【子蜘蛛シリーズ2】Deadly dinner   作:餡子郎

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No.033/食えない人

 

 

「腕上げて」

 ヒソカとのランチのあとすぐ帰るのかと思われたマチだったが、彼女はシロノの部屋まで着いて来て、そして中に入るなりそう言った。

「え、合ってない?」

「ああ。袖が短くなってる」

 さすがは専属、というところだろうか。マチはいつもシロノの服が身体に合わなくなっているのを目敏く見つけ、こうして直してくれるのだった。

 シロノが素直に腕を上げると、マチは糸を使って長さを測ってから、シロノのボレロとブラウスを脱がせる。

 

「ふわ~」

「何」

「マチ姉、いいにおいする」

「……ほんとに、どんな匂いなんだかねえ」

 マチは僅かに苦笑するが、こればかりは実感することは出来ない。彼女が手早く袖の折り返しを解いていくのを、シロノはキャミソールとスカート姿で眺めた。

「ねえねえ、あとでちょっとオーラちょうだい」

「やめときな。また酔っぱらう」

「ちょっとぐらいならもう平気だもん!」

 シロノは尚もねだる。

「だってねえ、変化系は匂いが強いからね、側にいるとどうしてもおなかがすくんだよ」

「じゃあヒソカにでも貰えば」

「絶対やだ!」

 大声を出したシロノに、マチは驚いて目を丸くする。

 

「ヒーちゃんのオーラ食べるぐらいだったら絶食する!」

「……なんで? そりゃあんなののオーラ食うのは正直どうかと思うけど、変化系だし、レベルも高いだろ?」

 それに、ヒソカとシロノは仲がいいはずだ。さっきの食事中もやたら二人で仲良く話していたし、そこまで嫌がる理由が見当たらない。そんな風なことを尋ねると、シロノはものすごく気まずそうな顔をして、伺うようにマチを見た。

「……ヒーちゃんに言わない?」

「言うわけないだろ」

 即答だった。そしてシロノはそれもそうか、とでもいうように肩の力を抜くと、ぼそぼそと話しだした。

 

「……オーラの練度が高いほど、お酒とかみたいになってくのね」

「ああ、聞いた」

 シロノにとってオーラの練度は食品でいう発酵の度合いに相当し、だからまだ未熟なシロノはレベルの高すぎるオーラを口にすると酔っぱらったりしてしまう。実際の感覚はわからないが、シロノの様子を見ていれば想像はつく、とマチは頷いた。

「マチ姉もそうだけど、練度が高いとお酒っぽい感じになってる人は多いよ。そうなっちゃうとあたしは飲めないんだけど、ほら、お酒飲めなくても、お酒の樽はいい匂いって思うでしょ」

「実際飲むのと香りがいいのは別物ってことか」

「うん。そんでね、お酒系じゃない人もたまにいるのね。ヨーグルト系とか、チーズっぽいのとか、あとお茶とかね。メンチさんとかそれ系だったから、割とレベル高いけど、刺激少ないから沢山食べられるの。そういうオーラ見つけたら当たりって感じ。コルトピのもそれ系」

 なるほど、とマチは相槌を打ちつつ、玉結びにした糸を糸切り歯でプチンと切った。

 

「……でもヒーちゃんはさあ……」

「酒でもチーズでもないってこと?」

 こくり、とシロノは頷いた。

「発酵系の食べ物ってさあ……。ほら、あるじゃん」

「は?」

「……なんでこれが食べ物として存在してんの、みたいな……あー」

 あー、とか、うー、とか言葉を探して呻きながら、シロノは言った。

「行っちゃいけない方に発酵してるっていうか……」

「はっきり言いなよ」

 歯切れの悪いシロノに業を煮やしたマチが、ぴしりと言う。するとシロノはとても言い辛そうに、うー、と一度呻くと、数秒の後、言った。

 

「………………………………シュールストレミング、とか」

 

