Girls und Panzer  Re.大洗の奇跡   作:ROGOSS

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更新遅れて申し訳ありません。
長編の予定なので、頑張っていきます。


車長集合です!

「絵音っ! 絵音ってば!」

「ん……?」

「なに寝ぼけた顔してんでぃ! 今日は車長だけで顔合わせをする日なんだろ?」

「あ……そういえば……」

「もう遅刻でぃ! さぁ、行った行った!」

 

 部屋にいるのは絵音と三上だけだった。

 わざわざ起こしに来てくれたというのだろうか?

 

「……ありがとうございます」

 

 小さく礼を言うと絵音は廊下へと出る。

 集合場所の生徒会室は同じ階なので、そう時間はかからないだろう。

 私としたことが、大事な会議の前に寝坊してしまうとは。確かに、あまり乗り気ではないのは事実だ。しかし、勝負に負けてしまったのだからある程度のケジメは付けなくてはいけない。どれだけ嫌だと思っても、表面上だけでも協力しているように見せなくては、一族の恥晒しとなってしまう。

 

「一族か……」

 

 追い出された身でありながら何を心配しているのだろうか。

 服部流などなくなってしまえば良いと数週間前までは思っていたはずなのに。まったく、西住みほがこの学校に来てからというもの何故か上手くいかない。

 

「久しぶりにあんな夢見たな……」

 

 服部流の起源を話してくれていたのは誰だっただろうか?

 祖母か母か姉か。

 いつも寝るちょっと前に話し始めるその話を私は真剣に聞いていたが、最後まで聞けずに寝てしまっていた。

 

「一回くらい、最初から最後までしっかり聞いておきたかったな……」

 

 生徒会室へと静かに入っていく。

 みほと会長の姿が真っ先に目に入ってきた。

 応接用のソファには、奇抜な格好をした者や何故か部活のユニフォーム姿の者がいたが、あえて触れないことにした。

 

「やあやあ、絵音ちゃんー! 待ちくたびれたよ」

「申し訳ありません。昼寝をしていたら寝過ごしました」

「ね、寝過ごしただと!」

「川島ー、うるさい」

 

 会長に手招きされ絵音もソファへと腰掛ける。

 

「じゃあ、始めよっか。まずは、西住ちゃんねー」

「よろしくお願いします」

「で、磯部ちゃんー」

「よろしく! 何事も根性だ!」

 

 バレー部のユニフォームを着た磯部が気合の入った声で叫ぶ。

 うるさいな……。

 心の中でつぶやきながら、絵音は視線を次の人へとズラす。

 

「次はカエサル」

「カエサルだ! 」

 

 赤いマフラーをトーガのように羽織っているコスプレ少女が自信満々に自己紹介をする。

 あまり近づかないほうがよさそうだな……。

 どこか由多と同じような厨二病臭さを感じた絵音は、思わずため息をつく。

 

「一年生の澤ー」

「澤 梓です! 絵音ちゃんとは実は同じクラスなんだよ? 仲良くしてね!」

 

 馴れ馴れしい……そもそも同じクラスなんて初めて知ったぞ……。

 澤がキョトンとした顔でこちらを見る。

 無意識に睨んでいたのだろうか。

 絵音は平静を保つよう自制すると、最後の一人を見る。

 

「で、私も車長なんだよねー」

「でしょうね」

 

 その言葉があまりにも無感情なものだっただからだろうか?

 部屋の温度が一気に下がり、全員が冷たい視線をこちらへ向けているように感じられた。

 こんなくだらないチームの仲間にならなくてはいけないのか。

 根性と言う筋肉バカ、コスプレの一つとでも考えているようなアホ、極端に馴れ馴れしい奴。

 まともなのは、西住流の彼女だけか。

 二回目のため息が出る。

 大会に出たところで一回戦敗退は必至だろう。

 むしろ、その方が良い。

 こんな茶番は早く終わらせて、私は私の戦車道を貫きたいのだから。

 

「じゃ、次は服部ちゃんー。自己紹介してよ」

「……服部絵音です。どういう因果なのか、戦車道を受講することとなりました。正直、あなた達に何を期待すれば良いのかわかりません」

「……」

「試合に勝ちたいのであれば、お遊びの気持ちなど捨てないといけない。それなのに、何ですかこれ? ここはコスプレ大会の会場ですか? 私は決してあなた達を同じ戦車乗りとは認めません。私は、私の認める人だけでチームが組めていればそれで良いのですから」

「……」

 

 シンと生徒会室が静まり返る。

 角谷以外の全員が、目を見開き絵音を凝視していた。

 最初に声を上げたのは、予想通り川島だった。

 

「貴様っ! 何て口をきいているのだ! 遊びだと!? そんなことを思っている奴は一人もいないぞ!」

「ふん、ご冗談を。私には、あなたが言っていることこそ馬鹿げているとしか思えない」

「なっ……! 言って良いことと悪いことの…!」

「川島ー、ここで喧嘩なんかしてもしかたないでしょ。ま、服部ちゃんには特に強制的に受講させたようなものだし、少しくらい多めに見てあげなよ」

「ですが、会長……! これでは我々上級生の面子がっ!」

「そんなこと気にしてもしかたないでしょ。カエサルと磯部ちゃんは気にする?」

「そうですね、根性の底力見せてやりますよ!」

「別に気にはしていない。この格好は私の魂だ。他人にどう思われようと、私は曲げないし曲げる気がない」

 

 不愉快だ……。

 ここまで言えば、万に一つの可能性で受講することを拒否されると思っていたのに……。

 折れない心、それとも鈍感なだけか?

 絵音は黙って、一回戦の概要を聞くことにした。

 


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