紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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こんにちわ。
前話にも書き込みましたが勢いで書きました。
連続2話投稿と言うやつです。ここで一旦燃え尽きました。

では、始まります。


訪問者

016

 

 

川神市にある河川敷。そこには雑草魂が強く根付く者たちが暮らしている。

良い言い方をすれば自由な暮らし。悪い言い方をすればホームレスだ。

ホームレスも好きでなったわけでは無いだろうが、馴れれば良いと言う人もいる。

その中で板垣姉弟と呼ばれる者たちがいるのだ。彼女たちは河川敷の中では有名である。

そんな中、板垣姉弟の三女である板垣天使は荒れていた。今はせっかくの夕食時間。「少しは静かにしろ」と長男の板垣竜平が吐き出す。

ちなみに夕食の献立は白米と山菜や川魚をふんだんに使った鍋である。

 

「何をそんなに荒れてるんだよ?」

「チキショーあんにゃろう。なにが50連勝だ」

 

実は天使がいつも遊んでいるゲームセンターで得意の格闘ゲームで大敗したのだ。自分が一番だと思っていたら上がいたという悔しさに荒れている。

 

「んだよ・・・そんなことか。下らねえ」

「んだと!! ウチの縄張りが荒らされたんだぞ!!」

「いつからあのゲーセンが天の縄張りになったんだよ」

 

ギャイギャイと天使と竜平が言い合いをする。彼女たちにとっていつもの光景だ。

 

「鍋ができたよ~」

「旨そうだねえ。ほら天に竜、飯だよ」

 

次女の板垣辰子が鍋を持ってくる。それを見た長女の板垣亜巳が食事を始めるために言い合いをしている2人を仲裁する。

 

「チキショー・・・」

「まだ言うのかい」

「だってよお・・・」

 

天使はいつものゲームセンターで珍しく格闘ゲームで連勝しまくるプレイヤーを見つけたのだ。そのプレイヤーは49連勝していた。次の挑戦者を倒せば50連勝が達成される。

その達成をぶち壊してやろうとサディストとしての心が芽生えたので、早速格闘ゲームの席に座って対戦。しかし、結果は敗退。自分が50連勝への生け贄なっただけである。

 

「リアルファイトだったら絶対に負けねえのに!!」

「止めないか天。みっともない」

「何がみっともないって?」

「師匠」

 

板垣姉弟の師匠である釈迦堂刑部が帰ってくる。手には梅屋の袋を持っている。

 

「ほれ、みやげだ。いやー梅屋の店長がサービスでくれたのよ。とろろまでつけてくれるとは嬉しいねえ」

 

袋からは牛飯が出される。早速がっつく天使。

ガツガツと食べながら負けた気持ちを振り落とす。

 

「どーしたんだ天は?」

「天ちゃんは得意のゲームで誰かに負けちゃったの」

「そんなことか」

 

刑部も呆れる。

 

「リアルファイトだったら負けねえ!!」

「暴れるのは構わないが、やり過ぎるなよ。今は九鬼の連中がうっとおしいからな」

「そのせいで師匠が真面目に働くはめになりましたしね」

「いやいや、梅屋は俺の天職だわ」

 

自由奔放な刑部も梅屋は働くに値するようである。

 

「オレは息が詰まりそうだぜ。好きなときに暴れられないからな。それに最近良い男と出会えてねーし」

 

九鬼の従者である青髪の青年を思い出す。彼は竜平にとってストライクゾーンにバッチリ入っていた。

 

「なあ天。お前にゲームで勝った奴は良い男か?」

「ざーんねん。男じゃなくて女」

「女か。なら興味ねえ」

「でも名前は男だったけどな。ププッ」

 

人の名前は様々である。世の中には珍しい名前やキラキラネームもあったりする。

天使もそうであり、「てんし」と呼ぶのではなくて「エンジェル」と呼ぶのだ。

 

「どんな名前~?」

「斬島切彦だってよ。どこからどう聞いても男の名前だよな」

 

天使はクスクス笑い、辰子たちは興味はあまり無いようだ。しかし刑部だけは違った。

その名前は裏世界で聞いたことがある。とても有名な名前だ。同姓同名の可能性はあるが、刑部が思う『斬島』はあの裏十三家しか思い浮かばなかった。

 

「なあ天。もう一度そいつの名前を聞かせてくれ」

「あん? だから斬島切彦だよ」

(おいおいマジか。しかも切彦を名乗るなら本家の直系だぞ・・・)

 

裏十三家の『斬島』が「切彦」を名乗るのは本家の直系である証だ。

殺し屋家業を継いだ名前。どんな人間も簡単に切断する。

 

(確か・・・今の斬島切彦は斬島家の中でも別格の天才だってのを聞いたことがある)

 

