Girls und Panzer  Re.大洗の奇跡   作:ROGOSS

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R.U.S.Eは知人がやっているのを見たことありますね。
(多分…)


流派の激突です!

「どう動いてくると思いますか?」

 

「服部流は偽装が得意と聞きます。なにせ、遠い満州の地でたった6両であのソ連の機甲師団と戦い続けた部隊が元となった流派ですから。ですが、当時の日本国民からも……あまり快くは思われていなかったようでありますね」

 

「なんか、怖そうな流派だね。みぽりんの西住流とはまた違うの?」

 

「そうだね……全然違うかな……だけど、うーん……上手くは言えないけど似てるのかもしれない」

 

 みほ脳裏に浮かんだのはあの光景。

 味方を助ける者が誰も出なかったというあの状況。

 助けたがゆえに、試合に負け、そしてその責任を問われたあの惨状。

 どちらも耐えることができずに、黒森峰を去っていくことを決意した。

 非人道的。そういう意味では、服部流も西住流も似ているところがあるのかもしれない。

 

「ですが、みほさんの西住流は違いますよね?」

 

「え……?」

 

「そうだな。西住さんは仲間を見捨てたりしないだろ」

 

「そうですよ、西住殿!」

 

「うん! そうだよ! 仲間を見捨てるなんて、別れた男のことをすぐに忘れるくらい酷いことだよ!」

 

「沙織さんは、お付き合いの経験が無いはずでは……?」

 

「もう、華ー! そういうことは言わないでよ!」

 

 空に赤い信号弾が撃ち上がった。

 試合開始の合図だ。

 時間は2時間。どちらかの戦車が行動不能となった時点で決着がつく。

 

「それでは行きます。みなさん、よろしくお願いします」

 

「はいっ!」

 

PANZER VOR(パンツァー・フォー)!」

 

 Ⅳ号がゆっくりと動き出す。

 たった数日しか戦車道の練習をしていないとはいえ、誰もがその能力をいかんなく発揮しており、目を見張るほどの上達ぶりを示していた。

 キューポラから顔を出し、みほは敵戦車を探す。

 直接見たことがあるわけではないが、自動車部からの情報だと絵音はテトラーク軽戦車を使っているらしい。イギリス製の戦車で最高速度は56km/hと、Ⅳ号よりも圧倒的なスピードを出すことができる。

 機動力、防御力、攻撃力。どれもが当時の同ランクの車両に比べれば最高水準のものだろう。

 

「それでも……」

 

 それでもⅣ号の正面装甲を抜くのは容易ではないはず。おまけに、こちらの攻撃をまともに受ければ無傷では済まない。

 狙うとすれば、足回りの強化ゆえに劣化したとも言えるところ。旋回時に通常よりも、旋回半径が大きくなるという欠点。

 みほは固く目を瞑ると、絵音打倒のための案を再度検討し始めた。

 

●○●○●

 

「で、どうするんでぃ! こんな訳のわからない被り物を愛しのテトラークにさせやがって」

 

「本当だ。これでは、私の狙撃能力が十二分に発揮されない。まことに遺憾なり」

 

「そう、言わないでください。この勝負、服部流がいかに優秀で、そして他の流派よりも有力かを示すいい機会でもあるのですから」

 

「それとこれが関係すると?」

 

 由多は不思議そうな顔で上を指差す。

 もちろん、その先にあるのは上部装甲だが誰もそんなことは思っていない。

 由多が言いたいのはそのさらに上。テトラークをスッポリ隠してしまうような、偽装のことだ。

 戦車全体を覆うように、民間用のトラックを模した偽装が施されていた。細部まで細かく特殊なカーボンで再現されており、履帯まで外しておくという慎重ぶりだ。

 これは、テトラークがクリスティー式を継承しているからできる荒業であることは間違いない。

 

「皆さんは、R.U.S.Eというゲームを知っていますか?」

 

「ルーズ? 時間にルーズってわけかい?」

 

「そんなバカな話なわけないじゃないですか。三上さん、もう狂ってるんですか?」

 

「絵音、お前……あとで覚えておけよ?」

 

「はい?」

 

 絵音は何の話だ? と言わんばかりに首をかしげる。

 由多と三上からは、思わずため息が漏れた。

 

「話を続けますね。R.U.S.Eというのはフランスの戦争シミュレーションゲームなのですが……これがなかなか面白いんですよ。私、あのゲームのことはなかなか気に入っていましてね」

 

「それで、結局何を言いたいんだ?」

 

「その中で、今やっているように民間のトラックや軍用トラックに戦車をカモフラージュする技術があるんですが……まさか史実でもやっていたなんて。すごいですね!」

 

「ちょっと待て……つまり、まさかとは思うが。絵音、お前もしかしてだけどさ、そのゲームの真似をしたいがために、こんなハリボテを戦車につけたって言うんでぃ?」

 

「そうですよ?」

 

「……さ、さすがは我らが車長……この異次元の狙撃手ですら未来予測できない答えを……」

 

「褒めてるんですか? ありがとうございます!」

 

 三上は再び大きなため息をつき、そういえばと思い出す。

 チームを結成した最初の方、何を思ったのか氷河で空母が作れるなら戦車も作れるのでは!? と叫んでいた絵音がいたことを。

 さすがにほかのメンバーで猛反対したため、あの時は折れたが……。

 

「ゲーマーも行き過ぎると何を言い出すかわからんでぃ」

 

「さすがに、私も今回はな……真面目に戦うつもりはあるのか?」

 

「一応は、この偽装もそれなりに効果がありそうだけど……由多も呆れてるってことはなぁ……」

 

「何かその言い方はひどくないか?」

 

 三上と由多は、絵音に気付かれないように舌を出すと戦闘モードへと入った。




キャラ紹介
由多(ゆた)

趣味 そんなものはない。私は孤独な狙撃手
好きな物 そんなものはない。私が孤独な狙撃手。だが……ホットケーキは美味だ。
嫌いな物 そんなものはない。だが……暗いところは少し苦手だ

高校二年生。砲手。
高校二年生になっても、厨二病が抜けていない。そのためクラスでは浮き気味。原因は両親にあるようだが、詳しいことはまた後程。
砲手としての腕は確かで、絵音も信頼を置いている。

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