ちょっと手を抜いたッス!!
「スゲェな…。」
一護は達也の魔法を見て、そう呟いた。
「一護くん…。すみまっ…。ゴフッ…。」
穂波は吐血しその場に倒れて気を失う。
「穂波さん!?」
「まずい。急いで治療せねば。」
風間が穂波の容態を診て、そう判断する。
「俺が運ぶ。悪いが先に戻るぜ、」
「黒崎君?待ちたまえ、車の方が…。」
そう言う風間の前に達也は手をかざし、視線を向ける。
「ん、なるほど。君が平気というならそうなのだろうな。」
「頼むぞ。一護。」
「あぁ。」
一護は穂波を抱え、先程の基地へと戻る。
「深夜さん!深雪!」
「一護さん!」
「一護くん…。っ!穂波。いったい何があったのか教えてくれないかしら?」
一護は深夜に、穂波が腹を撃たれたこと。敵からの砲撃を防ぐ為に無茶をしたことを話した。
「そう…。彼女は助からないわ…。」
「っ!なんでだよ!!」
「彼女は調整体。元より長くは生きられない。」
「そんなのやってから決めろよ!!アンタがやらねぇなら俺が治す!!」
「一護さん…。」.
一護はそう言い横たわらせた穂波に右手を向ける。
(確かに元々俺にはこういう鬼道っぽいやつの才能はない…。だが、今の俺には崩石がある。霊圧を喰らわせれば、さっき俺の体を治したみてぇに、それに見合った分の力は貸してくれるはずだ…。)
一護は霊圧をひたすら崩石に喰わせる。
「ハアアァァァァ!!!!!」
深夜はその力を目の当たりにし、驚愕する。
(なんなの?この圧力は…。サイオンが吹き荒れてる。いや、それ以外にも何かが混じってる気がするわね。この子…一体…。)
すると、穂波の体が光り始め、輝きを増していく。そして光が消えると、穂波はゆっくりと目を覚ました。
「ん、ここは…。」
「おい!大丈夫かよ!」
「一護くん!?それに…私はアレだけの障壁魔法を使ったのにどうして…。」
「それは、一護さんが治してくれたのです!!」
「一護くんが…。ありがとう。一護くん。」
「いや…。構わねぇさ…。」
ドサッ
一護は膝から崩れ落ちるようにその場に倒れた。
「「「一護くん(さん)!!」」」
そのまま一護は意識を失った。
「う…。俺は…。また知らない天井だ…。」
「目が覚めたのね。」
「っ!深夜さん!!?」
一護が目を覚ますと深夜が隣で座っていた。
「深雪の方が良かったかしら?」
「いや、そういうわけじゃ…。ってそんなことより!穂波さんは!?それと、達也たちはどこにいんだ?」
「落ち着きなさい。穂波さんは無事よ。達也も戻って来て、今は深雪さんの傍にいます。」
「そうか…よかった。」
「それで、貴方のその力。完現術というわけではないようね。その崩石の力かしら?」
「っ!」
「貴方は穂波の命の恩人。他言はしないわ。」
「わかった。…この崩石は…周囲の願いを叶える能力がある。」
「願いを……。」
「あぁ、俺の力を崩石に喰わせて、それを元に力を貸してもらった。」
「穂波の容態だけど、彼女は魔法が使えなくなったわ。何故か不思議に思ってたけど。はっきりしたわ。」
「っ!!魔法が…。俺のせいか……。」
「いえ、貴方のお陰よ。恐らくその崩石は、貴方の治すという願いではなく、穂波の普通の人として生きたいという願いを叶えたんでしょうね。体が治ったのではなく、組み替えられた。といった方がいいでしょうね。その証拠に、穂波の体からは調整体としての全てが消えていたわ。」
「そうだったのか…。」
「だから礼を言うわ。ありがとう。」
「いや、止してくれ。それよりも戻ろうぜ。深雪や達也の所によ。」
「ええ、そうね。」
2人は3人の元へと歩いて行った。
一護達が3人と合流し、穂波が一護に頭を下げた。
「本当にありがとう。一護くん。そして、申し訳ありません。奥様。私はもう、護衛として働く事は出来ません。」
「穂波さん…。」
「良いのよ。これからは貴女の好きに生きればいいわ。」
「っ…。ありがとうございます!」
「お母様。それで、一護さんの件を…。」
「あぁ、そうだったわね。」
「?なんのことだ?」
「いえ、一護さんがサイオン枯渇で気絶した後に、一護さんを魔法科高校に進学させよう。という話になっていたのです。」
