転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます 作:低蓮
明けましてっていっても、もう明けて一ヶ月経とうとしてますが……
年末年始が忙しく、最近まで風邪引いていたので更新が遅れてしまいました。
あれですね、下手に咳我慢しようとするとのど痛めちゃいますね。
もう声ガラガラ……
「一体、何をしたんだ……?」
たった今、目の前で起きた不可解な現象にリムルは必死に頭を働かせて考える。
そう、確かにあの少女にはなんの力も備わっていなかったはずだ。少なくとも、リムルが調べたときはそうだった。
それ故に、ゲルドに狙われた少女を庇うように立ち回り、満足に戦うことが出来なかったのだ。
だが、だったら今目の前に居るのは。
この、空間すら軋ませるほどの
いや、とリムルはかぶりを振る。
別人に成り代わっているなどと言うことはないだろう。ならば、あれは先程までの少女のその人。
考えられることは、何らかのスキルで自分の力を隠していて、本気を出すためにそれを取り払った……とか、そんな感じだろう。
もしそうだとしたら、あの子は相当食えない相手ということになる。
俺の解析能力でも看破できない能力を有し、目の前の魔王すらかすんで見えるほどの
一体、どういう存在なんだ?
「って、今それはどうでも良いか。そんなことより、早くこっから抜け出さないと……ふんぎぎぎぎ!」
リムルは埋まってしまっている身体をなんとか引き抜こうと、左へ右へと身体を振る。
しかし、相当ずっぽり埋められてしまったのかいっこうに抜ける気配がない。
戦闘中、隙を突いて接近し捕食者にて左腕を奪ったは良いものの、残る右腕一本で地面にずっぽり埋められてしまったのだ。
幸い、障壁と痛覚無効で特になんとも感じなかったけど、埋まってる感触というものはなんとも形容しがたい。あの野郎、引っこ抜けたら同じ目に遭わせてやる!
己をこんな目に遭わせたゲルドに怨嗟の念を送りつつ、リムルは更に激しく身体を振り始める。
それがモニュメントのようで面白いと思われていることを、本人は知るよしもなかった。
「……俺、なんでこのことに気が付かなかったんだ?」
暫くして、漸く変身能力のことを思い出したリムルは、お馴染みスライムの姿になって無事脱出することに成功した。
元々スライムなのに、焦るとどうもその事を忘れてしまう……というのは、本人の言である。
リムルが抜け出してきた頃には既に勝敗は付いており、転がるゲルドに切っ先を突きつけているミクの姿が見えた。
「それにしても、仮にも魔王だっていうのにそれをあっさり下すとか。本当に人間か、あの子?」
《解。魔素の量は圧倒的に凌駕していますが、見た限りは人間のようです。勇者と呼ばれる類いのものかも知れません》
「はー、勇者か。確かに勇者なら魔王なんてやっつけそうだけど、あの子が勇者ねぇ……」
納得出来ん。と言うのがリムルの正直な気持ちだった。
あんな何処か抜けた子に倒される魔王も不憫である。
まぁ、実際の戦闘能力はとても高いみたいだから、なんとも言えないけど。そうため息を吐いたリムルは、二人のもとへと近付いていく。
ミクの仲間らしき鬼人と何事か話しているのを見つつ、リムルはふと疑問に思う。
上位種って、そうぽんぽん出てくるものなのか?
《解。本来であれば、上位種が複数同時に存在することは非常に希です。自然発生したものではなく、名付けによって進化したものと推測できます》
ふむ、とリムルは大賢者の答えを聞いて考える。
もし仮に自分のように名前を付けていたとして、あの鬼人は何処まで強化されているのか、と。
力の強いものが名を与えれば、それだけ名を付けられた側は強くなる。
それは詰まり、目の前の魔王を遙かにしのぐ少女が名付けを行えば、とんでもなく強い鬼人が生まれても不思議ではないということだ。
《告。しかし、名付けを行えばその分力を消費します。特別な事情がない限り、名付けを行っていれば相当の弱体化をしているはずです》
ん……それもそうか。俺が特別仕様なだけで、名付けって自分の力を分け与える行為だもんな……
成る程確かに、とリムルは納得する。
よくよく見てみれば、ミクの隣にたっている鬼人もそこまで強くは……いや、紫苑と一対一なら良い勝負か? 等と考察していると、ミクがゲルドの胸元に刀を突きつける。
何かを思う暇もなく、その切っ先がゲルドの胸に沈んでいった。
当然の帰路か、とリムルは無感動にそれを眺める。
終わりだな、そう思い未だ続く戦闘を集結させようとミク達から意識を逸らしたとき──
「──ッ?!」
周りの空気が震える。
《告。対象の魔素が大幅に上昇したことを確認しました。警戒してください》
そんなの分かってる! あいつ、まだ奥の手を残していたのか!
