転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます 作:低蓮
更新速度は最近が早すぎただけ。次回は8月になりそうです……
※9/3一部大幅改変 シリアスは死んだ!
幸いにも、二度目の虚脱感は一日とたたないうちに回復した。
なにかシロガネとカイが私がどうのとじゃれ合ってたけど、まぁそれはどうでもいい。仲良くなることは良いことだもんね。
後ろから聞こえ始めた破砕音を無視して、私は目の前の小さな悪魔を抱え上げる。
「シーフー? 私、顔をなめるのを控えろって、言ったよね?」
「平時はずっと控えているので、今回は羽目を外しました!」
「外さなくて良いの! ちゃんとはめておいて!」
可愛い顔して何てことを言うんだこの小悪魔ちゃん。
これってもしかしてあれ? こうなる度にシフに顔を蹂躙されるの?
むぅ、何か対策を考えないと……取りあえず、名付けは慎重に行うべきだね。
名付けをする=シフになめられる……と。
まぁ、名付けなんてそうそうする事でもないだろうし──
「「ミク(主)様!」」
「──ふぇ?」
呼ばれて振り返ってみると、肩で息をしたシロガネとカイが私の方へと身を乗り出してきている。
っていうか、主様ってそんな主従関係みたいな……
「えっと、なに?」
「聞いて下さい主様! 主様のお世話は人の形に近く、かつ女である私の役目に決まっていますよね!」
「え? えーっと……」
「全く何を……ミク様の身辺のお世話は、古参である私の役目に決まっている。そうですよね、ミク様?」
「う、うーん……?」
「ちょ、古参って言ってもそんなに変わらないじゃないですか!」
「少しでも早ければ古参だろう」
「誰が決めたんですかそんなこと!」
「はいはいストップ。喧嘩しないの」
目の前でいがみ合い始めたシフとシロガネを軽く叱りつけると、二人ともシュンとなって大人しくなる。
うん、シフだけでも罪悪感が凄かったけど、二人合わせるともっと凄いや。私間違ったことしてないはずなんだけどなぁ……
「えっと、取り敢えず二人にとって私の身辺の世話って外せないことなの?」
「勿論です。その為にも、主様と形状の近いこの私が……」
「進化したてで、身体のコントロールが上手くいかんだろう? 案ずるな、やはりここは私が……」
「なんでそういがみ合おうとするかな! ……交代制じゃだめなの?」
「……交代制、ですか。なる程、考えもつきませんでした」
「流石はミク様、確かに一定の期間をおいて交代すれば何の後腐れもなくお世話をすることが出来ます」
「交代の期間はどうしますか?」
「十日毎でいいだろう。長すぎず、短すぎずだ」
交代制を提言したら、私そっちのけで話が進んでいってしまった。と言うか君たち、私の身辺の世話とか何が楽しいの? しかも十日毎とか、私だったら一日交代でも面倒なくらいだと思うけど……
まぁ、本人達がいいのならいいんだけどね。別に嫌なわけじゃないし。
「では、最初の十日は私が主様のお世話をしますね」
「……まて、期間を決めたのは私だ。ここは私に譲るべきところだろう?」
「それを言うなら、主様の提案を先に肯定したのは私ですし、そもそも私が期間の話をそちらに振ってあげたんですよ? ここは勿論、私からだと」
「……一度、はっきりさせた方が良いようだな」
「……望むところです」
もう知らない。後ろから聞こえてくる戦闘の音なんて知らない。
兎に角、この二人は放っておいてさっさと目的のブルムンド王国へ向かおうそうしよう。
「先行ってるからねー。ちゃんと後からくるんだよー」
「ちょ、待って下さいそれは本気出し過ぎ──」
「本気を出すことの何が悪い!」
「──危なし?!」
「……行こっか、シフ」
ま、後からちゃんと付いてくるから大丈夫でしょ。
……大丈夫だよね?