「魔法科高校?なんだよそれ。」
「そんなことも知らないのか?一護。余程の俗世から離れて生活していたのだな。」
「ま、まぁな…。」
「魔法科高校とは、簡単に説明してしまえば、第一高校から第九高校まである魔法専門の学校だ。ただ、相当に難しいぞ。」
「え!無理だろそれ!!」
「なので私が直々に教えるのよ。」
「え"、深夜さんが…?」
「あら、不満そうね。」
「め、滅相もありません…。」
「ということだ。一護。勉強頑張れよ。俺も一応そこへ行く予定だが、基本的な魔法実技は苦手でな。俺は深雪と違って落ちるかもしれんが。」
「そんなことはありません!お兄様は必ず受かります!」
「それは流石に受けてみないとわからないさ。」
(ん?深夜さん、怒らねぇな…。)
「何かしら?一護くん。」
「い、いや。」
「別に良いわ。言いたいことは分かるわ。」
「……。」
「あの子達はアレが収まるべき形なのよ。それよりも、貴方は自分の心配をしなさい。」
「は、ハイ…。」
5人は翌日に沖縄から東京へと戻り、達也と深雪と一護は同じ中学へと通い、無事卒業。その期間では、深雪、達也、穂波が3人で暮らし、そして一護は、深夜の元で、魔法の常識や知識を詰め込まれ、地獄を見ることとなった。そして、深夜から四葉の話を聞き、一護は達也と深雪の手助けをすることを決める。
しかし、しばらく経った頃深夜は病気を悪化させ、死の宣告をされる。が、一護が彼女を崩石の力で治し、彼女は一命を取り留めた。
一護は、駅で待ち合わせをしていた。
「早く着き過ぎたか?まだ20分くらいあるな…。喫茶店にでも入るか?」
「一護さん!!」
「よぉ深雪。」
「はい!お待たせしました。」
「達也も久しぶりだな。」
「あぁ、久しぶりだな。一護。お前が中学の卒業が確定した瞬間に学校に来なくなったからな。」
「それは、仕方ねぇだろ。そうでもして勉強に専念しなきゃ一高に受からねえしよ。」
「それもそうだな。それで、お前今はどんなCADを使ってるんだ?」
「一応穂波さんが使ってたのを貰った。」
「そうか、ならどんな形が良いんだ?」
「ん?どういうことだよ?」
「一護さん、お母様から聞いていないの?」
「何がだ?」
「いや、また後でまとめて話すことにしよう。」
「ったく、で?今日はどうすんだ?呼び出されただけで、行き先とか聞いてねぇぞ?」
「そういうことでしたか。お兄様。」
「あぁ、納得がいったな。これからFLTの研究所に行き、お前専用のCADを作るということでお前を呼び出したんだが。」
「そうなのか!?深夜さん何も言ってなかったぞ!」
「そうみたいだな。とりあえず行くぞ。」
「あぁ。」
3人はFLTへとむかっていった。
「ようこそいらっしゃいました。御曹司にその妹君。して、そちらの彼が?」
「はい、黒崎一護です。」
「いやぁ!!よろしく頼みます!黒崎くん!!」
「お、おう…。アンタは?」
「こいつはいけねぇや。俺はここの主任の牛山と言います。よろしくおねがいします!!」
「俺は黒崎一護だ、別に敬語なんて使わなくてもいいぜ?」
「いえいえ、御曹司のお友達にそんなことはできませんよ。それで、貴方のCADを作りたい、と御曹司から聞いてましたが。形状とかに希望はありますかい?」
「あぁー、そうだな…。そういや、刀のCADもあるんだろ?」
「ありますけど…。武装一体型のCADですが…大丈夫ですかい?」
「あぁ、俺は魔法ってより、接近戦の方が得意だからよ。普通の魔法を使うには貰った腕輪を使いてぇし。刀の形状って何でもいいのか?」
「えぇ、まぁ無理のない範囲でしたらなんでも構いませんが…。」
「一護さんは、何か既に思い付いてるのですか?」
「柄のない剥き出しの出刃庖丁の形って出来るか?かなりデカく作って欲しいんだけどよ。柄の代わりに頑丈な包帯を巻いて欲しいんだけどよ。」
「出来ますがー…。随分変わった形っすねぇ。名前はどうします?」
「斬月で頼む。」
「わかりました。ある程度の魔法でしたらこちらでインストールしますが?」
「いや、それは自分でやるから大丈夫だ。」
「わかりました。それじゃあ一護さんのデータをとりますんで、こちらへどうぞ。」
