黒崎一護 異世界へ   作:妃宮千早

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第10話

ラウラは暗い空間を彷徨っていた。すると、目の前にはかなり巨大な禍々しい仮面が出現し、叫び声をあげていた。

 

ギャアアアァァァ!!!!!!

 

(私はここで終わりか……。一体私は何のために生まれて……。)

 

ラウラは悔し涙を流していた。

尊敬する人は自分から離れて行き、パートナーを退がれせた挙句に、自分が雑魚と呼んでいたものに敗北し、こうして自分の中にいる怪物に殺される。ラウラはそれが悔しくて悔しくてたまらなかった。

 

(隊員達に別れの言葉は言えなかったか…。それも仕方あるまい…私は軍人だ。そんな事は覚悟していた……。)

 

「勝手に諦めてんじゃねえええぇぇ!!!!」

 

一護が上から降りてきて、仮面を斬りとばす。

 

「黒崎一護!!何故こんなところにきた!失せろ!貴様も死ぬことになるぞ!」

 

「黙ってろ!!」

 

一護はラウラを怒鳴り、視線を目の前の巨大な仮面に向ける。

 

「貴様…、それにその格好…。」

 

「みんな終わったら話す。行くぞ。」

 

そういいラウラを脇に抱える。

 

「う、扱いが適当過ぎるだろ!」

 

「軍人なんだろ!?文句言うな!」

 

巨大な仮面は口に虚閃を収束させる。

 

「撃たせるかよ!月牙天衝!!」

 

一護は仮面を屠りラウラへと視線を向ける。

 

「とっとと目を覚ませよ。文句はそん時に全部聞いてやる。」

 

「ま、まて!」

 

一護は背を向け消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う、うぅ……。」

 

ラウラは見知らぬ天井を見上げた。視線を横に移すと、そこには千冬が座っていた。

 

「何が…あったのですか…?」

 

「一応重要案件であるが故に機密事項なのだがな…。」

 

千冬がそう言うと、虚と死神。そしてVTシステム。更にそれに虚が混じったことを詳しくラウラに説明した。

 

「些か…信じられません…。」

 

「確かにそうだろう。私もこの目で見ていながら中々許容出来んからな。」

 

「しかし…黒崎一護が…私を救ってくれました…。」

 

「ほぅ、ならきこうか。お前は誰だ?」

 

「私は……。」

 

「そうか、誰でもないならちょうど良い。お前は今から他の誰でもない。ラウラ ボーデヴィッヒだ。」

 

千冬はそのまま立ち上がり保健室を出ようとするところで、何かを思い出したかのように立ち止まり。振り返った。

 

「それから、お前は私にはなれないぞ。」

 

ニヤリと笑ってそのまま千冬は去っていった。

 

「フフフ、アハハハハハ!!」

 

ラウラは憑き物が落ちたように笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

男3人は食堂で夕食を食べながらシャルルに死神と虚について説明をしていた。

 

「虚に死神…信じられないけど、それならさっきの一護が生身なのにあんなに強かった理由もハッキリするね…。」

 

「隠してて悪かったな。」

 

「ううん、良いよ。確かに言われただけじゃ信じなかったと思うし。」

 

「そう言ってくれると助かるぜ。」

 

「でも、普段から僕たちは一護1人に守ってもらってたんだね……。こっちの方こそごめんね…。」

 

「いや、1人じゃねぇさ。」

 

「えっ?」

 

「一夏もセシリアも鈴も、千冬さんに、山田先生、生徒会長に、布仏さん、それに事情は知らなかったかもしれねぇけど、シャルルに、箒。みんなが俺を支えてくれてる。それだけで俺は頑張れんだよ。」

 

「一護…。ありがとう。」

 

シャルルは一護に例を言い、3人は食事を再開した。すると遠くから箒がこちらを見ているのに気付いた一夏は箒の元へと歩いて行った。

 

「そうだ、箒。この前の約束だけど、付き合っても良いぞ。」

 

「なにぃ!?本当か一夏!本当なんだな!?」

 

一夏の胸倉を掴み前後へ揺らす。だが、箒はそこで一度落ち着き咳払いをして理由を尋ねた。

 

「何故だ?理由を、きこうではないか。」

 

「買い物なんていつでも付き合うに決まってるじゃないか。」

 

一夏が言い終えた瞬間、箒のストレートが一夏の頬を捉え、倒れ込んだ一夏の腹部を蹴り上げた。

 

「そんなことだろうと思ったわ!!」

 

「スゲェな、今1mくらい蹴り上がったんじゃねえか?」

 

「一夏って、偶にワザとやってるんじゃないか?って思うよねぇ〜。」

 

するとそこに真耶がやってきた。

 

「織斑君!デュノア君!黒崎君!ビックニュースです!!」

 

「「ビックニュース?」」

 

「はい、今日は3人とも大変でしたねぇ!そんな3人を労う癒しの場所が今日から解禁されます!!」

 

「「素晴らしい場所?」」

 

