転生したけど、手に入れたスキルが自由すぎて困ってます 作:低蓮
でも見てくださいこの描写力! こんなにも書けないなんて(号泣
上の泣き言を見て分かった方も居ると思いますが、今回は戦闘シーンです。
でも期待しないでください。
戦闘とは名ばかりの稚拙なものですので(
あと、あれです。
原作で死なないキャラはこの作品でも死なないので、ご安心を(凄絶なネタバレ感
「ちょ?! よ、避けるっす!」
シフの爪が、牙が、今まさにリザードマンへと掛かろうかと言うときに、そんな声とともにシフの視界からリザードマンが消える。
空を切ったシフが振り返ってみてみれば、案の定と言うべきかもう一人のゴブリンにリザードマンが突き飛ばされていた。
「ぬ……また助けられてしまったようであるな」
「礼には及ばないっすよ! そんなことより……」
「そうであった。今は襲撃者を……」
阿吽の呼吸と言うべきか、直ぐさまシフへと警戒の意識を向けてきた二人はしかし、シフを見ると呆気にとられたような表情をした。
自分たちを襲ってきたのが仲間だと思っている牙狼族で、しかもその子供と有っては驚くなと言う方が無理な話ではあるが。
しかも、向けてくる視線には敵意などの感情は殆ど読み取れず、二人はそれにいっそう混乱した。
「が、牙狼族の子供っすか……? 一体何で攻撃なんか……?」
「むぅ、それに攻撃をしてきたにしては敵意のようなものを感じないのである。今のはじゃれついてきただけであるか……?」
「いやいや、こんな戦場でじゃれつくとかちょっとおかしいっす。と言うよりも、この子供は何処から湧いてきたっすか?」
目の前の二人が何事か話している間、シフはその様子をじっくり眺めていた。
只眺めているだけではなく、会話中に隙が出来るかどうかを窺っているのだが。
しかし、そんなシフの思いとは裏腹に二人は会話中にもしっかりと周囲に警戒を張っていた。
攻撃する機会がないわけではなかったが、シフは敢えてその機会を見過ごした。
それは、そこで仕掛けても面白くないから。待っていれば面白いことが待っていると確信したからだ。
やがて、二人の会話が途切れ自分に視線が集中したのを感じ取り、シフははやる気持ちを抑えながら二人に問うた。
「ねぇねぇ、打ち合わせは終わり? ならもう遊べる?」
否、全然抑え切れていなかった。
満点の笑顔で尻尾を振りつつ、二人へと催促の言葉を投げかけたシフだったが、それが余計に相手を驚かせたようだった。
「け、結構はっきりと喋るっすね……と言うか、ここは戦場っすよ? 何処から来たかは知らないっすけど、遊び感覚なら帰った方が良いっす」
「うむ、戦場に女子供は似合わないのである。戦いは我々に任せて、さっさと安全なところに逃げるのである」
「えー……でも、僕二人よりも強いと思うよ? 強かったら戦場に居ても問題ないでしょ?」
シフのその言葉に、ゴブリンが何か応えようとした瞬間、隣に居たリザードマンがそれを遮ってシフの方へと歩みを向けた。
その顔は何処かむっとしていて、明らかにシフの言葉が癇に障ったようであった。
「それは聞き捨て成らないのである。リザードマンの頭領である我が輩が、牙狼族の子供に負ける? 万が一にもあり得ないことである!」
自信満々にそう宣言するリザードマンの耳には、隣のゴブリンが呟いた「いや、でもガビルさん自分に負けたっすよね?」と言う言葉は届かなかったらしい。
しかし、そう言われればシフだって引き下がれないものだ。
より正確に言えば、そこまで自信があるならとより一層喜びを深めたのである。
それを見て焦ったのはゴブリンだった。このまま自分も巻き込まれてはと、シフの説得に掛かる。
「まぁ待つっす。こんな血なまぐさくて狭い戦場で、態々遊ぶ必要もないっす。終わったらもっと広くて静かな場所で遊んであげるっすから、今は大人しくするっす」
今は駄目だが、と言う前置きをして後々改めて遊んでやると約束をするゴブリン。
これなら今遊ぶのを断る口実にも成るし、何より遊ぶのを否定したわけではないのだから乗ってくるはずだ、と考えた。
シフはそれを聞き、周囲を見回してから一つ納得をしたように頷いた。
「うーん、確かにいっぱい遊ぶには狭いかも」
「そうっす。だから、今は一旦引いて──」
「よし、なら広いところに行こう!」
まるでさも当たり前のことのようにそう言うシフに、ゴブリンが何かを口にしかける。
しかし、それが声となって出てくる前に、シフが行動を起こした。
