GIRLS und PANZER with Unbreakable Diamond   作:デクシトロポーパー

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準備期間もなくイキナリメインタイトルを変更してしまい、スミマセンでした。お気に入りしていただいてる皆さんからしてみれば、お気に入りした作品のタイトルがいきなり変わったワケで、よく考えなくとも迷惑でした。次回からは、チョット考えて実行に移します。

今回は、麻子視点。


透明な赤ちゃんです!(2)

冷泉麻子(れいぜい まこ)は、またも襲い来た面倒ごとに頭を抱えた。

 

「状況を整理するぞ」

 

なんで自分が仕切りに入っているのか。『透明な赤ちゃん』などという、想像なんかするわけがない事態に皆パニックになりかけたからだ。沙織は、ケーサツ呼ぼう、などと言い出すし、華も華で、お母さんを探しましょう、と言い出した。みほと優花里は、ひとまず東方くん(どの)と合流しましょう、と顔を見合わせて言った。

 

「まず、ここにいるのは『透明な赤ちゃん』だ。

 どんな事情かはさておいて、みほの腕の中に、事実、いる」

 

みほは腕をゆすりながら、他の面子もウンウンと頷いた。

 

「沙織、警察を呼んだら、どうなる?」

「あっ……相手にしてくれるワケ、ない。

 で、でも! 最後の手段としては、そうするしかないと思うよ」

 

その通りではあるので、麻子も頷いて返す。話を続ける。今度は華に。

 

「どうやってお母さんを探す?」

「ええ。手段がありませんね。この透明をどうにかしない限り」

 

目標は、それでいいと思う。しかしそこに向かう手段がない。華もそれは、わかってはいたようだ。

 

「そして、このまま東方達と合流するのか?」

「は、はい! この状況、確実にスタンドの仕業じゃあないですかッ」

「うん。それに、地元の人の協力がないとツライと思う。

 場合によっては、赤ちゃんを預かってもらうことも考えないと……」

 

赤ちゃんのことを第一に考えているのは、やはりコイツだと思える美点だ。それはいい。だが、致命的な見落としがあることに、西住みほは気づいているのか。麻子は、みほの正面に回って、目をじっとにらんだ。

 

「例えば、だ。想像しろ。

 東方の家に『赤ちゃん』を持っていくんだ。お前がだ」

 

みほは考え込んでいる。ピンと来ていない。先に、沙織が青ざめた。

 

「死ぬわ、それ。社会的に死ぬ。

 ゼッタイにウワサされるわ、『デキちゃった』って。

 しかもあいつら不良ッ ヘンなトコロで信憑性バツグンッ!」

「……えっ、えぇ~~~~~ッ!?」

 

ようやく理解したみほが、素っ頓狂な悲鳴を上げる。さすがに、たまったものではないだろう。赤ちゃんを抱えたまま、ワタワタと取り乱しまくっている。

 

「ちょっと待って、ナンデそんな……いや、そもそも!

 ムリだよ! 物理的に不可能だよッ!

 出会って何日だと思ってるのッ?」

「無責任なウワサをする方はそんなこと知らん。

 とにかく、その手は最悪だ。それはわかったな」

 

みほは、ショボンと頷いた。だが、優花里の方がまだ納得していない。

 

「冷泉どの、それはわかりました。

 ですけどッ、合流して対策を話し合うのなら、

 そこまで危険はないと思うんですがッ」

「集まったところで、出来ることはたかが知れている」

 

優花里がムッと、不快感を表情に出した。東方達をバカにされたように感じたのだろう。違うのだ。能力の問題ではない。社会的地位の問題だ。

 

「私の考えを言う。この赤ちゃんは、空条承太郎に丸投げする」

「丸投げって……」

 

何か、みほが反対意見を言おうとしたところで、優花里が反応する。こいつは戦車バカではあっても、バカ者ではないのだ。

 

「何を言っているのかわかりましたよ、冷泉どの。

 スピードワゴン財団を頼るってことですね」

「あっ、問題ほとんど解決する、それ!

