まあマジ恋の番外編ですね。
119
連休ももうすぐ終わる。真九郎は今、島津寮の居間で麦茶を飲みながらゆっくりしていた。正面には銀子がパソコンでカタカタと仕事をしており、横では夕乃が雑誌を見ていた。
その雑誌は女子に流行りのものだ。内容はカップルのデートプランなどのものだ。夕乃は真九郎に「どこが良いですか。どれが良いですか。私たちにお似合いですね」なんて聞いてくるが真九郎は生返事で返答。
返答するたびに銀子の機嫌が悪くなっているが彼にはどうしようもないのだ。だからこの状況を変えたいために最近で起きた事件を話題にする。その事件はもう解決しているものだが、その後が気になったので話題として切り出した。
「そういえば銀子、井上くんはどうしてるかな。ウルラちゃんも?」
準とウルラ。この2人を中心とした事件だが、連休中に起きたものだ。真九郎はその時のことを思い出す。
連休中で準と一緒にウルラという子供と出会い、九鬼家に保護した後から物語は続きを再開する。ただの迷子だと思っていたが意外にも濃い事件だったのだ。
続きはウルラが九鬼家から脱走したと言う報告が聞いて、準が川神院に行く。そして何故か真九郎も準に服を引っ張られて連れていかれている。
何故、真九郎もなのかと聞かれると準にロリコン同士と不本意にも認められたからである。最も、真九郎もウルラと少し関わっていたので心配なのでどっちにしろついていくのだが。
「ウルラちゃあああああああん!?」
「井上くん待って、落ち着いて!?」
川神院にノンストップまで連れていかれた。銀子もヤレヤレと今回はついて来てくれた。彼女も今回は関わっていたので心配したのだ。
「ウルラちゃんは院では大人しいっすか?」
「寧ろ川神院が珍しいのか興味津々で見学しているぞ」
「なあユキ。俺の顔は大丈夫か。ニキビできてない?」
「んー大丈夫かな?」
「何で初デート前みたいな空気を出してるんだ」
「幼女の前に出るんだから気を遣うっしょ」
よくわからないが準には大切なことらしい。
「真九郎も確認しとけ!!」
「え、俺も!?」
そして巻き込まれる真九郎であった。一応、銀子に確認してもらったが「ロリコンが映っているわ」と言われて心に大ダメージ。
川神院にお邪魔すると件のウルラがピョコピョコと歩いて来た。
「あ、来てくれた」
「ウルラちゃん!!」
警察から脱走したと聞いていたが元気そうであった。なんで警察から脱走したか分からないが彼女にも理由があるのだろう。だがこんな年で警察から脱走するなんて訳ありがありすぎる。
ウルラから事情を聞いているのだが彼女はあまり話したがらない。強烈なロックでも掛かっているのもかもしれないというのが九鬼揚羽の予想だ。
だから心を比較的に開いている準を呼んだのだ。そして一緒にいた真九郎と銀子にもヘルプとしても呼ばれたのである。
「俺のことはお兄ちゃんで。俺は君のことをウルラちゃんって呼ぶ」
「おにい、ちゃん?」
「そうだよウルラちゃん」
「おにいちゃん」
「ウルラちゃん」
「仲がいいのはいいんだが、危なさと紙一重だな。おい井上準よ、本気になるなよ。相手はガチで子供だぞ」
優しく接している準なのだが彼を良く知るものは不安のようだ。
「で、俺も小学生だけど…どうする? 年齢差は少なくね?」
「お前は学園生だろ!!」
準が少しヤバイ。
目を覚ますために百代が良い一撃を繰り出す。
「ごふっ、いいセンスだ!!」
百代が準を攻撃したのが気に入らなかったのかウルラが割って入る。
子供は大人の喧嘩は気に入らないようだ。喧嘩ではなく、犯罪予備軍をとっちめているのだが。
「このけだるそうな感じ…弁慶ちゃんに似てるな」
「一緒にするな! ウルラちゃんはウルラちゃんだ!!」
「マジになるなよ…」
準と百代がコントを初めている中、揚羽が真九郎に話しかける。
「真九郎よ、お主がいるならこの件も安心できる。ウルラはなかなか心を開かないが井上とお主なら大丈夫だろう。頼まれてくれるか?」
