GIRLS und PANZER with Unbreakable Diamond   作:デクシトロポーパー

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『ノリ』と『勢い』だッ!
続く限りはガンガンやりたい。
思った以上の反響があって舞い上がりましたが、期待に沿えるか。


音石明が大洗女子学園に忍び込んだようです(2)

音石明(おといし あきら)は振り返る。最後の賭けは、どうやらうまくいきそうだ。

 

 

杜王港埠頭。仗助との戦いに敗れた直後。弁慶の立ち往生みたく死んだふりをした音石は密かにスタンドを回収し、最後の機会を待った。それは、杜王大付属女子から盗んだ無反動砲!

学園艦でもない一介の女子高では戦車道の履修など不可能で、同好会が細々と続いているだけだった。しかも、唯一まともに動くのは、戦車ですらない自走無反動砲『オントス』。戦後開発なので高校戦車道のレギュレーションにも合わない。あいつらは一体、何がしたかったんだろうか?

だが、そんなことは音石にはどうでもよかったし興味もなかった。必要なのは『M40無反動砲』。そいつを『6基』、根こそぎブン取ってきた。そして、『レッド・ホット・チリ・ペッパーの本体を探せる』ジジイ、ことジョセフ・ジョースターが乗っているというトラフィック号が近づくのを待ち、轟沈させるのだ。『M40無反動砲』の有効射程はおよそ1km。スポットライフルなんか使わず、もっと遠くから狙い撃ってしまいたかったが、チリ・ペッパーにそこまでの精密動作性はなかった。基本に従うしかない。

結論から言えば、音石は見事、機会をものにしてみせた。有効射程内にやってきたトラフィック号に、合計3発の砲撃を加え、全弾が命中。船体の真ん中に大穴を開けられたトラフィック号は中央から真っ二つに裂け、ひっくり返って沈んでいった。これで勝ったと思ってはならない。ジョセフ・ジョースターの死亡が確認できない以上、今は逃げの一手を決め込むべき。万が一の逃走経路はスデに決めていた。

学園艦! 大洗女子学園!

ここに入れば逃げ場はなくなる。だが、やつらが追ってくるならば!

レッド・ホット・チリ・ペッパーは学園艦のパワープラントを丸ごと吸い取って、まずはあの東方仗助をバラバラに引き裂いて殺す。それから空条承太郎を船内に引き込んでジョセフ・ジョースターと引き離し、ジョセフの方を真っ黒コゲにして殺す。そして、追ってこないというならば。今度はここを自分の城にしてしまうまでだ。『弓と矢』は持っている。かつて虹村形兆がしたように、仲間を増やすのだ。案の定、学園艦から救助船が飛び出してきた。ドサクサに紛れて学園艦に潜入した音石は内部構造を把握すると、まず、真っ先に、スタンド使いを増やしにかかった……

 

 

わかってはいたが、女子高なので女ばかりだ。電線に潜んだチリ・ペッパーは、『矢』が選ぶ人間を探していた。ネズミを射った時に体験として知っている。『矢』は、スタンドの素質を持つものを選んでいるのだ。闇雲に射って人を殺しまくった形兆には、余裕というやつが無さすぎたな。フンと鼻で笑った音石は、そこでようやく『矢』が反応したことに気づく。住宅街で、不恰好なスキップをしている女子高生である。そのまま十字路を曲がったところで電信柱に激突して尻餅をつき、顔を赤くしながら足早に立ち去った……

 

(……『あんなの』をか? 使えそうに見えねェーんだが)

 

ここで射っては目立ちすぎる。チリ・ペッパーは追跡した。たどり着く先は大洗女子学園。土曜日なので休みだが、部活などをしている生徒は少なくない。

 

(そしてこの『メスガキ』、どうやら『戦車道』をやってるのか……

 まともに動くのかァーーーー?)

 

仲間らしき奴らと談笑しながら歩いている会話の内容から読み取るに、そうらしい。一人、異様なテンションの高さで語っているヤツがいて、戦車の話だとはイヤでもわかる。

 

(『オタク』は嫌だねェェーーッ バカの一つ覚えみてーによォォーーッ

 さっさとそのクチ閉じて失せやがれ、邪魔だぜッ)

 

だが、戦車道というのは好都合だった。脅すなりコマすなりして引き込めば、人間をたやすくひき潰す兵器がそっくりそのまま手に入る。それがスタンド使いだというなら、なおのことよし!

