転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます   作:低蓮

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 三夜連続投稿、二日目です。前話を見ていない方はご注意下さい。


二つの戦い2

「おい?! ……くそ、気を逸らせた隙に!」

 

 

 制止の声もむなしく、魔王ゲルドに向かって突き進む少女を見やり、リムルは悪態を吐いた。

 「大賢者」で解析をした結果、ミクにはなんの力も備わっていない(・・・・・・・・・・・・)という事が分かったのだ。

 つまり、ミクは力も持たない只の人間。その人間の脆さは、一度その身を破滅させているリムルが一番よく分かっていた。

 ミクを救出するべくリムルも前に出ようとするが、その前にゲルドの混沌食(カオスイーター)が立ちふさがる。

 

 

「くそ……邪魔だ!」

 

 

 リムルは『多重結界』に任せてそれを突破しようと試みたが、混沌食(カオスイーター)はまるで意思を持つかのようにリムルの体にまとわりつく。

 『多重結界』によって実害はないとはいえ、そのなんとも言えない不快感によってリムルの動きは阻害される。

 そして、その間にミクはゲルドのもとにたどり着いてしまい、手に持っていた刀を振り上げた。

 しかし、相手は馬鹿力を更にブーストさせたシオンでも敵わない程の怪力。

 簡単に弾き返されてしまう光景を夢想したリムルは、何かを叫ぼうとして口を開いた。

 

 

「……は?」

 

 

 しかし、そこから出てきたのは間抜けな一音のみ。

 ミクはリムルの想像など鼻で笑い飛ばすかのように、ゲルドの肉切包丁(ミートクラッシャー)を両断してみせたのだ。

 あんなまね、出来るのか? そう唖然とするリムルを置いて、戦況は刻々と変化する。

 ゲルドに一太刀入れようと接近したミクに対し、ゲルドは先程ゲルミュッドが使用した『死者之行進演舞(デスマーチダンス)』に、腐食の効果を付与し更に凶悪にした『餓鬼之行進演舞(デスマーチダンス)』を放った。

 しかし、ミクはそれを意外なほど俊敏な動きで避けていく。まるで魔力弾と一緒に舞っているかのような動きで、気が付いたらゲルドの喉元まで迫っていた。

 

 

「くそ、混沌食(カオスイーター)!」

 

 

 ゲルドは慌てたように妖気(オーラ)を放出させたが、驚くことにミクはそれすら斬ってしまう。

 返す刀でゲルドを切り伏せようとするミクに対して、ゲルドは腕を交差させて防ぐ姿勢をとる。

 肉切包丁(ミートクラッシャー)すら両断してしまうミクの攻撃をその程度で防げるわけもないのだが、リムルはゲルドの口元が釣り上がっているのを見逃さなかった。

 

 

「──うぇ?!」

 

 

 ミクが刀を振り下ろし、宙に舞ったのは……刀の刀身。

 よく見てみれば、刀身は至る所に腐食の跡があり、ボロボロになっていた。

 先程ミクが妖気(オーラ)を斬ったときに、密かに刀身に纏わり付いたものが刃を腐食させ、脆くしてしまっていたのだ。

 

 

「ぐはははは! 武器を斬られた時は些か驚いたが、最早その武器も使い物にならヌ! 先ずは貴様から喰ってやろう」

 

 

「うーん、食べられるのは勘弁したいかなぁ。ここは引き分けって事で、終わりにしない?」

 

 

「馬鹿なことヲ。この状況で、貴様とオレが互角だと?」

 

 

「まぁ、互角と言えば互角かな……?」

 

 

「戯れ言ヲ……ッ!」

 

 

 ゲルドは腐食喰(カオスイーター)によって、今度こそミクを捕食しようとその手を伸ばす。

 しかし、今度はリムルがその行く手を阻んだ。

 黒炎を刀身に纏わせてゲルドの腕を切り飛ばし、ミクを守るようにその背に隠す。

 

 

「ナイスアシストだ、『大賢者』。さてと、魔王ゲルド。お前に、俺の同郷は喰わせたりしないからな?」

 