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ささ、主様。何なりと申しつけて下さい!」
「うん、今は特にないからもう少し落ち着いて歩いてくれないかな……?」
私たちは今、ブルムンド王国の領地を歩いている。
領地、と言ってもここは農村みたいだけど。
道行く人に聞いてみたら、ブルムンド王国は小さな国で中心に位置する王都と周囲の村々から成り立ってるらしい。
その王都へはこの村から定期馬車がでているらしいから、折角ということで村を散策しているわけだ。
まぁ、定期馬車の時間にまだ成ってないだけなんだけどね。
で、今となりにいるのはシロガネだ。
ボロボロになりながらも「主様、勝ちましたよ!」と誇らしげに報告してきたから、何となく頭をなでてあげた。
その様子をカイが羨ましげな顔で見ていたけど、そういえばカイは全く怪我してなかったような……
一応決着は着いたみたいで、カイは大人しく私の陰に潜ってシロガネが私の隣を歩くことになった。
ボロボロな見た目で王国に行く訳にも行かなかったから、「神話召異」で適当に服と武器を作ってあげた。特にこれといったものが思い浮かばなかったけど、取り敢えず丈夫な服とよく切れる刀を思い浮かべたら出てきてくれた。本当にスキルとか魔法って便利。
そんなわけで、先程から時間を潰すために村を適当に歩いているんだけど、シロガネがどうしても私の世話をしたいのかちょっと鬱陶しい。
一応シロガネの身に起こった経緯を聞いたりしたんだけど、本人は仇を討つ事以外にはあんまり関心がないみたい。
オークが憎い? ってきいたら黒い鎧の奴以外は特に、って返ってきたし。
まぁ兎に角、完全に善意からなんだろうから邪険にも出来ないし、どうしよう……
「そ、そうだ。おなか減っただろうし、宿屋でご飯でも食べよっか」
「分かりました! 任せてください!」
「待って待って! なんで武器抜き放つの?!」
「え? ですから矢土野というところで獲物を狩るのでしょう?」
「しまった常識に差異が……」
危うく大惨事になるところだった……と言うわけで、シロガネに人間社会の常識について基本的なことを教えてあげた。
まぁ、私の知っているものとこの世界のが一緒とは限らないだろうから、本当に基本的なことだけだけどね。
「なる程、此処では無闇に武器を抜くのは禁止なんですか……」
「そうそう、話し合いで解決するの。わかった?」
「はい、うっかり武器を抜かないように常に気を張っておきます」
「う、うん。頑張ってね……」
気を張ってないとうっかり抜いちゃうんだ……私もシロガネが暴走しちゃったときに対処できるように、気をつけておこう。
そんなこんなで宿屋について中に入ってみると、それなりに人が居て賑わいがあった。
宿の真ん中で冒険者らしい風貌をした男たちが何やら騒いでいたけど、煩わしいから頭のなかから締め出す。
第一、関わると碌な事にならなそうだし。
「えっと……ここが宿屋ってところね。ここで寝たり食事をしたり、まぁ色々とするわけだけど」
「なるほど、ここが……しかし、獲物はどこにいるんですか? そこらに群れている人間どもは食べられないでしょうし、いるとすればあそこのまるまる太った豚……」
「いや、それも人間だから一応! えっとね、ここでは食べ物を注文すれば調理してから出してくれるんだよ」
「じ、自分で料理をしないんですか?! そんな、もし口に合わなかったら……」
「うーん、まぁそういう時もあるかもしれないけど、基本的にこういったところの料理は万人に受けるような味付けをされてるから、問題はないと思うよ」
「なるほど……人間の村々には優秀な料理人がいるのですね……」
やがて運ばれてきた料理をひとくち食べて、シロガネは満足そうに一つ頷いた。どうやら口にあったみたいだ。
私も、目の前に運ばれてきた料理をひとくち食べようと手を伸ばす。
けど、その私の視界の端から、ヌッと一本の大柄な腕が生えてきた。
「……えっと?」
腕の持ち主を仰ぎ見てみれば、先ほど宿の真ん中で騒いでいた内の一人だ。
あの騒ぎの中では多少マシな腕を持ってたようだけど、それでも大した実力じゃない。
いざとなればどうとでもなるんだけど、まぁ騒ぎはなるべく起こしたくないわけだからここは穏便にすまそうと思う。
だからシロガネさん、抜刀しようとするのはどうかこらえて下さいお願いします。
「……お前、頭に乗っけてるもんは一体何だ?」
漸く話しかけてきたと思ったら、突然にそんなことを聞いてきた。
頭の上? えーっと、よだれをダラダラ垂らしながら私の食べようとしてる料理をじっと見つめているシフがいますね。
さっきからなんか頭が暖かいなぁと思ったらそういうことだったのかー、あはは。
これは後でキツイお説教が必要だね……
「まぁ……ペット? みたいなものかな?」
「ペットだと?」
私の言に、シフが抗議の視線を送ってくるけど、だって君犬みたいなんだもん……
シフを見ていると遊びたいざかりの子犬を見ている気持ちになってくる。
あれは、間違っても狼が取る行動じゃないよ。犬だよ。
「そいつは、牙狼族だよな?」
「うん? うん、そうだけど」
「つまり、お前は魔物をペットと言いたいわけか?」
「うん、私の大事な家族みたいなものだよ」
料理食べたいんだから早くどっかいって! と強く念じてみるものの、男は何が気になるのか質問を重ねてくる。
だんだん面倒になってきた私は、おざなりに対応することにした。
「で、私の他の家族がすごい形相であなたのこと睨んでるから、そろそろ下がったほうが良いよ? それに、私いい加減たべ――」
「――おい、聞いたかお前ら?! こいつ、よりにもよって魔物を“家族”だとよ!」
うん? なんだか不穏な雰囲気になってきた?