「はい。任せてください揚羽さん」
「助かるぞ。それにしても九鬼家に就職しないのか?」
「あはは…揉め事処理屋を続けますので」
九鬼家の者に会う度にスカウトされる。真九郎を評価してスカウトしてくれるのは嬉しいが、何度も揉め事処理屋を続ける気でいるので九鬼財閥には就職しない。
「はっはっは。また振られてしまったな。だが九鬼財閥はお主のような人材を逃がしはしないぞ。紋もとても気に入っているしな!!」
紋白に気に入られているのは確かで、揚羽としては紋白専用従者に推薦したいくらいなのだ。紋白も真九郎が自分の従者になってくれるなら大歓迎と言うだろう。
その前にヒュームなどの怖い人たちに審査されるだろうけど通るだろう。なぜなら実力は知られている。それに九鬼家の全員に好かれているの本当に確かなのだ。
帝には自分に食って掛かってくる豪胆さに惚れられ、局は家族愛を理解させてくれたことを感謝され、揚羽には家族の問題を解決してくれたことを感激され、英雄には親友として気に入られ、紋白には恩人として、憧れとして好かれている。
そんな人物である真九郎がスカウトされないわけがないのだ。
「村上銀子殿もどうだ?」
「そうですね。前向きに検討してみます」
「お主ほどの者なら良い席を用意しようではないか。九鬼財閥の情報部門ならすぐに上へといけるだろう!!」
銀子が九鬼財閥に就職したらとんでもない戦力になりそうである。真九郎も銀子も未来の選択肢が広がる一方だ。それも良い道である。
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「ただいまー」
「ここはお前の家じゃないだろ」
準が自分の家の如く、川神院に訪れる。
ウルラの様子を聞くと川神院の手伝いをしているとのことだ。特に問題は起きておらず、平和とのこと。まだ感情は大きく変化はしていないが元気だ。
真九郎と銀子も定期的に訪れている。3人で会話をしているが未だに確信とも言える情報は出てこない。でも急がなくていいのだ。ゆっくりと彼女には心を開いてもらおう。
「ウルラちゃんと一緒に外出ていいっすか?」
「ああ、いいぞ。でも目を離すなよ…って、杞憂か」
「絶対に目を離しません!!」
準にはいらぬ注意だろう。
今日はウルラと一緒に川神を周る。少しは楽しいのか少しだけ笑顔になってくれた。やはり子供は笑顔が一番似合うものだ。
昼過ぎ頃、川神の工場地帯に差し掛かるとウルラは「懐かしい」と言ったのだ。工場地帯が懐かしいとは珍しい。海外に住んでいたなら発展途上によくある工場地帯とかに居たのかもしれない。
この付近を周っていれば彼女からもっと何か言ってくれるかもしれない。そう思って工場地帯を歩いていると、この雰囲気にそぐわない人が現れた。
黒いスーツ姿に青髪の男性であった。彼からは一般人の感じはしない。寧ろ裏世界や軍人の雰囲気を感じたのだ。すぐさま真九郎と準は銀子とウルラの前に立つ。
「こんなところにいたのかウルラ。探したよ」
「うう…」
ウルラは怯えながら準の服を掴んでいた。
「私はウルラの親だ。保護してくれてありがとう。では帰ろうかウルラ」
彼はまるで心の籠ってない感じで言葉を発するがウルラは中々動こうとしない。これにはすぐにおかしいと真九郎だって気付く。
準も銀子もこれにはおかしいっと気付くのは当たり前である。親というなら何でウルラはこんなにおびえているのだろうか。
「あんた…本当にウルラちゃんの親っすか?」
「ああそうだよ。なあウルラ?」
細目からギロリとウルラを見るとビクリとしてしまった後、おずおずと彼に歩いていく。その足取りは見て分かるように親と再開して向かう姿ではない。
ここで準と真九郎が止める。
「何かな?」
「あんた本当にウルラちゃんの親っすか。なら何でこんなにウルラちゃんは怯えてるんすか?」