 

「ぐぐぐ、オレとお荷物を抱えた状態で戦うというのカ?」

 

 

「そうだ。これくらいが丁度良いハンデなんじゃないか?」

 

 

 リムルの挑発するような言動に、ゲルドの表情が引きつる。その会話を聞いていたミクの「あれ? 私お荷物扱いされてる?」と言うつぶやきは、二人の耳には入らなかった。

 

 

「後悔するゾ……混沌喰(カオスイーター)!」

 

 

「お前じゃ、勝てないよ。やれ、『大賢者』!」

 

 

 そして、両者がぶつかり合った。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

「おい、どうした? 最初の威勢が見る影もないぞ?」

 

 

「余計な……お世話だ……ッ!」

 

 

 リムルとゲルドがぶつかり合っていた丁度その頃、戦場の別の場所では激しい戦闘が続いていた。

 いや、それは戦闘と呼べる代物ではないのかもしれない。

 只管シロガネが斬りかかり、その全てを男がいなして反撃をする。

 何故か男からは攻撃せずに、不利なはずの受け身に徹し、それでもなお未だにシロガネから有効打を受けていないという事実は、最早戦闘と言うより遊びに格が下がっていると言っても過言ではないだろう。

 

 

──最初、この男からは何ら脅威を覚えなかった……

 

 

 シロガネは考える。

 大凡凡人では認知すら出来ないスピードで刀を振るおうと、この男はまるで見えているかのようにそれをいなす。

 ならばと体勢を崩させてみても、驚くような挙動で攻撃を躱し直ぐさま反撃をたたき込んでくる。

 

 

──それに、時間が経つ毎に動きのキレが増していっている……?

 

 

 シロガネが疲れて反応が鈍くなったというのもあるだろうが、それを除いても男の動きは時間が経つ毎にそのキレを増していく。

 戦いにおいて、時間経過と共に動きが良くなっていくなど反則に近い能力だ。

 それはすなわち、無限にも等しい体力を持っていることになり、粘れば誰にでも勝てるというおかしい性能を発揮することとなる。

 

 

「……あり得ない(・・・・・)

 

 

 故にこそ、シロガネはそれをあり得ないことだと断じる。

 何故かは分からないが、男は手こずれば手こずるほどその力を増していくようで、既に純粋な力比べではシロガネに勝ち目はない。

 だが、それならば何かカラクリが隠されているはずだと、シロガネは刀を振りながらも思考を続けた。

 

 

「おいおい、邪魔者は排除するんだろう? そんなちんたらした剣速で俺をとらえられるのか?」

 

 

「……少し調子が悪いだけだ。すぐに葬り去ってやる」

 

 

 今し方浅く切り裂かれた頬を拭い、シロガネは男へと言葉を返す。

 未だに男から仕掛けてくることはないが、反撃として繰り出される剣がシロガネを浅く傷つけていく。

 数度刃を交えたのみだが、既にシロガネの全身には無数の切り傷が走っており、見た目にはぼろぼろと呼ぶしかない状況だった。

 まさに圧倒的と呼ぶしかない状況。そんな中で男は余裕の笑みを浮かべており──

 

 

 ──その実、背中には冷や汗を浮かべていた。

 

 

「(おいおい、もう力の差は十分離れてるはずだろ……? なのに、何で此奴は立っていられる(・・・・・・・)……ッ!?)」

 

 

 圧倒的な力の差。それを見せつけた男は、シロガネの命を刈り取るつもりで反撃を行っていた。

 自身の攻撃を逆手にとられ、絶望の色を浮かべて死んでいく……

 そんな光景を望んでいた男の反撃は、そのどれもがシロガネを浅く傷つけるばかりで致命傷には至らない。

 それはまるで、軽くあしらわれている気がして(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「(……下手にこだわったら死ぬかも知れないな。そろそろ勝負をつけるか……)」

 

 

 男は切り替え、片をつけるべく刀を構え直す。

 戦場では下手にこだわらない。その切り替えをスムーズに行える男は、流石に戦闘慣れしている元オーガと言ったところか。

 

