Girls und Panzer Re.大洗の奇跡 作:ROGOSS
学園艦のいたるところから景気の良い声が飛び交っていた。なるほど、確かに国風をそのまま受け継いだだけあり、良い意味でうるささがある。学園艦としての規模もそれなりに大きい。他校のものよりも1.5倍はあるのではないだろうか? それを運用し、しかも、文武ともに惜しみなく財力を注ぎ込んでいるというのだから恐ろしい限りである。
メインストリートを抜け、幾分か静かさが漂うその一帯がサンダース学園戦車道の練習場となっているのは、サンダース学園の生徒だけではなく、多くの学園艦関係者が知っていた。
今日はその中に、若干異質な存在の者たちがいた。
貴婦人たるは何かをわきまえた、落ち着いた物腰に柔らかなしゃべり方。やや、得意げに格言を話すことがあるのが玉に
迷彩色の野営テントの中には、真っ白いテーブルと椅子というなんとも風情もへったくれもないものが鎮座している。
「それで……ケイさんはどうお考えで?」
「そうね。まあ、面白いとは思うわよ?」
紅茶をすすりながらサンダース学園戦車道隊長ケイが答える。
普段紅茶を飲まない彼女だが、せっかく出されたものなのだ、わざわざ残すなどもったいないと思っていた。本当のところ紅茶よりもコーヒー派なのだが、今言うのも無粋なだけであるし余計なことを口にしないほうが身のためだろう。
「西住流の加入はそれだけ大きいということがよくわかったわ」
「西住流だけが……はたして大洗女子学園の勝利の要因なのでしょうかね?」
「……ダージリン。わざわざここまで来たのだから、周りくどい言い方をせずに素直に話してもらいたいわね」
ケイの目が鋭いものへとなる。さすがのダージリンも一瞬たじろいでしまうほどの殺気がそこには籠っていた。
ただいつも陽気に振る舞うだけならば誰にでもできる。時には、相手を呑み込んでしまうほどの気迫がなければ在籍数100名を超えるサンダース学園戦車道の隊長など務まらないのだろう。
「服部流をご存じでして?」
「確か……今は干されている流派では?」
「ええ。あの事件がきっかけで服部流は干され、細々と続けていくしかありませんでした。しかし、今もその門下生を着々と増やしている。そして……」
「まさか、服部流の門下生も大洗女子学園に?」
「それは想像してくださいな」
「Great! 最高に面白くなってきたじゃない」
ケイの喜ぶ姿を見ながら、ダージリンはほくそ笑む。
予定通り。ケイならば乗ってくれると信じていた。
聖グロリアーナにとって今大会大きな壁は3つある。
一つは9連覇を成し遂げている黒森峰女学院。しぶとく勝ち続けるプラウダ高校。そして、物量にものを言わせるサンダース学園。
黒森峰とプラウダは幸か不幸か同じブロックにいたため、互いに潰し合うのを待てばよかった。
ならば今は、サンダース学園の情報を少しでもかき集めるのが最優先ではないか? もしも今年から導入する新兵器があるのならばデータが欲しい。光る原石がいるのならば、早めに対策を練っておきたい。
どのみち、準決勝戦まで勝ち上がったとして対戦校となるのは間違いなくサンダース学園だろう。
「私も、そろそろ優勝したいですからね」
ダージリンの独り言を聞いている者はいない。
ケイは礼を言うとテントを飛び出し、どこかへ去っていっってしまった。
「ダージリン様。これは計画通りなのですか?」
「もちろんよ、ペコ。私も隊長。チームがいかに勝てるか模索するのが仕事でしてよ」
「はぁ……?」
「ズルい、などと思いまして?」
「そうですね。確実にその様に言う方がいらっしゃるでしょうね」
「ふふふ、可愛いですわね。もう戦いは始まっているだけのことよ。ペコにもそのうちわかるわ。私が大洗女子学園の情報を与えた意味が」