真九郎も準も彼がウルラの親だとは微塵も思ってない。何故なら親だというのに子に殺気をかける親はいるはずもない。
「五月蠅いな。無関係なヤツは黙っていろ!!」
彼の拳が準に当たる前に真九郎が防ぐ。拳の重みからやはり素人ではなく、軍人か戦闘屋と予測してしまう。
「ほう。私の拳を防ぐとは学生のくせになかなかやるな」
「大丈夫か紅!?」
「俺は大丈夫だ。まずはウルラちゃんを取り戻そう」
「ああ」
「学生如きが俺を倒せるとでも。このダエモン…っ!?」
真九郎と準のダブルパンチで吹き飛ぶダエモン。その隙にウルラを取り戻して銀子に預ける。
「銀子、ウルラちゃんを頼む!!」
「分かったわ。ウルラちゃんこっちに来て」
「お兄ちゃん…」
「俺は大丈夫だよウルラちゃん」
準はウルラちゃんを安心させるために精一杯の笑顔を向けた。そして銀子とウルラは工場の物陰へと隠れて真九郎たちを見守る。
「こ、このガキ如きがあ…このダエモン様に傷をつけるとは許せん。3秒で倒してやる!!」
「できるものならやってみろ!!」
「はああ!!」
ダエモンの攻撃が連続で繰り出されるが真九郎が全て防ぎ、準がその隙に拳を連打。
「むう、こいつら!?」
ダエモンは2人の学生の攻撃に厄介と判断する。準の方はダエモンにとって勝てない相手ではないが中々の実力だ。しかしもう1人の真九郎という男は学生にしては強い。
戦い方がまるで裏に通じるものがあるのだ。準の攻撃は怒りを込めて攻撃してくるが真九郎は的確に急所を狙ってくるのだ。
(この男、やるな!?)
「井上くん、今だ!!」
「おう任せろやー!!」
準の強烈な拳がダエモンの顔面に襲撃したが片手で止められる。
「調子に乗るなよガキどもがあ!!」
2人の攻撃を無理矢理にでも押し返すように怒涛の攻撃を繰り出してきた。やはりダエモンはアマチュアではなくプロだろう。
「まさかガキどもに少し本気を出すとはな。しかし援軍も来た…袋叩きだ」
チラリと周囲を見ると武装した集団が囲っていた。集団を見てダエモンは完全に軍人関係だと予想をつけた。アルラを保護してから彼女には何かあるかと思っていたが根は深いらしい。
普通は子供が軍人に関係あるなんて良いものではないはずだ。
「結構多いな…いけるか紅?」
「やるしかないだろう」
最悪の場合は逃走も頭に入れる。ならばせめて銀子とアルラの逃走経路だけでも確保しなければならない。まずは後ろにいる彼女たちに向かわせないように相手を潰すしかないだろう。
こうも軍人関係者が多いなら留学時に隠し持ってきた拳銃でも持って来ればと思った。
(相手は拳銃も持っているはず。最悪みんなを守るために身体を張るしかなさそうだ)
静かにみんなの前に立った時に新たな声が聞こえてきた。
「ここにいましたかダエモン!!」
「悪を成敗するために正義推参!!」
クリスとマルギッテが来てくれたのだ。更に由紀江や小雪、揚羽までも応援に来てくれた。クリス曰く川神では強い者が集まるとより集まるらしい。
だがおかげで助かったものだ。これだけの実力者がいれば戦力的にも十分だろう。だが強くても相手は軍人、こちらは学生だ。これだけでも異様である。
「ダエモン。最近海外で子供を攫い、特別な兵士に育て上げては様々な軍に売るという闇の者だ」
マルギッテの説明で全てウルラのことを理解した。彼女はダエモンから隙をついて逃げ出してきたのだろう。そんな場所だからこそ彼女は頑なに「家はない」や「帰りたくない」と言っていたのだろう。
準はその事実を聞いてワナワナと怒りで震える。
「ゆ、許せねえ…こんな幼女を攫って、戦場に送るなんて!!」
まだ幼い子供を無理矢理に兵士に育てるのは確かに許せない。自分から兵士になるというのなら何も文句は無いが、何も分からない子供を兵士にするのは駄目だ。
もしかしたらその子は違う道を選ぶかもしれないのに、親から切り離され、戦うために育てられる。子供は兵器では無いのだ。準の気持ちは理解できる。