ゲルドの魔素量が急に上昇したのを察して、リムルは慌てて振り返る。
ゲルドがミクを油断させ、奥の手を行使したと思ったのだ。
相対しているはずのミクは、何があったのかその力を大きく減じてしまっている。
このまま襲われたら。そう思いミク達を視界に収めたリムルは、この日何度目か分からない惚けた声を上げることとなった。
映ったのは、その身を縮ませ人間大としたゲルドと、その目の前に立つどことなく青白い顔をしたミク。
一体何があったのか。それはゲルドの種族を解析したことで理解する。
多少劣るものの、
そんな存在を生み出したのは……目の前にふらふらと立っているあの少女なのだろう。
「……もう、何があっても驚かない自信があるよ」
そんな悲しい自信を得たリムルは、ため息を吐きつつ戦闘の終結を声高らかに宣言したのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「──何故だ。何故俺を助けた?」
唖然としながらそう訊ねられて、私はその言葉の意味を考える。
そして、考えるまでもない解答に行き着いた私は、何でもないかのように告げる。
「別に私は、誰も助けてなんてないよ? 私は、しっかりきっちり魔王ゲルドを殺したわけだし」
「だが、俺はこうして生きている」
「うん、
「……」
そう、私に心臓を貫かれて魔王ゲルドは確かに死んだ。ゲルドという名を持つ魔物はもうこの世におらず、そして輪廻に帰ることもない。
今私の前にいる魔物は、私が名を与えたゲルドではない別の命。
私は命を救ったのではなく、
これなら、オークロードを倒して欲しいって願いも叶えられてるし、実際一回殺してるし、そして仲間にも出来るっていう素晴らしい寸法な訳ですよ。どう「
《いや、なんというか……時々君がアホなんだか、そうじゃないんだか分からなくなるよ。因みにいうけど、そろそろ君も声出せなくなるからね?》
え? なんで?
《名付け。魔素低下。導き出される答えは?》
……あっ。
そういえば忘れてた、なんて事を思う暇すらなく、私の膝から力が抜ける。
ストン、となんの抵抗もなく地面に膝をついた私は、勢いそのままに倒れ込む……寸前で、目の前の新しい仲間に助けられた。
「疲れたのか? いや……力を使いすぎたのか。暫く休むと良い」
「あー、うん。そうするね……」
私を支えてくれた、元魔王……そして、これからはソキウスと名乗ることとなる仲間の言葉に従って、私はゆっくりと意識を闇に沈めていった。
完全に沈みきる前に、ふと疑問に思う。
あれ? 私、名付けする度に気を失ってない?
返ってくる答えは、なかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
こうして、オークロードによる種の存続を掛けた戦争は幕を閉じ、過程で生まれた新たなる魔王やそれを打ち倒した少女を置き去りに、戦場だった場所には喜びや悲しみが満ちあふれる。
途中、小さな牙狼族の子供が光とともにガビルとゴブタを引き連れて現れ、それをみつけた巨大な牙狼族が暴れるなどの一悶着があったりしたのだが、それを深く触れる必要はないだろう。
そして、戦場に着いてからひっそりとその消息を絶ったコボルドの少女についても触れる必要はないだろう。何故かって、戦場の異様な光景に泡を食って気絶してしまっただけなのだから。
兎にも角にも、争いは終結し、その事後処理をのこすのみとなったわけだった。
「さて、と……」
次の日、湿地に張られたテントの一つにて、とある会議が進められていた。
そこに居並ぶは、オーク側の生き残り、リザードマン達、ドライアドや鬼人、果てはスライムに至るまで、実に混沌とした顔ぶれだ。
中でも異彩を放つスライムが発したその言葉に、会議の場に緊張が走る。
そう、スライムことリムルがこの会議の中において最も発言権を持っており、誰もがその言葉に注目した。
「オークに対しての賠償の請求だが、俺としてはこれは行わないものとしたい。理由は色々あるが……昨日から調べてみた限り、オーク達には侵略をおかさなければいけないくらいに重大な問題があったみたいだ。勿論、それで侵略が正当化されるわけじゃない。されるわけじゃないが、全ての罪を背負ったと豪語したゲルドは
そう言って、リムルは周りをぐるりと見回す。
