GIRLS und PANZER with Unbreakable Diamond   作:デクシトロポーパー

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一週間空いてしまいました……面目ないッス。
その代わりになるかはわかりませんが、ちょっと長め。
仗助視点でお送りします。


透明な赤ちゃんです!(5)

東方仗助(ひがしかた じょうすけ)は、事の顛末を聞き取っていた。

 

「なるほどな……そりゃ無理もねェーってヤツだぜ。

 そうもなるってモンだよな」

「早く直してあげてください東方どのッ、

 大ケガしてるのは確かなんですよぅ」

 

まくし立てるように説明した秋山が急かしてくる。透明では容態がほとんどわからない。もしかしたら数分後には死ぬかもしれないところを、長時間放置などしたくないだろう。ましてやこんな状態では医者にかかるなど不可能。仗助以外に頼れるものなしと言ったところか。

 

「わかってるぜ秋山。だがよぉー、このままじゃなおせねぇ」

「なぜですかッ、まさか透明だから?」

「なおった姿が想像できねーのはヤバい。

 どんな形になおっちまうかわかんねーぞ」

 

クレイジー・ダイヤモンドも無条件で万能にものをなおせるワケではない。髪型をバカにされたりして極度にキレてる真っ最中など『相手が見えていない』ケースでは、変な形に直したり、異物を巻き込んで融合させてしまったりする可能性が付きまとう。透明なまま治したとして、治った姿が元通りのそれである保証が、ない。

 

「まだるっこしいコトしてんじゃあねェーぞ仗助ェーッ!」

 

後ろに控えていた億泰が、透明なケガ人の前に乗り込んできた。そしてザ・ハンドで近くの街路樹の根元から土を巻き上げる。

 

「見えねぇーっつーんならよぉぉーー、

 見えるようにしちまえッてんだよ!

 紙吹雪が見えてんだぜェェェーーーーー」

 

巻き上げた土を、透明なケガ人にぶっかける。盛られた土と砂煙で、形がクッキリと浮かび上がった。それだけで終わらず、ザ・ハンドは握り締めた土をボスボスと叩きつけるように塗りたくっていく。

 

「こーやって! 全身くまなく土を塗り広げてやりゃあよォォーー!」

「も、もういいぜ億泰ッ、だいたいわかった!」

 

大洗女子学園の制服を着た、おかっぱ少女の輪郭がはっきりわかれば充分だ。腕があらぬ方向に捻じ曲がっている。明らかに骨折だ。クレイジー・ダイヤモンドは、少女の影を元のあるべき姿に修復していく。

 

「セッカチなヤローだなぁーオメーよぉー。

 だがグレート。どうにか治せたぜ。

 チョットばかし土を巻き込んだかも知れねぇーが!

 そんくらいなら、しばらくすりゃ『代謝』で出て行く」

「頭使うンだぜぇぇー、この億泰さんだってよぉー」

「でかした。すまん」

 

同じく一緒に来ていた麻子が、億泰に4文字。それとこちらに3文字の言葉だけを投げると、元通りの形になった少女の影に歩み寄り、頬のあたりをパンパンと2回張った。

 

「起きろ、起きろ、そど子。昼を通り越して夕方が近いぞ」

「ハッ? れ、冷泉麻子ッ?

 そ、それと後ろにいるのは……『ゴジラ』と『キングギドラ』ッ

 『モスラ』もいるなんてッ」

「……は? 『ゴジラ』? 『キングギドラ』?」

「そこの不良二人のことよッ!

 74アイスでアナタ達がツルんでたのは知ってるわよ。

 警戒レベルMAXなのよッ、不良オブ不良ッ」

 

起きるなり、いきなりまくし立てるおかっぱに、仗助は億泰と顔を見合わせた。

 

「ズイブンなこと言うッスねぇー、まあ、わかるけど」

「『ゴジラ』と『キングギドラ』ってよぉぉー、オレはドッチだよ!」

「というか、『モスラ』? ぼく、もしかして『モスラ』?

 イト吐くの?」

 

ちょっぴりショックを受けたような顔をしている康一を見て、不覚にも一番シックリ来るなと思ってしまった仗助であった。もちろん『モスラ』が。

 

…………………………

 

「お礼は言っておきます。ケガが治ってるのはホントみたいだしッ」

「気にしねーでいいッスよ。えっと、そど子っつったっけ」

「そど子じゃなーいッ! 園みどり子!

