GIRLS und PANZER with Unbreakable Diamond   作:デクシトロポーパー

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みほの『さん』付け。確かにみんな『さん』付けっぽいな……
時間ができ次第、もう一度アニメで確認しよう。
そして色々見聞きしているうち、冷泉殿は(れいぜん)ではなく(れいぜい)だと気がついた。
怖ぇぇーーッ 思い込み超怖ぇぇぇーーーーッ
ここはコミックスか小説を買ってくるべきと見たが、
探したときに限って見つからないモンッスよねェェーーーッ

ご指摘、ありがとうです。


音石明が大洗女子学園に忍び込んだようです(6)

東方仗助(ひがしかた じょうすけ)は嫌と言うほど認識した。

 

(どー考えてもよォー、さっきのやり取り……『矢』で『自殺』してるよなぁー

 康一の時はギリギリ間に合ったが、今度はキズの具合もサッパリわからねー)

 

歩みは止めない、むしろ早めて『4号戦車』に向かいゆく。ただわかっていることは、時間がない。それだけだ。

 

(『シュレディンガーの猫』とかいうヨタ話みてーによぉー

 死体を見ちまうまでは諦めねぇぜ)

 

「え、何……ちょッ」

 

目前にいた、西住みほとかいう隊長をクレイジー・ダイヤモンドで横に蹴り飛ばす。頭からスライディングしていったのはちょっとばかりカワイソーになったが、機銃で穴だらけにされるよりずっとマシだろう。

 

「離れてなよ。流れ弾でやられたくなかったらな」

 

果たして訪れる、主砲同軸機銃の雨あられ。人間一人をたやすくグズグズの肉塊にできる鉄の嵐は、しかしクレイジー・ダイヤモンドなら防げないこともない!

 

「ドララララララ!」

 

弾丸の雨を掻き分けながら仗助は見抜く。この動きはやはり、人質が価値を失っている証拠だ。ならば、なおさら急がねばならないのがツラいところだが、それだけに付け入るスキもあるはずだ。

 

「どうしたよ、音石よぉー。さっきに比べりゃ、ずいぶんへっぴり腰だぜ」

『い、イイ気になってんじゃあねーぞ仗助ェッ

 どのみちてめーのクレイジー・ダイヤモンドじゃあ4号戦車は倒せねーだろーがッ』

 

この小悪党はもはや動揺を隠せないらしい。慢心が、他ならぬ人質の『一撃』で消し飛ばされてしまったのか。今、ヤツを守る盾は何もない。それこそ『4号戦車』しか。

 

「でも、やつの言う通りッ、状況が何も変わってないぞッ!

 『4号戦車』を倒す方法が、ないッ」

 

下がっていた康一が手に汗を握っている。だというのに時間がない。人質の秋山優花里は『血時計』だ。

 

「違うぜ康一。音石がなぜ人質を取ったのか!

 そこんとこ考えりゃあよー、オレの考えそうなことくらいわかるだろーがよ」

 

機銃に撃たれたままではいられないので位置取りを変える。変える位置取りはお膳立てだ。クレイジー・ダイヤモンドには倒せなくとも、それならそれで充分だ。

 

「あっ、ふっ飛んだ西住さんッ、そういえば、いない!」

『ゲッ! まさか……』

 

気づいた音石が『4号戦車』を急旋回させて別方向へ発進するが、そこへ4発きっかり、砲弾が降り注いだ。振り向くと、戦車のうち1台のハッチから、鼻をすりむいた西住みほがプレーリードッグのように顔を出している。

 

「かなり手荒だがよぉー、『運送』させてもらったぜ」

「ヒドイ。ケドそんなこといってるバアイじゃない……次弾、装填急いで」

 

西住みほにとっても。いや、西住みほだからこそ、この状況では最も急ぐ。ダチが死にそうになっていて、最短距離を行かないヤツじゃあない。

振る舞いから人となりを理解した仗助は、彼女の最大の武器のところへサッサと送り届けたというわけだ。隊長の席に戻った彼女はすぐさま射撃を指示。そして大洗女子学園戦車道の全員は、指示などされるまでもなく、万端の準備でその瞬間を待っていたようである。結果、4発はすべて命中。当たり所は今ひとつだったが。

 

『き、キャタピラがッ、チキショオッ!』

 

そのうち一発、小さめの砲弾が『4号戦車』の履帯に突き刺さり、半壊させていた。つまり、遠からずまともな走行が不可能になるということッ!