鍋の山菜をかじりながら深く考える。今の川神市に殺し屋がいる。しかも凄腕の殺し屋だ。

 

「天・・・お前リアルファイトしなくて良かったかもしれねえな」

「どーいうことだよ師匠?」

「いいか。師匠からの忠告だ。その斬島切彦と戦うんじゃねえ」

 

刑部はもし、切彦から板垣姉弟を守るために戦うのならば自分の首が切断される覚悟を持つだろう。

勝ったとしても四肢は無事では済まないはずだから。

 

「今の川神は何か危ねえな」

 

 

017

 

 

川神市を走る黒い車の中には一組の男女がいる。男の方は騎場大作。女の方はリン・チェンシン。九鳳院の近衛隊幹部である。

大作は序列第2位、リンは序列第8位と幹部クラスでも上位の存在だ。

大作は冷静だが、リンはアタフタしていた。

 

「もっと速く走れないのか!?」

「これが精一杯だ。それに落ち着きなさい」

「紫様が学校から抜け出したのだぞ。落ち着いてられるか!?」

 

実は九鳳院の娘である紫が学校を抜け出したと言う情報が入ったのだ。急いで確認すると紫のGPSや密かに監視している近衛隊より川神市に向かっているのが分かったのだ。

 

「紫様は真九郎殿に会いに行ったのだろう」

「また紅真九郎か!!」

「真九郎殿なら大丈夫だろう」

 

彼なら紫を守るに値する存在だ。そう思わせる程の力を持っている。

リンは真九郎に対してブツブツ文句を言うが、彼女も彼の強さは認めている。

 

「ああ・・・紫様ご無事で!!」

「大丈夫だ。それに川神には今、九鬼が目を光らせている」

「九鬼か。ならば従者部隊の奴等とも会うかもしれないな」

 

九鳳院財閥と九鬼財閥は面識がある。なれば、近衛隊と従者部隊も面識があるのは当然だ。

 

「久しぶりに最強の執事に出会えますな」

「私は会いたくないがな。それに忍のメイドに会うのも面倒だ」

「そうですか。私は嫌いじゃありませんがね。それにクラウディオ殿とは良い酒が飲めそうです」

 

九鬼従者部隊との会合を思い出す。それは九鳳院の当主である蓮丈と九鬼の当主である帝が仕事の関係で顔合わせした時だ。

 

「あの時は驚きましたね。何せ、いきなりの襲撃者がきましたから」

「我々がいるのだから蓮丈様には触れさせることは無い」

 

リンの言う通りで襲撃者たちは何もできずに近衛隊と従者部隊に潰されたのだ。その時にお互いの実力を知った。

 

「帝様の御子息たちは元気でしょうな」

「今は紫様が第一だ」

 

2人を乗せた車は川神市へと近付く。

 

「話は変わりますが、リンは川神を知っていますか?」

「武神が居るくらいしか知らないな」

「川神は良い所ですよ。美味しい食物はありますし、名所もある。それに何かと飽きない場所です」

 

大作の言う通りで川神市は様々ものがある。今注目されているのは過去の偉人たちであるクローンが有名だ。

 

「しかし、何処にも表があれば裏もある」

「どういう意味だ?」

「川神裏オークション」

 

リンはハテナマークを浮かべる。

 

「非合法のオークションです。九鬼が目を光らせている場所で開催されるとは見上げた根性だ」

「近々開催されるのか」

「ええ」

 

九鬼が目を光らせているからこそ、と言うのもあるかもしれない。灯台もと暗しと言うやつだ。

車は川神市内に入る。

 

 

018

 

 

川神市内をトコトコと歩く少女がいる。髪を黒いリボンで結んでいるのが彼女のトレードマークだ。

彼女の名前は斬島切彦。裏十三家の『斬島』の直系である。

 

「・・・あ」

 

彼女の目の前に見知った人物がいる。

 

「おお切彦ではないか!!」

 

表御三家である九鳳院紫だ。長髪をなびかせて可愛らしい笑顔をしている。

 

「切彦も真九朗に会いに来たのか?」

「紅のお兄さん・・・」

「よし。切彦も紫に着いて来い。これから真九朗に会いに行くぞ!!」

 

表御三家と裏十三家が一緒になって川神の町中を歩く。普通ならばありない状況だ。周囲にいる人たちもまさか2人がとんでもない人物だとは思わないだろう。

彼女たちの目指す場所は川神学園。訪問したら絶対に驚く人物たちはいる。そんなことも気にしない2人はドンドン進む。




読んでくれてありがとうございます。
今回の話は紫と切彦の登場フラグ話でした。

なので次回はついに紫と切彦が登場します!!
川神学園はどうなる!?
取りあえず準は覚醒するかも。

ではまた次回をゆっくりお待ちください。

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