「はい!大浴場ですよ!!ゆっくり入って行って下さいね!!それでは先生は戻ります。」

 

「大浴場か、そういやずっと部屋のを使ってたかからな。広いところなんて使ったのはいつ以来だ?尸魂界で十一番隊に邪魔した以来か?って…どうしたんだよオメェら早く行こうぜ。」

 

「い、いやぁ、ぼ、僕は今日はやめとこうかなぁ〜って…。」

 

「そ、そうだな!シャルルさっきまで具合悪そうだったしな!うんうん!」

 

「そうなのかよ?そりゃ勿体ねぇな。ならお大事n<一護、虚だ。>……。」

 

「ど、どうした一護?」

 

「いや、虚が出たんだ…。クソッ!行ってくる!」

 

一護は窓から飛び降り完現術であっという間に消えていった。

 

「危なかったぁ〜、一護には悪いけど、これで今日は入れるかも。」

 

「しゃ、シャルル?俺が居るんだけど…。」

 

「あ、そうだった…。ごめんね…。」

 

「い、いや、大浴場だからお互いが離れて使えば見え無いだろ!!うん!それでいこう!!」

 

「うん、ありがとね。一夏。」

 

そうして2人は大浴場へ向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ!!」

 

ザシュッ!グアアアアア!!!!!

 

「ちっ!増えてきたな…。」

 

<浦原が歪みを広げるっつってなしな。これからもっと増えるだろうよ>

 

「なぁ…。この前のラウラのアレどう思う?」

 

<ありゃ人為的なもんだ。間違いねぇ…。良かったなぁ一護。この件には黒幕がいる。しかも相当タチの悪い奴がな。>

 

「何が良いんだよ!」

 

<良いに決まってんだろう?自然発生ならこりゃ防ぎ用がねぇ。だが、黒幕がいるってことは、そいつを斬り殺せば終わりってことだ。わかってるな一護?今回の件はもう人のやることじゃねぇ。“人間を虚化させる”なんてことをする奴だからなぁ?今回はたまたま元に戻ったがな。覚えておけよ一護。俺がいるって事は、お前はまた虚化することができる。だがなぁ、心が折れたら、その体貰うぜ?>

 

「あぁ、わかった…。」

 

一護は学園へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

「さて、風呂でも入るか。もう一夏は出たか?ん?着替えが2つあるな。つーことはシャルルも入ってんのか。」

 

一護はタオルを腰に巻き風呂場へ入っていった。

 

「「えっ!!?」」

 

「お前らまだ入っt……。」

 

空気が凍りつく。一護が視線を向けた先に何故か女がいた。

 

「おい…こりゃどういうことだ…?」

 

そして3人は風呂を上がり、一夏とシャルルもといシャルロットは自分達の部屋に帰りながら一護に説明をした。

 

「成る程な、胸糞ワリィ話だ。それでこれからどうすんだよ?」

 

「一夏が見つけてくれた校則を盾にして3年間は乗り切るつもりだよ。」

 

「でも、それだとその場凌ぎにしかならねぇじゃねぇか。」

 

「仕方ないよ失敗した僕は本来ならその場凌ぎすらできないんだもん。」

 

「はぁー…。仕方ねぇ、ほらよ。」

 

そうして、一護はポケットから出したメモリをシャルロットに投げ渡す。

 

「おっとっと。えっと…、コレは?」

 

「俺のISのデータだ。」

 

「え!?でもこれって!!」

 

「良いから。持ってけ、別に俺のISはどこの国家にも属してねぇし、誰かが作ったわけでもねぇからよ。それを交渉材料にすれば大抵はどうにかなんだろ。」

 

「で、でも…本当に良いの?」

 

「あぁ、構わねぇよ。良いから使え。」

 

「あ、ありがとう!!」

 

ガバッ

 

感極まったシャルロットは泣きながら一護に抱き付いた。

 

「お、おい!ちょ、ちょっと!!」

 

「良かったな!シャルル!これで自由だ!」

 

「うん!一夏も僕のために考えてくれてありがとね!それと2人とも今度からシャルロットって呼んでほしいな?」

 

「それが本当のオメェの名前か。」

 

「うん…今まで騙しててごめんね…。」

 

「大丈夫だ。これからよろしくな!シャルロット!!」

 

「うん!!」

 

そして、一護は2人と別れ部屋へ戻った。

 

「ただいま。」

 

「お帰りなさい。」

 

「お帰り。」

 

セシリアとラウラが出迎えた。

 

「何だ、仲良くやってるじゃねぇか。」

 

「はい、仲直りをしましたので。」

 

「黒崎一護。虚と死神という存在について教官からきいた。だから私も自身について貴様に話す。」

 

ラウラは試験管ベイビーである事を一護とセシリアに明かし、自分が今までどのようにして生きたか。どんな気持ちを抱いて生きてきたのか、を赤裸々に語った。

 

「そうだったのか…。」

 

「それで貴様に聞きたい事がある。貴様のことについて。」

 

