黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第27話

「黒崎くん!大丈夫!?」

 

本部に戻ると真由美が駆けてきて、一護の容態をみる。

 

「別に大丈夫だ。みんな大げさだっての。」

 

「何が大げさなんだ!」

 

摩利が試合の格好のまま飛び込んできた。

 

「馬鹿者!私を庇って自分が怪我するなんて本末転倒もいいところだ!!」

 

「ちょっと摩利。それは言い過ぎよ?」

 

「う、だが黒崎、自分の体は大事にしろ。」

 

「あぁ、悪かったって。次から気をつけるよ。」

 

「全く…。私のせいでお前の初めての九校戦が台無しじゃないか…。」

 

「別に渡辺さんのせいじゃねぇよ。あれは事故じゃねぇか。」

 

「だが…。」

 

「何グチグチ言ってんだよ?アンタらしくねぇぜ。」

 

「そうよ摩利。それにあのままだったら摩利も大怪我だったわ。」

 

「二人共、それぐらいにしておけ。黒崎の治療が先だ。」

 

「十文字くん…。」

 

「ま、別に固定するだけでいいけどよ。」

 

「お前は、まだそんな戯けたことを言ってるのか!骨折しているんだぞ!」

 

「骨折で騒ぎすぎだっての。」

 

「あと、黒崎くんの代役を立てないとね…。」

 

「そうだな…。」

 

「別にいいって、片手でやるしよ。」

 

「く~ろ~さ~き~!!!!」

 

「お、落ち着いて下さい!渡辺先輩!!」

 

「そうよ摩利!貴方も背中を打撲してるんだから!バトルボードの三位決定戦とミラージュバットが残ってるんだし、回復に努めなさい!」

 

騒々しくなった場で達也が口を出す。

 

「まぁ、一護なら確かに平気だろう。」

 

「司波まで…何を言ってるんだ!」

 

「いえ、自分は事実を述べたまでです。」

 

「黒崎くんが片手で新人戦をやれるって言うの?」

 

「やれるのではなく。優勝します。」

 

「だけど…。怪我人に出場させるのは対外的にもまずいわ。」

 

「別に本人が良いって言ってるから大丈夫だろ。怪我だって別に報告しなけりゃ対外的もクソもねぇって。」

 

「んーー………。十文字くんはどう思う?」

 

「俺としてはそこまで言うのならやらせてみればいいと思っている。」

 

「本気で言ってるのか!?十文字!」

 

「あぁ、怪我をしたのが俺だとしてもそうしたいと思うからな。だが無理はするなよ。黒崎。」

 

「あ、あぁ。悪いな。」

 

「構わん。だが、とりあえず治療はしておけ。テープと魔法でガチガチに固めておけよ。」

 

十文字はそう言い残し去っていった。

 

「黒崎。くれぐれも!!無茶はするなよ。それと、助かった…。ありがとう…。」

 

「黒崎くん。無理そうだったらちゃんと言ってね。」

 

二人もそのまま十文字を追うように去っていった。

 

「一護さん本当に大丈夫なのですか?」

 

「あぁ、心配はいらねぇよ。」

 

「意外だな。」

 

「何がだよ?達也。」

 

「いや、お前のことだから、面倒くさがって辞退するかと思っただけさ。」

 

「いや、まぁ俺も楽しみたかっただけだ。」

 

「渡辺先輩のためだろ?」

 

「? どういうことですか?お兄様。」

 

「渡辺先輩に自責の念を感じさせないためだろう?」

 

「さぁな。」

 

「とぼけてもいいが、優勝しなければその無茶も意味がなくなるぞ。」

 

「分かってるっつの。別に元々両腕使うつもりなんてなかったっての。」

 

「クラウドボールはともかく、モノリスコードではわからんぞ。あのクリムゾンプリンスとカーディナルジョージが相手だからな。」

 

「俺たちと当たる前に落ちるかもしれねぇだろ。」

 

「それは無いという事ぐらいは予測がついてるだろ?」

 

「別に平気だろ。モノリスだってどうにかするさ。」

 

「フッ。楽しみだな。」

 

「……とりあえず固定してくる。」

 

「では、深雪が手伝います。」

 

「俺は先の原因を調べてくる。」

 

「あぁ、頼む。」

 

こうして三人は本部を出てそれぞれの目的の場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

治療を終えた一護は観客席に戻ろうとしていた。

 

「腕は大丈夫かい?」

 

「一条か、別にたいしたことないぜ?」

 

「それにしては随分と庇っているように見えるぞ。」

 

「気のせいだろ。」

 

「ということは、競技には出場するのかな。」

 

「問題がねぇのに引っ込むわけねぇだろ。」

 

「それもそうか…。それじゃあ楽しみにしてるよ。」

 

「あぁ、じゃあな。」

 

一護はそう言い観客席へと戻っていった。

 

「あ、将輝。こんなところで何をしてるんだ?」

 

「ジョージか。いや、黒崎一護を見かけたからな。彼の様子を知るために話してたんだ。」

 

「あぁ、バトルボードの女子を庇って負傷したって聞いたけど。競技には出れそうなの?」

 