え、ちょっと待ってって。騒ぎを起こしたくないんだから、あんまり騒がないでよ。
「お前、魔物と戦ったことはあるか? ねぇよな。魔物に誰かが殺されるの見たことがあるか? あるはずねぇよな。魔物に大切な人が殺されるのをただ見てるしかなかった経験はあるか?! ねぇよなぁ?!」
ちょ、いきなりなんでヒートアップしてるの?
トラウマスイッチでも入っちゃったのかは知らないけど、ちょっと他所でやってくれないかな……
こう、ご飯を前に邪魔されると、凄い苛々するんだけど……
ご飯の恨みって、恐ろしいんだよ?
「あったら、魔物なんざと“家族ごっこ”なんかして遊んでいられねぇもんな! いいか?! 魔物っていうのはな、こうやって大事なもんを奪ってく奴らなんだよ!」
突然、男が背中からツヴァイヘンダーを取り外すと、シフにめがけて振り下ろしてきた。
だけど、それはキレも何もあったものじゃないただの振り下ろし。
当然それを察して、その剣筋から華麗に離脱をしていくシフ。
……ちょっと待って、頭の上にいたシフがそれ躱したら。
……これ私の脳天に向かって突き進んできてるんだけど?!
余裕ぶっこいてたら躱す時間なくなったし!
シフがこっちを向いて、可愛く舌を出してるのを横目に見つつ私はアスカロンを手に取ろうとする。
シフには後でたっぷりお説教をしてやらねば……
「――んなッ」
突如キィン、と金属と金属がふれ合ったみたいな甲高い音とともに、振り下ろされえている最中の刃が空中で切断された。
そのことに、声を上げて驚く男。まぁ、いきなり武器がぶっ壊されたらそりゃ驚くよね。
あ、壊れた武器は弁償しないからね? 自業自得だから。
「ありがと、シロガネ。もう大丈夫だから、刀仕舞っていいよ」
「しかし主様、この狼藉者の首を狩らねばまたいつ襲ってくるか……」
「あ、本当に良いから! そんなことしなくていいからね!」
渋々といった体で刀をしまうシロガネにホッとしつつ、私は料理を食べようと前を向き直る。
しかし、そこには既に料理の姿はなかった。
あるのは、ピカピカに舐められた皿と丸くなって眠るシフが一匹。
ほーう、良かろう。そこまでお説教されたいのかこの子は……ッ
「……ッ お前は分かってない! 魔物がどんな存在なのか! 今に、きっと後悔を――」
料理を食べられてイライラしているところに、更にイラつく声が聞こえてくる。
魔物がどんな存在か? 私の料理を勝手に食べる恐ろしい存在ですよ……!
「お前の大事なもんが、そいつに奪われるんだからな!」
もう奪われたって、私の料理!
あーもう本当にうるさい!
【──黙れ】
怒り心頭の私は、思わず声を荒げてそう口にする。
低く響いたその声は、場を支配し辺りに静寂を招き入れた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
暴風竜の消滅が確認されてから、ここブルムンドでは魔物の大量発生に備えて警報が出されていた。
王都の警備はより厳重になり、周囲の村々には一定の腕を持った冒険者達が最低でも5人は付くようになっている。
冒険者達はいつ現れるか解らない魔物の群れにピリピリとし、村には暗い雰囲気が漂っている。
そんな暗い雰囲気を払拭すべく、
「っあー。全く、どいつもこいつも陰気な顔しやがって」
そうボヤくフューズは、とある村で食事を取っていた。
一時的に訪れる休息の時間……だったのだが、にわかに入り口の辺りが騒がしくなってくる。
気怠げにフューズが視線を向けると、一人の冒険者が女の子の前に仁王立ちしている。
「何やってんだあの馬鹿は……」
憂さ晴らしか、何なのか。兎に角女の子相手に威圧するかのような男にため息を吐くと、叱りつけるべく席を立ち──
「──あん?」
一体いつ立ったのか。女の子の保護者らしい女性が、男に刀を突きつけている。
しかも、男のツバァイヘンダーが両断されているというおまけ付きで。
「……おいおい、全く見えなかったぞ?」
フューズの背中に冷や汗が流れる。彼自身かなりの実力を持っているのだが、今の斬撃は予備動作すら見えなかった。
こいつはやばい手合いだ。そう直感的に感じ取ったフューズは、冒険者達を止めるために口を開いた。
……その口から、言葉が発せられることはなかったが。
【黙れ】
女性の方ではなく、女の子の方が放ったよく通る呟き。
しかし、その言葉は途轍もない重圧とともに場を支配した。
(──ッ! なんだ、これは……!)