「やれお前たち!!」
「絶対にぶっ飛ばしてやる!!」
工場地帯での戦いが始まる。拳や刀が飛び交うが優勢なのは真九郎たちであった。
相手もプロなのだが揚羽やマルギッテも軍事関係の者だ。そして質も圧倒的に違う。並みいる武装集団はすぐさまに倒される。
「く、なかなかやるな。ならばこれはどうだ!!」
ダエモンは切り札を使う。すると彼は全身が赤い西洋の鎧で包まれた。それは特別な全身装甲で力を最大限までに上昇させる。
「ふん。7秒で倒してやろう」
「かかってきなさい!!」
ダエモンの赤い剣とマルギッテのトンファーが何度も交差する。
「ほう、なかなか硬いトンファーだな。しかし次で砕いてやろう」
(こちらこそもう奴の動きは読めた。次で装甲の弱い部分を叩く)
「ここからお任せください」
「え、ちょっ」
由紀江が刀を抜いてダエモンの前に立って剣気を出す。
「く、こいつは10秒かかりそうだ」
「いえ、1秒で十分です」
キラリと刃が光ったと思えば全身装甲の弱い部分を一閃していた。まさに一瞬の攻撃でダエモンも驚いていた。
『聖剣』の娘とはいえ、まだ学生だ。そんな学生の攻撃がダエモンが見えなかったのだ。
「ば、馬鹿な!?」
全身装甲がバチバチと迸った後、爆発した。
「爆発した!?」
モクモクと爆炎が辺りを充満するが揚羽が気で纏った腕でいっきに払った。
「…真九郎と井上がいない?」
「あれ…確かにいないな」
真九郎と準はダエモンの逃走を見逃さなかったのだ。爆発で逃げた彼をすぐさま工場内まで追いかけた。
「く、このガキどもめ…追いかけてくるとは!?」
「逃がすつもりは無いぜ!!」
「ここで捕まえる。これ以上子供の誘拐はさせない」
「チッ…だがガキどもだけならならここで殺してやる!!」
「そうはさせるかー、準は守る!!」
小雪の強烈な蹴り技がダエモンを捉え、不意打ちだったため勢いよく蹴り飛ばされた。
「おのれコケにしよってからに!!」
懐から拳銃を取り出して小雪に向ける。
「ユキ!?」
「させるか!!」
真九郎は近くにあったパイプを的確に拳銃の持った手に投げつける。正確に命中して拳銃はあらぬ方向へと飛んでいく。
せっかくの拳銃が無くなり、舌打ちをするダエモン。拳銃で恐れるかと思えば見事な機転で封じられて気に食わないのだ。
「すう…はあ」
ダエモンは深呼吸をして一旦自分を落ち着かせる。
「ここで怒りに狂ってしまえば駄目だ…冷静になれ」
ダエモンは落ち着く。ここで冷静になるのはやはりプロだろう。
「たかがガキだと思っていたがここまでやるとはな。ならばオレも油断せずに本気と行こう。時間も無いから速攻で決めさせてもらうぞ!!」
ダエモンは上着を脱ぎ棄てて構える。肉体を膨張させて筋力を極限まで上昇させた。肉体から滲み出る威圧感は目に見えて分かってしまう。
「はああああ…来いガキども!!」
「同時に仕掛けるぞユキ、紅!!」
準たちは同時に仕掛ける。
「ふん!!」
3人同時の攻撃は確かに入ったが膨張した筋肉によって届かない。
「やはりお前の攻撃が一番だな小僧!!」
「くっ!?」
今度はダエモンの攻撃が真九郎へとめり込む。彼の一撃は最初に闘った時よりも重くなっていた。彼の筋肉量は嘘ではない。
重い突きが連続で放たれるが全て防いでいく。真九郎に肉体だって頑丈だ。如何に相手の攻撃が重くても耐えられる。
彼の頑丈さは「どういうことだ?」と思ってしまう。まるで鋼を殴っているようだというのが感想である。ダエモンの本気は相手を完全に叩き潰せるほどの筋力を出せる。しかし、真九郎を何度も攻撃しても潰れないのだ。
「頑丈だな。何か特別な鍛え方でもしてるのか?」
「まあな。俺を壊したかったら完全に動けなくなるまで破壊するんだな」
「どうやってそこまで肉体を改造したか教えてもらいたいものだ」
拳と拳が合わさる。