 

「おい、いい加減お前も飽きてきただろ? そろそろ決着と行かないか」

 

 

「……何を企んでいる?」

 

 

「別に、何も企んじゃいないさ」

 

 

 不敵な笑みで僅かな焦りを覆い隠し、男はシロガネへとそう嘯いた。

 大丈夫だ。奴にはこのカラクリは分からない。仮に分かったところで、既に如何することも出来ないと。企んでいるのはお前の方じゃないか? と聞きたくなるのを抑え、男は表情を取り繕う。

 そんな男に対して、シロガネは少しばかり逡巡した後、わかった、と頷きながら言葉を返した。

 

 

「……良いだろう。貴様の力が持つカラクリも大体分かった(・・・・・・)しな」

 

 

「……は?」

 

 

 シロガネの言葉に、男が反応する。

 本当に見破られたのか、シロガネの表情からは嘘の気配はしない。

 しかし、見破ったところで。自身の力にそう自信を持っていた男は、一瞬の動揺を押し隠してシロガネを見やる。

 対するシロガネも、未だに気力を漲らせながら男を射貫くように視線を交差させる。

 

 

「カラクリが分かった。なる程、それは凄いな。それで、分かったところでどうにか出来ると思っているのか? 戦いは力だ。力が開いてる時点で、お前に勝ち目はないだろ?」

 

 

「力、か……そうだな、戦いは力だ。そこは貴様に同意しよう。私も、力を求めて主様に名を頂いたのだからな」

 

 

 だが、とシロガネは続ける。

 きっかけは似たようなものだったなのだろう。両者共に、力を求めて名を受け入れた。

 それが、決定的に捻れたのは……きっと、名付け親の差故。

 

 

「身体能力、反射神経。そういったものばかりが力な訳ではない。今の貴様は、強化された身体能力と反射神経の上にあぐらを掻いているだけの、只の猪武者だ」

 

 

「戯れ言を……ッ! その猪武者に一太刀も入れられていないお前が、何を吠えてやがる!」

 

 

「そう思いたいなら、勝手に思っていれば良い。貴様も、うすうす感づいているのだろう?」

 

 

「……ッ!」

 

 

 シロガネの問いかけに、男は答えることが出来なかった。

 殺すつもりで放った太刀筋。そのどれもがシロガネを浅く切り裂くのみでとどまったのは決して偶然などではなく、意図的に逸らされていた(・・・・・・・・・・・)のだと確信してしまったために。

 

 

「貴様と刃を交えるたびに、私の力が衰えていくのを感じた。詰まるところ、貴様のそれは相手から力を奪い我が物とする系統なのだろう? それが相手の技まで奪えるものだったら脅威にもなっていたが、只力を奪うのみならば手こずるほどでもないな」

 

 

 シロガネはそう言い放ったが、実際の処この男の能力は途轍もなく相手にし辛い類いのものだ。

 戦いが長引けばそれだけ相手を弱体化させ、その分自己は強化される。

 生半可な技術など、圧倒的な力の前には毛ほどの意味もなさない。

 結局、この二人の勝敗を分けたのはその保有する技術の差。

 自分の力に驕り鍛錬を怠った男と、主を守るために常に研鑽を絶やさないシロガネの差。

 

 

「決着、つけるのだろう? 今度は貴様に攻め手を譲ってやる」

 

 

「……ッ! くそ、があああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 明らかな挑発を受けた男は、それを正面から突破するべく全力を解放する。

 叫ぶ男から滲み出すのは、黒い靄のようななにか。

 それは男を覆い隠し、さながら鎧のような役目を果たす。更に男の刀にもそれは纏わり付き、禍々しいばかりの大剣へと姿を変貌させる。

 ぎらり、と男は目を光らせると、シロガネとの距離を一瞬で詰めた。

 それはまさに、瞬き一回分にも満たない一瞬の出来事。瞬時に予備動作を終えた男は、シロガネへとその大剣を振り下ろした。

 

 

「砕けろ──暴虐なる奔流(アウトレイジ)ッ!」

 

 

