転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます 作:低蓮
一悶着
カイが二日で駆け抜けた道を、ゆっくり歩きながら一週間が経過した。
一向にたどり着かないばかりか、道中の三分の一にも到達してないと聞いてカイの足の速さに感心したりしたけど、流石にこれ以上ゆっくりしても居られない気がする。
と言うわけで、カイにお願いしてさっさと向かおうとしてるんだけど……
先程から聞こえる悲鳴と打撃音から目を逸らすよう、カイに話しかける。
「えっと、カイ? 流石にかわいそうだから、背中に乗せてあげられないかな?」
「無理です、ミク様。背に三人も乗せているので、流石にスペースがありません。奴は新人ですし、硬いので大丈夫でしょう」
「うーん、そうかも知れないけど……うーん……」
悩んでいると、後ろからドスンと一際大きい音がして悲鳴が響く。
後ろに目をやれば、丁度一抱えほどもありそうな太さの木がへし折れて倒れるところだった。
カイから伸びるロープ。その先から悲鳴は聞こえてきてて、打撃音も同様の方向から聞こえてくる。
まぁ、それもそうなんだけどね。だって、カイが結構なスピードで走ってるのに、このロープの先にはソキウスの身体が繋がってるわけだし。
カイが木を避ける度に、ソキウスの身体が遠心力に振り回されて木とか地面に打ち付けられて、それはもう悲惨なことになってる。
本当にごめん。でも、私にはどうにもできないみたい。
「ちょ、とまっ! 砕ける! 身体砕ける!」
「何を言う。それくらいならば、貴様の耐久力と回復力でどうとでもなるだろう。此方にはか弱い女子供しか居ないんだ。貴様が身体を張れ」
「か弱い?! 馬鹿言うな、そこのコボルドは良いとしても、お前とミクはか弱いとはほどとお痛い?!」
「ふん。貴様には女を尊重するという考えがないのか? そもそも、主様をそんな目に遭わせられるわけがないだろう、戯けが」
「いや、ならお前が代わってくれ!」
「断る。あぁ、それともうそんな目に遭わなくても済むぞ。主様を呼び捨てにした貴様には教育が必要だからな」
「は? 何で刀を振り上げて……いや、待てロープは斬るなああぁぁぁぁ……」
叫び声が遠ざかっていき、直後なにかにぶつかったような鈍い音を響かせて辺りが静かになる。
知らない。後ろで何があったかなんて、私知らない。
まぁ、数日くらいしたら追いついてくるでしょ。この辺りにはソキウスが勝てないような魔物も居ないことだし。
「ふぅ……お騒がせしました、主様。これでしばらくは平和になるでしょう」
「あ、うん……えっと、あんまり虐めちゃダメだよ?」
「虐めるなんてとんでもない。奴には良い薬となったことでしょう。第一、主様に対してあんな態度をとる奴には、仕置きが必要ですから」
さも当然、といった顔でそんなことを宣うシロガネに、やや諦めの念を抱きながら曖昧に微笑む。
なんというか、シロガネの反応は過剰に過ぎる気がする。
いつか、この反応がなにかに災いしそうだけど……まぁ、そのときになったらそのときに考えればいっか。
取り敢えずは、ソキウスが無事に追いついてこられることを願いつつ、コボルド達の下へと帰らなきゃね。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ソキウスが
私達を見るなりにわかにざわつきはじめたコボルド達をなんとか纏め、説明するために主要な数人を連れて会議を始める。
「──と言うわけで、色々あったけどオークロードの討伐には成功したよ。だから、もう脅える必要はないからね」
「おぉ……! ありがたい、これで我々も脅えることなく過ごすことができる!」
「これも、ミク様のお力あってのもの。我々にできることなれば、何なりと」
「え? いや、別に報酬が欲しくてやったやけじゃ……」
「いいえ、それでは我々の面目が立ちません。我らは商人を生業とするもの、欲しいものがありましたら何なりとご用意致します!」
勢い込んで言ってくれるのは嬉しいけど、本当に欲しいものなんてないんだよね……
でも、なにか要求しないと納得しないみたいだし、どうしよう……
と、ふとあることを思いついてコボルド達を振り返る。
「それじゃ……この子を、暫く私達と一緒に行動させてくれない?」
「ルトを、ですか?」
ここで驚愕の事実。なに、この子
あ、でもなんかそれらしい発言はちらほらしてたし、スーパーコボルドって単純な自称だと思ってた……