「わかった。じゃあ、2人ともちょっと行ってくる。」
「わかった。俺と深雪は少し買い物に出るから、終わったら連絡をくれ。」
「分かった。それじゃあ後でな。」
「はい、それでは後ほど。」
達也と深雪はそのまま出て行った。
「やっと終わったか〜…。達也たちに連絡入れねぇとな。」
一護は携帯を取り出し、達也に連絡を入れる。
prrrrr prrrrr
「よぉ、達也か?……あぁ、それでこれからどこへ向かえばいい?……おい、大丈夫なのかよ?……わかった。駅だな?それじゃあ今から向かうわ。」
ピッ
「さて、とっとと向かいますか。」
一護は歩き出し、タクシーで駅へ向かった。
「達也、深雪。」
「一護か。それで完成はいつ頃だって?」
「学校始まってすぐだって言われたな。送り先はお前のところだから頼むわ。」
「あぁ、わかった。それで、お前はこれからどうする?」
「そうだな…。腹減ったから帰るかな。もう結構遅い時間だしよ。」
「それでしたら、私達の家に泊まりませんか?夕食をお作りしますよ?」
「お、良いなそれ。達也も良いか?」
「俺は構わないが、穂波さんに連絡をしないとダメだろう?深雪。」
「そうでした。今電話します。」
「達也、穂波さんは家政婦やってんだよな?」
「あぁ、一応住み込みでな。やってることは今までと大して変わらないが、魔法が無くても、それなりに満足しているそうだ。」
「そうか…。」
「お兄様、一護さん。許可が下りました!」
「そうか。なら早速帰るとしよう。」
「おし、そんじゃあ行くか。」
「ただいま帰りました。」
「お邪魔します。」
「おかえり2人とも。いらっしゃい一護くん。ご飯出来てるから3人とも手を洗ってらっしゃい。」
「はい。」
3人は手を洗い席へ着く。
「スゲェな。美味そうだ。」
「私と会うのは沖縄以来だけど、変わってないわね。」
「そうか?あんまり意識したことねぇけどよ。」
「それは確かにそうだな。俺はともかくとして、深雪はあの頃に比べてかなり変わったが。」
「そうでしょうか?私も自分のことはよくわかりません。」
「学生なんて少し見ないだけで、結構変わるものなのになぁ。まぁ、一護くんは確かに中学生にしては大人びてたかもね。それも変に背伸びしてる感じじゃなくて、自然な感じで。」
「そ、そうですか?」
「何故に敬語?」
「いや、何でもねぇ。」
「それで?今日一護くん用のCADを頼みに行ったんでしょ?どんなの作ったの?」
「武装一体型CADだ。」
「へぇ、汎用型のは作らないの?」
「穂波さんから貰ったやつが使えるしな。正直あれが問題なかったら新しいのは使うつもりはあんまりないな。」
「アレまだ使ってたの!?今になってはアレはかなり古いと思うんだけど。」
「そうか?別に使えるんだから大丈夫だろ。そうだ、後で調整してくれよ。達也。」
「あぁ、分かった。」
「それにしても嬉しいなぁ〜。まだ私の使ってくれてるなんて。」
「まぁ、今では慣れたもんだしな。折角貰ったものだからな。大事に使うさ。」
「うんうん。ありがとね。」
4人は夕食を終え、一護は達也の部屋でCADの調節をして貰っている。
「よし、これで良いはずだ。」
「ん、サンキューな。」
「それにしても、前とは比べ物にならない程の魔法力だな。まぁ、速度は少し遅めだが、規模が桁違いだ。それだけなら深雪を上回るな…。」
「まぁ、それでギリギリ一科生だけどな。それよりもお前が二科生ってのが驚きだぜ。」
「俺の特有の魔法ならまだしも、基本工程は苦手だからな。俺としては二科生でもよく受かったと思ってるんだがな。」
「でも、お前ならペーパーでは満点近いだろう。」
「それをうち消すほど実技が苦手なんだ。」
「俺としては実感わかねぇな。」
「まぁ、戦闘では遅れをとるつもりはないがな。」
「お前に勝てるやつの方がすくねぇよ。」
「お前はどうだろうな……。」
「さぁな…。」
するとそこに深雪が入ってきた。
「もう、済みましたか?」
「あぁ、それじゃあ深雪。一護を部屋へ案内してやってくれ。」
「はい。わかりました。一護さん。どうぞこちらへ。」
「おう。悪いな。」
一護は部屋へ案内されそのまま一日を終えた。