「オレを無視すんなよな!!」
「ボクもね!!」
左右から準と小雪が同時に仕掛ける。渾身の突きと蹴りを両腕で防ぐとミシミシと軋む。2人の攻撃もどんどん強くなる。戦う度に彼らの気のボルテージが上昇しているのだ。
「今だ紅!!」
2人が左右から攻撃したおかげで正面に居た真九郎は攻撃に転じることができる。
「しまった!?」
鍛えられた肉体に拳が中々届かないなら鍛えにくい箇所を狙えばいいだけである。手刀で喉を潰し、怯んだところを隙をついて耳に小指を無理矢理にねじ込み鼓膜を破壊。
「ぶおおおあああ!?」
「決めてやる。ウルラちゃんを怖がらせた怒りの鉄拳!!」
準の打撃に真九郎の拳も乗せる。2人の鉄拳がダエモンの顔面を打ち抜いた。打ち抜いた時、彼らの勝利が決定したのであった。
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真九郎の回想が終わり、目線を銀子に戻す。
「あの後ダエモンは九鬼家の従者部隊に捕獲され、連行されたわ。で、調べて分かったことだけど同時刻に柔沢紅香がダエモンが所属している組織を潰していたみたいよ」
「え、本当!?」
「本当よ」
「あの人らしいですね」
夕乃もため息をつきながら信じたようだ。この情報には「流石は紅香さんだ」としか言えない。まさか同時刻で同じ組織の敵と戦っていたのだから。
しかも紅香は敵の本隊を潰していたのだから功績が違う。揉め事処理屋の師匠としてますます尊敬してしまう。
「ウルラちゃんだけど親が見つかって故郷にちゃんと帰れたみたいよ」
「そっか」
ウルラの本当の親が見つかって故郷に帰れた。彼女は親と再会して優しく愛されているとのこと。家族に愛されるのは良いことだ。
これからウルラは愛されながら成長していくだろう。彼女が故郷に帰る前に見せた笑顔は本物だった。
「井上くんはどうしてる?」
「ウルラちゃんに再会するためにバイトしてお金を溜めてるそうよ」
「そうなんだ。井上くんなら必ず再開するね」
「でしょうね」
件の準だが実際に数か月後にウルラに再開したのだが、それはまた別の物語である。
「ウルラちゃん!!」
「あ、お兄ちゃん!!」
準に再開したウルラは向日葵のような笑顔だったという。
122
川神駅に冥理や千鶴、環に闇絵たちが揃っていた。連休が終わるから彼女たちも帰るのだ。
ややこしくも嬉しい訪問であった。彼女たちが帰るのは寂しいもので、千鶴なんて寂しいのか真九郎に抱き付いたままである。
「ほら、千鶴。行くわよ」
「うう、お兄ちゃん」
「千鶴。気持ちは分かるけど帰らないとダメよ」
夕乃が優しく諭す。本当は千鶴の我儘を聞いてあげたいけど、こればかりはできない。千鶴にだって学校があるのだ。
「私も寂しいよー」
「はいはい」
「対応が冷たい!?」
環と闇絵は来ようと思えばいつでも来れる。しかも暇さえあればいつでもだ。しかし冥理たちは難しいだろう。訪れるとしたら休みの日だけだ。
「ちーちゃん。また休みの日においで」
「…うん」
実際にすぐにまた休みの日に来るのだが、これも別の物語である。
「じゃあまたね夕乃、真九郎くん」
「はいお母さん」
「またねー真九郎くん。また来るよー」
「少年。これから先、また違う再会があるぞ」
闇絵がまたアドバイスを言ってくれる。「また再会とは?」と聞くが「それは自分で確かめろ」と言われてしまう。
沙也加の奪還時には『鉄腕』や『サンダーボルト』と再会した。そんな再開なら願い下げなのだが。
「ではまた」
読んでくれてありがとうございました。
今回の話で今の章は終了です。次回から新章に突入します。
次回は覇王ルートを考えています。原作よりもまたオリジナルになると思います。
何せ星噛絶奈の登場も考えてますからね。
で、最後に書きましたが環さんたちも帰ります。でもあまり活躍させてやれなかったから、また何処かで再登場させるつもりですね。