 正真正銘、男の全てを込めたその一撃は、音すら置き去りにしてシロガネへと迫る。

 謂わば剛を極めたともいうべきその一撃を正面から受け止められるのは、恐らくこの世界において竜種くらいのものだろう。

 そう、正面から受け止めるならば(・・・・・・・・・・・・)

 男の剣がシロガネを両断する寸前、その腹にシロガネの刀が添えられた。そして、そのまま絡め取るように巻き付くとその軌道を横に逸らされる。

 結果、男の剣はシロガネを捉えることはなく、足場を砕くにとどまった。

 

 

「な……ッ」

 

 

 決めるつもりではなった攻撃が空振りに終わったことと、足場が崩れたことで男の動きが一瞬止まる。

 その男の胴に、地面に刺した刀を軸に空中に逃れていたシロガネの足がたたき込まれた。

 しかし、それは黒い靄に阻まれて男には届かない。それを見て勝ち誇ったような顔をした男に、しかしシロガネも笑みを見せて応じた。

 黒い靄に触れた足を軸とし、シロガネは体を回転させる。空中という足場のない中で、実体を伴った(・・・・・・)妖気(オーラ)を足場に見立て姿勢を制御する。ともすればバランスを崩し致命的な隙を生んでしまうそれを意図もたやすく行ったシロガネの刀が、脳天から男に迫る。

 それでも、男の余裕の表情は崩れなかった。迫り来る刃すら、己の妖気(オーラ)は弾いてみせると自負していたから。

 刃が迫る。

 男の妖気(オーラ)がそれに呼応するように、密度を増していく。

 男の妖気(オーラ)と、シロガネの刀が触れる。

 そして──

 

 

──シロガネの刀は、まるでそこに何も無いかのように男の妖気(オーラ)を切り裂き、そのまま男を肩から両断した。

 

 

 

 

 

◇   ◇   ◇   ◇   ◇

 

 

 

 

 

 ありのまま、目の前で起こっていることを話そう。

 オークロード……ううん、魔王ゲルドとリムルさんの戦いは、完全な肉体戦へと移行してた。

 最初こそ、ゲルドが弾幕を張ったりしてリムルさんを牽制してたんだけど、それが効果が無いとみるなり手足に腐食の妖気(オーラ)を纏わせてリムルさんと格闘戦を始めた。

 驚くべきはリムルさんかな。だってその見た目の何処にそんな力があるの? ってくらいの膂力で、ゲルドに拮抗してるんだもん。

 まぁ、ゲルドの攻撃はリムルさんの手前で何かに阻まれるし、リムルさんの攻撃はゲルドの再生力に追い付けていないから完全に千日手みたいだけど。

 

 

「リムルさーん。何か手伝うことあるかな?」

 

 

 呼びかけてみるも、反応なし。

 なんか、聞こえてないっていうか聞く気が無いって感じで、さっきまでのリムルさんとは様子が違うような……

 

 

《今、彼は自分で自分の体を操作してるわけじゃないからね。ほら、一回洞窟でやって見せたみたいな感じに》

 

 

 あー、そうなんだ……。それじゃ、今リムルさんの体はスキルが主導権を握ってるって事ね。

 それにしても、何だか魔王との戦いなのに、肉弾戦ってなんか地味だね……

 

 

《いや、確かに地味だけども。所詮ゲルドは生まれたてのなんちゃって魔王だし、彼も武器らしい武器は持ってないみたいだから仕方ないんじゃないかな》

 

 

 なんかこう……魔王との戦いっていったらさ、聖剣携えて魔王の張った結界毎相手を叩き切るとか……そういうものじゃないの?

 

 

《うん、それは君の世界の物語の話しであって、こっちの世界とは違うんじゃないかな。それにしたって偏った知識な気もするけど》

 

 

 そうかな……あ、そうだ。アスカロン出したみたいに、聖剣を持ってきたりは出来ないの?

 こう、約束された勝利の聖剣(エクスカリバー)みたいに!