 次言ったら、アナタの名前『ゴジラ』で決定するからね」

「オレが『ゴジラ』だったのね……あ、東方仗助ッス」

 

結局、説明にそれなりの時間を割く羽目になった。一般人相手にスタンドのことを説明するのもしんどいが、今回の透明にするスタンドに、ものをなおすクレイジー・ダイヤモンドと、何が起こっているのか比較的わかりやすい能力だったおかげで、説明が済んでみれば、割と素直にうなずいてくれた。

 

「承太郎さんも来てくださいましたし、そろそろ言い出しますけど……

 西住どのが、赤ちゃんと一緒に軽トラックの荷台に乗って、

 行ってしまったようなんですがッ!」

 

必死で口を挟む機会を伺っていたらしい秋山が、今さっき合流してきた承太郎をチラリと見ながら場に割り込みをかけてくる。そう、この場の危機は去ったというだけで、まだスタンドの脅威は継続中だ。そど子を見やる。土を塗られた部分以外は未だに透明だからわかりにくいが、決まりの悪い顔をしているようだった。

 

「まいったよねぇー、

 『右折待ち』だから多分、海に向かったってくらいしかわからないよ」

「土地勘がないと、どうしようもないですね」

 

沙織も華も、秋山同様、どこに行ったかなど、わかりようもないらしい。ケータイも鳴らしてみたが、反応がないという。土地勘がある仗助にしたところで、車一台の行き先を完璧に特定など、やりようがないが。サマーシーズン以外に海に向かう軽トラックに、仗助は心当たりがあった。

 

「秋山よぉー。

 『軽トラック』が『右折』していった、っつったよなぁー」

「はい、東方どの。その通りですけど。何か心当たりが?」

「あるぜ、心当たりがよ……警官だったッスからなぁー、

 オレのじいちゃんがよぉ~」

 

心当たりを、なるべく急いで、かいつまんで話す仗助。サマーシーズンには人でごった返す杜王町とその郊外だが、それ以外の時期では、人がほとんどいない場所も数多い。

 

「そんなトコロを狙ってよぉー、誰が何しに来ると思うよ?」

「恋人同士がヒミツの密会に……ゴメンナサイフザケました忘れて」

 

場違いなコトを抜かすな、という視線が集中したのに耐えられなかったのか、沙織は言いかけた言葉を引っ込め、両手を挙げて頭を下げる。

 

「ソッチの可能性もなくはねぇーし、

 ソレはソレで気マズイ事件になるだろーがよ。

 答えを言うぜ……」

「『死体』だな。ヤクザが『死体』を捨てに来る」

 

承太郎が、かぶせるように答えを言った。正解である。

 

「『焼く』なり『刻む』なりして、

 原型がわからないまでに処理した『死体』の、最終的な廃棄先だな。

 弱小の犯罪組織が、専門業者を用意できずにやる……

 いずれ足がつくパターンがほとんどだがな」

「み、みぽりんが……ソレに、乗り込んだって言うんですか?

 承太郎さぁん」

「そいつを聞くならオレだろうがよ沙織ッ

 オレに『そうだ』と断言できるワケじゃあねーが、

 『そうだ』としたらよぉぉーー、こいつは生死に関わってくるぜ」

 

気楽さが吹っ飛んでしまった沙織がこちらを見た。じゃあどうするのよ、と顔に書いてある。傍らの華が、それを直接言葉にした。

 

「どうしますか、私達はッ」

「他の可能性はまず捨てるぜ。追いきれねえし、きりがねえッ

 オレ達は今言った『最悪』を追う!

 違うっつーんなら、それはそれでいい!」

「チョット待ってよ仗助くん!

 他の可能性を捨てちゃったら、違ってた時!

 完ッペキ手がかりゼロになるよッ」

 

康一の突っ込みはもっともだ。むしろそれを待っていたとも言える。ここにいる土まみれの透明風紀委員に向き合った。

 

「園さんよぉー、風紀委員を動かせるかい?

 西住の行方について聞き込みができるんなら、ぜひ頼みてえんだがよ」

「引き受けます。結果的に私のせいだし、こうなったの。

 『荷台がおかしなコトになってる軽トラック』について聞き込めばいいわね」

「グレート! 頼んだぜ。オレ達が空振った時の命綱だからよ~」

「待ってなさい……アッ、ケータイが透明! どうすりゃいいの?」

 

意気込みながら引き受けてくれたそど子だったが、透明なケータイなんか使い物になるわけがなかった。それ以前に、車にハネられた衝撃で壊れているかもしれない。承太郎と華が、ほぼ同時に懐に手をやりケータイを取り出す。

 