「さぁ、本人は出ると言っていたけど……左腕は完全に折れててるみたいだ。」

 

「そんな調子で僕たちの相手をするつもりなのか……。黒崎くんなら僕たちでも楽しめると思ったのにな。」

 

「油断はしない方がいいぞ。ジョージ。片手でもそこそこに厄介そうだ。」

 

「油断なんてしないよ。将輝。ただ、ベストの状態の彼とやりたかっただけだよ。」

 

「まぁ、同感だな。」

 

三高の一年エースの二人はそう言いながら自分たちの本部へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一護が観客席に戻るとほのかが一護に気付き、声をかける。

 

「黒崎くん!?大丈夫なの?」

 

「あぁ、心配かけたな。」

 

「あれで大丈夫なんてお前どんだけ大丈夫なんだよ。」

 

「うるせぇよ、レオにだけは言われたくねぇっての。」

 

「なんでだよ。」

 

「硬化魔法のおバカさんにはそりゃ言われたくないでしょうよ。」

 

「なんだとテメェ!」

 

「それより、ほんとに平気なの?黒崎くんの腕、折れてたように見えたけど。」

 

「ちょっと派手に打撲しただけだ。別に心配いらねぇって。」

 

「それならいい…。」

 

「打撲かぁ…。確か一護の競技って二日後だよな?それまでに治るのかよ?」

 

「余裕だって。それより次はアイスピラーズブレイクだろ?十文字さんと千代田さんの出番じゃねぇか。」

 

「そうなの!千代田先輩の地雷原はものすごい速さでーーーー」

 

「雫にスイッチ入っちゃった…。」

 

一護たちはそのままアイスピラーズブレイクを観戦し、十文字と千代田が優勝するのを見届けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして二日が経ち、一護は右腕治さずにクラウドボールに望むこととなった。

 

「あら、黒崎さんではありませんか。」

 

「一色か、お前もこの競技に出るんだな。」

 

「そうですけれど、貴方、怪我をしてるんじゃなかったの?」

 

「悪いがピンピンしてるぜ。」

 

「そう。ま、精々頑張りなさい。」

 

「なんだよ、応援してくれんのか?」

 

「別にそういうわけじゃないわよ。ただ、顔見知りとして社交辞令を言ってあげてるだけ。」

 

「素直じゃねぇな。」

 

「私は優勝するわ。私は実績のある人か家柄のいい人にしか興味ないの。だから、この競技が終わった後は話しかけてこないで。」

 

そう言い一色は控え室へと向かっていった。

 

「随分と取っ付きづらいやつだな。白哉の方がまだ融通がきくぜ…。」

 

一護も控え室へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に大丈夫かしら…?」

 

一高の本部で真由美と摩利は心配そうに競技場へ入場する一護を見ていた。

 

「私のせいでもあるからな…。少し罪悪感がある。」

 

「大丈夫ですよ。」

 

「達也くん……。」

 

「はい、一護さんはきっと勝ちますよ。」

 

「司波妹…。」

 

そして、一護の試合が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(さて、試合はどうすっかな。完現術はあんまり使いたくねぇけど、このケガで贅沢言ってらんねぇしな。最初は行けるところまで自己加速術式で行って、一点取られたら完現術を使えばいいか。)

 

 

「ふぅー。本当は二刀流でいけたら楽だったんだろうけどな。」

 

一護はそうぼやきながら所定の位置へ向かった。そして試合開始のブザーがなる。

 

(20秒で一つずつ増えていくんだよな?なら簡単だろ。全部一発で決めればいいだけだ。)

 

一つ目のボールが飛び出し相手が魔法で一護の居ないところへボールを跳ね返す。一護は自己加速術式を使い、その場へ行き霊圧全開で跳ね返す。

 

「うおらぁ!!!!」

 

跳ね返ったボールはものすごいスピードで相手へ向かい、

 

「グハァ!!」

 

「えっ?」

 

顔面に直撃した。

 

「「「………。」」」

 

「…………ふ、負傷退場より、一高の勝利となります…。」

 

「……お、おう…。」

 

歴代九校戦史上最高にしらけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

控え室に戻ろうとすると通路に一色がおり、半目でこちらを見ていた。

 

「……。」

 

「…なんだよ。」

 

「…いえ、別に…。アレが貴方のスタイルかしら。」

 

「んなわけねぇだろ。アレぐらい跳ね返せると思ったんだよ。」

 

「あのボールは当たっても怪我しないように出来てるのよ?貴方馬鹿じゃないの?」

 

「真顔で言うのやめろ。ったく、みんな魔法に頼り過ぎなんだよ…。素の状態である程度動けるようにしてから魔法を使えってんだ。」

 

「それについては同意するわ。次は私の出番ね。精々そこで観て驚きなさい。」

 

「へいへい、負けたら格好悪いからな。」

 

「私が負けるはずないじゃない。」

 

一色は自信ありげにそう呟き堂々と試合会場へ出てった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「黒崎の心配はいらないみたいだな…。」

 

「……そうね…。」

 