お互い戸惑いで硬直してたけど、私の方が先に立ち直る。
このままだとずっと見つめ合ってそうだし、名前があるなら呼びやすさこそあれ、別に不都合はないからね。
「うん。この子は、もっと世界を見て回りたそうだったし……大事な護衛役かも知れないけど、どうかな?」
「成る程。そういうことでしたら、是非連れて行ってください。幸い、ルト以外にも戦える者は僅かながらですが居ます。ですので、護衛役には困りません」
「ま、待つです! 私は別に、いきたいなんて一言も……」
ルトが慌てたように口を挟むけど、集まったコボルド達に視線を向けられると、もごもごと口籠もる。
それに呆れたようにため息を吐いたコボルドが、少しジトッとした目でルトを見据えた。
「あぁ、言い間違えたな。寧ろ無理矢理にでも連れていってほしいくらいだ」
「へ……な、なんでです……?」
「いや、だってお前。強いのは認めるけど、お前が護衛に付く時ってろくなこと起きないし」
「そうそう、余計なところに首突っ込んでくから寧ろ危ないし」
「この前だって、ショートカットだなんだって
「護衛が付くと逆に危険とか、なんだよその矛盾」
「あぅ……」
凄い。ここまで散々に言われるとか、どれだけ問題児だったんだろう。
まぁ、聞いてる限りだと明らかにルトが悪いんだけどね。というか、
何も言い返せないルトが、殆ど涙目になった頃に漸く言いたいことを言い切ったのか、コボルドたちが良い笑顔を浮かべる。
もうなんの憂いもない、そんな笑顔のコボルド達のうちの一人が、私に視線を移すと深々と頭を下げる。
それに倣うように、その場にいたコボルド達がそろいもそろって頭を下げると、下げた視線を上げないまま言葉を発する。
「問題しか呼び込まぬ厄介者ではありますが、ミク様の下に居れば少しは更正もするでしょう。ですから、どうか宜しくお願い致します」
口には出さないけど、その態度でどれだけルトのことをこのコボルド達が想っているのかが分かった。
ルトもそれに気が付いたのか、違う意味で言葉を詰まらせながら私とコボルド達を交互に見る。
「本当に……本当に、いいのです?」
「あぁ、行ってこい。本当に腕を上げるまで、帰ってこなくて良いからな」
「いや、腕を上げなくても良いから、その性格を改善してこい」
「元気でやれよ。お前が居ない間にこっちは平和を謳歌してるからな」
口々にそう言いつつ、ルトをばしばしとはたくコボルド達。
はたかれてるルトはというと、ただ感極まったような表情でこくこくと頷いてる。
そして、ばっと私に向き直ると真剣な面持ちになる。
「不肖ルト、おねーさんの元で世界をみたいと思ったです! ですから、今後も宜しくです!」
「うん、よろしくね。そう言えば名乗ってなかったけど、私はミク。それで……」
「私の名はカイだ。よく覚えておくように、小さきものよ」
「主様に、シロガネという名を授かった。くれぐれも主様に無礼は働くなよ?」
「シフだよ!」
それぞれ名乗り終わると、ルトは改めてコボルド達の方を振り返り、何事か話し出す。
それを眺めながら、なんだかんだで大所帯になってるなと思いつつ、これからの行動指針を立てていく。
フューズさんに調査報告というか、色々と報告しなきゃいけないわけだし、人の多いところにいくならカイには影に潜ってもらうとして、ルトとソキウスはどうしよう……
まぁ、ルトはコボルドだからそんなに問題はないと思うけど、ソキウスは人間って言い張るには微妙な体躯だし、そもそも顔が人外でしかない。
まさかソキウスも影に潜れるとは思えないし……あれ? これ、ソキウス置いてった方がはやくない?
い、いやいや。流石にそれは仕打ちがかわいそうだし、他の手が何かあるはず……
……うん、全然思いつかないや。なんか目深にかぶれるフードかなにか渡しておけば良いかな。
肝心のソキウスは今居ないけど、追いついてきたら渡せばいっか。顔が隠れるフード付きのマントでも後で作っておこう。
そんなことを考えてたら、いつの間にか話を終えたのか、ルトが一人のコボルドと共に近寄ってくる。
「おねーさん、隊商の皆が色々と祝いたいっていってるですから、祝われてくれないですか?」
「祝い、といってもささやかなものですが。何分手持ちがないため、ありったけの食料でごちそうを作ります」
「それは、有り難いけど……でも、そんなに食料使っちゃったら君たちが食べる分がなくなるんじゃないの?」
「ご安心を。空腹には慣れていますから」
にこりと笑いながら言ってるけど、いやそれ安心できる情報じゃないよね?