 

 

《うーん、今の状態だとエクスカリバーはちょっと難しいかな……。というより、一応いっておくけどアスカロンも聖剣のカテゴリに入ってるからね?》

 

 

 呆れたような「妄想(しんゆう)」の声に、寧ろなんでそんなことを知っているのかと激しく問いたい。

 私よりもあっちのことに詳しいんじゃないの?

 

 

「──しまっ……おい、逃げろ!」

 

 

 突然そんな声が響いてきて、私の意識が引き戻される。

 そうだ、ぼーっとしてたけどここってまだ戦場だったんだ。

 えっと、ところで逃げろって誰に言ったんだろう? リムルさんとゲルド以外、この辺りにはもう居ないはずだけど……

 不思議に思って回りをキョロキョロしてたら、立て続けに声が響いてくる。

 

 

「いや、なにキョロキョロしてんの?! お前だよお前! お前以外に誰がいるんだよ!」

 

 

 どうやら下手人はキョロキョロしているらしい。

 そんな特徴的ならすぐに見つかっても良いようなものだけど、それらしい姿は見えないような……?

 

 

《いや、君のことだから。何処をどう考えても君しか居ないから》

 

 

 え、私のことだったの? 全然気が付かなかった……

 というより、逃げるって何からだろう。

 声のした方を見てみたら、何だかリムルさんが面白いモニュメントみたいになってた。

 肩から地面に埋められているのか、必死に抜け出そうとして左右に揺れてるのが何だか笑えてしまう。

 あれ、でもおかしいな。なんで埋まってるんだろう。

 

 

「……あれ、ゲルドは?」

 

 

 そうだ、リムルさんと戦ってたはずのゲルドの姿が見えない。

 小首をかしげてると、リムルさんが必死にもがきながら叫んだ。

 

 

「上だ、上! 早くそこから逃げろ!」

 

 

「上?」

 

 

 なんで上? と思うまもなく、突然周囲が暗くなる。

 ふと上を見たら、丁度ゲルドが覆い被さるように私に向かって突っ込んできているところだった。

 え、なに? ジャンプして攻撃してきたの?

 咄嗟に後ろに転がって回避したら、寸前まで私が居たところにゲルドの拳が突き刺さった。何あれ怖い。

 ゲルドが舌打ちをしながら身を起こすと、なぜか見下したような笑みを浮かべて私を見てくる。

 

 

「ふん、運良く避けられたカ。だが、いつまで逃げられると思っていル?」

 

 

「いつまでって言われても、わかんないけど……というか、リムルさんと戦ってたんじゃないの?」

 

 

「カカカッ、馬鹿メ! 折角目の前に弱い餌が居るのに、それを見逃す手はないだろウ!」

 

 

 どうやら、目の前のお方は私がご飯に見えるらしいです。

 どうしよう「妄想(しんゆう)」、私美味しそうに見えるんだって。

 

 

《相手が相手だったら事案発生だね……なんて、巫山戯てる暇はあんまり無いよ。素手でやり合ったら、いくら何でも膂力で勝てないから気を付けてね》

 

 

 確かに、素手でやりたいとは思わないかなぁ……

 でも、武器を造れば良いんでしょ? それっぽい武器を適当に持ってくれば良いんじゃないかな。

 そう思いながら、腐食に強い刀を想像する。さっきは腐食されて刃が折れちゃったからね。

 すると、私の手の中には一振りの刀が収まっていた。刀の善し悪しは私には分からないから、特に感想は無いけど。

 

 

《適当にって……あのね、本当ならそんな適当に持ってきたりは出来ないんだからね? 事象っていうのは、名を残して初めて力を得るんだ。そんななんとも言えない、無銘の刀なんて本来出せる力の一端すら引き出せてなくて……》

 

 

 え、でもよく切れる奴はよく切れたよ?

 

 

《あれだって、本来だったら腐食なんてしなくて……うーん、それは今はいっか。兎に角、魔物と一緒でモノにも名前をつければ強くなる、そう考えれば良いよ》

 

 

 えーっと、つまり本当の名前を思い浮かべて召喚したり、振るときにその武器の名前を叫んだりしたら、その力が解放される……みたいな?