「俺のを使った方がいいだろうな。

 君は戦車道関係者だ。連絡がそっちに来るかもしれん」

「確かに。ではお願いします」

 

承太郎は頷いて、そど子にケータイを差し出した。頭を下げたそど子はうやうやしくケータイを受け取り、おそるおそる番号を押し始める。

 

「というわけでよ。他の可能性は園さんに任せる」

「スピードワゴン財団にも話してみよう。

 透明にされて事故に遭う人間が、また出る可能性があるからな」

「千人力ッスよ、承太郎さん」

 

思わずウインクしてサムズアップの仗助である。望外の協力と言えた。大人の専門家が関わってくれるなら、そちらもそちらで遠からず痕跡を発見できる。

 

「『作戦』を言うぜッ!

 オレ達は今すぐ杜王町郊外の別荘地帯に向かう。

 オメーらには戦車道の試合会場って言った方がわかりやすいかな」

 

全員がうなずいたのを確認して、話を続ける。置いてけぼりが出たらヤバイ。

 

「そこから先は二手に分かれるぜ。

 『タクシー組』と『バイク組』に分けるぜッ。

 まず『タクシー組』からだ……

 『タクシー組』は海側の道路を進みながら周りを探ってくれ」

「見つけたら……『最悪の場合』だったら、どうするの。

 考えたくないけどさぁーッ、

 みぽりんがヒドイ目に遭わされようとしてるトコに出くわしたら!」

 

沙織が聞いてくる。『タクシー組』に回ることを今の時点ですでに確信している反応だ。

 

「そん時はよー、億泰、頼むぜ」

「あれ、オレ? じゃあオレのバイクはよぉー、どうなるんだ?」

「バイクにはオレと、もう一人が乗る!

 ヤクザなんかを相手にして力任せにブッ叩けるのは

 オレとオメーだけだからよ。

 オメーには『タクシー組』に残ってもらいてえ」

「お、おう。そういう事ならよぉー、わかったぜ」

 

億泰が納得したのに頷いて、仗助はさらに続ける。『タクシー組』の目的は、より広域を探す『バイク組』を補うことだ。『死体』を捨てに来る可能性が高い海沿いを念入りに調査することで、見逃し、取りこぼしを回避する。

 

「すると、『バイク組』はスタンド使いですね?

 それも、射程が長い……広瀬さんのエコーズか、

 優花里さんのムーンライダーズ」

「大正解だぜ、華さんよ。

 そして普通に考えてよぉー、ムーンライダーズを頼らねー手はねえッ

 射程距離がエコーズの20倍で、しかも集団で探せるぜ。

 コイツがマネできるスタンド使いは、オレが知る限りいねぇーぜッ」

 

一息で言い切って、秋山の方を見る。わずかにたじろぎ、不安を瞳に浮かべる秋山。承太郎が、とくに視線を向かわせることもなく言った。

 

「単純にスタンドの射程距離で言うなら、4km。

 これが、俺が知る限り最も長い。

 だが、ほとんど暗殺特化のスタンドでな。

 ものを探し回るには向かないだろう」

「な、何が、言いたいんですかぁ?……承太郎さん」

「俺のスタープラチナにも、仗助のクレイジーダイヤモンドにも。

 そして今言ったスタンド使いにも出来ないことが、君には出来る。

 単純な事実だな。それだけだ」

 

それだけ言って本当に黙ってしまう承太郎。精神論でも何でもない単純な事実であるだけに、秋山も受け入れざるを得ないだろう。理解したなら、あとは納得だ。

 

「頼む、秋山!

 オレのダチを探すのを手伝ってくれ!

 ヤベェー目に遭ってるかも知れねぇからよッ」

 

友達になってくれませんか、と言われて、その手をとったのだ。だから、白々しいかも知れないが、ここでは言わせてもらう。明らかに不安を顔に浮かべていた秋山は、見る見るうちにムカついた顔に変わる。

 

「……なんで、あなたに頭を下げられなくっちゃあいけないんですか?」

「いらねーっつーんならよぉー、そう言えよな。わかんねーからよぉー」

「西住どのがあなたにとって友達だって言うのなら、

 私にとっては、もっと友達です!

 あなたに頭下げられるまでもないんですッ」

 

ムーンライダーズが秋山の足元に展開し、一斉に銃を掲げた。おそらくは、本人の意思だ。秋山の意思と、スタンドの意思の両方が一致している。

 

「西住どのは、私が探します。私の意志で探すんですッ」

「グレートだぜ、秋山。そいつが聞きたかった」

 

闘志を燃やすように上目遣いでにらんでいた秋山が、二秒ほど停止してからハッとなり、表情が、また性質の違う怒りに変わった。

 

「あっ、の……ノセましたね東方どのッ!」

「こんだけ見事にノッてくれるとよぉぉー、快感だぜ」

「ズルイですよぉ!

