やはり俺の青春ラブコメは続いていき、間違う   作:遊哉

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一色いろはルートEND


37-3 いっぱいの色に染められて

もう、足は自然とそこへ向かっていた。

 

正直、何を考えてるか分からない奴だった。

葉山に告白して、葉山のことが好きとか言ってたのに、俺を誘惑するような台詞ばかり言うし、

大学もなぜか俺と同じ学部までくるという行動。

勘違いにしたいけど、出来ない、いやしたくない感情が俺の中をだんだんと渦巻いていた。

 

 

そして、その何を考えてるか分からん奴にどんどんと心を奪われてしまった俺も何を考えてるか分からない奴の仲間入りである。

 

目的の教室にたどり着いた俺はその扉を開けた。

そこにいた彼女は、机の上で頬杖をつきながら何かの包みを見ていた。

 

「一色」

 

そう呼ぶと、俺の方を向いて、驚いている。

 

「え、えーと……お久しぶりです、先輩」

 

「おう、その……俺の気持ちを言いに来た。」

 

そういうと、一色は少し、悲しそうな顔をしたと思うと、一転笑顔になった。

 

「残念ですが、私から言わせて下さい。自分からもうすることもないでしょうから。」

 

どういう意味だ?

もう、俺と別れるつもりはないってことか?

 

「まぁ、お前がそうならいいが……」

 

「はい、じゃあ言いますね」

 

息を整えている一色、うむその仕草すらあざとい。

 

「ひねくれてるし、顔なんて葉山先輩の方がカッコいいです。私のことあざといって言うし、ほかの女の人たぶらかすし、暗いし、将来が安泰してるか分からないし……先輩はわるいとこだらけです。」

 

「おい」

 

言い過ぎだ。

 

「でも、そんな欠点だらけの先輩のことが好きです。私も偽物じゃない、本物が欲しいです。」

 

こいつの真面目な顔は久しぶりに見たかもな。

あざといとかいつもだけど、素のこいつは意外と真面目なんだよな。

 

「まぁ、どうであれ、お前の気持ちは伝わったよ。ありがとう。」

 

「では、先輩……生徒会室から出てもらえますか?」

 

え?

 

「え、なんで? 返事してないんだけど……」

 

「いや、結果見えてますし、私、今から号泣する予定なんで……そんなとこ見られたくないですし。あ、これチョコです……どうぞ。では……」

 

「嬉しさのあまり号泣するなら、俺も付き合った方がよくないか?」

 

チョコを受け取り反論する

 

「いや、何処に嬉しい要素があるか教えてほしいんですけど。」

 

あれ、会話がかみ合ってない?

 

「あのな、何か勘違いしているようだが、俺は「すとっぷ!」……はい」

 

「先輩、人生かかってますよ。分かってます?」

 

「いや、もう何の話?」

 

「だから! 私なんて選んでどうするんですか!」

 

「お前、俺のこと好きなんじゃねーの!?」

 

本当にこいつはわかんない奴である。

 

「おい」

 

「嫌です」

 

「いや、話を聞けよ」

 

「絶対に嫌です」

 

かたくなに聞こうとしない。

頬を膨らまして俺の方を向こうとしない。

こういうの柄じゃないんだけど……仕方ないか。さんざん色々やってきたんだ。ここで甲斐性見せられないのはダメだよな。こういうのは一色に感謝だな。

 

一色に近づき、そっと後ろから抱き着く。

 

「せ、せん……ぱい」

 

「あんまりこういうの柄じゃないし、やりたくはなかったけど俺の気持ちはきっちり伝えたい。」

 

「で、でも……先輩……わたし……わたし」

 

「お前の言いたいことはわかってる。でも、俺はお前が好きだから。この気持ちは本物だ。偽物じゃない。」

 

そういうと、一色は俺の胸板のほうに顔を押し付けてきた。

 

「先輩は私の苦悩が分かってないです」

 

「苦悩?」

 

「先輩が卒業して、どれだけ悲しかったか! でも告白もしてないのに諦められるわけないじゃないですか。だから、先輩とおんなじ大学行くために必死に勉強して、1人でもくもくと、それでようやく会えたと思ったら普通に奉仕部の2人をたぶらかせてハーレム作ってるし。」

 

「誤解だ、あいつら以外と絡むことがなかっただけだ。」

 

「私は最初の1年間のアドバンテージがないから遅れてて、それでも負けたくないから頑張って……でもあの2人にはやっぱり敵わないってどうしても心の中で思えちゃって……このバレンタインでチョコ渡したらもうあきらめようって考えてたのに……」

 

「悪かったな、お前の思い通りにならなくて……」

 

「大体、責任とってくださいって言ったじゃないですか! なのにほかの女の子とばっかり鼻の下伸ばして……バカ! バカ!」

 

手をグーにして胸をぽかぽかとたたき始めた。

 

「いや、言われたけど……取るって言ったっけ?」

 

「こういうのは言われただけで成立するんです! それが男なら当然です!」

 

マジか。

ううむ、せっかく両想いなのにすごくご機嫌斜めである。

 

「じゃあ、これからその責任とってもいいか?」

 

「今からですか?」

 

急に上を向く一色

 

「いや、これから先きっちり責任とっていくということだ。」

 

すると、一色は頬を膨らまし

 

