転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます 作:低蓮
「えっと、落ち着いたフューズさん?」
「落ち着けるものかよ……ただまぁ、そんなことを考えるより先決なのはオークの群れだ。オークがそんなに多数群れること自体異例なのに、オーガに打ち勝つなんて……」
「そんなにおかしいことなの?」
「おかしいどころの話じゃない。そもそも戦いを挑もうとすらしないんだ」
「うーん……あ、そうだ。関係あるかは分からないけど、私達が倒した個体をほかの個体が食べてたりしたよ」
「食べた……?」
「あと……あれかな? 族長を斬り殺したっていう黒い鎧着た――」
「えぇ、奴は別格の強さを持っていました。もしかしたら
「
フューズさんは世話しなく表情を変えては、頭を抱えながらぶつぶつとつぶやき始める。
正直端から見たら近寄りたくない人に見えるんだけど、こうなった責任の一端は私たちにもあるみたいだから何とも言い難い。
しばらくその状態が続いたけど、大きなため息を一つ落としてフューズさんは顔を上げた。
「情報が少なすぎて結論付けには至らないが、無いよりは断然ましだ。礼を言う」
「この後どうするつもりなの?」
「そうだな、森に調査団を派遣してもう少し情報を集めてからでないと、行動は起こせんしな……」
「あ、なら森の調査は請け負うよ。さっきも言ったけど、今は特にやることもやりたいこともないし」
「そうか、そうしてくれれば助かる。だが、無茶はするんじゃないぞ。生半可なことでどうにかなりそうもないが、万一ということもあるしな」
冒険者になるっていう目標はフューズさんにBランクまで取り立ててもらえたことで達成できたし、オークの件に関してはシロガネの敵討ちがあるから私達が調査するのが妥当だよね。
私はフューズさんの言葉に軽く頷くと、シロガネと一緒にもう一度ジュラの森へ行くことにした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
戻ってきましたジュラの森。
と言っても、そんなに距離を歩いた訳じゃなくてあそこから此処までは丸一日歩いた程度だ。
……あれ? なんか距離感狂ってきてる? ……まぁいいや。
取り敢えず、きて早々出くわしたトラブルに対処しないと。
「キシャアアアァァァァッッ!」
蟻、それももの凄い大きな蟻がなにかを追いかけてる。
なんとなくそれを眺めていたら、その追われてる何かがこっちに気が付いたみたいでこっちに向けて逃げてきたから、やむなく蟻の相手をすることになった。
数は、ひぃ、ふぅ、みぃ……四匹だけかな?
正直そんなに強そうには見えないんだけど、そこのところどうですか「
《
つまり、接近される前に倒せばいいと。よーし、なら「黒雲招来」で……
《待って待って! この状況で「黒雲招来」を撃ったら追いかけられてる子まで巻き込むから!》
あ、そういえばあれかなりの範囲消し飛ばしてたもんね……
となると、接近するしかないのかな?
「黒雲招来」の範囲を絞って、なんとか周りを巻き込まないようにしたいんだけど。
『確認しました。エクストラスキル「天啓」を獲得しました』
どうやら、私の望みや状況を考慮して新しいスキルを作ってくれたらしい。何これ凄い便利。
……それで、このスキルってどういうの?
《「黒雲招来」の範囲を絞るっていう、君の望みをそのまま映したスキルだと思うよ。試しに撃ってみたらどうかな?》
それで追いかけられてる子ごと吹き飛ばしちゃったりしたら、元も子もなくない……?
《大丈夫だって。ほらほら、発射用意》
うーん、まぁいいかなぁ……
一緒に吹き飛ばしちゃったりしたらごめんね?