 こんなの、ノセられるしかないじゃあないですかぁッ」

「腹は決まったろ? 行くぜ、時間を空けたくねぇーからよ」

 

ムスッとして、まだ何か言いたそうにしていた秋山だったが、それを聞いてやるのは後だ。視線が集まっていたので、もう全員わかりきっていることだろうが、言うだけは言っておく。

 

「『バイク組』は、オレと秋山だ。

 オレがバイクを転がして、秋山のムーンライダーズが広範囲を探すッ!

 じいちゃんから聞いてたポイントはいくつかある。

 そこを念入りに潰して回るぜ。

 それでも見つからなかったら、来た道を戻って『タクシー組』に合流する」

 

もちろん、警察の情報を直接握っているわけではない。じいちゃんにも守秘義務というヤツがあったはず。

『あのあたりには近づくなよ、マジにヤバイのが来るからなッ』

そう言っていたのを思い出して、そこを中心に探っていくというだけの話。

 

「全員、やることはわかったよな?

 すぐにでも出発するぜ」

「はいっ、東方どの。西住どのがいれば、作戦名もつくんですけど……」

「後でつけてもらえばいいだろーがよ、そのための作戦だろ?」

 

力強く頷いた秋山がついてくる。億泰が投げてきたキーを受け取り、足早に虹村家に向かうことにする。後ろから、承太郎が言ってくれた。

 

「こういう時のために、車を一台確保している。俺達はそれを使おう。

 タクシーの運転手にヤタラメッタラ注文つけなくてもいいようにな……

 お前たちは二人乗りだ。警察には用心しておけ」

「マジに助かるッスよ、承太郎さん!」

 

『タクシー組』に承太郎がいてくれる。それだけで何の心配もいらない。振り向いて頭を下げ、小走りになる。一瞬遅れて、秋山も同じ動作をなぞった。それからおよそ十分後。バイクの後ろに秋山を乗せ、海岸線に向かって速度を上げ始めている。虹村家までは走れば五分もかからない距離であり、バイクをさっさと引っ張り出して、さっさと乗ったのだ。

 

「せ、戦車よりも、やっぱり安定性が……

 無限軌道のバイクはないんでしょーかッ!

 そ、そう、ケッテンクラートみたいなッ」

「ヒマなこと言ってんじゃあねぇーぞ秋山ッ!

 ムーンライダーズはよぉー、ついてきてるか?」

 

背中にひっついてテンパッている秋山を、カワイソーだが急かすしかない。探索については、完全にコイツ頼りなのだから。

 

「は……はいッ、『時速60km前後』なら、問題なくついてこられます。

 バテたりしている様子も、とくにないですねぇ」

「グレート。つまり問題ねぇーって事だな。

 あとはスタンド同士の連絡さえ上手くいきゃあよォォー」

「それですけど、銃声を使います。

 どうせスタンド使いにしか聞こえないんですからッ。

 異常なしは二分おきに一発。異常ありなら即座に三発!

 非常事態発生中なら四発!

 だから別命あるまで攻撃行動は一切禁止ですよッ」

「何人かの銃声が混じっちまってワカンなくなる可能性ねーか?」

「そのために6方向に分けるんです。方角で聞き分けます。

 さらに言うなら、ライダーズ1を、そのための備えにします!

 最悪、ライダーズ1に確認に行かせるってコトですよッ」

「そーいうことなら、それで行こうぜ。ハグレることもなさそうだしな」

「それなら作戦開始ですよッ、GO! GO! GO!」

 

ムーンライダーズが隊伍を崩し、前に後ろにと散っていく。自分と秋山の乗ったバイクを中心に、およそ200m離れて各自が探索を行う形だ。そして六分……つまり、異常なしの合図三発ごとに、ライダーズ1から合図の一発を撃ち、集合。情報を共有、検討してから再出発を繰り返す計画である。当然、秋山本人と仗助も探索に参加する。バイクを転がしながら、海岸線のみならず無人の家も注意深く見る。異常なしの合図が三度出たあたりで、秋山のケータイに電話がかかった。そど子からだ。

 

「透明化が解除された、ですってぇ?」

 

