黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

20 / 48
調べてもワケ分からんたい




第20話

(さて…また変なとこに来ちまったが…。前とは状況が全然違う…。代行証も持ってなければ、前のISみてぇに、なんか知らない間にこの世界の力を持っていた。なんてこともねぇ…。魔法って言ってたな…。魔力を消費して放つって感じか?なら鬼道をなんとかできるようにして、魔法って言い聞かせるのがベストだが…。果たして俺に鬼道が使えんのか?)

 

「だぁーー!!!!考えても仕方ねぇ…。とりあえず寝る!!」

 

一護は電気を消し、布団を被り、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコン コンコン

 

「…ん?」

 

コンコン コンコン

 

「一護さん?まだ寝ていらっしゃるのかしら?」

 

深雪が扉越しに声をかけた。

 

「わ、悪い!今起きた!!」

 

「いえ、お気になさらないでください。30分後に朝食なので、それまでには準備をしてくださいね。」

 

「わかった。態々悪いな。」

 

一護は顔を洗い、寝癖を直し、用意された服を着て昨日案内されたリビングへと向かった。

 

「おはようございます。一護さん。」

 

「あぁ、おはよう。あれ?達也とか深夜さんとかは?」

 

「お母様は今日は調子が悪くて部屋でお休みになっています。あの人は外で鍛錬をしていました。」

 

「おいおい、調子が悪いって、今日の魔法の練習はどうすんだよ。」

 

「それなら私に聞いてください。」

 

「深雪にか…?」

 

「あ!今、私に出来るのか?って思いましたね?いいでしょう。朝食後に見せてあげます!」

 

「お、おぅ…。頼む…。」

 

そして、鍛錬から戻った達也と、穂波と4人で朝食を済まし、深雪と達也と一護は庭へと出た。

 

「それで、魔法を教えてくれ。」

 

「焦らないでください。まずは、魔法というものをお教えしましょう。」

 

深雪がそう言うと達也は、水の入ったバケツを置いた。深雪は、携帯端末を手に取り、目を閉じる。

 

「凍りなさい。」

 

するとバケツの中の水がすべて凍った。

 

「うぉ!すげぇ!!これが魔法か。」

 

(今、霊圧とも違う何かを感じた…。これがこの世界の力か?)

 

「でも、その携帯見たいのは必要なのか?」

 

「この程度の水だと、CAD無しでもすぐに凍らせられますけどね。初めてだと聞いていたので、一応模範として使いました。」

 

「CAD?」

 

「はい、術式補助演算機、英語でCasting Assistant Device。それの簡略化された呼び方がCADです。」

 

「じゃあ、それがないと大きな魔法は使えないってことか?」

 

「使う事は可能ですが、時間がかかり過ぎてしまいます。ですから、魔法を使う人間の技能はCADを込みで評価されます。」

 

「んー、じゃあ俺もCADが必要ってことだよな?どっかで買うのか?」

 

「いや、それはこちらから貸し出そう。」

 

達也は一護に腕輪の形のCADを差し出した。

 

「これ、CADなのか?深雪の奴と全然形が違うんだけどよ。」

 

「これから説明しよう。まず魔法には〔加速・加重〕〔移動・振動〕〔収束・発散〕〔吸収・放出〕の4系統8種に分けられている。更にその中にも2種類ずつ分かれていて、計16種となるわけだが…。まぁ、この話は追々として、汎用型と特化型について説明しよう。汎用型は魔法の系統を問わずに魔法を99種入れることができる。逆に特化型は同じ系統の魔法を9種入れることができる。」

 

「なら、汎用型の方がいいじゃねぇか。なんで、特化型なんてのがあるんだよ?」

 

「特化型は汎用型に比べて魔法の発動速度が早いんだ。そして、CADの形状について、それは魔法の発動を補助出来るものであればどんな形であろうとCADだ。指輪や腕輪、ネックレスやイヤリング、刀の形状だってあるぞ。」

 

「すげぇな!」

 

(科学の進歩って奴か…。俺の世界の現世とはだいぶかけ離れてるな。)

 

「だが、魔法を使うには魔法演算領域というものが必要だ。これがなければ魔法を使うことすらできない。」

 

「演算領域?俺にそれがあるのか?」

 

「それを今から調べるんだ。魔法の使用には魔法演算領域が必要。そして、魔法というのはエイドスの情報を己のサイオンで書き換える。というものだ。」

 

「エイドス?サイオン?」

 

「簡単に説明すると、エイドスとはサイオンで出来た情報のこと、そしてサイオンは心霊現象の次元に属している非物質粒子。ということを頭に入れておいて欲しい。」

 

「エイドスを自分のサイオンで書き換えるのが魔法…。なんか難しいな。」

 

「例えば、ものを温めるときに、火を当てて温めるのではなく、分子を激しく振動させ温度を上げる。ということだ。」

 

「自分が火の役割をするってことか。」

 

「そうだ。物事の事象には何か原因がある。物が運動するのであれば、ものを叩かなければならない。何かが燃えるのであれば、火を着けなければならない。その物事のきっかけを起こすのが魔法だ。」

 

「なるほどな、なら、何もない場所から何かを創れたりはしないわけか。」

 

「その通りだ。先ほど俺が渡したCADは振動魔法が1つだけインストールされている。一護はそれにサイオンを流し込み、先ほどの氷を破壊してくれ。」

 

「わかった…。」

 

(サイオンを流し込むか……。霊力を無理やり打ち込むってやり方でいけるか…?)

