やはり俺の青春ラブコメは続いていき、間違う   作:遊哉

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雪ノ下雪乃ルートEND


37-1 雪解けと一緒に

もう、足はそこへ自然と向かっていた。

 

あいつとの初対面はもう最悪で、正直、あんなに悪口を面と向かって言われたのは初めてだったり、家族以外の女性と喋るというのが久しぶりだったりといろんな思い出がある。

 

あいつとの出会いはそう

 

この空き教室に連れてこられてから始まった。

俺の青春が始まった場所で、高校生活で一番通い詰めた教室

 

扉を開けると俺が会いたかった人物は昔と同じように

同じ位置、同じような所作で椅子に座っていた。

 

 

「お前に会ったのはここが最初だったよな」

 

「そうね、連れてこられた頃はゴミを見る感じで見てたわ」

 

話しかけると彼女もこっちを向いて、返事をしてきた。

 

「俺も、最初に会ったとき性悪女だって思ったわ」

 

嫌味を返すと少し笑いながら彼女は立ち上がり、俺らは自然と何かに導かれるように近寄り始めた。

 

「これ、あなたに渡したくて。バレンタインでしょ。」

 

そう言って彼女は小さい紙袋を渡してきた。

 

「あぁ……ありがとう。その……俺は」

 

「比企谷君……私から言わせてほしい。ずっと言いたかった言葉だから。」

 

彼女の目は真剣だった。

あぁ……そうだな。俺は彼女のこういう部分が羨ましいと思っていたんだな。

憧れで、尊敬の感情だと思っていた。けど、それはあくまで彼女を恋愛の対象として見ていなかったからだ。高嶺の花だと目を背けていて逃げていたからそう思うしかなかった。でも、それはもう違う。彼女の好意に向き合う。

 

 

「比企谷八幡君。あなたのことが好きです。私とお付き合いしてもらえませんか。」

 

 

シンプルな告白だった。

彼女のことだ、きっと色々調べてたんだろう。色々な告白の仕方も調べてきたんだろう。根が真面目だから。

だからこそ、この告白はすごくうれしい。そうに決まってる。彼女が自分で考えてきたのだから。

俺はこの言葉は生涯忘れることはできないだろう。

 

「返事をもらってもいいかしら?」

 

少し、気まずそうに、そして震える声で話す雪ノ下

そうだな。答えは早く言ってしまおう。

 

 

「あぁ、俺もお前のことが好きだ。俺からもよろしくお願いします。」

 

俺もシンプルに明確に。

 

「……っ!」

 

俺の言葉を聞くや否や、雪ノ下は顔を手で抑えて泣き始めてしまった。

 

「おい、大丈夫か」

 

え、告白OKしたのにこの感じなんですか……。俺、何か失敗した?

 

「胸が熱くてたまらないの……こんなにも嬉しいのに……涙しか出てこないの。」

 

顔を上げ、雪ノ下は笑顔を見せてきた。

それを見た俺は無意識に頭に手を乗せていた。

 

「お前、うれし涙って言葉も知らないのか? 国語俺より得意だったろ。」

 

「言語上の意味くらい知ってるわ。でも……こんなものだとも思っていなかったから。」

 

涙を流しながら見せるその笑顔は今まで見た笑顔の中でも一番に輝いて見えた。

そして1時間ほど泣きじゃくる雪ノ下の背中や頭をなでていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「一生分の恥をかいた気分だわ」

 

「おい、何故それを俺に言う……」

 

泣き止むとあまりに自分の言動が恥ずかしくなってしまったのか。それとも行動か。

急に落ち込み始めた。

 

「末代までの恥よ。お嫁に行けなくなったわ。どうしてくれるのかしら?」

 

「どうせ、俺が嫁にもらうんだから何も問題ないだろ。」

 

すると、雪ノ下はどんどんと顔が赤くなっていく。

あれま、頬が真っ赤っかだ。

 

「あなた、どうしてそういう発言を不意打ちでするのかしら、こっちも準備というものがあるのよ。えぇ……あなたはいつもそう………だから…………もう……ばか。」

 

「別に俺は別れるつもりなんてないからな。未来の話をしただけだ。合理的に考えたらそうなるだろ。」

 

すると、彼女はため息をついた。

 

「なんだ、文句でもあるのかよ。こっちだって恥ずかしいんだぞ。」

 

「いえ、あなたという人は本当に……」

 

何かを言いかけるとふと、何かをひらめいたのか。笑みを浮かべ始めた。

あ、地雷踏んだかも……

 

「じゃあ、プロポーズはいつかあなたからしてね、楽しみにしてるから。」

 

はい、あんまり柄でもないこと言うもんじゃないな。

指輪頑張ろう。

 

「いつかな。」

 

「えぇ、いつか。」

 

俺たちは何も言ってはいないが、手を取り合って立ち上がる。

 

「高校時代、私を助けてねって私があなたに言ったことがあったの覚えているかしら。」

 

「まぁ、そんなこともあったな。」

 

確かディスティニーに行ったときだったか。

 

「私は自分がなかった、いや、ないと思ってた。だからほかの人を目標にしなきゃ生きていけなかった。」

 

