転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます 作:低蓮
※スキルの記載忘れがあったので修正しました
前回、あわや
《あのさ……だから大丈夫だって。あの魔物もそれなりに強い部類だったけど、問題なく倒せたでしょ?》
倒せたって言っても、そのときの記憶はないんだけど?
《一時的にこっちで
笑い事じゃないからね?! 突然身体が自分の意志で動かせなくなるわ、意識が薄れていくわ、びっくりしたんだから!
《ごめんごめん……でもさ、実際問題魔物は
むぐ……た、確かに……
《それに、折角力を手にして生まれ直せたんだからさ、色々と自分の力で何とかしてみたら?》
うーん……確かに、前世とは比べものにならないくらい色々出来るわけだし……あれ? でも
《君が、途中の記憶はないのに結果だけが用意されてる世界が楽しいって感じるなら、それでも良いけど?》
自分でやらせていただきますはい。
あっさりと自分のスキルに論破された私は、外にでるべく魔物に出くわさないように慎重になって周囲を伺う。
右よーし。左よーし。正面に敵影なーし……今!
ぐっと足に力を込めて、駆け出す姿勢になり──
『エクストラスキル「気配遮断」を獲得しました』
突然響いてきた声に驚いて盛大にずっこけました。タイミング悪すぎないかなぁ、もう!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
そんなわけで手に入れたスキルだけど、これが中々どうして使い勝手の良いものだった。
そういえば、魔素ってなに?
《簡単に言えば、体からでる
ふーん? 因みに、私の魔素ってどれくらいあるの?
《んー、かなり多い部類に入るんじゃないかな?》
そうなの? あの
《ううん、君が居た世界とほとんど同じような環境だから、特殊な草とか魔物とかが居る以外は普通だよ?》
魔物が居る時点で普通とは呼べないと思うんだけど……まぁ、下手に変な環境におかれるよりは馴れている方が良いに決まってるから、その事についての不満などあろうはずもない。さぁ、異世界の景色とご対面──ッ!
──普通だね。
《そう言ったよね?》
いやうん、そうは聞いたんだけどさ。比喩的表現であってもうちょっと違いがあるものかと思ってた。
《がっかりでもした?》
ううん、そんなこと無いよ。想像と少し違ったから、ちょっとね……まぁそれは置いておいて、みた限り魔物は居ないみたいなんだけど、そんなに数が居る訳じゃないの?
《んー、感知範囲にはそこそこ居るんだけど、大体は集団で行動してるみたいだね。弱い種族ほど群れる傾向にあるから、この辺りの魔物は大したこと無いみたい》
そっかぁ。言葉が通じない以上、余り魔物との接触は控えた方がいいよね。となると、ひとまずは人間が居るところに行かないと……
《言葉なら通じるよ?》
え?
唐突に
《あれは知能が低くて、野性的な性質の魔物だからね。基本群れることがないから、言語能力は発展しなかったみたい》
ふーん……それじゃ万一出会っても友好的に話を進めることもできるってこと?
《状況にもよるけど、そういうことになるね》
成る程……だったら、あんまり人の居るところに急ぐ必要はないかな。スキルとかこの剣の扱いとか色々やりたいこともあるし、暫くはこの……森? で修業をすることにしよう。あ、そういえばこの
《無いけど、創れるよ》
あ、そっか。えーっと……まぁ、この剣が収まればどんな鞘でもいいや。
そんな適当な感じでも、アスカロンを創った時と同様に光が私の右手に集まり、それが散った後には一本の鞘が握られていた。特に何か伝説を思い浮かべたわけでもないし、あやふやなイメージでも創ってくれるとは何とも使い勝手の良いスキルだ。
よーし、せめて人並みに剣が使えるって言えるようになるまで、がんばって修業だー!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
洞窟からでてから三日経ち、私はそれなりに剣の扱いに慣れたと言える程度には、ずっとやり続けていた素振りも様になってきた。
たった三日程度、と思うかもしれないけどそれは違う。実は私、この三日間何も食べていなければ一睡もしていないのだ。だから、流石にずっとというわけではないけど、前世の頃の三日などよりも遙かに濃厚な期間を修業に充てることができた。
ただ、寝る必要も食べる必要もないっていうのは便利だけど、何か物足りない感じがしてならないんだよね。やっぱり、前世の影響なのかな。これからは差し迫ったものがない限り、食事も睡眠もとろうかな。
そんなことを考えながらいつものように素振りをしていると、不意に
《近くに魔物が居るね。凄い弱ってる個体と、元々気配の小さい個体の二つ。周辺にほかの気配は見あたらないよ》
弱ってるってことは、怪我をしたりして群れからはぐれたのかな。言葉が通じるなら何とかしてあげたい気もするけど、どうしよう?
