Girls und Panzer  Re.大洗の奇跡   作:ROGOSS

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約1か月ぶりの更新です…。
1月いっぱいは私生活も忙しく、3月のイベントに向け原稿を進めなくてはいけません。
更新遅くなりますが、よろしくお願いします。
宣伝です。
ぜひとも新作「Girls und Panzer ~Falling down Anchovy~」もよろしくお願いします!


二回戦の始まりです!

 鉛色の雲が垂れ下がる、どんよりとした空。

 灰色とも黒色とも取れる雨雲が空いっぱいに広がり、太陽の恵みが入ってくることはなかった。まだ午前10時だというのに、いつ雨が降ってもおかしくはない。

 

「おいしいです! さすがはサンダース! 試合をするのにシャワー車からキッチンカーまで総出で来るんですね!」

「Of course! 戦車道の試合は一大イベントよ」

「そうね。サンダースはこういうところでは生き金を使うのよ」

 

 ガムを膨らましながら答えたのは、ナオミと呼ばれるサンダースの生徒だった。優花里は彼女の名前を聞いてすぐにピンと来たらしく、どうやら1000m以上距離があったとしても確実に急所に撃ち込んでくる優れた狙撃手らしい。その隣でソワソワしているのはアリサだった。アリサの落ち着きのなさに、サンダースの隊長であるケイが落ち着きなさいよ、などと言い眉をひそめている。アリサは何か反論しようとしていたが、ケイの顔を見ると諦めたようだ。

 まあ、試合前に敵と慣れ慣れしくするのを良いと思わない者もいるだろうな。

 絵音はアリサに同情しながらも、もらったフランクフルトを綺麗に平らげた。これに下剤など入っていたら笑い話にもならないが、フェアプレーを望むケイに限ってそんなことはしないだろう。

 

「ありがとうございます。あの、そろそろ時間なので……」

「ん? そうね。じゃあね、みほ。お互い、いい勝負をしましょう」

「はいっ!」

 

 大洗女子の面々は一礼すると、その場を後にした。残されたケイ達は、一人の生徒の背中を険しい顔で見続けた。事前にある程度の情報を握っていたとはいえ、調べれば調べる程、出来ることなら勝負を避けたいと思わせる相手だった。

 

「どう思った? ナオミは」

「見た目は普通の生徒だろうね。仮に中学の頃にあの騒動を起こした、と言われても信じることはできない」

「そうね。小さな背中で、学校一つ潰しかけるような事したとは思えないわね」

「ケイ。わざわざそれを知るために、大洗女子を呼んだの? そういうのやめましょうよ。何ていうか、こちらの手もバレそうよ」

「いいじゃない。彼女たちが私達が何を使うかを見破るのなら、それは彼女達の功績よ? さあ、行くわよ!」

 

〇 〇 〇

 

 空高く赤い信号団が打ちあがる。

 

『試合開始!』

 

 場内アナウンスと共に観客が一斉に沸き上がった。大洗女子学園サイドの応援席では、知波単学園がフレーフレー大洗! などと掛け声を大声で発し応援していた。その様子にさすがの絵音も苦笑すると、ナウエルの中に乗り込んだ。ナウエルを動かすために、普段は外で観戦しているマーさんが通信手として乗り込んでいた。戦車に乗るのは久しぶりだろうが、その落ち着いた態度を見ていると、長年戦車に乗り続けている玄人ではないか? と勘違いしてしまいそうになる。

 大洗女子学園ではナウエルことライオンさんチームの加入とあんこうチームのⅣ号の砲塔を短砲身から長砲身へ変えたことにより、戦力の底上げをすることに成功していた。それでもまだ、シャーマン軍団率いるサンダースの足元にも及ばない。あとは、戦術でカバーするしかなかった。

 

「それで、西住隊長。どうすればいい?」

『とにかく密林を抜けた先にある丘陵地帯を目指します。単純な作戦ですが、幸いにもスタート地点から丘陵地帯までは私達の方が近いです。高性能のシャーマン部隊だとしても追いつくことはできません』

「わかった」

「なんのひねりもないけれど、初めてこういうぬかるんだ場所に来る子もいるだろうしね。無理に捻って連携を乱すくらいなら、一点突破したほうがいいのかもしれない」

「そうですね。このまま前進してください。私達が先遣隊となります」

「あいよっ!」

 

 ナウエルが加速する。一回戦の時とは違い、その様子を誰かが咎めることはしなかった。あんこうチームとライオンチームしか戦車道道に精通していない以上、敵の様子を探る先遣隊になるのはどちらかのチームしかありえなかった。さらに、あんこうチームは隊長車であることも踏まえると、自ずと先遣隊になるのはライオンチームのほうだった。それに対して異論はない。最も妥当な策であることは、絵音も理解していた。

 不規則に並ぶ密林特有の木々を速度を落とさずに駆け抜けていく。車体が全体的に大きくなったというのに、そのドライビングテクニックに一切衰えを感じさせないところが、三上が天性の才能の持ち主であることを示していた。

 絵音はキューポラから顔を出して索敵をした。視界は相変わらず悪いが、まったく見えないというわけではない。絵音はソッと耳を澄ました。大洗女子学園以外のエンジン音を聞き分けることなど、彼女にとって朝飯前だ。異音を感じたのは数秒後のことだった。

 

「何かがこちらに急速に近づいてくる」

 

 初めて聞くエンジン音に絵音は困惑した。

 距離はグングンと縮んでいく、近づいてくる何かが時速50km以上出していることはすぐにわかった。わからないのはその正体だ。シャーマンとはいえ、中戦車の大きさで密林を高速移動することはできないはずだ。ならば……もっと車体の小さい何かが……。

 最初にその姿を目にしたのは、砲手である由多だった。

 

「ミニサイズのシャーマンが近づいてくるぞ」

「ミニサイズ……? まさか……」

 

 絵音は迎撃態勢を指示すると、みほへの通信を開いた。

 


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