 

「ハアアアァァァ!!!!」

 

ボカン!!!

 

「「え??」」

 

「っ!?」

 

「わ、悪い達也。なんか壊れちゃった…?」

 

「大丈夫ですか!?一護さん!!」

 

「いや、別に構わない。それより怪我はないか一護。」

 

「ちょっと腕が切れたな。まぁ、これくらいは大したことねぇな。」

 

「一応穂波さんに言って手当てをしてもらってくれ。」

 

「わかった。」

 

一護は傷口を抑え、そのまま家に入っていった。

 

(バカな…。CADが耐えきれなかっただと…?だが、サイオンは感じられなかった…。ということは…。)

 

達也は一人、思考していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(霊圧じゃダメだったか……。参ったな…。どうすっか…。)

 

一護は手当てを終え、自室へと戻り、魔法の対策を考えていた。

 

(サイオンと霊圧は別物って分かっただけでも上々か…。少なくとも完現術の事がバレねぇようにしねぇとな。だけど、使う分には魔法で済ませられそうだ。その為には、達也たちの言う、魔法を使えなきゃならねぇが…。今俺にあるのは胸に埋め込まれてる崩石だけだしな…。)

 

「っ!!そうか!!崩石!浦原さんは、エネルギーから異なるエネルギーを作る。そう言ってたはずだ…。なら、霊圧からサイオンを作るしかねぇ…。まずは崩石に霊圧を集中させて…。」

 

一護は目を閉じ霊圧を胸に埋め込まれた崩石に集中させていった。

 

(お、キタキタ!コップに水が溜まっていってるような感覚だ……。そこからさっきの深雪が使ってた力をイメージする……。よし!順調だ!!水に色がついたみてぇだ。それをストローで…吸い出す!!!)

 

一護の体から何かが吹き出す。

 

「すげぇ、これがサイオンか……。」

 

すると廊下から誰かが走る音が聞こえ扉を開く。

 

「一護!!どうした!!」

 

「うおっ!い、いや。サイオンの感覚がつかめたからよ。もう一回やらしてもらっていいか?」

 

「……。あぁ、わかった。もう一度庭に来てくれ。俺は新しいCADを持ってくる。」

 

「あぁ、悪いな。」

 

一護は部屋を出て庭へと向かう。一方達也は深夜の元へ向かうために足を速めた。

 

コンコン

 

「達也です。」

 

「入りなさい。」

 

「失礼します。」

 

「何の用かしら?見ての通り少し具合が悪いのですが。」

 

達也は寝ている深夜の近くへ行き、先程のことについて話す。

 

「先ほど一護の部屋からかなりのサイオン量を感知し、部屋に入ったところ、彼からとてつもないほどの量のサイオンが吹き出るのが見てとれました。」

 

「そう…。それがどうかしたのかしら?」

 

「始めにCADを使わせたところ、サイオンが感知されなかったにもかかわらず、CADが何かの負荷に耐え切れずに破壊されました。」

 

「サイオンが感知されずに…それはおかしいですね。」

 

「自分はそれを、プシオンだと予測し、一護に詳細を聞こうと部屋に向かう途中で先の事がおきました。」

 

「なるほど、わかったわ。それで…貴方の言いたいことは何かしら?」

 

「……。一護の領域干渉力が尋常ではありませんでした。一護の発生させた領域干渉区域の中では並みの魔法師では魔法を使うことは、おそらく不可能でしょう。」

 

「そう…貴方もですか?」

 

「いえ、私は可能です。」

 

「そう、なら別に構わないわ。貴方が監視しなさい。」

 

「わかりました。」

 

達也は深夜に一礼してから部屋を出た。

 

「黒崎一護くん、ねぇ……。本格的に調べたほうがいいかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝食時に深夜が一護へ声をかけた。

 

「一護くん、魔法の調子はどうかしら?」

 

「昨日、中々うまくいったんだ。基本的なことなら問題ないらしい。得意分野は収束と加速っぽいって言われたな。」

 

(多分月牙天衝と瞬歩のおかげでイメージがしやすかったからか…。)

 

「へぇ、中々順調なのね。」

 

「あぁ、まぁな。」

 

こうして朝食を終えた。

 

「深雪さん。今日の夜、黒羽さん主催のパーティーがあります。今日はさなたが行きなさい。達也も連れてね。」

 

「っ!!はい。」

 