突如、シフやゴブリン達の周囲の空間が歪み始め、景色がぼやけていく。
その事に嫌な予感を覚えたゴブリンが、慌てたように歪みの外に出ようとかけだした。
しかし、あと一歩というところでゴブリンの手は届かず、一瞬の後にはそこに三匹の魔物が居た痕跡は一切残っていなかった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
少し目を離した隙に……そう、本当に少しだけ注意を逸らした瞬間に、カイの視界からシフが居なくなった。
視界から見えなくなった程度ならば、再度見つけることもそう難しいことではないのだが、一体何があったのかカイがどれだけ周囲に気をはっても、シフの気配が見つからない。
シフの身にそうそう何かがあるとは思えなかったが、そんなことは今のカイには関係がなかった。
主人から任されたシフを、そして何よりも我が子であるはずのシフを戦中にて見失ったのだ。
焦りもするだろう。心配もするだろう。そして、怒りもするだろう。
「グルルル……」
カイは、様々な感情を込めた声色で低くうなり声を上げた。
バチリ、とカイの周囲に火花のごとく電流が走り、それと同時にカイを囲っていたオーク兵達が一歩後ずさる。
今のこいつには近づかない方が良い。そう本能的に悟ったのか、オーク兵達がカイの周りから逃走しようと動きだすが、それよりも早くカイが天空へと吠えた。
「アオォォォォーーン…………ッ!」
自分にも非があることは認めつつ、しかし此奴等さえ居なければという思いから発せられた怒りの声。
それと同時に地上から幾柱もの雷光が天へと駆け上り、巻き込まれたものをことごとく蹴散らしながら破壊の波を広げていく。
それは、制御も何も無い純粋な力の奔流。
カイが怒りにまかせて放った攻撃は、手の届く範囲に居たオーク兵達を皆塵へと返し、遠巻きにそれを見ていたオーク兵達を恐慌へと陥らせた。
しかし、その程度でカイの気は収まらない。
複雑な光を湛える瞳をギラリと動かし、カイは次の破壊をもたらすために戦場を彷徨いだした。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「おわ、ととと……! な、何が起こったっすか?!」
突然謎の現象に襲われたゴブタが、悲鳴じみた声を上げながら己の置かれた状況を把握しようと周囲を見渡す。
すると、目に飛び込んできたものは一面の草原。
先程まで居たオーク達の姿もなく、今ここに居るのはゴブタとガビル、それに目の前の牙狼族の子供だけだった。
「い、一体何が起きたっすか……?」
思わずそう口走るゴブタ。
そう、見回してみたところで何が起きたかなどさっぱり分からず、無意識のうちに犯人であろう目の前の牙狼族に聞いたのだ。
しかし、その牙狼族の仕草を見てゴブタの動きが止まる。
「……なんで首をかしげてるんすか?」
「え? いや、ここ何処なのかなって」
「へ? いや、だってここは……知らないんすか?」
「うん、全然」
良い笑顔でそう返す目の前の牙狼族に、じゃあ誰がこんなことをと頭を抱えるゴブタ。
そして、有ることに思いが至って体を硬直させる。
「え、なら一体誰が元の場所に戻してくれるっすか……?」
最悪、もう二度と戻れないのではないか。
そんな考えが頭をよぎり、思わず身を震わせる。
しかし──
「考えても仕方がないし、今は遊ぼう!」
「遊ぶ? 正気っすか……て、うわぁっす?!」
声に反応し顔を上げたゴブタへ、牙狼族が一直線に飛び込んでくる。
咄嗟に持っていた騎乗用の槍でその攻撃をいなすも、槍はその衝撃で真っ二つに折れてしまった。
「ちょ、待つっす! 本当に洒落になってないっすよ?!」
「元々洒落にするつもりはないよ! ええと……名前なんだっけ?」
「ゴブタっす! って、そんなことよりも今はこんなことしている余裕は……ッ」
「ゴブタね! 僕はシフ、同じ
「楽しむ余裕なんてないっす?!」
再度襲いかかってくるシフに悲鳴を上げつつ身構えたゴブタだったが、ゴブタへとその爪が届く前にシフの体が飛んできた水によって吹っ飛ぶ。
ゴブタが驚いて水が飛んできた方を見れば、丁度ガビルが
槍の先に魔力を集中させ、一発の弾丸のようにそれを打ち出したのだ。
槍に備わるエンチャントによって放たれた魔力は水という実体を得、シフを横合いから吹き飛ばしたのだった。
「た、助かったっす、ガビルさん」