 シン、と部屋が静まり返った。

「……くさやとか」

「あー……」

「臭豆腐とか」

「よくわかった」

 そしてものすごく納得した、とマチは真顔で頷いた。

 

「なるほどね。そりゃ食べたくないわ」

 シュールストレミングというのは、塩漬けにしたニシンを缶の中で発酵させた漬物の一種であるのだが、その強烈な臭いから、「世界一臭い缶詰」などと呼称されることもある食品である。

 実は以前フィンクスがカードの罰ゲーム用にでも、ということで面白半分に手に入れて来たことがあるのだが、内部で発生した発酵によるガスで缶自体が膨れているそれは、そのガスのせいで、開封した途端に爆発の勢いで中身と汁が炸裂した。

 そしてその凄まじい臭気はどれだけ消臭剤を撒こうが消えることはなく、なんとそのアジトの部屋一室を丸々ダメにし、さらにその部屋に居た団員たちの服、あるいは髮などにもその臭いが染み付いてしまったため、原因を作ったフィンクスはしばらく非難轟々もいいところだった。あれを開けた部屋がクロロの宝物庫か書庫であったなら、多分フィンクスは今生きてはいまい、とマチはわりと本気で思っている。

 くさやと臭豆腐はシュールストレミングほど扱いに気を使わなければならないものではないが、食べ物だとは認められない、いや認めたくない臭気を持つ食品、という点でとても有名なジャポン産の発酵食品である。

 

「高級食材だしレアでもあるんだけどね──……」

 あれを食べ物として認めることは出来ないな、と呟くシロノは、どこか遠い目をしている。

「……()()()()のは本人もオーラも一緒ってことか。つくづく厄介な野郎だ」

「別にヒーちゃんが嫌いだってわけじゃないんだよ?」

「私は嫌いだけどね。さ、できたよ。着てみな」

 直し終わったボレロとブラウスを渡すと、シロノはそれをもそもそと着る。さすがのもので、袖はぴったりの長さになっていた。

 

「……背が伸びたね、アンタ」

 くるりと回って具合を見せるシロノに、マチが呟いた。

「ほんと? ウボーぐらいおっきくなれるかなあ」

「それは無理。ていうかなるな」

「えー」

 シロノは不満そうに口を尖らせる。マチはふっと溜め息だか笑みだか判別のつかない息を漏らすと、シロノに言った。

「さ、もう寝な。そろそろ昼過ぎだ。眠いだろ?」

「うん、ねむい……」

 そもそも、ヒソカの試合が始まる前には寝ようと思っていたのである。昼夜が逆転したシロノにとって、今はまさに徹夜明けの状態だ。シロノは目を擦りながら、棺桶を開けた。

「寝る前に着替えな。……スカートが皺になるだろ」

「あーい」

「さっさとする。寝酒代わりにアタシのオーラちょっとやるから」

「ほんと?」

 やったあ、と、シロノは眠気を含んだ笑顔でふにゃりと笑った。

 

 

 

 

 

 

 そして、それから更に約一ヶ月後。

 修行を再開したゴンは第二戦目のギド戦でギドを圧倒して勝利し、更にリールベルト戦でも楽勝と言っていいレベルで勝利した。

 キルアもまた、同じくリールベルト戦では圧勝。戦闘自体はやはり念初心者の戦いなのであるが、その潜在能力とそれによる成長の速さは、目を見張るものがあった。

 

「いよいよ今日から“発”の修行に入ります」

 既にすっかり教室と化した宿の一室で、ウイングは言った。そしてホワイトボードに六性図を書き込み、オーラ系統についての講義を始め、三人の少年は真剣にそれに聞き入る。

 そして自分のオーラの系統が何なのか調べる方法として水見式を紹介したウイングは、表面張力ギリギリまで水を満たしたグラスに葉を浮かべたものを用意すると、三人にグラスに向かって“練”を行なうようにと指示した。

「さあ、これで3人のオーラがどの系統に属するかわかりましたね」

「あのー、すいませーん」

 ウイングの言葉尻を遮ってノックとともに聞こえた声に、全員がドアを振り返る。

 