「それと一護さん。今日は穂波さんと魔法の練習をしなさい。」

 

「あぁ、分かった。」

 

一護は廊下を歩いていると後ろから深雪が声をかけてくる。

 

「一護さん。このあとはどうお過ごしになるんですか?」

 

「ん?あぁ、魔法について少し勉強したいと思ってるぜ。」

 

「そうですか。では、わからないことがあれば何なりと聞いてください!」

 

「おう、ありがとな。」

 

一護はそのまま自室へ戻っていった。

 

(魔法での戦闘はもう少し慣れればどうにかなりそうだ。ただ、瞬歩ほど早く動けねぇし、月牙ほど力を集められちゃいねぇ…。これならまだ完現術の方が全然使えるな。もし何かあったら、移動は完現術の方が良いな。攻撃は仕方ねぇから…魔法は面倒だし、殴るか。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜になり、一護と穂波は庭に出て魔法の訓練をしていた。

 

「じゃあ一護くん。これから訓練をはじめるけど、どのくらいの魔法が使えるようになった?」

 

「まぁ、基礎ならそこそこ、自己加速術式なら中々速度だぜ。」

 

「ふ~ん。成程。なら、それを使って武術を教えるわ。」

 

「武術…?喧嘩ならそこそこに強いつもりだぞ?」

 

「アハハ。魔法を使いながら戦うのは大変なのよ?」

 

「じゃあお互いに撃ち合いましょうか。」

 

「アンタ、大丈夫なのかよ?」

 

「えぇ、少しは平気よ。本気を出しても構わないわ」

 

「そうかよ、まぁ、いくら強くても本気は出したくねぇけどな。」

 

「紳士なのね。」

 

「うるせぇよ。」

 

「では、来なさい。」

 

一護と穂波は構えをとり、お互い向かい合う。一護は達也から貸し出されたCADを使って、自己加速術式を使い、自分の動きを速める。

 

(っ!確かに得意にしてるだけはあるわね。中々展開速度が速い…。さて、武術は習っているのかな?)

 

「ふっ!!」

 

一護は一発で気絶をさせようと首の後ろを狙う。

 

(ん、思い切りは中々ね。じゃあ今度はこっちから行くわよっ!)

 

穂波は一護にストレートを放ち、一護が躱す。

 

(へぇ、驚いたわ。反射神経は相当あるみたいね。最初の一撃は当てて、実践の速度を教えてあげようと思ったのに…。技術は全然。力技ばかり…。だけど凄いポテンシャル。だけど何かおかしい……。このスタイルは最早確率させつつある。どういうことかしら…?体と技術に齟齬があるみたい…。)

 

「中々やるじゃない。一護くん。」

 

「ったく、アンタがそれを言うのかよ。」

 

「フフ。じゃあ今日はここら辺で終わりにしよっか。」

 

「あぁ、わかった。」

 

一護は風呂に入り、パーティーへ行った達也と深雪を見送ってから部屋へ戻った。

 

(穂波さん、結構強かったな…。でも完現術を使えば肉弾戦は問題ないな。)

 

「それよりも、だ。どうすれば元の世界に戻れるか。それが問題だな。あの時みたいに原因が明らかになってない…。幸い、浦原さんの目の前で消えたから、浦原さんがどうにかしてくれるとは思うけど…。まぁ、考えても仕方ないな。あ”あ”!おし!!寝よ。」

 

一護はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「船は初めて乗ったな…。」

 

一護は司波家と穂波と共に船に乗っていた。

 

「いい気持ち…。」

 

「一護くん!こっちに来なよ!」

 

「あ、あぁ。」

 

『緊急連絡!!緊急連絡!!伊江島にて南南東に所属不明の潜水艦を確認!』

 

「なんで潜水艦が!?」

 

「日本の領海に大亜連合が攻めてきたの?戦争でも始めるつもり!?」

 

「クソ!無線が繋がらねぇぞ!!壊れてやがる!」

 

(クソッ。完現術で運べるのは2人…いや、3人が限界…厳しいな。ここにいる全員は助けられねぇ…。完現術で水を使って船を加速させるしかない!)

 

「一護さん!どうするおつもりで!?」

 

「深雪…。いや、見ててくれ。」

 

一護は苦い顔をして船の後方へ移動し水に手を伸ばし、完現術を使う。

 

(クソ!やっぱり出力が足んねぇ!こんなんじゃ振り切れない……。」

 

深夜が達也に目線を送る。

 

「達也さん。」

 

「いえ、この力は知りません。」

 

「そうですか…。深雪さん。下がりなさい。」

 

「ですが…。っ!!魚雷!?なんの警告もなしに!?このままじゃ…」

 

達也が前に出て手をかざす。

 

「え?」

 

魚雷の反応が消失する。

 

(なんだ?今達也から何か……。)

 

「一護さん。帰ったら話があります。」

 

「あぁ、わかった。」

 

一護は達也の力を疑問に思いながら、これから起きることを考えていた。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。