《どっちも牙狼族だから、言葉は通じると思うよ》
なら、魔物とのファーストコンタクトといこうか。
《ファーストって言っても、来て直ぐに
《アッハイ》
万一襲ってきても、この数日で覚えたスキル「武器習熟」と素振りの成果で撃退! ……出来ると良いなぁ。
そんなわけで、
気配の元にたどり着くと、案の定というべきか一面にに広がるのは血に塗れた地面といくつかの死体だ。これのせいで周囲に鉄臭さが漂ってたんだろうね。そしてその中心には、元は灰色であったであろう毛をどす黒く染めた、一匹の狼がうずくまっていた。
僅かに上下してるから、生きてはいる……のかな?
「えーっと、大丈夫? 生きてる?」
なるべく距離をとって驚かせないように……と思ったんだけど、私の声が聞こえた瞬間に狼は身体をびくりと震わせ、素早く周囲の確認をし始めた。
その様子は鬼気迫るものがあって、なんだか悪いことしちゃったな、と思いつつ狼の前に刺激しないようにゆっくりと姿を見せる。
「何者だ。何のようで、此処へ来た」
「えっと、意志疎通が出来るかどうかの確認と、なんだか大変そうだからなにか手伝ってあげられないかなって。あ、怪しいものじゃないよ?」
「見るからに怪しいだろうが。それになんの力も持たぬような小娘が、手助けだと? 笑わせてくれるな」
低い声で威嚇しながらそう告げる狼……狼ってなんか呼びづらいなぁ。
「君の名前はなんて言うの?」
君とか狼とかじゃ格好が付かないし、名前で呼びあえれば多少は警戒も解いてくれるんじゃないかな。
そう思ったんだけど、狼は答えようとはせずにじっとこっちを見つめてくる。その瞳には、警戒の色よりも困惑の色の方が多いように見える……え? なんで?
《あぁ、魔物は基本的に名前は持ってないよ。名前は上位の魔物や魔神が下位のものにつけるのが一般的なんだけど、それなりの代償もあるからあんまり
そうだったんだ……代償ってどんなものがあるの? 寿命が縮んだり?
《ある意味ではそうかな? 名付けをやる度に、名付け親の魔素が名前を得る魔物の強さに応じて減って、ついでに魔素の最大量が減ったりするんだ。それは力を失うことと同義だから、好き好んで名前を付けるものはいないかな》
え? それだけ? なんかこう、もっと重い代償でもあるかと思ったんだけど……そういうことなら。
「名前がないんだったら、こっちで勝手に〝カイ〟って呼んでも良いかな?」
その言葉に驚いたように
その事に何かを思ったのか、
……私、何もしてないよね?
《名付けは手っ取り早く力を付ける手段だから、君に名前をもらったことで『進化』が始まったんだね》
進化って……名前もらった程度で出来るものなんだ。
《君の思っている名付けと、この世界での名付けは意味が大きく違うからね。ポ○モンだってレベルがあがれば進化するでしょ?》
なんとなく理解できたけど、そもそもなんでポ○モン知ってるの?!
と
……正直言うとものすごく怖いからやめて欲しい。というより大きすぎない? 軽く数mはあるように見えるんだけど。
なんて軽く慄いていると、
「先程は小娘などと無礼なことを申してしまった非礼を、どうか許していただきたい。言い訳にしかなりませんが、少しばかり気が立っていたのです」
なんか性格変わってるーーーーーッ?!
伏せの姿勢に移行してそう言ってきた
いや、でも誰も想像できないよね? 寧ろ勝手に名前付けやがって、とか言われた方がさっきの対応的にしっくりくる……
「い、いやいや。無礼だなんてそんなこと思ってないから。そんな事より、勝手に名前決めちゃったけど平気だった?」
「勿論です。寧ろ、名を付けていただいたことでいきなり
どうやら、
「こっちで勝手につけたんだから、お礼なんて気にしなくていいよ? そんな事より、何があったの?」
「そうですか……実は──」
カイが話してくれた内容を要約するに、どうやら彼女はゴブリンとの小競り合いで運悪く負傷し、素早く動けなくなったために群れからはぐれてしまったらしい。
更に、子連れのために迂闊に動くことが出来ないで、この場所に留まるしかなかったらしい。
「──本来ならばゴブリン程度に、万に一つも後れをとることなど有り得なかったのですが……たった一匹。いえ、たった一人だけとてもゴブリンとは思えないほどの技量を持った個体が居たのです」
「そんなに強かったの?」
「ええ、彼だけは戦士として尊敬できる技量の持ち主でした。私はそんな彼に、一太刀浴びてしまったのです。代わりに、腕を一本噛み千切ってやりましたが」
さらっと怖いことを……でも、一匹だけやたらと強かったってことは。
《もしかしたら、誰かが名付けを行ったのかもしれないね。目的は不明だけど》
うーん、やっぱり。でも、名前を付けるだけで此処まで強くなるんだったら、
《名付けは名付け親の強さにも比例するから、相当力を持ってないと進化すらしないこともあるみたい。言わば、ギャンブルみたいなものだからね》
ふーん。そういうこともあるんだ。
なんて
な、なにか……?