私はそう心の中で先に謝ると、
更に、追い討ちのように黒雲から剣に向けて雷が落とされ、
いやぁ、それにしても……
「火力、アホみたいに高いなぁ……」
周囲に被害が広がらない程度なら、もっと弱いスキルになると思っていたのに実際にはこの一撃必殺具合。
私は一体なにを倒そうとしているんだろうか……
そんなことを考えていたら、唐突に腹部に鈍い衝撃が走った。
何事かと思って見てみたら、
「いやぁ、助かりましたです! ありがとうございましたです、お姉さん!」
てっきり泣き出すものかと思ったら、笑顔さえ浮かべてそう宣う子供。
みた感じ安堵の笑みと言うよりはどことなく楽しそうなんだけど、よくあんなのに追いかけられて平気でいられるね、この子。
「別に良いよ。そんなことより、怪我とか無い? 大丈夫?」
「大丈夫です。ちょっと逃げてる最中に足が変な方向にねじ曲がりそうになりましたですが、気合いで何とかなったです!」
「ならないよ! 普通ならないよ!」
「ふ、私のことを甘く見ていると痛い目遭うですよ?」
「それ何のキャラ?!」
突然変な方向に話がぶれそうになる。
一体この子はどこでこんなキャラを身につけてきたんだろう……?
ま、まぁいいや。それはひとまず置いておこう。
「本当に怪我とかないんだね? 痛むところとか無理してるところとか」
「あ、実を言うと件の右足がもげるように痛いです」
「え、あれ冗談じゃなかったの?!」
「ほら、甘く見るから痛い目にあうです」
「今痛い目に遭ってるの君だからね?!」
天然か狙ってかはわからないけど、ぼけ倒し始める子供に思わず全力で突っ込みながら傷の具合を確かめる。
と言うか何この子? 何でこんなにボケ慣れてるの? 素なの?
まぁ、どうやら本当に逃げている最中に足を変な方向に曲げて痛めてしまったらしい。
その足で逃げ切れたことにも驚きだけど、なんでこの子は痛がったりしないんだろうか。いや、痛がりはしていたけどさ。
あんな程度で済ませられる痛みとはとうてい思えない。関節部は真っ赤に膨れあがっているし、熱もすごい持っている。
今は取り敢えず、治療してあげることだけに専念を──
「ところで、お姉さんは傷を見てどうするつもりなんです? 見たところ医療道具を持ってるわけでもなさそうですし、かと言って僧侶にも見えないですが」
──そういえばそうだね?!
しまった、特に考えずに話を進めてたけど私回復魔法使えないじゃん?!
……えっと、「
《魔法となると、最低一回は見ないと覚えられないかなぁ。残念だけど》
流石にそこまで万能じゃなかった!
え、それじゃこの状況どうしよう。なんか凄い不思議そうな目で見られてるし!
「あー、うんちょっと待って。今方法考えてるからちょっと待って」
「無計画だったんです……?」
「無計画でごめんなさい!」
やめて、あきれたような視線を向けないで! 自分でもあきれてるから!
うー、でも回復魔法は使えないし、使える知り合いもいないし。
仕方が無い……この子を家まで送って、後の処置は家の人に丸投げしよう。
私が下手に何かするより、そっちの方が良いよね、うん。
「あー、えっと、ごめんね? 私じゃ治せそうに無いから、せめて家まで送ってあげる」
「まぁ、何となくそうなんじゃないかとは思ってたです……」
「主様にも出来ないことも有るでしょう。お気になさることは有りませんよ」
うぅ、耳が痛い。特にシロガネの私に気を遣っているのが丸わかりな言葉が、ザックザックと突き刺さってくる。
はぁ、よく考えずに行動するものじゃ無いね全く……
「えっと、それじゃ送ってあげるよ。君は……」
「ふふん、聞いて驚くです。私はスーパーコボルドにして名を──」
「あー、コボルドだったんだ。確かにもふもふしてそうだし、可愛いね」
「コボルドじゃないです! スーパー! す! う! ぱ! あ! です!」
「うんうん、それで君の家はどこなの?」
「聞いちゃいないです……えっと、私は違うですが一応仲間は行商人をやっているから、決まった場所に長居するわけじゃないです。ただ、今からならリザードマンの集落のそばにいると思うです」
「リザードマンか……それって結構距離有るなかな?」
「それなりに離れてるですから、無理に送って貰わなくても大丈夫です。私は自分でなんとかしてみるですから」
「あー、ううん。そんな状態で放っておけないし、ちゃんと送るよ」
治療するつもりだったのに出来なかったし、一度送るって言ったんだからせめて言葉には責任を持ちたい。
持ちたい……んだけど。
「いくら主様でも、それは流石に……私にお任せください」
「いやでも、私が送るって行ったんだから私が責任を持たないと……」
「ですが、それでは最早背負うと言うより引き摺っているだけです。やはりここは、私にお任せください」
そう、忘れられているかもしれないけど、
詰まるところ、
い、いや? 一応私の方が高いからね?