『メスガキ』の名前は、西住みほ(にしずみ みほ)。この大洗女子学園の戦車道で、隊長をやっているらしい。最近、聖グロリアーナ女学院と練習試合をして負けたとか。

 

(どうでもいいぜーッ まったくどうでもいいッ!

 肝心なのはッ、このオレのために役に立つかってことだけだからなぁ~~)

 

『メスガキ』がロッカールームに入ったところで、チリ・ペッパーは襲い掛かった。コンセントから飛び出し、背後から一気に『矢』を突き刺す!

 

「え、あっ?……がはッ!!」

 

うなじに刺さった矢はそのまま頭に向かい、脳幹と海馬を串刺しにした。普通ならば即死だ。だが、音石にはわかる。

 

(やはり、こいつはアタリだ)

 

『ギュオオオオン!』

鉄扉を金槌でブッ叩いたかのような手ごたえと反響が音石の手に戻ってきた。もしかすると期待以上の大物かもしれない。『矢』を引っこ抜くと、『メスガキ』はその場にくずれ落ちる。意識は失っていないはず。この場で『仕込み』に入ろうとしたが。

 

「血のにおい……ただごとじゃないッ! みほさん! みほさんッ!」

「待ってよ、華(はな)! どうしたの? 血だって? みぽりんが?」

「とにかく入りましょう! 西住どのォーーーッ!」

「救急車呼ぶならすぐに言え」

 

ロッカールームに、さっきの仲間どもがなだれ込んで来た。あわてて引っ込まなければ、『矢』を発見されるところだった。

 

(今は引き下がるしかない、か……チッ)

 

どうせ血の跡だって見つかることもない。『矢』に選ばれて生き残ったのなら、その時の傷はなぜか巻き戻る。これは音石自身も経験して知っていることだ。何があったのか、当人さえわかるはずもない……

 

「……あれ? みんな、どうしたの?」

「血のにおいって……なんにもないじゃん。みぽりんがズッコケてたダケで」

「おかしい、ですね。確かに、むせ返るみたいな血のにおいが」

「大丈夫ですかぁー西住どの。指、何本に見えます?」

「人騒がせな。私は寝る」

「寝ないのーッ! これから練習!」

「あはは、なんかゴメンね。心配かけちゃって」

「みほさん。一体、何があったんですか?」

「わかんない、けど。首の後ろから『何か』刺されたような……」

 

今はノンキをこいていろ。そのうち存分に役に立ってもらうからな。捨て台詞だけは吐いた気分になって立ち去ろうとした音石だったが。

 

「縁起でもないなぁーッ ただでさえ近くで船が沈められたりしてるのに」

「それなら知っています。小耳にはさんだ所によると、無反動砲でやられただとか!」

「そんな恐ろしいことが……」

「そこまでして沈める船には、一体何が乗っていたんだろうな? 私はそこが気になる……」

「あ、それっぽいことなら聞いてるよ麻子(まこ)。ジョセフ・ジョースターって知ってる?」

「ジョースター不動産の創始者。ニューヨークの不動産王だな。それが?」

「沈められた船に乗ってたんだって。ウチの救助隊に助けられて、今、この学園艦にいるって!」

 

(なん……だとォォォ~~~~~『ジョセフ・ジョースター』!)

 

聞き捨てならぬ名を聞いた。今、ここにいることが確定したというのなら!

すぐにでも殺しに行かなければならない!