「私の身の上話は以上です。次は、御身の話をお聞かせ願えませんか? 御身をなんとお呼びすればいいのか……」
「あー、私は
死んだら転生してこの世界にきました。異世界人です。とでも言えばいいかな……?
なんて私が悩んでいたら、カイが何か納得したような表情で一つ頷いた。
「成る程、ミク様は私など遠く考えも及ばぬような生を送ってきたのですね……」
まぁ、あながち間違ってないし誤解は解かなくて良いかな……下手に転生しましたとか言って、何か問題があっても困るし。
「ところで、その……疑うわけではないのですが、ミク様は力をお隠しになっているのですか? 全く力の波動を感じられないもので……」
困ったようにカイがそう告げてくる。
別に隠したりはしていないし、やっぱり私の力って殆どないんじゃ……あれ? そういえばさ、「気配遮断」って効果時間どれくらいなの?
《君がいいと思うまでは続くよ。ちなみに今は絶賛効果発揮中だね》
それのせいだねー……んじゃ、解除解除。
私からしたら特に変化は感じられなかったけど、その瞬間にカイの全身がビクリと震え、うれしそうに一つ頷くのをみる限り上手く解除できたようだ。
「これほどとは……先ほどまでの非礼、重ねて謝罪いたします。どのような処罰も──」
「──だから良いって! ほら、怪我完治したのなら群れに戻りなよ」
そう言いつつ私は踵を返した。魔物とも意志疎通さえ出来れば良好な関係が築けることもわかったし、今度は人間の居る場所にいってみよう。魔物との友好が築けても、人間との間に友好が築けないこともなきにしもあらずだからね。
と言うわけでね、カイ。付いてこなくていいんですよ?
「何で付いてきてるの……?」
「今更群れに戻る気などありません。ですので、ミク様さえ良ければ同行させていただきたいのです」
「私が拒否したら?」
「勝手に付いていきます」
拒否権無いじゃないですかーやだー!
まぁ拒否する理由もないし、一人旅は正直気が進まなかったから、付いてきてくれるっていうなら喜んでお願いするけどね。
問題は、こんな巨体を連れて歩いていたら、いらぬ誤解を受けるんじゃないかってこと。
その事をカイに話してみたら、一瞬で解決したんだけどね。
「心配には及びません、ミク様。新たに得たスキル「影移動」にて、ミク様の影に潜むことが可能になりましたので」
そういうやいなや、私の影にカイは飛び込んだ。飛び込んだは良いんだけど、この後に残されたおどおどした感じの子犬っぽい生き物はなんでしょうか?
《さっき感知した気配のもう片方だね。見たまま子供の牙狼族だよ》
突然親が目の前から消えたら、そりゃびっくりするよね……そういえば、この子にはまだ名前付けてないや。
私は、そっとその子狼を抱え上げると、なんて名前を付けようか考え始める。
子狼は僅かに身をよじっただけで、私に大人しく抱えられている。うーん、可愛いなぁ。
よし、決めた。子供でふわふわしてるから、この子の名前は〝シフ〟にしよう!
え? どこかで聞いたことある? 気のせいだよ、きっと。
《?》
あ、
「君の名前は今日から〝シフ〟だよ。宜しくね」
頭を撫でながらそう語りかけると、シフは嬉しそうに一つわふっ、と鳴いた。気に入ってくれたみたいで何よりです。
なんて、呑気なことを考えていたら突然体から何かがごっそり抜け落ちる感覚とともに、凄まじい虚脱感が身体を襲った。
慌ててシフをおろして踏ん張ろうとしたけど、全く力が入らずにその場に崩れ落ちてしまう。
え? ちょっとなこれ、どういうこと?!
《名付けには魔素を消費するっていったと思うけど、その消費量が一定値を超えたから、暫く魔素を回復させるために全行動を一時的に凍結させたんだ》
そういうのって、事前に通告できないの……?
《忘れてた☆》
忘れてた☆、じゃなあぁぁぁぁぁぁあああいッ!
なに、なんなの?! 何で私スキルに嫌がらせ受けてるの?!
もう、もう……
暫くの間は、
あとがきに転生する?
〉Yes
No
ミク・ヒグラシ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『神話召異』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『
スキル──『武器習熟』
耐性──『精神攻撃無効』
──────────
カイ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『黒き稲妻』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『影移動』『思念伝達』『魔力感知』
耐性──『物理攻撃耐性』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『自然影響耐性』
──────────
シフ
種族──牙狼族(???)
加護──???
称号──