 スタンドを知ってるから、ちゃんと相手にもしてくれる」

「お母さんを探すにしても、私達よりもはるかに確実ですね」

 

自分達が音石明の事件に巻き込まれてから、空条承太郎は学園艦に滞在しており、彼のケータイ番号は戦車道履修者の全員が預かっている。こんな時に頼らずして、どうするのか。優花里も先ほど言っていたが、これは明らかにスタンドの事件だ。向こうとしても、断る理由はないはず。三人が賛同する中、腕の中でダァダァ言っている赤ちゃんを見下ろすみほは、罪悪感のような表情を浮かべている。

 

「赤ちゃんだぞ。私達の手に余る。わかるだろ」

「……うん」

 

…………………………

 

「使えないヤツめ」

 

麻子は思わず吐き捨てた。承太郎のケータイにかけたところ、結果は留守電。透明な赤ちゃんを拾ったので至急折り返して下さい、とだけ残し、かけ直してくるのを待つしかなくなってしまった。

 

「もしかして、留守電ですかぁ?」

「ああ、いつかけ直してくるか、わからん」

「困りましたね」

 

最短で引渡しに行く目は、これで途絶えた。折り返しが来るまで、どうにか面倒を見なければならない。みほが、おずおずと『何もない』腕の中を差し出してくる。

 

「この子……ハダカんぼだよ。何か、着せてあげないと」

「それもそうだし、その。ウンチぬぐってあげないとね」

「メンドー見るなら、買い物しなきゃ始まりませんねぇ」

 

財布を取り出しながら、優花里の目つきが少し鋭くなった。

 

「並行して、私がスタンドの本体を探します。

 見つけ次第トッちめて、『透明化』を解除させれば解決ですからね」

「それこそ東方達と合流してからだな。

 音石以上のヤバいスタンドだったらどうする」

「うッ、確かに」

 

麻子から見て、ここの所、優花里は少し危うい。スタンドなどという異能をいきなり持たされてしまったがために、負わなくてもいい責任を勝手に感じているフシがある。来るなら迎え撃つ、くらいでいいだろうに。承太郎の『おじい』……ジョセフ・ジョースターのことは、やはり少し恨んでしまう。

 

「あの、それですけど」

 

華がおそるおそるといった感じで進み出た。

 

「承太郎さんは言っていました。スタンドには射程距離があるって。

 そうであるなら、『敵』から離れれば解除されます。

 一度、思い切って遠くに行ってみるのも手かもしれません」

 

検討に値する話ではある。このまま承太郎と会う見込みが立たない場合であるなら。

 

「『敵』を刺激するな、それは。

 やるなら戦う準備が整ってからだろうな」

「そう、ですね。今、戦えるのは優花里さんだけです」

「麻子さん、華さん、優花里さん、私、思うんだけど」

 

さらに、みほが話に割り込んでくる。赤ちゃんは機嫌がいいようで、エヘエヘと笑い声がしていた。

 

「私ね、この子自身がスタンド使いじゃないかって思うの。

 お母さんと離れちゃってさ、この子、不安だよね?

 だから、怖い人を近づけないために、

 こうやって透明になってるんじゃないかって」

「なるほどな。ありえる」

 

みほの説なら、自分達が今、敵スタンドに攻撃されていない理由について説明がつく。『敵』からすれば、『敵』なるものがいるとすれば、今まさに攻撃を邪魔されているのに、その邪魔者に対し攻撃をしないという妙な状態なのだ。敵など最初からいない。ありえる。

 

「麻子さん。一足先に杜王駅に向かって、

 東方くん達に事情の説明、お願いします」

「どうして私が」

「スタンドと戦えるのは優花里さんだけ。

 赤ちゃんがはぐれた時に探せるのは華さんだけ。

 それと、買い物で事情をごまかしきれるのは沙織さんだけです。

 だから、行くのは私か、麻子さんです」

「仕方ない。行こう」

「み、みぽりん、サラリとヘビーな役目を……やるけどさぁ」

 

ここで断れば、赤ちゃんの世話が自分の役目になる。面倒くさがる気はないが、どう見てもみほの方が向いている。しかし、東方達もケータイを持ってさえいれば。そう考えてしまうが、陸では学園艦ほどケータイが普及しきっていないのだ。学園艦では下船時の連絡手段などで事実上の必須アイテムなので、少なくとも学生はみんな持っている。だが陸では、ケータイを忌避する学校が未だ一定数存在するし、持っていない学生も別に珍しくない。東方達は、別に持つ理由のない学生達のうち一人であるということだろう。こういう時は、それが恨めしくなってしまうが。放課後というのもあって、比較的体調がいいのは救いだった。みほ達から離れてツカツカと杜王駅まで足を進めている最中、電話が鳴った。承太郎からの折り返し電話だった。

 

『透明な赤ん坊、ということだったが』

「はい、透明です。おそらくスタンドです。

 私達の手に負えないと判断しました」

『賢明だな。遅くなってスマナかったが、俺はどこに行けばいい?

