黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第18話

「遅くなって悪かったな…。助けに来たぜ。」

 

「一護さん…。」

 

「お前…。大丈夫なのか…?」

 

「一護…。その格好…。それに、ち、血が…。」

 

「い、一護!!お前!背中思いっきり刺されてんじゃねぇか!!」

 

「悪い、簪…。一夏説明してやってくれ。」

 

「おい!待てって!その怪我で1人でやるつもりかよ!相手は3体なんだぞ!」

 

「一護さん!無理はなさらないで下さい!傷が…。」

 

「そうだ!私達は6人いる。お前1人無理をする必要はない。」

 

「一護…。無理はしないで…。」

 

「い、一護…くん…。」

 

「お姉ちゃん!!!」

 

「更識さん!大丈夫ですか!?」

 

「うん、なんとかね…。それよりも一護くん…。本気で一人でやる気?」

 

「あぁ。」

 

「ダメ…だよ…。」

 

「シャル!!!」

 

「そうよ…あいつは本物の化物よ…。」

 

「鈴!!!」

 

「お前たち、大丈夫か?」

 

「うん、僕は平気。戦えないけどね…。」

 

「アタシも同じよ。大丈夫。心配はいらないわ。」

 

「そうか。良かった。」

 

そう言い、一護は皆に背を向け敵へと歩き出す。

 

「待てよ!!一護!」

 

「一夏。セシリア。ラウラ。箒。鈴。シャルロット。簪。楯無さん。そこから動かねぇでくれ。そのままじっとしてくれ。」

 

「一護……。」

 

「信じろ。」

 

一護の霊圧が高まり、青白い霊子が一護の体から吹き出す。

 

「凄い……。」

 

「青い…コレが霊圧というやつか…。」

 

「コレが…一護くんの…本気…。」

 

「一護…。」

 

「アンタ……。」

 

卍解

 

風が吹き荒れ、皆が目をつぶる。一護は刀を一閃し、煙を吹き飛ばす。

 

「卍解…だと…。」

 

「コレが六車先生と同じ…一護さんの…。」

 

「黒い…日本刀…。」

 

天鎖斬月

 

一護は黒いコート状のものを着、大剣は黒く峯に三つの波がある日本刀に変わっていた。

 

「こいつが俺の卍解。天鎖斬月だ。行くぜ。」

 

一護の姿がブレ、皆が目で追い空を見上げた瞬間に3体の内一体が細切れになり、地面へ落下していった。

 

「な、は、速すぎる……。」

 

「ISのサポートを受けても、全く見えなかった……。」

 

「…月牙天衝。」

 

一護が刀を振るとそこから黒い斬撃が放出され、残り2体を粉々に消し飛ばした。

 

「黒い…月牙天衝……。」

 

「この力はまるで……。」

 

「フム、ヤルジャナイカ。」

 

「「「「「「「「っ!!??」」」」」」」」

 

「来たか…。」

 

声のした方を見ると建物の屋根に偽物の涅マユリと、兎の仮面を被った篠ノ之束がいた。

 

「え、姉さん…?どうしてそんなところにいるんだ…?」

 

「待て箒!束さんの様子がおかしい…。」

 

「サテ篠ノ之束。オ前ノ能力ヲ見セテヤレ。」

 

飛び跳ねろ 魅奔殺兎《リエーブレ》

 

「やっぱ……篠ノ之束も帰刃を…。」

 

束の頭には兎の耳が生え、腕と足は鋭い爪の付いたうさぎの足に変わり、体中に鎧がつき、胸に穴があいていた。

 

「姉さん…目を覚ましてくれ…姉さん!!!!」

 

「待つんだ箒。今行けば…死ぬぞ。」

 

「だが…姉さんが…姉さんが…!!!」

 

「助けたいのであれば尚の事落ち着きなさいよ!箒!」

 

「っ!……わかった…。済まない…。」

 

「野郎!!!束さんを!!!!」

 

「待て。」

 

「一護さん…。」

 

「一護…。」

 

「フム、黒崎一護カ。」

 