「なに、我が輩は二度も助けられたのだ。礼には及ばないのである。そんなことよりも、あれで倒せたとは思えないのである。注意を……」
「ふ、あはは! その槍、面白いね! 水が出るんだ? もう一回やってみせてよ!」
ガビルの言葉が終わらないうちに、攻撃をまともに食らったはずのシフが何事もなかったかのように起き上がりはしゃぎ出す。
それを無視してガビルがゴブタへと目配せをし、ゴブタもそれに頷く。
無視されたのが不満だったのか、その様子を見たシフが口を少しとがらせながら言う。
「少しくらい反応してくれたって良いじゃないか……まぁ、打ち合わせならいっぱいして良いよ。その方が僕も楽しめるし、ね!」
しかし、熟達の戦士であるガビルにとってその単調な突進は脅威にすらならず、槍でいなすように突進のエネルギーを分散させる。
体勢の崩れたシフに槍による追撃を行ったが、すんでのところでシフは横に飛びそれを回避した。
着地した後、今度は姿勢を低くして足を狙いにいくシフに対して、ガビルは躊躇わずに槍を突き出す。
「残念、外れだよ!」
が、シフはそれを軽く体をひねるようにして回避してみせた。
ガビルの槍は対象を見失い、その矛先を地へと埋める。
その隙にシフは懐に潜り込むと、ガビルに向けて牙をむいた。
「残念ながら、外れではないのである」
「──ッ?!」
しかし、その牙をガビルに突き立てることはなく、シフは唐突に後方へと待避した。
その瞬間、シフが居た地面から渦巻く水の槍が幾本も飛び出る。
警戒したのかそのまま距離をとったシフに対して、ガビルもまた追わずに距離をとったために、両者はにらみ合う形で動きを止める。
「ふむ、確かに動きには目を見張るものがあるのであるが、戦いには向いていないのであるな」
「そんなこと言っても、さっきの不意打ち以外で僕に攻撃を当てられていないみたいだけど?」
「それを言うならお互い様である。それに、戦いに向いていないというのはそういう意味ではないのであるが」
「そうなの? それじゃ、一体どういう──」
余裕そうにガビルを見て笑うシフだったが、その言葉は途中で途切れた。
突如として後ろから何者かに切りつけられ、衝撃を殺すために地面を転がるシフ。
見れば、ゴブタが小刀を片手にシフの後ろをとっていた。
どうやったかは分からないが、何かしらの方法で気が付かれないように隠れていたのだろう。
そういえば途中から姿を見てなかったなぁ、などと考えつつ切られた箇所から僅かに血を流しながら、シフは面白そうに笑い声を上げた。
「うぇ?! 完全に意識外から切ったはずなのに、なんでそれしかダメージを負わないんすか!」
「あはは! 後ろをとっても完全に気配を消してないんじゃバレちゃうよ! って言っても、切られる瞬間まで気がつけなかったけど。ねぇ、今のどうやったの?!」
「それは企業秘密っす! 教えたら不利になるっすからね!」
「えー、けちん坊……ところで、企業秘密ってどういう意味?」
「それはリムル様に聞いてほしい、ッス!」
ぐっとためを作った後、ゴブタはガビルと共にシフへと攻撃をしかける。
ゴブタの切り払いを避けてお返しとばかりにかみつこうとしたシフだったが、邪魔をするようにガビルの槍が割り込んできたためにやむなく回避に移った。
そして、体勢を立て直せば既にゴブタが小刀で切り込んでくるために、シフは一方的な防戦を余儀なくされた。
小回りのきくゴブタが敵を攪乱し、ゴブタに生まれる隙をガビルが埋める。
事前に何の打ち合わせもなかったが、ゴブタはライダーとして牙狼族と、ガビルは戦士として同族と連携をとる練習を積んでいたために、二人は息の合った攻防でシフに反撃を許さなかった。
一方のシフも、反撃こそ出来ないものの全ての攻撃を避け続け、未だに不意打ち以外で受けた傷は一つもない。
互いに決め手に欠けるまま打ち合いは十分にも及んだが、ガビルの槍による薙ぎ払いをシフが柄を踏み台に回避し距離をとったために、両者は再び睨み合う形になった。
「ちょっと! 僕にも攻撃くらいさせてよ!」
「冗談じゃないっす。なんで態々敵に有利になるように仕向けなきゃいけないんすか!」
「だって避けてばっかりじゃ面白くないんだもん!」
「あんたは駄々っ子っすか! 大体、まだ遊び感覚でやってるんすか?!」
「最初に遊ぼうって言ったよね?」
「よね、じゃないっす! こっちは最初っから必死っすよ!」
ぷんすか怒るゴブタと、その横で未だ油断なく槍を構えているガビルを見つつ、シフはじゃぁと口を開いた。