リムル配下の者達は、主であるリムルの言葉に反論など有ろう筈もなく。ドライアドやリザードマン達も、特に異論はない様子だった。
驚いているのは生き残ったオーク達。
根絶やしにされても文句の言い様がない程のことをやったという自覚があったために、オークジェネラル等は己の命一つでどうにか許してもらえないかと算段を付けていたほどだった。
それが、無罪。
オーク達は如何して良いのか分からないといったようにお互いに顔を見合わせ、それからリムルから視線を外しその後方を見やる。
「……」
リムルも同じ方向に視線を送ると、そこに居たのは今回の戦いにおける真の立役者。
本来なら、彼女こそが会議において最も発言力をもって然るべきなのだ。
そうなっていないのは、彼女自身がそれを辞退したから。
一度眠りについた彼女が目を覚ました時、リムル等は真っ先にそのもとを訪れ会議への出席とオークの今後について決めるよう頼んだ。
初めは面倒臭がり、会議への出席すら拒んでいたのだが、何度か頼み込むととある条件と引き替えに会議への出席を受け入れた。
「……これで、良いんだよな?」
「うん。ありがとうリムルさん」
やや眠たげな顔をリムルに向け、少女はそう微笑む。
それを見て、この決定が夢ではないと漸く実感したのかオーク達の間に安堵と喜びの感情が渦巻く。
厳正な会議の場だと心得ているのか騒ぎはしないものの、初めと比べて重苦しい雰囲気は一転し、そわそわと落ち着きのない様子のものまで存在した。
それを眺めながら、リムルは今回の決定について考えを張り巡らせていた。
『オーク達に戦争の責を問わない』ミクがリムル等に提示した条件がそれだった。
それを一度引き受けたものの、オーク達が完全に悪だった場合は今後の関係共々考えなければいけないと、リムルは独自に今回の侵攻の原因を探った。
その結果が、大飢饉と税による飢えの恐怖。
食べるものを失い、身を守ってくれる庇護も失い、タイミング良く生まれたオークロードという旗印の下に、何かしらの行動を起こさなければならない状態だったのだ。
生きるための行動。その手段はどうであれ、必死に生にすがろうとしたもの達を厳罰にするつもりなどリムルにはなかった。
寧ろ、それを助けたいとまで考えていた。
「……さて、みんな聞いて欲しい。賠償などは一切行わない。だからこの話はこれでおしまい。それで、次にオーク達の今後についてなんだけど……」
だから、少しばかり融通することに決めたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なぁ、本当にもう行くのか? もうちょっとゆっくりしていっても良いんじゃ……」
「ううん。リムルさんも皆も忙しそうだし、邪魔しちゃったら悪いよ。それに、私も冒険者として色々報告したりしなきゃいけないからね」
「そうか……俺達は今町を作ってるんだ。もし良かったら、そのうち訊ねに来てくれよ」
「町作り? 結構おっきな事やってるんだね……うん、そのうちお邪魔させてもらうことにする」
それじゃ、と手を振ってリムルさんに別れを告げると、そのまま背を向けて歩き出す。
結局あの戦いから三日もお世話になっちゃったけど、色々と慌ただしそうな雰囲気だったし、なにより結構切羽詰まっているようすの食料をわけて貰うのは忍びない。
私は食べなくてもなんとかなるんだけど、他の面々はそうもいかないから早々に離れることに決めたのだ。
私が意識を失った後、たった数時間で意識を取り戻すことが出来た。
なんでも、私の体がこの世界に馴染んできた証拠らしいんだけど、そういった実感はあんまりわかないからいまいち納得いかない。
「ほんとに、ほんとーに。あの時は頭がどうにかなったんじゃないかと思ったです! 漸く周りが見えるようになったら、おねーさんも誰もいないですし……」
「本当にごめんって……うっかり君のことを忘れちゃったんだ」
「うっかりで済むレベルじゃないです?! そのうっかりで貴重な命が一つ散るところだったです!」
出発してからこの方、こんな感じでコボルドの子にずっと文句を言われ続けている。
いやまぁ、置いてっちゃったのは正直悪いと思ったけど。連れて行ってたとしても逆に危なかったかも知れないし……
対応に困って、適当にあやしながらシロガネ達へと救援を求める視線を送ろうとする。