 

「グレート。狙ってやってやがるぜ、あの方々はよぉぉー

 そして、なるほど……キャタピラだったらブッ壊せそうな気がするよなぁー」

「スゴイよっ、一気に楽勝ムードになってきた!」

『イイ気になるなと言ったぜ、オレぁよッ!』

 

急加速と急減速で位置を変えた『4号戦車』が、そのまま仗助に砲を向けた。電気を操るスタンドならではの全自動は、まだ健在だ。だが、態度を変える必要、まったくなし。

 

「今、降参すりゃあよー。生命だけはカンベンしてやるぜ……

 さっさと人質の子を出しなよ。『なおす』からよぉー」

『立場わかってねェーのかぁーッ? この状況!

 あそこの戦車どもより、オレが引き金引く方がよっぽど早いんだぜぇー』

「そーッスかぁー、降参しねーってことッスねェー」

 

クックックと、思い切りあざけ笑ってやった仗助は、戦車の砲に堂々と五体を向けた。

 

「撃つってんなら、やってみろ! 音石……それで全部わかることだぜ」

『何なんだよ、てめーのその余裕は。いけ好かねぇーぜ』

「できないのかい?」

 

おそらくキレたのだろう。犬が吠えたような奇声を放ち、戦車も吠える。ただし、吠えたのはエンジン音だった。仗助を中心に弧を描いて旋回していく。

 

「以外と冷静じゃねーっスか。戦車道チームとの間にオレをはさむってわけか」

『それだけじゃあねーぜッ仗助ェェーーッ!

 引いてやるぜ引き金をよォォォーーーーーッ』

 

ムッ。

来るか、とばかり身構えると、砲塔がわずかに回る。違和感がある。これは何だ。

 

『ただし仗助、テメーにじゃねぇー』

「ッ、てめぇ!!」

 

主砲ではない、同軸機銃ッ!

気がついた瞬間には機銃の曳光弾が尾を引いていた。仗助からわずかにそれて飛んでいったそれらの群れは、どこに向かったか。答えが出るのもまた一瞬だった。

 

「し、しまっ……ぐっ、ぐああああ~~~!」

「こ、康一ぃぃーーッ」

 

とっさに飛びのいた康一は、しかし間に合わず太ももに大穴を穿たれた。足首にもまともに直撃した。ちぎれ飛ぶ寸前のそれは、もう移動手段の用をなさない。転げた康一は、上半身をばたばたさせながら、地面に赤い線をべったり塗りたくり、ズリズリと物陰に逃れようとする。意識を失ってしまいたい衝撃と激痛を無理矢理こらえているのだろう。

 

『ここまでやらせやがって、てめーが悪いんだぜ仗助』

「う、動くなッ、康一! オレのクレイジー・ダイヤモンドがすぐになおすッ」

『無視こいてんじゃねぇぞ。主砲はてめぇだ。てめぇの分にとってある!

 だが4号戦車の機銃はあの小僧を撃ち続けてやる! ひたすら撃ってやる!

 それに見てみろ、アレをよぉー』

 

音石などに言われるまでもなく聞こえた。戦車の装甲板を蹴った音が、だ。誰かが飛び降り、走ってくる。康一に向かって。

 

「なっ、バカ野郎、戻れッ! おめーが出て何になるってんだ『西住』ッ」

『おあつらえ向きに射線に入ってくるなぁ~、あのメスガキ』

 

西住みほ隊長に触発されたか、周りの戦車も一斉に動いた。『4号戦車』と康一の間に入って、盾になろうとしているようだが間に合うわけがない。

 

『ほら、てめ~も入ってこいよ仗助。康一を助けたいっつーんならな。

 あのメスガキ程度の意地、てめーも見せてみろってんだよ』

 

仗助は身を躍らせた。自分の意思で、主砲の射線に飛び込んだ。防御の姿勢も何もない。クレイジー・ダイヤモンドを盾に飛び込んだだけだった。

 

「ドララララララッ、うぐ!」

 

機銃の弾は、今度は仗助の太ももをかすめていった。康一のところには一発も飛ばさない。それだけが精一杯だった。激痛すら感じない。かすめただけだというのに、ヘビー級ボクサーにブン殴られたような衝撃を感じた。肉がえぐれて血が吹いているのに、痛みが現実に追いついてこない。康一は、これ以上の目に遭っているというのか!