あんまり気が進まなかったけど、是非にと言われて断るのもあれだし、後でルトがあれはコボルトなりのジョークだと教えてくれたから安心した。でも、本当に空腹慣れしてそうでジョークとしてはどうなんだろう。
取り敢えず、今日は大人しく祝ってもらうことにして、腰を落ち着けることにした。
よく考えればソキウスが合流してくるまでここから動かない方がいいし、結局は彼らのお世話になっていたから今更なんだろうけど。
コボルドたちが腕を振るって作ってくれた料理を食べながら、ソキウスはいつ頃合流できるかなとそんなことを考えたりしていた。
コボルド達は手先が器用なのか、出される料理は全部美味しいし、心配してた食料もシフとシロガネが率先して獲ってきてくれたから問題は無かった。
でも、だからって周囲の動物を根絶やしにするくらい捕ってこなくてもいいんだよ? 渡されてたコボルド達も最初は笑顔だったけど、どんどん渡されるうちに笑みが引きつってたし。
何故か暴走気味だった二人を適度にたしなめつつ、コボルド達が催してくれた小さな宴会は夜が更けるまで続いた。
あ、結局ソキウスが合流したのはそれから二日後だった。
シロガネは遅いと文句を言ってたけど、十分早いほうだったんじゃないかな……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
ソキウスが合流してきてから一週間とちょっと、私たちはブルムント王国に到着していた。
まぁ、ブルムント王国っていってもただ単にその領地だってだけで、今居るこの場所はど田舎もいい方だけどね。
見た限り、野菜を栽培したり動物を飼っていたりと、のどかな農村って雰囲気の所だ。
田舎が悪いっていうつもりはないし、実際良いところなんだけど、私はここに用事があるわけじゃない。
取り敢えず、フューズさんはここブルムント王国の支部にいるみたいだから、顔を出して報告をしなきゃいけないんだ。
うん、それなのにどうしてこうなってるんだろう?
「嬢ちゃん! どうだ、うちで一泊してかねぇか!」
「あ、えっと……宿は間に合ってますというか……」
「馬鹿野郎、まだ昼時だってのに宿の話なんざするな! ここは一つ、俺たちと依頼をこなしちゃくれないか?!」
「依頼と言われても……」
「そんなことより昼時といったら飯さね! どうだい、うちで食べてかないかい!」
「行きます!」
「うおぉ?! 嬢ちゃんの連れが食いついたぞおおぉぉぉ!」
掛けられる言葉を適当に流しつつ、私は大きなため息を一つする。
ここに着いたときに、フューズさんのいる支部の場所を聞こうと冒険者っぽい風貌の人を探したんだけど、田舎ゆえか全然見つからなかった。
粘って探し続けた結果、漸く
そのひとから色々と聞いて、ここがブルムント王国でフューズさんはもっと首都の方にいるってことを知った。
「ここからその首都って、どのくらい掛かります?」
「馬車で五日ちょいってところじゃないか? 詳しいのはちょっと分らんが」
「そっか……ありがとうございます」
「いや、良いけどよ。ところで、お嬢ちゃんみたいな歳の子が支部長なんかになんのようだ? 連れに、コボルドまでいるみたいだが」
「あ、えっと。フューズさんから頼まれごとをされてて、その報告に。この子はその……知り合い?」
「コボルドの知りあい……ってか、支部長直々に頼み事……? あー……お嬢ちゃん、ランクはいくつだ?」
「ランク?」
「
「あぁ……えっと、Bランクだったかな?」
「……わるい、よく聞き取れなかった。エビがなんだって?」
「エビじゃなくてBって言ったんだけど……」
「聞き間違いじゃない、だと……ッ Bランクって、マジかよお嬢ちゃん!」
私の言葉を聞いたその人が、大声で素っ頓狂な声を上げると周りの人がなんだなんだと集まってきた。
その人達に向けて、私のした説明をオウム返しのように話したとたん、さっきの勧誘やらなんやらが始まったわけだ。
なんでも、Bランクの冒険者なんて辺境のここでは滅多に見られるものではなく、色々と話を聞きたいそうなのだ。
まぁ、適当にソキウスとの戦闘周りの話でもしてればいっか……
「おいおいおい! ちょっと待てよ、そのちまっこいのがBランクだ? なんの冗談だよ!」
取り敢えず、食事の話になったとたんに目の色を変えて返事をしたシロガネには後でお説教かな、なんてことを考えていたら、突然周囲の声を上回る大きさでけんかを売られる。
まぁ、こんな見た目で冒険者ですって言われて素直に信じる方が変なのかも知れないけど。