「あれ、おべんきょ中? 出直した方がいい?」

「構いませんよ」

 

 ドアの隙間からひょいと顔を出したシロノに、ウイングがにこやかに言う。

「何だよシロノ」

「や、ヒーちゃんの試合のチケットのお金返そうと思ったんだけど、部屋に居なかったからさ。ならこっちかなと思って。場所はゴンから聞いてたし」

「ああ、あれか。オレもすっかり忘れてたわ」

「じゃ返さなくていい?」

「ふざけんな」

「え~、忘れてたくせに~」

 ちえっ、と舌打ちしつつ、シロノはキルアに15万(ジェニー)の入った封筒を渡した。

 

「チケットって……。もしかしてオレの分のチケット、シロノにあげたの?」

 ゴンが首を傾げた。

「おー、なんたって15万だからな。捨てるのも癪だろ?」

「それでシロノと観に行ったんだ」

「そう」

「へー。デート?」

 笑顔のままけろりと言ったゴンだったが、シン、と部屋が静まり返った。

 

「ちっ……げ────よバカ! 何言ってんだお前!」

「えーだって二人で行ったんでしょ?」

「あー言われてみれば」

「オメーはちょっと黙ってろ!」

 後ろでこれまたけろりと言ったシロノに、がっ、とキルアが怒鳴る。

「そんなに否定しなくてもいいじゃないですかキルア君。シロノさんに失礼ですよ」

「だからちげーっつってんだろが!」

 ウイングにまで口を出され、キルアは再度怒鳴った。しかし声を荒げているのは彼だけだ。

 

「しょーがないよウイングさん。キルアんち、チューしただけで結婚とか言う家だもん」

「ほほう、それはまた古風な」

「おい、どこの誰が言ってんだよそんな事!」

 キルアは怒鳴りっぱなしである。そして実際は誰もそんな事は言っていないのだが、イルミとの会話の記憶の断片を引きずり出して発言したシロノは、その辺が曖昧になっているらしい。

 そしてぎゃあぎゃあと喚き立てるキルアをのらりくらりと躱していたシロノだったが、やがて言った。

「まあ、そんなことはどうでもいいんだけど」

「よくねえよ!」

「またケーキとか作ったんだけど、食べない?」

 キルアを無視して、ひょい、と大きなバスケットを掲げて、シロノは言った。そしてその動作で生まれた風でふわりととても食欲を誘う匂いが皆の鼻に届き、少年たちが一斉にウイングを見る。期待の目を向けられたウイングは、「では食べながらにしましょうか」と苦笑しつつ言った。

 

 

 

「わー、また腕上げたねー、シロノ」

「メンチさんに扱かれてるからね」

「この間のケーキも美味しかったっす!」

 テーブルに広げられているのは、甘いケーキもあるが、昼時のこの時間に合わせ、チーズたっぷりのキッシュとよく煮込まれたシチュー、そして焼きたてのパンなどだった。

「ホントお前何しに来てんだよ。料理人になった方がいいんじゃねーの」

「だからこれもあたしにとっては念の修行だって言ってんじゃん」

 やけに突っかかって来るキルアに、シロノは取り分けたキッシュをナイフとフォークで切り分けつつ、軽く眉を顰める。

「何? キルア」

「別に」

 フォークでキッシュを食べるシロノをじっと見ていたキルアだったが、質問には答えず、そのままふいと顔を逸らした。

 そしてすっかり残さず料理を食べ終わり、皿や食器をバスケットに手分けして片付けていたときだった。

 

「ああ、水見式してたんだ。懐かしいなあ」

 