「もう遊びは終わりにする? 僕は遊び足りないんだけど……」
「……で、出来れば穏便に済ます方法はないっすかね?」
「うーん……まぁ、仕方がないよね!」
「何がっすか?! っていうかおいらの話し聞いてないっすね!」
ぎゃあぎゃあと騒ぐゴブタを尻目に、シフはそっと目を閉じて立ちすくんだ。
それに対してゴブタが更に何かを言いつのろうとしたとき、その肩をガビルが掴む。
「待つのである。少々様子がおかしい……警戒した方が良いのである」
「様子っすか? 特に変なところはないと思うっすけど……」
「先程あのものは遊びは終わりと言ったのである。と言うことはつまり、先程までは本気ではなくこれから本気を出すかもしれないと言うことであろう。ならば、警戒した方が良いのである」
「う……確かにそうっすね……」
ガビルの言うことももっともだと思い、ゴブタはシフに対して警戒を怠らないように努める。
仮に突然攻撃してこようとも、それに対処できる程度には警戒をしていると
だが──
「ちょ……なんすか、それ。反則じゃないっすか……?」
異変はすぐに訪れた。
シフの周囲の空気がはじけ、体毛がざわりと逆立ち始める。
小さかったはずの体は徐々に大きくなり、体の成長に伴い眉間から角のようなものが生える。
更に体毛の色が眩い金の色となり、その体毛をほとばしる電流が覆った。
変化が完全に止まった頃、そこにシフの面影は残って居らず、ゴブタ達の前に立つのは何か別の生き物。
ゆらり、とその生き物が目を見開いた瞬間、ゴブタとガビルの体は何かに縛られたように動かなくなった。
そして、二人は察する。彼我の圧倒的な力の差を。
(なっ……あり得ないっす! なんすかこの力の大きさは……下手したらリムル様よりも……?!)
圧倒的な力の差。それはかつて、リムルが初めてゴブタ達の前に姿を現したときのような。いや、更にそれ以上の絶望的な格差。
鋭い眼光に射竦められ、ゴブタの中からは完全に戦意というものが喪失していた。
襲い来る虚無感。そしてこの絶望感。
寧ろ、気を失わないだけでも褒められて良いレベルなのだ。
最早、戦うなどと言う道は──
「ぬ……おおぉぉおおおおーーーーーッ!」
「──え?」
突如聞こえてきた声に、ゴブタは慌てて振り返った。
そこに立っていたのは、正に戦士としてのガビル。
死を前に、彼我との圧倒的な戦力の差をしっかりと把握しながらも、それでもなお立ち向かわんとする心意気。
声を張り上げ、己を鼓舞してまで屈しまいとするその姿を見て、ゴブタの中に再び戦意がよみがえる。
(そうっす……やられる前に、せめて一矢でも報いるっすッ!)
ガビルに奮起され、ゴブタもまたシフへと身構える。
その様子を見ていたシフは、すっと目を細めると低い声で何かを呟いた。
その声は、直後に轟き始めた雷鳴によってゴブタ達の耳に入ることはなかった。
しかし、注意深くシフのことを観察していた二人は気が付いた。その口角が釣り上がっていたことに。
そして、何を言わんとしていたのかも。
「ありがとう。また遊ぼうね……」
シフの体を覆っていた電流がはじけ、その威力と音を増していく。
そして、地面を砕かんばかりに踏み出された力強い一歩は、その身を視認すら困難なスピードで前へと押しやる。
雷をまとい、一直線に進む様は一筋の
「────────ッ!!」
均衡は一瞬も続かなかった。
元々力の差は歴然。誰が見ても、ゴブタ達に勝ち目などなかったのだから。
二人の視界が白く染め上げられる。色が抜け落ちていく。
そして──
あとがきに転生する?
〉Yes
No
ミク・ヒグラシ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『神話召異』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『
スキル──『武器習熟』
耐性──『精神攻撃無効』『状態異常耐性』
──────────
カイ
種族──
加護──???
称号──
魔法──『黒き稲妻』『黒雷之豪雨』
ユニークスキル──『
エクストラスキル──『影移動』『思念伝達』『魔力感知』『粉塵操作』
耐性──『物理攻撃耐性』『精神攻撃耐性』『状態異常耐性』『自然影響耐性』
──────────
シフ
種族──牙狼族(???)
加護──???
称号──
ユニークスキル──『
─────────
シロガネ
種族──オーガ(???)
加護──???
称号──