「なんだよ?改まって。」

 

「貴様は何故そんなに強い?それを私に教えろ。」

 

「何で頼んでる側が偉そうなんだよ……。まぁ良いけどよ。…俺は、護りたいものの為に戦ってんだ…。」

 

「護りたいもの…。」

 

「あぁ、俺の一護って名前は、親が“全てを守れなくても、自分が本当に護りたいものを一つ護れるような人間育って欲しい”ってつけてくれた名前なんだ。だから、俺は護てぇもんを守る。それに必要な事なら誰にだって負けねぇ…。俺の戦いは勝てるか勝てないかじゃねぇ。勝たなきゃなんねぇから、戦ってんだ。」

 

「素敵な名前ですのね…。」

 

「……。今の私には…まだわから無い。だが、心の内を話し、受け止めてくれたお前たち2人を私は失いたくないと感じているのかもしれない…。」

 

「ラウラさん…。」

 

「そう難しく考えんなよ。お前は俺を大事に思ってくれる。俺もお前を大事に思う。大事な奴は死なせねぇ。それだけだろ?」

 

「あぁ。そうだな!」

 

そうするとラウラは一護の胸倉を掴み引き寄せ、接吻した。

 

「んぐっ!」

 

「な、な、な、な、な、な、な、な、何をしてるんですかぁぁぁぁあ!!!!!」

 

「今日からお前は私の嫁だ!これは決定事項であり。異論は認めん!!」

 

「な、何言って…てセシリアさん…?銃口がこちらに向いているような……。」

 

「オホホホホ」

 

ビュン!!

 

「ちょっとまてぇぇぇぇ!!!」

 

賑やかに1250の住民は夜を明かした。

 

 

 

 

 

翌朝。

 

「起きて下さい一護さん!ラウラさんがどこにもいませんの!」

 

「う、う…。ラウラが?そんな心配いらねぇと思うけどな。どっか散歩でも行ったんじゃな………。」

 

一護は自分の体に覚えのない重みがかかっているのに気が付いた。

 

(おい、ちょっと待て…なんだ?これはなんだ!?くそ、展開が読める!!どうする黒崎一護!考えろ!考えるんだ!!じゃねぇと俺は…蜂の巣だ!!)

 

「早く起きて下さい。でないと……。」

 

そう言ってセシリアは一護のベッドに入ろうとする。

 

「私も眠くなってしまいそうでっ……。」

 

「「………。」」

 

2人の間の空気が凍った。

 

「一護さん?」

 

セシリアはにこやかに一護に問いかける。

 

「差し支えなければ、今お腹に載せているものについてご説明していただけないでしょうか?」

 

「いやっ、えっと、あの…ご、誤解です!」

 

「う…、もう朝か…?」

 

もぞもぞと布団が膨らみ中から人が出てきた……全裸で。

 

一護がまるでロボットのようにガチガチと首をセシリアへ向ける。

 

「判決は有罪。確定確定ですわ!!」

 

そして再びレーザーが飛ぶ。

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?一護。制服が焦げてるぞ。」

 

一夏が心配したように一護を気遣う。

 

「あぁ、だがこれを解決しなければそのうち死ぬな…。」

 

そこで真耶が教室へ入り、皆が席へついた。

 

「今日は転校生を紹介します…。」

 

金髪の女生徒が入ってきた。

 

「シャルロット デュノアです。皆さん、改めて宜しくお願いします。」

 

「「「えー!!!」」」

 

教室がざわついた

 

ざわざわ

え、じゃあ織斑くんと箒さんは気付いてたってこと?

ざわざわ

え?でも昨日織斑くんとデュノアくん2人で入ってたよ?

 

「「「えっ!!!?」」」

 

ざわざわ

でも黒崎君も後から入ってたよ??

 

「「「一護さん(〈一夏〉)どういうことですの(なんだ〈なの〉)!!?」」」

 

「「ご、誤解だ。」」

 

「いっぺん死ねぇ!!!」

 

「叩っ斬る!!!」

 

「地獄へ送って差し上げます!!!」

 

「「ぎゃあーーーー!!!!!」

 

「ってアレ?死んでない?って一夏!!?大丈夫か!?」

 

そこには無傷の一護とボロボロの一夏が床に倒れていた。

 

「ラウラぁ…何故…。」

 

「ふんっ、偶々はみ出た。許せ。」

 

「ラウラ!助かったぜ。」

 

「なに、嫁のお茶目を許容するのも旦那の役目だ。」

 

「普通逆だろ。」

 

一護は頭を抱えた。

 

「ねぇ、セシリア。どうなってるわけ?」

 

「それが、かくかくしかじかなのですわ。」

 

「なるほど、だから昨日の夜はあんなにうるさかったわけか。」

 

するとラウラが皆に向けて言葉を放つ。

 

「一護は私の嫁となった。これは決定事項だ。異論は私に勝ってから言え。」

 

「「「えーーーー!!!!!!!」」」

 

本日何度目かわからない驚愕の声が学園に響いた。


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