「意気地なし」

 

「意気地があったことがないんでな。」

 

それを言うと、ため息をついて一色は

 

「もういいです、その代わり、おんぶしてください。」

 

「なぜ、そこでおんぶになる……」

 

「決まってます、私が腰抜けて立てません」

 

「いや、今立ってるじゃねーか」

 

「いや、もう先輩が支えてくれてないと、今すぐにでもその場で倒れるくらいです。正直、信じられなくて足に力も入らなくて……」

 

どんだけの緊張だったのだろうか。

こいつの苦労はきっと想像を絶するんだよな。

 

「仕方ねーな、ほれ」

 

一色を少し座らせ、背中を向けてやる。

すると、肩に手が回って俺の首でつながった。

 

「先輩……えへへ」

 

身体をくっつけるように強くしがみつかれる

 

「色々当たってる、気を付けろよ。」

 

「先輩だからやってるんですよ。あは」

 

「さっきと違ってずいぶんとご機嫌だな。」

 

「そりゃ、両想いになって機嫌悪くしてどうするんですか。これでも先輩のこと大好きなんですよ。」

 

 

 

 

 

 

俺の青春ラブコメは高校生活を飛び越え、大学でも続いていき、間違いだらけだった。

 

けど、この選択に、この決断に、後悔はない。

 

俺は一色いろはと未来を歩んでいく。

 

これが俺の本物だと信じて。

 

 

 

 

 

 

【after】

 

カーテンの間から指す日差し、しかし今日は会社に行かなくてもいい日である。

久々のごろ寝タイムだ、二度寝しようと思い、布団をもう一度かぶる

すると、廊下からトタトタと足音が聞こえてくる。

 

「パパ! 起きてよ~」

 

娘の有為(うい)である。

ちなみに現在、5歳で年長さんである。

俺の上にマウントをとって身体をゆらす

 

「今日、休日なんだから寝かせてくれよ~」

 

「有為とあそぶってやくそくしたじゃん!」

 

はて、かわいい娘との約束なんて忘れるわけないので、多分そんな約束はない。

 

「待ってくれ、俺はそんな約束してない。」

 

「やくそくはその場で作ってしまえばいいってママが言ってたよ」

 

あいつの仕業か。

ママは大分教育上よろしくないことを教えているらしい。

 

「パパ、起きてよ~」

 

「ママは? ママと遊んで来いよ。」

 

「はーい、ここにいますよ。おはようございます。あなた。」

 

反対側にもうフライパンとおたまを手に持ち、エプロンをつけていた。

 

「お前、いつまでたっても格好があざといな。特にフライパンとおたまあたりがマジあざとい。」

 

「はい、これは娘の教育のためでもあります。」

 

なんの?

 

「え、それの何処に教育のあれがあるの?」

 

「決まってます、ね、有為?」

 

「うん、いちゅうの男のためならしゅだんはえらばずにこびなさいって。」

 

マジ、いろは何を教えてんの?

 

「というわけでパパ遊んで」

 

ん、ということは?

 

「なんだ、有為……パパのことそんな好きか」

 

「うん、大好き」

 

やべ、パパと結婚するって言ってくれないかな。

紙用意しないと……は!

 

いろはさんから出る怒気がとんでもないことに……

 

「いろはさん?」

 

「あなたのバカ!!」

 

おたまを頭に振り落とされた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「痛い、頭マジでいたい」

 

「ふん、娘に欲情とかマジでありえないです。私の旦那様はいつからロリコンになったんでしょうか。」

 

現在、有為が運動したいと言うので市民体育館に来ている。

はぁ、せっかくの休日が……

 

「娘の言葉に嫉妬するお前もどうなんだよ」

 

「ふーんだ、私の乙女心を傷つけた罪は重いですよ」

 

「もう、お前乙女とかいう年ごろ……すみません、なんでもありません」

 

「なら、よかったです。」

 

もう、本当に怖い、俺の妻マジで怖い。

 

「パパ、これやってみたい」

 

有為が指したのは卓球の張り紙だった。

 

「有為、これやりたいの?」

 

「うん、やってみたい」

 

「なんでこれがいいんだ?」

 

「なんとなくだけど……パパに合ってるから」

 

その言葉に俺もいろはも顔を見合わす

 

「そ、そっか、有為……じゃあ受付の人に卓球やりたいですって言ってきてくれる?」

 

「うん!」

 

そういって有為は走り出してしまった。

 

「昔を思い出すな」

 

「はい、本当です、懐かしいですね。あのデート」

 

「じゃあ、今日の夕飯の当番かけて勝負でもするか」

 

「へぇ……あなた良い提案しますね」

 

「今回はお前もちゃんと罰ゲームありだからな」

 

「分かってますよ~ で、絡め手はありですか?」

 

「使うなと言ってもお前絶対に使うだろ。」

 

話をしていると

籠をもった有為が手を振ってこっちを呼んでいる。

 

「パパ! ママ!」

 

「行くか」

 

「はい、行きましょう、先輩」

 

わけのわからない関係は恋人になり、やがて夫婦となった。

この憎たらしい後輩とこれから先も生きていく。

 

これが、あの時、あの場所の青春物語の終着点から続く俺たちの未来

 

俺の幸せはここにある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




~fin~

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