 その赤ん坊を引き取ればいいんだな』

「杜王駅でお願いします。東方くん達と待ち合わせています。

 私以外のあんこうチームも、赤ちゃんの服やオシメを買い次第、

 合流します」

『わかった。今すぐ向かおう。三十分後には到着する』

 

学園艦には当然、下船に伴う手続きもある。それを踏まえると、最短の線を承太郎は引いてくれたことになる。使えないヤツ呼ばわりは後で取り消すことにして、麻子も足を速める。そして、駅前の噴水広場で、彼らを見つけた。

 

「お? オメー、麻子じゃねぇーか。オメーだけかよ?」

 

このアホ面は一目見れば忘れるまい。虹村億泰だ。東方仗助に、広瀬康一も、後ろについてきている。くだらないやりとりをしているヒマはないので、本題を提示する。

 

「スタンド使いに遭った。私だけ先に来た……連絡のためにな」

「スタンドだと? まさか、チリ」

「違う。おそらく無関係だ。

 透明にするスタンドだ。赤ちゃんが透明になっている」

「赤ちゃんンンンーーー? なんだってそんなコトをよぉぉーーーッ」

 

私が知るか、と吐き捨ててやりたかった。コイツでは話が進まない。後ろの二人の方に視線をチラチラ投げる。東方仗助が、前に出てくれた。

 

「ソコはわかったけどよぉーー、他のヤツらは、今何やってんだ?」

「赤ちゃんの服やオシメを買いに行っている。丸裸だったからな。

 これから電話して、赤ちゃんを連れて来させる。

 承太郎さんもここに来る」

「ちょ、チョット待って、冷泉さん。

 赤ちゃんが攻撃されているの?

 それとも、赤ちゃんがスタンド使いなの?」

 

広瀬康一も、東方仗助に続くように聞いてくる。将来性どうこう、はともかく、頭の回転は速いようだ。

 

「どっちなのかわからない。

 ひとつだけ言えるのは、赤ちゃんは私達の手に負えない。

 だから、承太郎さんを呼んだ」

「なるほどな。そりゃ、そうなるッスよねェェ~~。

 グレート! オレでも途方に暮れるぜ」

「ン? どういうこと? 仗助くん」

「バカ、康一よぉ~考えてもみろ!

 ジョシコーセーが赤んぼ抱えて悩んでる!

 そいつを見てよぉ~、どういうウワサ想像するよ?

 オメーならよぉー」

「……た、確かにマズイね。

 承太郎さんに助けてもらうべきだなぁーーッ」

 

麻子は密かに眉をひそめた。前回の戦いでも見てはいたが。なるほど、こいつらはなかなかスゴイ。答えを最初に提示したとはいえ、そこにたどり着くまでの過程をほとんど埋めてしまった。

 

「そういうことだ。今から電話する」

「おう。アソビに行くのは赤んぼ渡してからッスねー」

 

ケータイを取り出す、電話をかける先は、沙織。時間的に、そろそろ買い物は終わった頃合だと思われる。店の場所はケータイで調べてすぐにわかったし、そんなに遠くもなかった。みほ達から離れる直前に、そこだけは聞いて押さえてある。しかし、なかなか出ない。コール音が10を超えた。留守番電話サービスに応対されてしまう……切る。

 

「どーしたよ?」

「電話に出てこないだけだ。もう一度かける」

 

虹村億泰に怪訝な目を投げられてイラッとしつつ、再度、沙織に電話をかける。コール音、8つ目。通じた。これで、全員合流して終わりだ。一件落着の気分で用件を伝えようとしたが、それより先に電話口でまくし立てられた凶報が、一瞬でそれを打ち砕いた。

 

「何だと? 風紀委員……そど子か? そど子がどうしたッ」

 

 

 

 

To Be Continued ⇒




どうでもいい余談ですが、ガルパンキャラをジョジョ絵に脳内変換しながら話を考えたり、書いたりしています。主に、第四部後半~第五部前半の絵柄で。なぜか秋山どのは断トツで脳内変換がラク。ドゥーチェとかダー様、カチューシャもスゴク想像しやすいけど、出番あってもはるか先。

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