「なぜ、俺の事を知ってる?」

 

「簡単ナコトダヨ。私ハコノ世界カワ君ヲ見テイタノダカラネ。」

 

「いつからだ…。」

 

マユリは虚の仮面を外し、一護を見据える。

 

「いつからか…。勿論最初からだヨ。

110年程前に、私はオリジナルの涅マユリに造られ、私は奴の元から脱出した。それて藍染惣右介に捕まり虚化させられたのダヨ。

初めの十年は自分との戦いだ。そして私は勝ったのだ。虚化を成し得た私なら、最早オリジナルよりも先へ進んだと言えるだろうネ。

だから、私を消し、より優れている私が成り代わってやろうとしたのだヨ。

だが、天然の穿界門とやらに飲まれた…。そして、この世界から君という興味深い観察対象を見つけたのだヨ。

君を観察しながらコノ世界で、90年ほど技術開発局の技術を元に改良を重ね、ついには完成したのダ!

コレが!!!」

 

マユリは懐から何かを取り出す。

 

「なんなの…?アレ…?」

 

「まるで…こちらを押しつぶそうとしている感じがする……。」

 

「崩玉…なのか……?」

 

「違う、浦原喜助や藍染惣右介のように自分自身で扱えないものを作るのは間抜けのすることだヨ。

コレは名付けるなら…崩石と言ったところだネ。」

 

「崩石…だと…。」

 

「そうだ。崩玉のように自身の意に反して暴走などしない。アレは強力故に失敗作だ。だがコレはアレよりも更に使い勝手の良いものだヨ。ま、そのお陰で作り出した虚は失敗作ばかりだがネ。」

 

「成程…アナタもソレにたどり着いたんスね…。」

 

「「「「浦原さん!!」」」

 

一護の隣に瞬歩で浦原が現れた。

 

「どうも。織斑千冬さん、山田真耶さん、2人の安全は確認しました。大した人たちです。自分たちで、虚化したISを倒していましたからね。」

 

「浦原喜助だと!!馬鹿な歪みは閉じたはずだぞ!!」

 

「アタシを誰だと思ってるんスか?アナタの隊長だった男ですよ?」

 

「くそ……おい!お前!黒崎一護を殺せ!私は浦原喜助を殺す。」

 

そうして、マユリと束が一護と浦原の前に立つ。

 

「一護!頼む…姉さんを…姉さんを助けてくれ!!」

 

「あぁ……。」

 

(力を貸せ…。)

 

<はいよ、俺が存在してられるのはこれが最後だ。一度砕けたらもう仮面の力は使えねぇ…。>

 

「あぁ。」

 

一護はそう言い右手を顔の前に持ってゆく。ラウラとセシリアはその行為を謎に思い一護に声をかける。

 

「「一護(さん)?」」

 

ズンッ!!!!!

 

その瞬間、周りの空気が重く冷たく張り詰め、皆の息が止まる。

 

「…一…護……さん…?」

 

「一…護……?」

 

その声に一護は少しだけ振り向く。

 

「「「「ひっ……。」」」」

 

一護の顔を見た瞬間、数名が息を飲み、全員の顔に恐怖の表情が出ている。

 

「黒崎さん……。」

 

「構ワネェ。浦原サン、行クゼ。」

 

一護の体が消え、一瞬で束の前に現れ斬りかかる。束はその一太刀を回し蹴りで逸らし、さらに回転し再び一護の横っ腹を蹴る。それを一護は腕をクッションにして衝撃を緩和し再び斬りかかる。束は両腕の爪でそれを防ぎ、鍔迫り合いの状態へ持っていった。

 

「月牙天衝。」

 

一護は鍔迫り合いの状態で、空いた手で束の両腕の爪を掴んで黒い月牙を放ち、束を建物へ叩きつける。

 

「月牙…天衝!!!」

 

一護は束の突っ込んだ建物へ再び黒い月牙を放つ。束はその場から脱出し、一護の頭へかかと落としを喰らわせ地面に向けて叩き落とす。が、束は一護が地面に落ちる前に一護を蹴り上げ、さらに先回りし再び蹴り落とした。