 

『同軸機銃が当たったんなら主砲も当たるってことだよなぁ~、FIRE!』

 

足をやられてくずれ落ちたところに、本命が来た。防御できない状態に陥らせて、そこに戦車砲を叩き込む。やつの計画通りだった、といった所か。だが、負けてやるつもりなどない。巨大な圧力で迫り来る撤甲弾は、瞬時に目前へとやってきた。スタンドがなければ、クレイジー・ダイヤモンドがなければ、感じ取ることなどできないだろう。そんなヒマなくバラバラになって、後には何も残らないのだろう。クレイジー・ダイヤモンドはそこを殴った。砲弾の頭を斜めから撃ち、軌道を大きくそらした。

 

「ぐ、グレート……二度とやりたくねぇ~」

 

砲弾は斜め上にずれ、空の彼方に飛んでいく。周囲には破壊の後もなく、空砲でも撃ったようにしか見えなかっただろう。一瞬遅れて、仗助の右手と、二の腕と、肩とが一斉に血を吹いた。至近距離からの戦車砲はいくらなんでも荷が勝ちすぎた。後ろにばったりと倒れてしまうが、意地で上半身を起こす。これで気絶などしようものなら、康一にとても顔向けできない。目の前には『4号戦車』。何も変わらない。

 

『防ぎ……やがった。なんて奴だ、東方仗助』

「お褒めの言葉、どーもッスよ……ゼェ、ハァ」

『マジに感心しているよ。尊敬するぜ。

 だが、これでシマイだよ仗助』

 

砲塔は未だ、仗助を正面に捉えて離れていない。ちらりと後ろを確認すると、あの西住みほ隊長が康一をおぶってヨタヨタ歩いていた。その横から、二人の女子が顔を真っ青にしながら、康一の足を止血しようとしている。西住みほ隊長の乗っていた戦車から出てきたのだろうか。ともあれ、もう射線からは外れている。

 

『我がレッド・ホット・チリ・ペッパーは、すでに次弾の装填を終えている。

 砲弾はチト重いが、生身でやるよりは断然早いってことだぜ』

「楽しそーッスね音石サン、能書きタレるのがよぉー……」

 

仗助から、クレイジー・ダイヤモンドが消える。どのみち、次に戦車砲を撃たれたら防げない。そこで終わりだ。

 

『もうスタンドを出すのもしんどいってワケか?

 仕方ねェなぁ~~。じゃあこの勝負、シメてやるか』

「勝負をシメる? 冗談キツいぜ音石サンよ」

『何だァそりゃ……命乞いのつもりかい?

 興ざめだよォォォーーー東方仗助ッ』

 

唐突にギターをギャンギャンかき鳴らす音石。外部スピーカーを通じて、ご近所中に響き渡る。大迷惑だ。

 

『葬送曲つきで送ってやるからよぉぉーー

 砲弾の直撃でおサラバしようぜェェェーーーーッ!!

 ハデハデしくアバヨだぜッ FIRE!!』

「ああ、ハデにおサラバだぜ。音石。

 クレイジー・ダイヤモンドは、すでに直しちまってる」

 

空の彼方から戻ってくる感覚を、仗助は感じていた。おそらくは、他の戦車からも見えているだろう。

 

「み、みぽりん、みぽりーん! 『弾』がッ、こっち来るよぉッ!」

「『弾』ッ どこから?」

「いいえ、違います。あれは『4号戦車』の撃った……『戻ってきている』ッ?」

「『戻ってきている』? 戻るって、どこに?」

「『4号戦車』に『弾』が戻るッ、つまり、これはッ」

 

全員の目前を、戻ってきた『弾』が通過していった。『弾』は元の速度と同様に、瞬きのヒマもなく『元の位置』に戻っていった。戻った『弾』はスッポリ『4号戦車』の砲身に収まり……そこに、音石明は引き金を引いた。どうなるか? 3歳児でも考えればわかることだ。ハデな衝撃と爆音が襲い掛かった。ただし、主に『4号戦車』に対して。砲身が粉々に吹っ飛んだ『4号戦車』は、その衝撃で、壊れかかっていた履帯も同時にはじけ飛んでしまい。そして、しめやかに白旗が上った。

『4号戦車』、撃破判定。機能停止。

戦車から白旗が飛び出したなら、それは敗北の証。戦車道の厳然たるルールだった。

 

「壊れたものをなおす能力。メールにはそうありましたが……」

「『4号戦車』が主砲を撃つと、薬莢は『車内』に落ちるよね?

 つまり、撃たれた砲弾を『元通り』に直したのなら」

「砲弾は『4号戦車』に直りに戻った。そーいうこと?

 う~、もうやだッ、ついていけないーッ」

 

やいのやいのと騒ぐ後ろを尻目に、仗助は崩れ落ちた姿勢のまま、乱れたリーゼントを整えなおした。

 

「会長さんによぉー、答え合わせしといてよかったぜ……

 ウロ覚えなんだよホトンド!」

 

 

 

 

To Be Continued ⇒




『4号戦車』は攻略されました。
あとは中身の音石ですが、まだレッチリは健在。
そしてここは巨大パワーの『学園艦』。
早くどうにかしないと、秋山殿の生命がヤバい。
(前回の後書きでネタバレしてるけど……)

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