 シロノは、サイドテーブルの上に置いてある、葉っぱが浮いたグラスを見ながら言った。

「懐かしいって、シロノはもうしたことあるの?」

「うん、6歳ぐらいの時」

 あっさりと返された答えに、シロノの念経歴を全く知らなかったゴンとズシが目を見開いている。そしてシロノはふいに手を伸ばし、ちょんと指を水につけ、ぺろりと舐めた。

「あ、甘い。キルアでしょこれ」

「え……」

 彼らはまだ、誰が何系などという話すらしていない。少年たちはもちろん、いやウイングなどは熟練者であるだけに驚愕が大きいようで、完全に手が止まっていた。

 

「何でわかるの?」

「え、あ、そっか」

 興味津々にゴンに尋ねられ、しまったな、とシロノは思ったが、まあこのくらいならいいだろう、と、フォークをバスケットに丁寧に仕舞いながら言った。

「んー、なんとなく?」

「……じゃ、オレが何系かわかる?」

「強化系?」

「すごーい!」

 大当たりだよ、とゴンがはしゃぐ。

「あ、自分! 自分はわかるっすか!?」

 ズシが、自分を指さしてわくわくした表情で聞いて来る。

「う~ん……」

 じー、とシロノはズシを見つめ、少しだけ顔を近づける。ズシは少し怯んだが、緊張した面持ちで答えを待った。

「ん~~~~~~~~……放出系?」

「惜しい!」

「操作系っすよ」

「あー! そっちかー!」

 迷ったんだよねー、とシロノは悔しそうに呻く。

「お前は何系なんだよ」

 きゃっきゃっとはしゃぐ三人に、キルアが言う。シロノがきょとんと彼を見返した。

「えー、言うの?」

「オレらの系統知ってんのにお前の知らないってのは不公平だろ」

 そう言って、キルアは表面張力ギリギリの水を滴も溢すことなく、サイドテーブルごと、葉っぱが浮いたグラスをシロノの前まで持ってきた。やれ、ということだろう。

 

(……そういえば、()()なってからちゃんと調べてないな)

 

 それまでは、操作系だった。

 そしてアンデッドは総じて特質系であると聞かされていたので、シロノは改めて自分の系統を調べる行為をして来なかったのだった。クロロたちも同じように思っていたのだろう、やってみろと言われたこともない。“纏”より“絶”や“円”を先に覚えたりしたことといい、シロノは毎度順序がちぐはぐである。

 しかしそう思い返すと、何だか興味が湧いて来た。特質系はどんな現象が起きるかわからないので、どんな風になるのか見てみたい気がする。

 

「じゃ、いくよ」

 シロノが、グラスに両手を伸ばした。少年たちとウイングも、神妙に様子を窺っている。

 そしてシロノが“練”を行なう。自分たちのように思い切り出すだけ、という感じではなく、あくまで最低限必要なだけ、と調整されたそのオーラに、まず皆が目を見張った。

「ありゃ」

「操作系っすね!」

 自分と同じっす! とズシが言う。シロノの両手の間に置かれたグラスは、乗せられた葉っぱが、笹舟のようにして、グラスのふちをくるくると回っていた。

 

(……あれえ?)

 おかしいな、とシロノは首を傾げた。確かに以前は操作系だったが、アンデッドは総じて特質系、『オーラを食べる』というこの能力も文句無しに特質系ど真ん中のはずだ。

(まあ操作系の割合も大きい能力だけど……。もしかしてそっちの方が強いってことかな?)

「……どうしました?」

「あ、いや、なんでもないです」

 ウイングに尋ねられ、シロノは慌てて首を振る。

「……では、3人とも。これから4週間はこの修行に専念し、今の変化がより顕著になるよう鍛錬を続けなさい」

 後片付けを終えた後、師範モードに戻ったウイングの指示に、三人の少年は「押忍!」と元気よく返事をした。

「頑張ってねー」

 そしてシロノは、軽くなったバスケットを抱え、ひらひらと手を振りながら部屋を出て行った。

 

 

 