 

「グハァ!!!!くそっ!」

 

一護は受身をとり態勢立て直す。一護の顔の仮面にはヒビが入っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが…一護…なのか…。」

 

「一護が…虚の仮面を…。」

 

「一護くん……。」

 

「「………。」」

 

「二人とも…大丈夫…?」

 

シャルロットが放心しているラウラとセシリアに声をかける。

 

「…一護……。」

 

「姉さん…姉さん…。」

 

「箒も、大丈夫だって…一護がきっと……。」

 

「きっとだと…?無責任なことを言うな!!一夏!一護のアレを見て一体何が安心できるんだ!!!あれではまるで……虚そのものっ。」

 

バシン!!!!!

 

セシリアが箒を平手打ちした。

 

「セシリア…」

 

「なにを…なにをする!!」

 

箒がやり返そうとするが一夏がそれを止める。

 

「離せ!一夏!!コイツは!!!」

 

「やめろ!箒!!こんなことしてる場合じゃ…」

 

「元はといえば、お前が!!!」

 

「やめなさい!!!!!!!!!!!」

 

「「「「「「「っ!!!!」」」」」」」

 

「せ、生徒会長……。」

 

「これ以上騒ぐのであれば…容赦しないわよ…?」

 

「クッ!!」

 

「すみません…。」

 

「箒さん…私…謝りませんわよ。」

 

「なんだと…?」

 

「一護さんは言っていたでしょう…。元は人間だって…人間であるあの人が家族を守るために死神になり、出会ったばかりの人を助けるために圧倒的不利な場所にまで飛び込み、何度も何度も人を助けるために行動したと。

そう言っていたではありませんか…。いつだって人を助けるために行動して…、私たちに怖がられると知って尚あの姿になり、今も私たちの為に戦ってくれてるではありませんか…。」

 

「「「「「「っ!!!」」」」」」

 

「セシリアの言う通りだ。私たちの為に戦ってくれているのだぞ。なのに、ぞの私達が怖がってどうするんだ!

一護は元は私達と何も変わらない人間だ。なのに仮面を被って、あんなデタラメな力を使って、傷付いて…。苦しくないはずない、苦しいに決まっている!!

だが、その一護は私たちの為に!あんな力を使っているのだぞ!」

 

「「「「「「………。」」」」」」

 

するとセシリアは一歩踏み出し皆の前に出て、大きく息を吸う。

 

「頑張って下さい!!!!一護さん!!!!!!」

 

「セシリア……。」

 

「……。」

 

ラウラも同じように一歩前へ出て大きく息を吸う。

 

「頑張れ嫁よ!!!!!!!それ以上怪我をするなよ!!!!!!」

 

「ラウラ…。」

 

「アンタ達……。」

 

簪も前へ出る。

 

「頑張れ一護!!!!」

 

「簪ちゃん……。」

 

そうして皆が一護を応援し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…。マルデ、アノ時ミテェダナ。」

 

[死なないで!黒崎くん!!…勝たなくていい……。頑張らなくていいから…。もうこれ以上…。怪我しないで…。]

 

「ソウダ…。アイツラノ為ニモ…、勝たねぇとな…。」

 

一護は仮面を破棄し、瞬歩で束の背後を取る。が、束は右手で裏拳を一護へ向けて攻撃する。一護はその拳を右手で防ぎ、左手の斬月を離し、束の顔を鷲掴み、仮面を握りつぶした。

 

「キャアアアァァァァ!!!!!」

 

束は悲鳴をあげ落下する。一護は束を地面スレスレで受け止める。すると束の胸の穴が塞がってゆく。一護は束をお姫様抱っこをして皆の前に降り立った。

 

「姉さん!!姉さん!!!」

 

「安心してくれ、大丈夫だ。」

 

「本当か!?本当なのだな!?」

 

「あぁ。」

 

「良かった…。本当に良かった……。」

 

「うぅ……。箒…ちゃん…?」

 

「姉さん!!良かった…。私がわかるか!?」

 

 

