黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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魔法科高校の劣等生編
第19話


「って事があったんだよ。」

 

一護は自室で、石田、チャド、井上、ルキア、恋次に話していた。

 

「全くお主は、どこの世にいても似たようなことをしているのだな。」

 

「黒崎くんらしいね。」

 

「まぁ、このアホはどこの世に行っても治らないってことみたいだね。」

 

「うるせぇよ。しょーがねぇだろ。放っとけるほど器用じゃねぇんだよ。」

 

「フム、まぁ、それでこそ一護だ。」

 

「つってもよ、まさか涅隊長が相手になったってのは不運だったな。ザエルアポロとやった時に闘い方をみたが、ありゃえげつねぇぜ。」

 

「俺は実際二回やられたけどな。あの人の毒はヤベェな。掠っただけでもアウトだったしよ。」

 

「それで、お前はこれからどうするんだ?黒崎。」

 

「これから浦原さんのところに行って崩石について聴きに行くつもりだ。お前らは?」

 

「私と恋次はこれから尸魂界に戻り、貴様に関して報告に行かねばならぬ。」

 

「私は竜貴ちゃんと遊びに行くつもり。石田くんと茶渡くんは?」

 

「僕は午後から生徒会の仕事がある。」

 

「俺はこれから工事のバイトだ。」

 

「何だ、みんな予定あるのかよ。なら仕方ねぇな。俺はこれから行くわ。」

 

「あぁ、じゃあ行くぞ。ルキア。」

 

「うん!それじゃあお邪魔しましたー!!」

 

「ム、それじゃまた。」

 

「それでは。」

 

皆がそれぞれの目的地へと向かい、一護も浦原商店へと歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「浦原さん。来たぜ。」

 

「お待ちしてました。どうぞこちらへ。」

 

一護は浦原に案内され、奥へと進んで行った。浦原は金庫を開けると、そこには偽涅マユリの持っていた崩石がおいてあった。

 

「やっぱりスゲェ圧力だ。」

 

「はい。流石は涅さんです。私や、藍染さんとはまた違う物です。」

 

「違うもの?」

 

「はい、私が造った崩玉は、余りに強大すぎる力故に、制御性能が最悪でした。藍染さんの崩玉は制御を重視したため、力があまり強くはなかった。だから彼は私の崩玉を自分の崩玉に喰わせた…。そういう意味ではこの涅さんの崩玉…いや、崩石は素晴らしいです。使用にするに関しては、バランスがとても良いんス。だから彼は人間の虚化にもこぎつけることが出来たのでしょう。黒崎さんがあちらの世界で虚化出来たのもコレのお陰かもしれません。」

 

「やっぱりスゲェんだな。にしても、随分と綺麗なもんなんだな。あん時は余裕がなかったからじっくり見れなかったけどよ。」

 

浦原は近くの段ボールを探り始める。

 

「確かに、崩玉の時はあまりの存在に、他に思考は割けなかったんスけど。綺麗っスね。今、専用の布を渡しますんで、それを介して触って下さいね。」

 

「え"…。」

 

「え?」

 

既に一護は崩石に触れていた。すると崩石は輝きを放ち、全てを光で包み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ……。くそ…。」

 

一護は目を覚まし、辺りを見回す。しかし、全く見知らぬ場所であると認識し、頭を抱える。

 

「またかぁーー!!!!!!」

 

ドクン

 

「うっ…。え?」

 

ドクン ドクン ドクン ドクン

 

「く…がっ……。」

 

一護は心臓が激しく鼓動を打っているように感じていた。

 

「な…なんだ…?」

 

一護は右手を左胸にあて、心臓の鼓動を確かめようとする。すると何かが胸に埋まっているように感じた。

 

「な、なんだ!?」

 

一護は服を捲り上げ、胸を確認するとそこには崩石が埋まっていた。

 

「これは……崩石…。なんで…なんでだよ!!!がぁ!!!……く…そ…!!」

 

すると一護は全身に激痛を感じ倒れこむ。

 

「ガアアアァァァァァ!!!!!!!!」

 

(くそ!この感じ…。藍染を倒した時と同じだ…。身体の時間が…巻き戻っている…!?)

 

「あ"あ"あ"あ"!!!!」

 

すると誰かが一護へと駆け寄って来た。

 

「そこの貴方!!大丈夫ですか!?しっかりしてください!」

 

(誰だ…?くそ…駄目だ、意識が…。)

 

一護はそのまま意識を失っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…。ここは……。」

 

「目が覚めましたか?」

 

「悪い…。迷惑かけちまったな…。」

 

「いえ、構いません。」

 

一護が目を覚ますと、見知らぬ部屋に寝かされていることに気づき、横にはとても身なりの良く、まるで烏の濡れ羽色のようなとても綺麗な髪をしている中学生くらいのまだ幼さが見えるが、美人と形容できる女子がおり、その後ろには女子と同じくらいの歳の男子がいた。