フューズですら毛先一本動かすことの出来ない空間を作りだした少女は、すっくと立つと冒険者達へ近づいていく。
フューズからは角度的に表情を見ることは出来ないが、冒険者達の表情は恐怖に染まっているだろう。
何故なら、当事者でないはずのフューズさえも少なくない恐怖を感じているのだから。
「あなた達が魔物をどう見ようと、私はどうでもいい」
女の子は男の前に立つと、真っ直ぐに男の目を見つめる。
女の子の方が遥かに小さいはずなのに、男を見下ろすかのごとく圧倒的な威圧感を放っている。
「でも、それで邪魔をするなら話は別。それ相応の覚悟はしてもらうから」
吐き捨てるように、女の子がその言葉を男へと投げかける。
言いたいことを言い切ったのか、興味を失ったように背を向けると、テーブルの上から何かを取り上げて頭に載せた。
その時になってはじめて、フューズはその魔物の存在に気がついた。
(魔物?! あれは、牙狼族か……? それにしては……)
流れ出ている魔素が洗練されている。
溢れ出ている絶対量は、意識しなければ気が付かないほどに小さいのに、その鋭さだけが量に反比例して研ぎ澄まされているのだ。
明らかにチグハグな関係。しかし、もしあの牙狼族が意図して力を抑えているのなら……
「ほら、行くよシフ」
(やはり
名を持つ魔物は、個体の能力が飛躍的に上昇する。それこそ、魔王と呼ばれる連中は皆名を持っている。一部に例外がいるとはいえ、放っておけばいずれ力を付けて──
(──いや、待て。と言うことは、あの女の子はそれほどの魔物を手懐けているのか……?)
もし人の身でそれを為したのであれば、恐ろしいほどの逸材。
先ほどから続く重圧にしても、フューズですら動けないと言うことは少なく見積もってもAランクオーバー。
実力が能力に見合っているのかはともかく、魔物の大量発生が予想される現状是非欲しい人材なのだ。
「……いこ、シロガネ」
女の子はそれだけ言うと、踵を返して宿を出ていった。シロガネと呼ばれた女性も刀をしまうと、それに続く。
姿が見えなくなると、場を覆っていた重圧が消え去った。それと同時に、今まで動かなかった身体が動くようになる。
フューズは完全に腰を抜かしてしまっている冒険者達には見向きもせずに、女の子の後を追って宿を飛び出した。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
宿をでた後、私はしばらく無心で歩き続けた。
それで、しばらくした後にぴたりと足を止める。さて──
「──あぁもう、シフ! なんで私の料理食べちゃうかな! 私まだ一口も食べてなかったんだけど?!」
くるりと振り返ると、シロガネにそうやって泣きついた。
だってだって! シロガネが美味しそうに食べるから期待してたのに!
なに、いじめなの? 私いじめられてるの?!
「落ち着いて下さい主様。またいずれ訪れて食べればいいでしょう」
「……それなんだけどさ? ドサクサに紛れて出てきちゃったから、私お代払ってない……と言うより、ここの通貨持ってない……」
「ふむ、なるほど……では、お任せ下さい主様。そこらのものから少しばかり失敬して……」
「いやダメだって! それは犯罪、泥棒です!」
本当にシロガネって考え方が物騒過ぎないかな!
いつか、目を離した隙にとんでもないことをやらかしそうで私は怖いよ……
なんて考えていたら、突然シロガネが刀を抜き放って後を振り返る。
って、だから無闇に武器を抜くのは禁止だってば!
《宿屋にあった気配のうちの一つが、追いかけてきたみたいだね》
ま、まさか宿屋のおばちゃんが……?
まずい、さっさと此処から逃げないと!
《あー、うん。大丈夫だからすこし落ち着こうか……》
へ? 大丈夫?
なんて思ったけど、その「
敵意がないのを示すためか、両手を少しあげてる。
「貴様、さっきの所にいたな。何のようだ?」
「ちょっとその女の子に用があってね……良いかい?」
「えっと、なにか……? お、お金は持ってないんですごめんなさい!」
「いや、別にカツアゲにしきたわけじゃなくてだな……さっきの今で聞き難いんだが、君は冒険者に興味はないかな?」
「はぁ……興味があるというか、一応冒険者登録しようと思ってここまで来たけど」
私がそう返すと、男は驚いたような顔をした後嬉しそうに顔を綻ばせた。
うーん? どういうことだろう……?