皆で対応すればなんとかなるはず、さぁ共に猛る小狼を宥めよう。
「さて、と。貴様は主様の配下の中では一番の新顔な訳だ。それは理解しているな?」
「ふむ……? まぁ、つい先日仲間になったわけだから、そうなるだろうな」
「よろしい。主様の温情により特別に名を授かったんだ。今までの貴様に対する色々は全て水に流してやる」
「お、おぉ……? 助かる……?」
「それで主様をお世話する順番についてだが、貴様は私とカイ殿の後に三日だけ手番を譲ってやる。その間に精々主様のお世話に励むことだ」
「は……? いや、世話ってなんの話しだ?」
「貴様……三日は不服だと言いたいのか?」
「いや、そういうわけではなくてだな……」
「いいか? 本来なら貴様などに主様のお世話など務まるはずもないところを、主様が仰る家族となったために特別に時間を割いてやっているんだ。もし貴様の世話が至らぬものであったなら、即座に切り捨てるからそのつもりで居ろ」
「待て待て、俺の話しを……いや、悪かった。わかったからその刀をしまえ」
駄目そうでした。
何故か先輩顔のシロガネが、新人いびりじみたことをしている光景を見てしまい微妙な顔つきになる。
その後ろに控えるカイも、当然といった顔でそれを眺めるにとどめているし。
「えっと……そう。君にはまだあの戦場ははやかったと思うんだ。まだ戦い慣れしてないでしょ?」
救援を求めることは出来なさそうだと判断して、私は仕方なくコボルドの子に向き直り説得を試みる。
シフはどうしたって? 私の頭の上で気持ちよさそうに眠ってるよ。
大丈夫。私なら出来るに決まってるさ。
「そんなことないです。コボルドの中で貴重な戦力として、それなりに場数は踏んでるです」
「あー……いやでも、オーク兵達が怖くて竦んでたんじゃないの?」
「オーク共はそんなに怖くなかったですが、あっちこっちでどーんどーんとオーク共が吹き飛んでいて、そっちに巻き込まれたらと思った方が怖かったです……」
「そ、そっか……」
巻き込まれたら、なんて思ったら確かに怖いなと納得する。
なにせ、至る所でリムルさんの配下達やシロガネとカイが暴れ回っていたわけだし、コボルドを巻き込まないようになんて配慮などしてるとも思えない。
そう考えると、文句を言いたい気持ちも分かる気がする……
「まぁでも、何事もなくて良かった。ところで、この戦いでなにか収穫はあった?」
「収穫ですか。置いてかれた上に、敵にも味方にも攻撃されかねない状況でなにを収穫するんだって話しですが……」
「あ、あはは……それもそうだね……」
「……でも、一つだけ分かったことがあるです。世界はまだまだ広くて、自分の力に驕ってるだけじゃ越えられない壁もあるです」
そういって、少しだけ寂しそうに笑うコボルドの子。
きっと、この子はコボルドの中では相当強い部類だったんだと思う。
それがこの子の自信となってて、同時に枷にもなってるのかも知れない。
ここまで付いてきたのも、色々なものを見るため。コボルドの行商について行ってるだけじゃ、決して見ることのできないものを。
「……どうだった? ここまで付いてきてみて」
だったら、これだけは聞いておこう。
この子が己で見たものをどう捉えたのか。
広いと評した世界を見て、どう思ったのか。
「……おねーさんも、他の皆も。なんというか凄くて、とても太刀打ちできないなって思ったです。というより、滅茶苦茶過ぎです。なんなんですか、あれ。あんなの、コボルドっていう種族が一生を掛けたって、足下に及ぶかも分からないくらいです」
ジト目で見つめられ、苦笑いするしかない私。
多少というか、物凄くずるしてるから、この子にはとても申し訳なく思う。
「──でも、楽しかったです。いつか並び立ちたいって、超えてみたいって思ったです。それが、叶うことのないことだって分かっていてもです」
「……そっか。叶うといいね?」
「おねーさんに言われると、嫌みにしか聞こえないです……」
「え? あ、えっと。そ、そんなつもりじゃ……」
「分かってるです。ほんの冗談です」
くすくすと笑いながらそう返すコボルドの子を見て、私も少し頬をほころばす。
ふっ、上手く話題を逸らすことに成功したわけですよ。私って実は天才だったり。
《何言ってるんだか……結果的にそれただけで、狙ってやってるわけじゃないくせに》
あ、そういうこと言う? 言っちゃうんだ?