 

「私は司波深雪と言います。貴方の名前を教えて頂けますか?」

 

「あ、あぁ、俺は黒崎一護だ。」

 

「苺さん。ですか。」

 

「そのいちごじゃねぇ、一等賞の一に、護るで、一護だ。」

 

「す、すみません。しつれいしました。」

 

「いや、気にしないでくれ。後ろのアンタはなんて言うんだ?」

 

「俺は司波達也だ。自己紹介も終わったところで君に尋ねたい。何故あのような場所にいたんだ?」

 

「悪い、ちょっとここに来るのは予想外でここがどこか把握してねぇんだ。どこか教えてくんねぇか?」

 

「……。なるほど…。日本の沖縄というところだ。それで、君はどこから来たんだ?」

 

 

(やべぇな……。話し方や身なり、それにこの部屋を見るからに、かなりの金持ちの家っぽいな。そんなの相手に千冬さんの時と同じように空座町が無い、ってことになったらどうしようもねぇぞ。あん時は千冬さんが特別気にしない人だったから良かったが……。くそ!)

 

「あのぉ〜、鳴木市ってとこあるかどうか調べてくれないか…?」

 

「鳴木市…?どこの都道府県にあるんだ?」

 

「東京にあると思うんだけどよ」

 

コンコン

 

「はい?どなたですか?」

 

「私です。深雪。」

 

「お母様!只今。お願いします。」

 

「はい、畏まりました。」

 

達也は深雪の言葉を丁寧に承り、扉を静かに開けると、そこからは、涙黒子のある深雪に似ている綺麗な女性が部屋へ入ってきた。

 

「あら、お目覚めになったのですね。深雪。少しこのお方とお話があるので下で穂波さんと待っていなさい。」

 

「は、はい。分かりました。それでは一護さん。失礼しますね。また後ほど。」

 

「あ、あぁ、また後でな。」

 

深雪はそのまま部屋を出て、廊下を歩いて行った。

 

「さて、私は深雪さんと達也さんの母親。司波深夜です。それで一護君。貴方は何者なのかしら?」

 

「なんで俺の名前を……。」

 

「コレには盗聴器を付けていた…それだけのことよ。」

 

深夜は達也を指差し、そう言った。

 

「自分の息子をコレ扱いか…。アンタ、あんまりいい趣味してねぇな。」

 

「貴方は真っ直ぐな子なのね。好感が持てるわ。貴方と達也さんの会話は聴かせてもらいました。東京には鳴木市という場所は無いわ。そろそろ本当の事を教えて欲しいのだけれど?」

 

「本当の事って……。」

 

(くそ…。どうする…。代行証は浦原さんの所に置いてきちまった……。完現術で逃げるにしても、アテがあるわけじゃねぇ…。沖縄から海を越えて逃げるにしても、銀城に完現術を殆ど盗られた俺じゃ海は超えられねぇ…。)

 

「なら私が質問をしてあげるわ。それに嘘偽りなく私の目を見て答えなさい。」

 

「あぁ、わかった。」

 

「では、まず1つ目。貴方は私達の別荘の庭に倒れていたわけだけど…。意図して入り込んだのかしら?」

 

「いいや、事故だ。」

 

(嘘はついていないようね。眼球の動き、発汗量、声の高さ、呼吸の乱れ、手の動き、足の動き、そして何より、瞳の真っ直ぐさ。これで嘘をついているのなら私以上に腹の探り合いに長けていることになるわ。ただ、目的がわからないわね。)

 

「……。では2つ目、貴方は私達を知っている?」

 

「いいや、知らない。今日初めて会った。」

 

(これも違う…。)

 

「貴方は魔法を使ったりするのかしら?」

 

「魔法?なんだよ魔法って。あの火を出したり、雷落としたりするやつか?」

 

(魔法を知らない?どういうことかしら?記憶喪失?いえ、それにしてはこの子の顔に不安や恐怖といった感情がない。いえ、不安の色は出ている。けれどそういう方向の不安ではないわね。)

 

「…では最後に…。その胸の石は何かしら?」

 

「っ!!?」

 

「ごめんなさい。貴方の容態を調べた時に偶々見つけてしまったの。」

 

(勿論それは嘘。寧ろそれが目的と言ってもいい。それが無ければ不審者として、たとえ子供でも達也の魔法で分解していたわ。あの石は何か…とんでもないもの…。あの石からサイオンは感じない…。ただ、とてつもない力。いえ、圧迫感を感じる…。私という存在が、まるであの石によって押し潰されてしまいそうな。こんなものが存在していいはずがない…。)

 

「…名前は崩石だ。」

 

「なららそれが何故貴方のような子供に埋め込まれているのかしら?」

 

「俺にもわかんねぇんだ。これに触れたらいつの間にかここに飛ばされて、胸にこれが埋め込まれてたんだ。」

 