チリ・ペッパーは聞き耳を立てる……

 

「小さな船で宮城県まで来て、待ち構えていたように沈められる。不穏だな」

「不動産王ともなると、敵だって多いのかもねぇー」

「正直さっさと降りてほしい。疫病神としか思えない」

「冷泉(れいぜい)さん、そんな言い方って……」

「関わりのない人間のことなんか知らん。身の回りだけでいっぱいいっぱいだ」

「もうすぐ全国大会ですしね。そこは冷泉どのと同意見ですよ」

「関わりないとも限んないよー? あの生徒会長が、こんな機会、逃さないかもよ?」

「ええっと、どういう意味かな。沙織(さおり)さん」

「口説き落としてスポンサーにするってこと! 今頃、生徒会室に拉致監禁して……」

「否定できないあたり何とも言えないですね……」

 

くだらない与太話だ。だが、『確かめる価値はある』!

もうこれ以上の成果は得られないと判断し、チリ・ペッパーを生徒会室近辺に向かわせる。そして見た。

 

(いた……いやがった!)

 

空条承太郎。その隣にいる老人が、ジョセフ・ジョースター!

にっくき東方仗助も、虹村億泰も、広瀬康一も勢ぞろいしている。一緒にいる片眼鏡の女が生徒会長だろうか?

他にもチビ一人に、胸のデカい奴が一人。この様子が何を意味しているか。全員、茶を飲みながら、外に出る気配がない。

 

(ナメやがって! 待ち構えてやがるッ!)

 

明らかにジョセフ・ジョースターを餌にした釣りだった。食いついた瞬間に承太郎が時を止め、よからぬ何かをするのだろう。おそらく、それにハマれば万事休すとなる。もしかしたら、生徒会長とやらもスタンド使いかもしれない。このまま攻撃をしかければ100%敗北だ。

 

(だがよォォーー近寄らず攻撃する手段があるッ

 スデにそいつをオレは発見してるんだぜーーーーッ)

 

音石明自身も、すでに学園艦表層へ移動している。ここの生徒会長と空条承太郎がグルである以上、自分のいるブロックを閉鎖されて追い詰められかねなかったためだ。目指すはひとつ。戦車道の戦車格納庫!

もちろん、身ひとつで乗り込んでは、いかにチリ・ペッパーがあるとはいってもすぐに他の戦車に鎮圧されてしまうだろう。どう取り繕っても、戦車については『ド素人』。だが、それをどうにかする策も、すでにある。何台かある戦車のうち、音石が選んだのは『4号戦車』。理由としては、ひとつは外見が一般的な戦車にもっとも近く、『曲射』に適していると感じたこと。そして、もうひとつは。

 

「わわっ! 何ですかあなたは! いきなり乗ってきて何をやってるんですかぁーーッ」

 

さっきの『メスガキ』と一緒にいた『戦車オタク』がうまいこと中にいたためだ。至れり尽くせりなことに、中に砲弾を運び込んだ後だ。

 

「う・る・せェェェんだよぉぉ~~ッ」

「ふぇっ? あ、アガガガガガガガガッッ!!」

 

脳天からチリ・ペッパーの電撃をお見舞いされた『戦車オタク』は、電気椅子にかけられたみたいにガクガク痙攣しながら崩れ落ちた。元からまとまりの悪いクセッ毛が残らず逆立って、目をひん剥いている。中にあったロープで手早く『戦車オタク』を縛り上げて車内の脇に蹴飛ばすと、チリ・ペッパーで『4号戦車』の非常時用操作系統を発見し、乗っ取った。『戦車道』の戦車は第二次世界大戦当時のもの。当然コンピュータ制御などされているワケがないが、中の人間が全員気絶した場合などに備えて、遠隔操縦できるよう後付で配線されている。音石は元々、これに目をつけていたのだ!

 

「ンじゃま、パンツァー・フォー、としゃれ込ませてもらうぜぇ~~」

『パンツァー・フォー!!』

 

ギターをかき鳴らし、ギターに『パンツァー・フォー』と喋らせる絶技を

さらりとやってのけた音石は、ハッチを閉じ『4号戦車』を急発進させた。

 

 

 

 

To Be Continued ⇒

 

 




展開に従うがまま、みぽりんの脳天に『矢』をブッ刺してしまった。
とはいえ多分、スタンドが見えるようになる程度の意味しか持たないだろうなぁ……
ところで、華さんが38tを見つけたとき、噴上裕也を思い出したのは自分だけではないはず。

非常時用操作系統うんぬんは捏造設定。

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