 なんだろう、そんな話しを前の世界で見たことがある気がする。

 

 

《流石にあんな感じにはならないからね? でも、名前を思い浮かべながら召喚するって言うのは正しいかな。ほら、アスカロンは条件が限定的だったけど、それでも普通に業物として使えていたでしょ》

 

 

 そっか……でも、私そんな細かい逸話にまつわる話しとか全然覚えてないんだけど……

 召喚した武器に、勝手に名前つけちゃ駄目なの?

 

 

《ん……いや、ありなんじゃないかな……? 多分、あやふやな願いを元に召喚された武器は、それを叶えうるものの中から適当に混ぜ合わされて造られた〝向こうの世界には存在しない武器〟だろうから、名前をつけることで強くなる可能性は十分あるね》

 

 

 なる程、よくわかんない。

 まぁでも、名前をつけてみれば何か変わるかも知れないと言うことは分かった。

 名前、名前かぁ。

 普通、こういうのってその性能とか因果とかになぞらえて付けるんだよね。でも、腐食に強いって言うのは……

 駄目だ。なんかこう、これって言う名前が出てこない。

 腐食で考えるから駄目なのかな……腐食しないって事は、状態異常に強い、みたいな。うーん、あとは刃が折れたり欠けたりしない……?

 

 

「……金剛?」

 

 

 ぽつり、と呟いたに等しい私の声。

 その声に反応したかのように、私の手の内で刀がどくんと一回跳ねる。

 どうやら、今のが名付け(・・・)という認識をされたらしい。まぁ、下手に変な名前になったわけじゃなかったから一安心、と言ったところだ。

 それにしても、外見的には変わったところなど一つもない。

 なんか、カイ達みたいに見た目が変化するものだと思ってた私は、少しばかり肩すかしを食らった気分になる。よく考えれば無機物の形態変化ってなんだよって話しなんだけどね。

 

 

『エクストラスキル「魔剣命名」を獲得しました』

 

 

 何となく聞き慣れてきた例の声が響いてきて、私に新たなスキルが備わったことを知らせる。

 魔剣命名……スキル名的に、武器に名前を付けて魔剣にする、みたいなものなのかな?

 まぁ、武器に態々名前を付ける使用者も少ないだろうし、私もそんなに多用するスキルじゃないんだろうけど。

 

 

「……あれ?」

 

 

 ふと、回りが静かだなと思って顔を上げる。

 そういえば、ゲルドに襲われそうになってた筈なんだけど、私のことを待っていてくれたのかな?

 だとしたら、色々とよく分かってるな、なんて思いつつゲルドの姿を見て、目を丸くする。

 ……なんか、すっごく脅えられてない?

 

 

 

 

 

 

あとがきに転生する?

〉Yes

No




ミク・ヒグラシ

種族──人間(ヒト)(???)

加護──???

称号──

魔法──『神話召異』

ユニークスキル──『創造神(ヌリカエルモノ)……事象上書き(オーバーライド) 創造世界(スキルクリエイト) 思念操作(マインドコントロール)』『ふとましい者(ノリコエシモノ)……??? ???』

エクストラスキル──『妄想(しんゆう)』『魔力感知』『思念遮断』『黒雲招来』『天啓』『位相ずらし』『魔剣命名』

スキル──『武器習熟』

耐性──『精神攻撃無効』『状態異常耐性』

──────────

カイ

種族──星狼族(スターウルフ)

加護──???

称号──

魔法──『黒き稲妻』『黒雷之豪雨』

ユニークスキル──『不屈之王(アキラメヌモノ)……超感覚 胆力 超速再生 思考超加速 結果変動』

エクストラスキル──『影移動』『思念伝達』『魔力感知』『粉塵操作』

耐性──『物理攻撃耐性』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『自然影響耐性』

──────────

シフ

種族──牙狼族(???)

加護──???

称号──

ユニークスキル──『無邪気者(ジカクナキモノ)……見切り 超感覚 ??? ???』

─────────

シロガネ

種族──オーガ(???)

加護──???

称号──


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