というか、なんでここの人達はあっさりと信じてくれたのだろうか。
そんなことを思って周りを見回してみると、その言葉で落ち着いたのかざわざわと声を潜めて喋りはじめていた。
聞き耳を立ててみるに、どうやら私が本当にBランクなのかどうか、という憶測を飛ばし合ってるみたいだ。ここの人達、ちょっと純粋すぎじゃないだろうか。
「本当にBランクなら、
「えっと、その証明書? って言うの、私持ってないんだけど……」
「……ッ ほら見ろ、本物の冒険者が大切な証明書を置いてくるわけがない!」
「えと、置いてくるって言うか、貰ってないんだけど……」
その一言で、私にけんかを売ってきた人は一瞬惚けたような表情をした後、安堵の雰囲気を漂わせながらその顔に笑みを貼り付けた。
「はっ。貰ってない、だ? こんないい加減な嘘は初めてだ! 誰だって、きちんと発行してもらってるだろう?!」
そう叫び、大仰に群衆に振り返る。
それに、冒険者らしい人たちが何人か頷くのを見て、けんかを売ってきた人は笑みを浮かべて私に向き直る。
どうだ、といわんばかりの笑みを見せつけられても、私はどうにも……
というか、フューズさんこれどういうこと? 証明書とか初耳なんだけど。
そんなものを発行してる時間があったかと言われればそんなことはないんだけど、それでもなにか応急措置的なものが欲しかった。
「まったく、冒険者はお前のようなガキが語って良いものじゃないんだ。大方、持てなしのただ飯でも期待してたのか?」
「貴様……言わせておけば、主様のことを好き勝手に……良いだろう、そんなに死にたければ今すぐ叩っ切ってやる」
「シロガネ、いつもいってると思うけどすぐに事を荒立てようとするの止めてね? あと、殺しちゃだめだからね?」
「しかしミク様、奴の愚慮は万死に値するものです。シロガネにサクッとさせた方が良いのでは」
「カイも落ち着いてね? なんにしても駄目だからね?」
シロガネや、影の中のカイを慌てて宥めながら、私は他の仲間達にも気を配る。
流石に、全員を宥められる自信は無いんだけど……
幸い、ソキウスとシフは若干怒気を滲ませながらも、自制してくれてるようだった。これならカイとシロガネを宥めるだけで事足りるや。
え、ルト? シロガネ達の殺気に震えて、私の影に隠れてるよ。
「は、はん。仲間の程度も知れるな。これ以上の痴態を晒す前に、去った方が良いんじゃないか?」
「出来るか。今すぐ主様に非礼をわび、悔い改めて地面に這いつくばれ。それを見届けてから去るとしよう」
「悔い改めてだ? なんで冒険者を語る偽物にそんなことをしなきゃいけない?」
「……ふむ。よし、そこを動くなよ。今からそっ首落として──」
「はいはい! シロガネはちょっと黙ってて! どんどん事が荒立ってるから!」
本当にやりかねない雰囲気のシロガネを押し留めて、私は一歩前に出る。
なんかもう、放っておいたらシロガネが殺しちゃいかねないから、多少手荒でも話に決着を付けなきゃいけない。
私は正面からじっと見つめると、一つ提案を持ちかける。
「えっと、証明書は持ってないんだけど、腕を見せることなら出来るよ? だから、模擬戦で勝負して勝ったら信じて貰う、じゃだめかな?」
「は、はぁ? なんで俺がそんな面倒なことしなきゃ……」
少し慌てたように言葉を重ねようとするけど、その前に周りの人垣から同意を示す言葉が漏れ聞こえてくる。
「それなら、良いんじゃないか? 腕が良ければ、たとえ今冒険者じゃなくたってすぐなれるだろうし」
「そうだそうだ、強けりゃ冒険者を騙ってようが一向にかまわん」
けんかを売ってきた人が、少しだけ困惑したように周囲を見回す。
まさか周りから同意の言葉が漏れるとは思ってなかったんだろう。
まぁ、実はこれにはちょっとしたずるが含まれてて、私の
流石に元々否定的な意識を持ってる人には意味ないけど、どっち付かずで迷ってるのを片方の意見に寄せるくらいなら出来る。
数人が同意してしまえば、後は集団心理だ。
たちまち周りの人達は模擬戦をするべきだという方向に話を流してしまい、けんかを売ってきた人がぱくぱくと口を開いてる。
「皆もそれでいいみたいだけど……どう?」
「……ッ ち、分かった。だが、万一のことを考えて、鞘を使う上に寸止めを──」
「あ、大丈夫。そっちは真剣で寸止めなしで良いよ。戦いにくいでしょ?」
「は……? お前、俺をなめてるのか……?」
「ううん……? 正当な評価だと思ってるけど……」
「……そうか、よおくわかった」
あれ、なんか怒らせちゃったかな?