「はー、6歳っすか、上には上がいるもんすね」

「そうだねー」

 シロノが出て行った後、ズシとゴンがそれぞれの修行のためのグラスの用意をしながら言った。

「でもカノジョが自分より実力が上っていうのは自分ならちょっとツライっすね」

「カノジョじゃねっつってんだろーが!」

 ズシの発言に、キルアがやはり怒鳴る。彼が運んでいたグラスから、盛大に水が溢れた。

「なんでっすか? かわいいじゃないっすか、シロノさん」

「そうですね、品定めするわけじゃないですが、挨拶や食事の作法も綺麗ですし。ああいうところには内面が出ますからね」

「料理も上手だしね」

「なんでテメーら揃ってシロノを勧めんだよ!」

 孤立無援になったキルアは、溢れた水もそのままに怒鳴るが、内心、この程度で済んで良かった、とも思っていた。もしシロノが嫁候補云々のことまで言いだしたら、もう完全に彼女認定されてしまいそうだからだ。更には、闘技場で延々抱きつかれていたという、所謂既成事実もある。

 

「あ、シロノさんのグラス、まだ動いてるっす……あれ?」

 ズシが声を上げ、全員が彼の目線を追う。その先には、シロノがやった水見式のグラスがあった。彼が言うとおり、グラスの上の葉っぱは、未だくるくると縁を回り続けていた。キルアのグラスが甘かったように、水見式を行なった後は、オーラが多少残るため、しばらく現象が続くのだ。

 だがそれだけなら、驚愕の声を出す理由にはならない。

 

「水が……」

「……減ってますね」

 

 ウイングが言った。

 そしてその言葉通り、表面張力ギリギリであったはずの水位は、今や半分くらいになっていた。そして葉っぱは、その低い水面で未だくるくる回っている。

「うわっ……」

 ゴンが声を上げる。くるくる回る葉っぱのスピードが急に上がり、水を渦潮のように掻き回したかと思うと、そのまま──水が、一滴残らず無くなってしまったからだった。そして乾いたグラスの底には、動かなくなった葉っぱが1枚。

「……なんか」

 シンと静まり返った部屋の中、ゴンが呟いた。

 

「葉っぱが水を飲んだみたいだ」

 

 それは、全員が同一の見解だったらしい。誰もそれを否定せず、そして、グラスの水を全て取り込んだにも関わらず何も変化のないままじっとグラスの底に在る1枚の葉を、やや気味悪そうに見つめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 ──そして同日、それから数時間後。

 

「すごいねー、精孔開いてから何日だっけ? あれが天才ってやつだねー」

 金色のフォークとスプーンを丁寧に磨きながら、シロノが言う。

「世界最年少念能力者かもしれないくせに、よく言うよ♦」

 そう返したのは、ヒソカ。ピエロメイクは相変わらずだが、今日はいつもと少し違う雰囲気の、黒づくめの上にベルトが巻き付いたようなデザインの服を着ている。彼はすっかり自分の部屋に入り浸る子供がフォークの輝き具合をチェックしているのを眺めながら、長い足を組みなおした。

「えー、でもあたしはたまたま、ってだけっぽいもん。パパからもよくバカとかトロいとか言われるし」

「クロロがまた天才だからねえ……♠」

 

 その時、プルル、と備付けの電話が鳴る音がした。ヒソカはソファから立ち上がると、電話のある廊下まで歩いていき、受話器を持ち上げる。

《もしもし、ゴンだけど》

「やあ、待ってたよ。ボクといつ戦うか決めたかい?」

《ああ》

 7月10日に戦闘日を指定する、とゴンは言った。ヒソカが目を細めているのを、シロノはスプーンを磨きながらちらりと見遣る。

 

《天空闘技場で戦ろう!》

「……オーケイ♦ 楽しみにしているよ♥」

 そして電話がツー、と音を立てた後、ヒソカはカチャリと受話器を置いた。だがそのままじっと受話器を見ているヒソカに、はあ、とスプーンに息を吹きかけて曇らせたシロノが言った。

 

「良かったね、ヒーちゃん」

「うん♥」

 

 何が、という主語は要らない。

 振り返ったヒソカは、にっこりと笑顔だった。

 

 

 

 


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