こいつ自分でそれにきっちり気が付いていたのか。

 

「でも、みんなと勝負して、自分の気持ちを一生懸命に押し出して分かったの、私は私の気持ちをはっきり言えるんだって。私はちゃんと一人の人間として気持ちも感情も出せるんだって。私には自分があるんだって。だからあの時の言葉少し変えさせて頂戴。」

 

息を吸い込んで、吐き出す雪ノ下。

 

「あなたは私が支えるわ、だから私のことを支えてほしい。」

 

何を言い出すかと思えば……そんなの答えなんて決まってるじゃないか。

 

「あぁ、約束だ。」

 

そういうと、彼女は微笑んで

 

「えぇ、期待してるわ。好きよ、比企谷君。」

 

 

 

 

 

俺の青春ラブコメは高校生活を飛び越え、大学でも続いていき、間違いだらけだった。

 

けど、この選択に、この決断に、後悔はない。

 

俺は雪ノ下雪乃と未来を歩んでいく。

 

これが俺の本物だと信じて。

 

 

 

 

 

 

【after】

 

はい、皆様お元気ですか。

私は元気に社畜をして生きております。

 

「はぁ……午後の休みを取れたはいいが、結局遅刻だよ。」

 

タクシーを降り、受付で保護者の札をもらい、首に下げる。

あいつ、もう来てるよな……うわ……後で絶対に怒られる。もうヤダ。

 

目当ての教室を見つけ、外から中をうかがう。

どうやら五十音順での発表らしく、まだ順番は回ってきてないっぽい。

 

ほっと安堵するのもつかの間

中から、俺に向かって冷ややかな目線がぶつかる。

 

はい、すみなせん。仕事が長引きまして……本当なんです。

こっそりと音をたてずに、隣に立つ。

 

「あなた、時間指定したわよね。今日が何の日か分かってる?」

 

雪乃はもうかなり良い位置でビデオカメラを構えている。

あれ、あんなの家にあったっけ?

 

「それ、買ったの?」

 

「最新機種を買ったわ。それでなんで遅れたのかしら?」

 

「はい、重々承知していたんですが、仕事の都合で色々トラブルがあってな。これでもマジで急いだんだぞ。」

 

本当だもん。

この日のためにどれだけのデスマに耐えたと思っているんだ。

それほどまでに重要な日なんだぞ。

 

「来たわよ、静かにしましょう。声が入ってしまうわ」

 

どんだけだ。

まぁ、分からんでもないけどさ。

 

 

「では、次の人読んでください。」

 

「はい!」

 

先生に言われて、元気よく立ち上がる女の子

 

「わたしのりょう親 1年1組 ひき谷 りっ花」

 

そう、今日はとても特別な日

娘、六花の授業参観日である。

 

 

「おとうさんはいつもおしごとから帰ってくるとしんだ魚のような目をしています。」

 

おい、失礼だろ。

というか、誰だ、そんな表現教えたの……

 

「だけど、りっかが大丈夫って言うといつもあたまをなでてくれます。そのなでてくれるのがわたしはすごく好きだから、わたしはおとうさんになでてほしくて、なでてもらうためにわたしはまい日いい子でいようと思ってます。」

 

なんか泣きそう

お父さん、嬉しくて今、涙流しそう。

 

「おかあさんはいつもきれいでやさしいじまんのおかあさんです。でもおこるととってもこわいです。このまえも、おとうさんがせいざしているのを見てるおかあさんはとってもこわかったです。でもいいことをするとほめてくれるのでわたしはほめられるようにまい日いい子でいようと思っています。」

 

そういえば、そんなことあったな。

この前、泥酔したときか。やべ、鳥肌が……

 

「でも、このまえわたしはわるいことをしてしまいました。でもわたしはおこられるのがこわかったけど、おかあさんにあやまりました。そしたらよくいえたねとほめてくれました。はなしをきいたおとうさんそのあともなでてくれました。そのときおとうさんがわるいことはみんなやってしまうかもしれないけど、それをみとめてあやまるのはすごいことだといってくれました。だからおとうさんとおかあさんがえがおでいられるひとにわたしはなりたいです。おわり。」

 

拍手が起こる。

 

「あれは誰の娘だよ……本当に俺とお前の子供か?」

 

こんなの俺、1年生でも言えない。というか恥ずかしくて言えないわ

でも、お父さん嬉しくて今すぐに抱きしめてあげたい。

 

「私とあなたと違って元気のある子だから、私たちみたいなことにはならないわ。でもあなたとそっくりよ。」

 

「どこがだよ。見た目なんかお前そっくりだろ。」

 

「指が5本あるところとか目が2つあるところとかあなたにそっくりよ」

 

それは人間の基本ベースだと思うんですが

 

「冗談よ、けど似ているわ。何処がかは秘密だけど。」

 

そう言って笑顔になった。

 

「はいはい、自分で考えますよ」

 

俺はいつまでたってもこいつには頭があがらない。

それは幾度と月日が流れても、変わらない。

だが、それ以上に俺がこいつを好きでいる気持ちも変わることない。

 

 

これが、あの時、あの場所の青春物語の終着点から続く俺たちの未来

 

俺の幸せはここにある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




~fin~

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