《コボルドは成人しても人間の幼子程度の大きさだから、張り合ってもむなしくなるだけだよ?》
その情報を聞かなければむなしくなることも無かったと思うんだけどな!
全く、なんで「
まぁ実際問題、私が背負うことは不可能みたいだから諦めてシロガネに代わりに運んでもらうことにした。
本人が嬉しそうに引き受けてくれたのが唯一幸いだったりする。
「そういえば、君はなんで
道中何も無いと退屈だろうと思って、ふと疑問に思ったことを聞いてみた。
行商人って、そんなに危険な仕事なのかな?
「聞きたいです?」
「うん。どうせ手持ち無沙汰だし、得られる情報なら集めておきたいなって」
「……後悔しないですね?」
「え、ちょっと待って。それってどういう……」
「あれは雨の降る日のことだったです──」
「って聞いてないし!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
コボルド、またはコボルトは全体的に犬と似た姿を持つ、ランクの低い魔物である。
その起源はゴブリンと同一ともされていて、基本的には魔王の手先となる下っ端として描かれていることも多い。
ただ、ランクが低いために戦闘能力はお世辞にも高いとはいえない。
この世界もその例に漏れず、ごく一部のものを除いて戦える者は殆ど居ないらしい。
「森は危険で一杯ですから、行商人をやっている者以外は基本的に縄張りから出たりしないです。幸い私達は強面では無いから、人間たちとも取引をしてなんとか生活してるです」
で、この子はその行商人たちの護衛として森の中を歩いていたらしい。
ただ、ちょっとした手違いによって
「その後の下りは知ってるとおりです。おねーさんを守るために、私が獅子奮迅の活躍をしたです」
「うーん、その下りはこの世界線の話じゃないんじゃないかなぁ……というか、雨の降る日関係なくない?」
「おねーさん、わかってないです。大事なのは雰囲気です」
いや、そんなやれやれみたいにため息吐かれても困るんだけど……
それに、しれっと
まぁ、この子は仲間を助けるために自分を囮にしたわけだし、別に手柄云々は全然気にしてはいないんだけどね。
そんな取り留めの無い会話をしつつ一週間がたって、目的の場所まで約半分の所まで来たときに、私達の進んでいる方向からざわりと嫌な気配が漂ってきた。
《前方に大きな魔素が複数と小さな魔素がこれまた複数感知できたよ。普通に考えれば、力のある魔物とその取り巻きってところかな》
「
それで、気配遮断をどうにかして皆に適用してそっと近づけないものかと悩んでいたら、「
『エクストラスキル「位相ずらし」を獲得しました。重複スキルである「気配遮断」及び「情報拡散」は消滅します』
なんとこの「位相ずらし」、「情報拡散」の能力に加えて物理的なもの以外の全ての影響を無効化することが出来るらしい。
例えば、「位相ずらし」を使っている間はどんなに騒ごうとも他人に声が届くことが無く、姿を見えなくすることも出来るらしい。
それに、好きな位置に任意の指向性を持たせて使うことが出来るから、他人に声だけ聞こえなくさせることも可能なわけだ。
流石「
そんなわけで、私達はひっそりと気配の発生源へと向かった。
態々嫌な予感がする方へ行ったのは、感じた気配の数が多かったために魔物の大量発生と何か関係があるとふんだからなんだけど……
「あれ? コボルドと……厳つい鎧を着た、オーク……?」
事態は、もう少しややこしいみたい。
あとがきに転生する?
〉Yes
No
ミク・ヒグラシ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『神話召異』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『
スキル──『武器習熟』
耐性──『精神攻撃無効』『状態異常耐性』
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カイ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『黒き稲妻』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『影移動』『思念伝達』『魔力感知』
耐性──『物理攻撃耐性』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『自然影響耐性』
──────────
シフ
種族──牙狼族(???)
加護──???
称号──
ユニークスキル──『
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シロガネ
種族──オーガ(???)
加護──???
称号──