(これも嘘ではない…。だけど、何故こんなに落ち着いているのかしら…。普通人体に石…ましてやこんなものが埋め込まれているのであれば尚更慌てていても良いはず…。)

 

「わかりました…。一応聞きますが身寄りは?」

 

「いない…。」

 

「そうですか…。ごめんなさいね。お辛い事を聞いてしまって。お詫びと言ってはなんなのだけれど、この家に泊まっていきなさい。」

 

「え?良いのか?」

 

「ええ、構わないわ。私達もしばらくはここに留まる予定なの。部屋は…。達也さん、空き部屋へ案内してあげなさい。」

 

「畏まりました。では、一護くん。ついてきてくれ。」

 

「あぁ、わかった。それと君付けはよしてくれ。呼び捨てで良い。」

 

「わかった。俺のことも達也で構わない。」

 

「おう、よろしくな。」

 

「1時間後に夕食にするわ。時間になったら達也さんが声を掛けなさい。」

 

「畏まりました。」

 

一護と達也は部屋を出て、廊下を歩く。一護は窓に映る自分を見て理解する。

 

(ゲッ!この顔…巻き戻った感覚がしたからもしやと思ったが…中学の時のじゃねぇか!!!5、6年若返ったのか!!!くそ!通りで達也とか深雪とか普通に話しかけてくるし、深夜さんは俺の事ガキ扱いするわけだ…。納得行ったぜ。)

 

「どうした?一護。」

 

「い、いや、随分と立派な家なんだな。お前の家金持ちなのか?」

 

「世間一般で見るとそうなのかもしれないな。」

 

「なんだよ。自分の事なのに随分他人事みてぇに話すんだな。」

 

「魔法に関わっていること以外はそこら辺にいる子供と同じさ。学校へ行き、勉強する。それだけだよ。」

 

「おめぇは随分と子供っぽくねぇな。」

 

「胸に石を埋めてる奴に言われたくないな。」

 

「コレは事故だっての!!ったく…。お前…妹と仲悪いのか…?」

 

「…。」

 

「悪い、無神経だったか。」

 

「いや、立場が違うからな。」

 

「立場?兄妹で立場に違いがあんのかよ?」

 

「あぁ、妹はこの家の次期当主。俺はそのボディーガードといったところだ。ここの部屋だ。」

 

2人は目的の空き部屋へと到着した。

 

「やっとか、やっぱデケェなここの家は。」

 

「ふっ、まぁな。では1時間後に呼びに来る。それまでは自由にしていてくれ。部屋に何か必要な物が有れば俺に言ってくれれば揃えよう。」

 

「あぁ、悪いな。助かる。」

 

「いや、それでは後でな。」

 

「あぁ。」

 

達也はそのまま去っていった。一護は部屋へ入り、周りを見渡す。

 

「結構いい部屋だな…。ん、本か…。魔法……。ここの世界の重要なキーワードっぽいしな。調べてみるか。」

 

一護は魔法に関する物を片っ端から引き出し、それを読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「達也さん。一護君はどうかしら?」

 

「今の所不審なところはありません。体は鍛え込んでいるようですが、暗殺や、盗み目的ではないでしょう。動きに無駄がありました。」

 

「そう…。貴方はあの子と仲良くなりなさい。」

 

「何故でしょうか?」

 

「あの石についての能力を引き出しなさい。その能力を聞いてから真夜に報告するかどうか決めるわ。」

 

「畏まりました。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(くそ!やっぱり、パッと読んだぐらいじゃ全然わかんねぇ…。)

 

コンコン

 

「あ、はーい。」

 

「一護。俺だ。夕食の準備が出来た。」

 

「わかった。」

 

一護は部屋を出て、達也の案内を受け、リビングへと到着した。

 

「一護さん。お部屋は気に入っていただけましたか?」

 

「あぁ、サンキューな。深雪。っと、そっちの人は?」

 

「私は桜井穂波よ。穂波ってよんでね。」

 

「あぁ、よろしく。穂波さん。」

 

「では、頂いましょうか。」

 

5人は食事を開始した。そして、深夜は一護にある提案を持ちかけた。

 

「一護くん。貴方これからどうするのかしら?私たちは旅行に来ているだけであって、期間を終えたら帰らなければならないわ。」

 

「そうか…。参ったな。」

 

「そこで、私が貴方の後見人になりましょう。」

 

「良いのか?」

 

「えぇ、構わないわ。そうねぇ…。暫くは達也さんと同じ中学校に通ってもらいましょうか。」

 

「あ、あぁ。」

 

「あと、私達の家は貴方の察した通り魔法を使うわ。だから魔法を使えたら勿論使って貰うし、使えなくとも手伝いはしてもらう。それが一応条件といったところかしら。」

 

「わかった。」

 

「では、明日から始めるわ。それでは、食事を終えたら、入浴して寝なさい。」

 

「ん、サンキューな。ご馳走さんでした。」

 

一護は食事を終え明日へ向け休養をとった。

 

 


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