現時点では、凶報と取るしかない。スタンドが解除されるには、本体が自分の意志で解除するか、何らかの理由でスタンドを維持できなくなるかの二つに一つだ。そして後者が起こる主な理由は……本体の死。そうなったとは考えたくない。そうなったとすれば、一緒にいる西住も、ほぼ確実に巻き込まれている。だが、死んだのではなく気絶してスタンドが解除されたとしても、危機的な状況にいるのは変わりない。これはかなり急がなければならなくなった。

 

「バイク止めて下さい、東方どの。

 ちょうど集合時刻ですから、ここで話します」

 

通話を終えた秋山に従ってバイクを止めると、ムーンライダーズも集まってくる。秋山が、ポケットの中に持っていた地図を広げた。

 

「『荷台がポッカリえぐれた軽トラック』が、

 勾当台二丁目の大通りで、かなりの人数に目撃されています。

 聞き込みなんかするまでもなく、風紀委員自身が目撃してたそうです」

「勾当台二丁目ぇ~ッ!? 全然ちげぇー方角じゃあねーかッ!」

 

勾当台二丁目は、杜王町のおよそ中心、やや北にあたる地域。当初、軽トラックが向かっていると想定した方角からすると、東西反対である。

 

「ですがそっちでも、別荘地帯の方に行ったって証言があったそうですよ。

 勾当台二丁目から別荘地帯に向かう大通りは、ほら、ひとつです」

 

地図を指す秋山の指先を追う。大通りは杜王町の北にある山に近づいていき、山の直前でT字に分かれる。そこを右に曲がれば、まっすぐ別荘地帯に入っていける。地元人である仗助には、どういう道路を通っているかも想像できた。

 

「『ポヨヨン岬』かよ」

「ハイ? なんですってぇー?」

「ちょいとオレ達……主に康一に因縁のある場所があってだな。

 まず念入りに探すとしたらよー、ココだろうぜ」

 

じいちゃんから聞いていたポイントのひとつが、その少し先にある。状況証拠的にも、可能性が高くなってきた。

 

「乗りなよ。そこまで飛ばすぜ。すぐソコだからよぉー」

「ンッ、待ってください。メール……西住どのッ!」

 

横からケータイを覗き込む。文字が見えた。

『助けて 戦車道 会場』

送り主は当然、『西住殿』。見間違いようもなかった。

 

「グレート……

 こんな前後のつながりも考えてねー文章を送ってくるってことはよー。

 かなりセッパツマッた状況に追い詰められちまってるぜ」

「助けてくださいッ、東方どのッ!」

「ならオレも言うぜ秋山よぉー、助けてくれッ!

 オレのクレイジー・ダイヤモンドの射程じゃあどうにもならねえッ

 西住を探し当ててくれッ、秋山! おめーが頼りなんだよ」

 

恐怖でいっぱいになりかけた秋山の表情が、半泣き程度にまで持ち直したのを確認してから、仗助は、一個ずつ一個ずつ、材料を投げて提示する。

 

「さっきの電話で軽トラックの針路はつかんだ。

 そして、西住に危険が迫ってることもわかった。

 さらに! 少なくともケータイが打てる。透明にはなってねぇ!

 つまりよ、どういう危険か見えてるってことだぜ。

 交通事故か、追われてるのか、そいつはわかんねーけどよぉー、『目立つ』ぜ。

 こんな誰もいねートコで、危険なコトが起こりゃあよー」

「見えている『危険』、見えている『人間』……確かに探せますッ!

 空き家の中を気をつける必要はあるけど、

 片っ端から窓をライダーズで蹴破ってやります。

 西住どのを追ってるような不審者がいれば、それで絶対に反応する!

 発見したら、さっきまでのルールと同じ。撃って知らせます!」

 

秋山は受け取った材料を組み立てて、戦い方を作った。ある意味で、あの空条承太郎に通じるような冷静な判断力を、コイツも持っているのだ。

恐怖に押しつぶされなければ、戦える。また逆に、戦えるなら恐怖せずに済む。

 

「乗れよ、秋山ッ!

 ここからはよぉ~、シラミつぶしだぜ!」

「必ず、必ず見つけますよ西住どのォーッ

 それまで持ちこたえてくださいッ!」

 

二人してバイクにまたがり再出発。それからわずか二分後に、西住の『いた』場所を発見するなどと、この時点では考えているわけもなかった。

 

 

 

 

To Be Continued ⇒




書きながら、この状況でみぽりんを探し出すのに使えそうな
スタンドを考えてました。

・ハーミット・パープル
・トト神
・ハーヴェスト
・ムーディ・ブルース

ものを探せるスタンドって案外少ない。

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