私が狙ってやったわけじゃないって、「
《違うの?》
いや、まぁその通りなんだけどね。
適当に話し繋げてどうしようか考えてたら、いつの間にか話題の方向性が変わってたんだ。
でも、変わったことには違いないんだし、別にいいよね。終わりよければ全てよし。
「後ろの喧噪は置いておいて、さっさと戻ろっか」
「あれ、そのままでいいんです? 物凄い勢いで斬りかかられてるですが」
「大丈夫大丈夫。いくらシロガネだって本気で殺しにはいかないだろうし、近くにはカイも居るから」
「はぁ……そうですか」
「そうなの」
コボルドの子を促して、足早にその場を去ろうとする。
だって、このままここに居たら絶対あれに巻き込まれる気がするもん。
まぁ、私が巻き込まれるならいいにしても、この子まで巻き込まれたら何が起きるか分からない。
だから、さっさと立ち去るのが吉なのだ。
シロガネ達も、飽きるか満足すればあとから追いついてくるだろうし、それを待ちながらゆっくり歩いていれば良いや。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
大きく、また様式と外観に重きを置いた屋敷の中。その中でも、特に贅をこらして整えられている部屋。そこに数人の影が集められている。
正に豪華絢爛、その部屋に集められた美術品、嗜好品の総額だけで一体幾人の人間が一生を遊んで暮らせるのか。
その中にあって、しかしその雰囲気にのまれないのが今この部屋に集められている人物達だ。
それぞれが独特の、そして確固たる威圧感を放つ者達。周りの者から『魔王』と呼ばれる存在。
そんな彼等が集まって何をしているかといえば、只一心に水晶を覗き込んでいる。
といっても、別にそろいもそろって水晶占いをしているなどということではない。
彼等が覗き込んでいる水晶には、なんらかの映像が流れていた。
やがて、集まっている魔王達の中でも比較的小さな体躯を持つ者が、興奮したような声を上げた。
「なんだ、やるではないかゲルミュッドの奴! 最期にこんな面白い見世物を残すなんて!」
「確かに、な。計画が失敗したって聞いたときは、なんて無能な奴だと思っちまったが……はん、これだけ上位魔人がいちゃ、奴には荷がかちすぎだな」
「ええ、オークロードがこの後どうなったか、それは分かりませんが……」
「……生きていれば、確実に魔王に。負けていても、この上位魔人達を引き込めばいいという訳ね」
背に羽を有する魔王がそう指摘すると、水晶を用意した魔王が鷹揚に頷いた。
彼等にとって、ゲルミュッドを失ったことはさしたる損害ではない。
ゲルミュッドが負っていた任──新たな魔王を誕生させるという、その仕事さえ完遂していれば生き死になどどうでもいいような取るに足らない存在なのだ。
オークロードがどうなっていようと、彼等にはうま味しかない方向に転んだのだから、ゲルミュッドはよくやった方だろう。
「しっかし、わかんねぇ。上位魔人達はいいにしても、あの人間は一体何者なんだ?」
「……それは、わかりませんね。彼女からは特に強さというものを感じませんでしたが。ミリム、あなたはどうでしょう?」
そう言いつつ、ちらりと視線を動かす魔王。
問われた小さな魔王──ミリムは、その顔に大きな笑みを浮かべて、その場にいる魔王達に向けて楽しそうに告げるのだった。
あとがきに転生する?
〉Yes
No
ゴ「……え? 出番これだけっすか? たった数行で台詞もなし?」
ガ「それどころか、思い切り端折られてるまであるのである。これは直訴するしか──」
作者「あ、これからここでステータス紹介があるから、二人とも退去してねー」
ゴ「扱い酷すぎじゃないっすか?! せめてもう少し!」
作者「はいはい、問答無用。それじゃ、これ以降ステータス紹介です」
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ミク・ヒグラシ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『神話召異』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『
コモンスキル──『武器習熟』
耐性──『精神攻撃無効』『状態異常耐性』
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カイ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『黒き稲妻』『黒雷之豪雨』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『影移動』『思念伝達』『魔力感知』『粉塵操作』
耐性──『物理攻撃耐性』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『自然影響耐性』
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シフ
種族──牙狼族(???)
加護──???
称号──
ユニークスキル──『
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シロガネ
種族──オーガ(???)
加護──???
称号──
─────────
ソキウス
種族──
加護──???
称号──仮初の魔王、???
魔法──『回復魔法』
ユニークスキル──???
エクストラスキル──『魔力感知』『外装同一化』『思考超加速』
コモンスキル──『威圧』『魚鱗装甲』『自己再生』
耐性──『炎熱攻撃耐性』『電流耐性』『物理攻撃耐性』『麻痺耐性』『精神攻撃耐性』