で担げるでしょ?」

 

「俺ひとりかよ!まぁいいけどさ。」

 

レオはそのまま一護を肩に担いで運んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドゴオオォォォォン!!!!!!

 

「な、なんだ!?」

 

一護は突然の轟音に目を覚ました。

 

「今のは…?っていうか親父!!あのやろう……次あったらぜってぇぶっ飛ばす!って、今はそんなこと言ってる場合じゃないか……。達也の予想が当たったんだな…。斬月は一高の控え室か……。近いから平気か。それ取ってとっとと達也と合流するか。」

 

一護は行動を開始した。医務室を出ると自己加速術式を使い、すぐに斬月をとり、ホールへと向かうと達也がテロリストの腕を切り落とすところだった。

 

(派手にやってるな…。敵はあと五人か、少し無茶をするか。)

 

一護は完現術を使い、敵を全員気絶させ、肩に五人全員を無理矢理担ぐ。

 

「おい、無事か?」

 

「一護か。無茶はあまりするな。」

 

「それよりも俺が気絶してる間に随分と物騒なことになってるじゃねぇか。」

 

「「達也さん!!」」

 

「「一護くん!!」」

 

雫、ほのか、幹比古、レオ、エリカ、美月が一護、達也、深雪の三人の周りに集まる。

 

「ご無事ですか!?達也さん!銃弾が…。」

 

「一護も大丈夫か!?」

 

「あぁ、俺たちは心配いらない。」

 

「あ、そうだ。一護くん。さっき一護くんを蹴り飛ばした人がこれを。」

 

エリカは一護に紅い丸薬を渡す。

 

「これは……モッドソウル!」

 

「なんだそれ??」

 

「いや、これは……」

 

「そんなことよりも侵入者たちをどうにかしなければな、正面入口で警備の魔法師と侵入者が交戦中だ。まずはそいつらを片付けるぞ。」

 

「あぁ!行こうぜ!!」

 

「よし行くわよ!」

 

「っ!!!これは……。」

 

「どうしたんだよ?一護。」

 

「行かないのかい?」

 

「悪いが、俺は別に行くところがある。」

 

一護はそう言いその場を立ち去ろうとするが、達也が呼び止める。

 

「一護。帰ってくるのか?」

 

「お兄様?それはどう言う…。」

 

「あぁ、そのつもりだぜ。」

 

「……。分かった。行ってこい。」

 

一護はその場を走り去った。

 

「おい、達也。今のは?」

 

「いや、なぜか一護の顔には決心が見えた気がしてな。死ぬつもりなのか聞いただけだ。」

 

「っ!?それなら止めたほうが…。」

 

「言っていただろう?帰ってくると。心配はいらないさ。それよりも、俺たちは正面入口の敵を可及的速やかに排除しなくてはならない。とりあえず行くぞ。」

 

「「「「「「「はい(おう)!!!」」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一護は銃弾の飛び交う中ビルの上を完現術で上りそこに立っている人物に声をかける。

 

「てめぇ…。なんでここにいる!?」

 

「何で…だと…?んなもん決まってんだろうが!!!テメェを殺して。俺が王になるためだァ!!!!」

 

そこにはウルキオラと戦った時に見せた一護の完全虚化の真っ白な姿がそこにあった。

 

「お前、千冬さんの世界で消えたんじゃなかったのか……。」

 

「一護。何寝ぼけた事抜かしてんだテメェは?」

 

「なんだと?」

 

「俺は別にお前の中から出てきたわけじゃねぇよ。」

 

「なら何でここにいんだ!!?」

 

「テメェの胸に埋まってるもんから出てきたんだよ。」

 

「崩石…から…。」

 

「そいつの能力は知ってるだろ?」

 

「心を取り込み願いを叶える…。」

 

「正確には願いじゃねぇ…。心を写す。それが崩石だ。」

 

「心を写す…だと……?どっちにしろテメェが出てくるのはオカシイじゃねぇか!!!」

 

「おかしくなんてねぇよ。お前は思ったはずだ。その崩石の力を使うたびにな…。」

 

「っ!!」

 

「そう!!お前は思ったはずだ!!!まるで虚化の時みてぇだってなぁ!!! 一護。お前は全く成長のねぇガキだ…。今回ばかりは見てらんねぇぜ。死ね。」

 

虚化一護は一護に斬りかかり、一護は手に持ったCADの斬月で防ごうとするが、斬月は一瞬で砕かれ左腕を斬り飛ばされる。

 

「ガアアァァァ!!!」

 

「こんなもんかよ……一護。興ざめだ…。お前はそこで野垂れ死んでろよ。」

 

虚化一護はそう言い残すと一護の左腕を拾い響転を使い、そのまま去っていった。


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