私の訝しげな顔をみて思い出したのか、男は慌てて自己紹介を始めた。
「おっと、こりゃ失礼。俺の名はフューズ、ここの支部の
ギルマス……? ギルドマスターって事だよね。
ってことは、さっきの質問ってもしかして……
「君さえ良ければ、俺の力でBランクまで取り立てることも出来る。どうだ?」
やっぱりそうだ! なんと、ギルマスの目に止まって直スカウトに来てくれたらしい。
Bランクまで取り立ててくれるって言ってるけど、これって相当おいしい話なんじゃないだろうか。
本当だったら冒険者になるためになんかの試験とか有るんだろうし、それを一気にBランクまでなんて、そんな美味しい話が
これは、確実に何かの裏があるんだろうなぁ。
「良いの? 力もわからないような相手をそんなにランク上げちゃって」
「力については申し分ない。先程の重圧は見事なものだった、Bランクでも足りないくらいだからな」
「ふーん……じゃ、わざわざスカウトしてくれた理由を教えてくれる? 何か裏があるんでしょ」
「うぐ、それは……」
「主様の質問に答えろ。隠し事をしたら斬るからな」
「はーいシロガネは少し黙っててねー!」
「わかった、話すから落ち着いてくれ……実はな、暴風竜が消滅して以来魔物の大量発生が危惧されているんだが、人手が足りていないんだ。厄介な魔物が出現したら下手に低ランクの冒険者を送り込むわけにもいかん」
「だから、ある程度力のある私達に即戦力になれ、ってことだね?」
「まぁ、ざっくり言うとそういうことだな」
冒険者って意外と大変なんだ……なんか、もっと自由気ままなものなのかと思ってた。
でもまぁ、それで冒険者になるのを止めるつもりはないけどね。
それに、シロガネの所を襲ったオークの集団って言うのが、フューズさんの言う魔物の大量発生って奴かもしれないし。
「それだけで冒険者になれるんだったら、それで良いよ。どうせ今のところ目標とかもないしね」
「そうか……いや、助かる。君とシロガネの二人がいれば、相当の戦力強化に繋がるしな」
「あ、そうそう。魔物の大量発生の件だけど、なんかオークが凄い量ジュラの森にいたよ。私も見たし、シロガネの集落襲って壊滅させたのもそのオークみたいだよ」
「オークの大量発生……? 何故奴らが群れる……というか待て、集落が壊滅だと? そんな連絡は受けてないぞ?」
「え、そりゃそうでしょ。何でここに連絡がくるの?」
「いや、何でってなぁ……」
どうにも話がかみ合ってる気がしない。
シロガネの集落が壊滅したところで、何でフューズさんの所に連絡がくると思ったんだろう?
あれかな、密かにオーガの里を見はってたからとか?
なんにせよ、フューズさんはなにか勘違いして、って……
あー、私はオーガとして見てるからなんとも思わないけど、シロガネってパッと見普通の人間っぽいなぁ……
髪で角が完全に隠れちゃってるし、野蛮な性格さえ隠せればこれは人間として通用するね、うん。
取り敢えず、フューズさんの誤解を解いておこう。
「あーっと、シロガネは人間じゃないよ? 一応オーガだから」
「……は? いや、オーガ……?」
「主様の仰るとおりだ。私はオーガ、主様に名を頂いて今の姿になったがな」
「ちょ、名前って……はあぁぁぁぁーーーー?!」
愕然とした表情で叫び始めたフューズさん。
え? 私変なこと言った……?
この世界に新たな生を受けた少女は、同時期に産み落とされた男とにたような道をたどっていく。
この二人が初の邂逅を果たすのは、一人の魔王の誕生を巡る戦場。
第三の勢力が加わることによってより一層荒れる戦場にて、異世界からの転生者達は何を見るのか。
今はまだ、歯車が回り始めただけに過ぎない。
あとがきに転生する?
〉Yes
No
ミク・ヒグラシ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『神話召異』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『
スキル──『武器習熟』
耐性──『精神攻撃無効』『状態異常耐性』
──────────
カイ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『黒き稲妻』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『影移動』『思念伝達』『魔力感知』
耐性──『物理攻撃耐性』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『自然影響耐性』
──────────
シフ
種族──牙狼族(???)
加護──???
称号──
ユニークスキル──『
─────────
シロガネ
種族──オーガ(???)
加護──???
称号──