「…一護さん。」

 

「低反発ボールで人間に当ててあそこまで跳ねさせるとはな。下手すれば死ぬな。」

 

「クラウドボールは優勝か。一高はもう安全圏に入ったな。」

 

「…そうね。」

 

真由美を始めとする三巨頭と司波兄妹は新人戦のクラウドボール男子の部の優勝を確信した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方化物?」

 

「いきなり失礼なこと言ってんじゃねぇよ。」

 

「対戦相手を全員戦闘不能にするってどんな神経してるの?」

 

「別に禁止されてなかっただろ。」

 

「道徳的にしてはいけないとわからなかったわけ?」

 

「避けられねぇ方が悪い。」

 

「貴方最低ね…。」

 

「お前だって決勝意外3桁得点で無失点の一方的な試合だったじゃねぇか!そっちの方がよっぽど化物だろうが!」

 

「女性に化物だなんて失礼過ぎよ!貴方モテないでしょ。」

 

「余計なお世話だ!ったく。」

 

「ま、まぁ、優勝しましたから…?今度からはそっちから話しかけても…いいですよ?」

 

「なんだそりゃ。素直じゃねえ奴だ。」

 

「なっ!!うるさい!もういいです!」

 

一色はそのままプンスカと怒って去って行った。

 

「何だったんだ…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一護が一高の本部に戻ると、皆が唖然とした顔で一護を見ていた。

 

「「「……。」」」

 

「おめぇら、なんか言いたげだな、おい。」

 

「いや、だってねぇ…。骨折しながら優勝するなんて思わなかったのよ。」

 

「しかもやり方がな…。」

 

「良いだろ?別によ。早く終わったんだし。」

 

「今回のクラウドボールは史上最短だそうだ。」

 

三巨頭の言葉に皆が一様に頷いていた。

 

「次はモノリスか…。」

 

「クラウドボールほど簡単にはいかんだろうな。要注意は三高。それにあれはチーム戦だからな。」

 

「わかってるって。まぁ、任せとけよ。」

 

一護はそう言いホテルへと戻っていった。

 

(ク……。霊圧を使うたびに崩石が暴走しようとしやがる…。まるで……虚化みてぇじゃねぇか…。)

 

去っていく一護の顔には冷や汗が流れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一護。昨日は圧倒的だったな。」

 

「達也か、まぁ、アレぐらいは普通だろ。」

 

一護ら朝食を取るためにホテルの廊下を歩いていると

後ろから達也が声を掛けた。

 

「何が普通だ。対戦相手が全員負傷退場なんて中々無いぞ。何校かは九校戦本部に反則だ、と訴えがきてたらしいぞ。」

 

「俺だってしたくなかったっての。」

 

「余裕がなかったか…。」

 

「あぁ、流石に痛いしな。」

 

「治さないのか?」

 

「コイツの力は使いたくねぇ…。」

 

「俺が治してやろうか。」

 

「別に良いって、人に痛い思いさせてまで治そうなんて思わねえよ。」

 

「そうか…。今日深雪の出場する競技がある。お前もみろよ。」

 

「あぁ、わかった。」

 

2人はそのまま朝食を取りに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「深雪。準備は良いか?」

 

「はい、お兄様。」

 

「頑張れよ。」

 

「はい!一護さん。」

 

深雪は一護と達也に見送られ、アイスピラーズブレイクの会場へと入っていった。

 

「そういや、達也の魔法は何度か見たことあっても深雪の魔法はあんまりねぇな。」

 

「そうか、ならよく見るといい。」

 

達也がそう言うと、試合開始のブザーが鳴り、深雪がCADの操作をして魔法を放つ。

自陣の氷が冷却され、敵陣の氷が加熱される。

 

「なんだありゃ!?」

 

「インフェルノ。Aランク魔法だ。」

 

「スゲェな。流石だ。」

 

「魔法の規模とサイオン量はお前に負けるが、速度と強度は遥かに深雪の方が上回るぞ。だが、お前の規模は広すぎる。それを絞るだけで強度はかなり改善されるが。」

 

「俺は魔法を使うタイプじゃねぇんだ、アレで別に良いんだよ。」

 

「それなら良いが…。どうやら深雪の試合は終わったようだな。」

 

「他の奴らより随分早いな。」

 

「当然だ。それ程差があるんだ。深雪と周りにはな。」

 

すると深雪が帰ってきて、こちらへと向かってきた。

 

「ちゃんと見ていただけましたか?」

 

「あぁ、とても素晴らしかったよ。流石だ。」

 

「圧巻だったぜ。」

 

「ありがとうございます!」

 

二人は深雪を褒め称え、深雪は顔を紅く染め、二人に礼を言う。

 

「それじゃあ、俺はホテルで休んでるぜ。」

 

「わかった。気を付けろよ。」

 

「何にだよ?」

 

「色々だ。」

 

「ったく、おめぇは深夜さんと同じで俺に教えなさ過ぎだ。」

 

「一応親と子だからな。」

 

「はぁ…。わかったよ、それじゃあな。」

 

一護はホテルへ戻って行った


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