流石に条件を対等にしたら虐めも良いところだろうから提案したんだけど、なにかが気に障ってしまったらしい。
《いや、あんな言い方されたら誰でも怒ると思うよ? 完全になめてかかられてるって》
なめてるって言うか、向こうに気を遣ってるんだけど……
《その二つ、この場合同義だから》
そっか……どうやら悪いことをしてしまったみたいだね。
まぁでも、実際問題それくらいが丁度良いと思ってるし、下手に手加減したっていう逃げ道を残したくないもんね。
「それじゃ、いつでもどうぞ?」
「……お前は、抜かないのか?」
「危なくなったら鞘を使うけど、今は徒手空拳で良いかなって」
「……直ぐに吠え面かかせてやる」
怒り心頭、といった感じで目を怒らせて、私の方に踏み込んでくる。
間合いの詰め方も、一切の迷い無く振り下ろされる剣筋も中々のものだと思うんだけど、生憎私の動体視力を超えられるほどではない。
余裕を持って構えると、刃が私に触れる寸前に剣の腹に真横から衝撃を与えて軌道をずらす。
盛大に空振りをして体勢を崩したその人のあごに向けて、軽めのジャブを放つ。
当たれば儲けもの、と思ったんだけど、咄嗟に剣を手放すことで回避されてしまった。
流石に楽に勝たせては貰えなさそうだね……
「って、早速武器を手放しちゃってるんだけど、大丈夫?」
「はっ、これで条件は対等だろ?」
不敵に笑うと、私のギリギリ届かない場所からリーチをいかしてけりを放ってくる。
それを避け、間合いを詰めようとする私の進路上には既にもう片方の足が置かれている。
間合いを詰めようにも中々詰められず、私は一旦距離をとった。
強引に詰めようとすればいくらでも詰められるんだけど、それをやるとどうにも力の加減が出来なさそうだから他の方法を考えなきゃ。
「ははは、どうしたんだ?! その程度の腕で、Bランク冒険者を名乗っていたんじゃないだろうな!」
「うん……手加減するには難しいなって思ってて」
「……」
あ、また怒らせちゃった。
事実を率直に告げるのはあんまり相手にとっては良くないみたいだね……
なにはともあれ、相当ご立腹の相手は右手にそっと左手を添えると、掌を私の方に向けてくる。
……いや、よく見ると私の足下かな?
ともあれ、そのよく分からない行動に私は小首をかしげる。
「そこまで舐めるなら、相応の覚悟を持っているんだろうな! 灰と化せ、『
突如私の足下に大きな魔法陣が展開されると、そこから幾条かの炎の柱が立ち上る。
そして、それがうなりを上げながら互いに捻れ合うと、私めがけて一直線に突っ込んできた。
私がなにかするまもなく、視界が赤一色に染められてしまった。
あとがきに転生する?
〉Yes
No
ミク・ヒグラシ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『神話召異』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『
コモンスキル──『武器習熟』
耐性──『精神攻撃無効』『状態異常耐性』
──────────
カイ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『黒き稲妻』『黒雷之豪雨』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『影移動』『思念伝達』『魔力感知』『粉塵操作』
耐性──『物理攻撃耐性』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『自然影響耐性』
──────────
シフ
種族──牙狼族(???)
加護──???
称号──
ユニークスキル──『
─────────
シロガネ
種族──オーガ(???)
加護──???
称号──
─────────
ソキウス
種族──
加護──???
称号──仮初の魔王、???
魔法──『回復魔法』
ユニークスキル──???
エクストラスキル──『魔力感知』『外装同一化』『思考超加速』
コモンスキル──『威圧』『魚鱗装甲』『自己再生』
耐性──『炎熱攻撃耐性』『電流耐性』『物理攻撃耐性』『麻痺耐性』『精神攻撃耐性』
─────────
ルト
種族──
加護──???
称号──災厄を招く護衛、???
エクストラスキル──『劣化超回復』
コモンスキル──『自然治癒強化』『自己再生』