「うん…。箒ちゃんだね…。大丈夫…。束さんは天才だから、何でもわかっちゃうのだ〜…。ちょっとだけ…疲れちゃったけどね……。」

 

「大丈夫だ。姉さん。ゆっくり休んでくれ。」

 

「うん…。箒ちゃん…ありがとう。それと…今まで…ごめんね…?」

 

「うん…。うん……。」

 

箒は涙を流しながら、束へと抱き付いていた。

 

「オレンジ頭君も、ありがとね…。」

 

「別に気にすんな。それと、俺の名前は黒崎一護だ。覚えとけ。」

 

「アハッ。君の名前なら覚えられるかも…。ありがとね。いっちー。チュッ♡」

 

「ん"ん"ー!!!」

 

「「あぁ!!!!一護(さん)!!!!」」

 

「ま、待ってくれ!違う!俺じゃ…。」

 

「酷いなぁ〜いっちー。私との事は遊びなの?」

 

「嫁よ。お茶目は許すが、浮気は断じて許さんぞ?」

 

「一護さん?一体どういうことですの?」

 

「あ、いや!!」

 

「黒崎さっ…。スミマセン…。まさか三股の修羅場に遭遇するなんて…。」

 

「おい!アンタ!!わかって言ってんだろ!!って!!

あの偽物の十二番隊隊長は!?」

 

「安心して下さい。私が倒しましたんで。崩石は私の家で取り出します。平子さんもどうやら敵を倒したみたいですね。こちらに向かってきてるみたいっス。」

 

「そうか、やっと終わったのか…。」

 

「一護さん……。」

 

「一護……。」

 

「悪いな。セシリア、ラウラ。それにみんな。俺、帰らなくちゃ。」

 

「一護さん…お別れ…ですの…?」

 

「私は…離れたくないぞ…。夫婦は一緒にいるものだろう?」

 

「大丈夫だって。お前らが俺を、俺がお前らを。お互い大事に思ってればさ…。大丈夫!また会える。だよな?浦原さん。」

 

「はいな!黒崎さん。ここの座標軸は記録しました。いつでも遊びに来れますよ!それに最初みたいに穴が空いただけではなく、しっかりと扉を付けましたので虚の出入りもありません。ですので、後しばらく虚を退治したら、もうこの世界には虚は存在しなくなりますので安心を。」

 

「ねぇ、下駄帽子さん。私貴方とお話したいなぁ〜♪」

 

「篠ノ之束さんっすか…。そうですねぇ。まぁ、いいでしょう。何がお聞きしたいんですか?」

 

「鋭いなぁ♫コアの基本骨子は貴方が考えたんでしょ?なら…。」

 

2人の天才はそのまま話にのめり込んでしまった。

 

「全く。姉さんは…。」

 

呆れたように言う箒の顔には笑顔が浮かんでいる。

 

「まぁ、今日はみんな帰ろうぜ。疲れたわ。」

 

「そうですわね。一護さん、お疲れ様です。ありがとうございました。」

 

「ふむ、良くやったぞ嫁よ。今日は夫として嫁を労おう。」

 

「僕からも御礼を言わせて。ありがとね一護。」

 

「あぁ、気にすんなよ。」

 

「そういうわけにもいかないわよ。まぁ、感謝しといてあげる…。」

 

「ったく、鈴は素直じゃないな。俺も礼を言う。ありがとう、一護。」

 

「俺がやりたくてやったことだ。」

 

「…一護…。私も…感謝してる…。ありがとう。」

 

「私もありがとね。妹の面倒見てくれたり。また姉妹として仲良くやり直せそうだわ。」

 

「お姉ちゃん…。今までごめんね…。 」

 

「良いのよ。これから2人で一緒に歩いていきましょう?」

 

「うん!!」

 

「私も姉を助けてくれてありがとう。」

 

「あぁ、それじゃあ戻ろうぜ!」

 

「「「「「「「「うん!!(おう!!)[はい!!]」」」」」」」」

 

そうして皆は校舎の中へと戻っていった。






これでIS編は終わっても良いんだよね?


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