紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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ついに環さんと闇絵さんの登場だ!!
この一言で足りる!!


絶対切断
酒癖の悪い女と悪女


085

 

 

ある2人が川神市に訪れる。そのうち1人は昼間から酒を飲み、陽気な女。もう1人は全身黒装束で不思議な女。

川神には様々な人間がいるがその2人は川神にいる人に負けないくらい癖の強い女性だ。おそらく川神でも上位にはいるくらい。

そんな事を彼女たちに言えば否定してくるかもしれなし、肯定してくるかもしれない。

 

「いやー、お酒が美味しいね闇絵さん」

「そうだな。このワインなんか血のように赤く良い」

「あははは~。それにしても早く川神に着いちゃった。愛しの真九郎くんがまだ駅にいないよー」

「なら、少し川神を観光してみるのも良いかもな」

 

クイっとワインを飲む黒装束の女の動作は優雅で悪女のようだ。逆にもう1人の女は豪快に酒を飲む。見ていてなんとも美味しく飲むのだろうと人行く人たちは思う。

最も昼間から酒飲む女性をどう思うかは人それぞれである。

 

「じゃあ川神の観光にレッツラゴー!!」

 

五月雨荘の武藤環に闇絵。彼女たちは真九郎たちが留学している地域の川神市に興味を持って観光しに来たのだ。

本来ならば時間になれば真九郎たちが迎えに来るはずなのだが、予定よりも早く到着した為に時間が余っている。だから彼女たちは余った時間で近くを観光することを決めた。

 

「取りあえずお酒のツマミは売ってないかなー?」

「近くにはないな。あまり他の人に迷惑はかけるなよ」

「分かってるよ闇絵さん!!」

 

酒を持ってハイテンション姿の環と酒を飲んでも冷静な闇絵。なんとも正反対な2人である。取り合ず彼女たちは風の赴くまま、気の向くままに歩き出した。

 

「ふんふ~ん」

 

鼻歌を歌いながら歩く。普通ならご機嫌な人と思われて終わるだけだが環は昼間っから酒を飲んでハイテンションな美人。ある意味注目を浴びている。

環は美人だが、とにかく身だしなみに気を遣わず、素行も「山猿みたいな習性」と評される程に女らしくないので、素材を全て台無しにしているのだ。これには真九郎たちも頷いてしまう。

 

「それにしても川神は武術の盛んな地だから、そこらでバトってるかと思ったけど案外違うみたいだね」

「そんなのはただの無法地帯だ」

 

そんな話をしていたら前の方で騒がしい声が聞こえてきた。良く見ると人が集まっている。何かと思って近づいてみると誰かが決闘をしているのだ。

 

「無法地帯だったな」

「わー。血気盛んじゃーん。こういうの良いね!!」

 

ドコン。決闘する1人が相手をぶっ飛ばして決着がついた。

 

「今の人はまあまあでしたね。決闘資格はありますよ」

「分かりました。では義経様の決闘表にチェックしておきます」

「お姉さまお疲れさま。はいスポーツドリンク。水分補給は大事よ」

「おおーありがとうワン子。出来る妹だなあ」

「えへへ」

 

とても仲の良い姉妹がいる。その彼女たちは川神姉妹だ。

 

「うわー。可愛いアンド美人!!」

「どうやら姉の方がさっきから決闘しているみたいだな」

「あの人たち有名な川神姉妹だよ。姉の方が武神なんて呼ばれている武人だ!!」

「へえ、あれがねえ。内側からにじみ出る鬼だな」

 

闇絵は的確な表現をした。百代は確かに鬼のような戦闘狂だ。分かる人には分かる雰囲気を醸し出しているのだ。

だがこっちには酒鬼がいると思い横にいる環を見る。まるで水のように飲んでいるが最終的には全て吐くのが彼女である。

 

「いよーし、アタシも挑戦しよっかな」

「勝てるのか?」

「やってみなきゃ分からないよ!!」

 

環は人だかりをかき分けて前へと進んでいった。それを見て闇絵は小さく「ほどほどにな」と呟くのであった。

 

「挑戦者はもういませんか?」

(今日はこれで終わりか。まあまあ楽しかったけどアタリは居なかったなー)

 

最近の百代は義経たちと決闘したい武術家の品定めのために戦っていて多少は戦闘への欲求不満は消えている。しかし、ここにきて夕乃や真九郎たちが交換留学に来て治まった戦闘への欲求不満が戻ったのだ。

ただでさえ、つい最近のある夜は鉄心から絶対に外に出るななんて言われたことがあった。何でも川神学園である人物たちが決闘をしていたとのこと。その決闘は間違いなく彼女にとって面白いと思われるものであったに違いない。だがクローン奪還戦に百代が参加していたら間違いなくややこしくなっていただろう。

 

(あの夜に決闘していたのは間違いなく燕に与一、それに紅だな。見に行きたかったけど、ジジイからめっちゃ出るなと言われてたからなー)

 

彼らが戦った相手は間違いなく強者だ。遠くからでも気を探ってみると強い気を感じたからだ。

 

(ちぇっ、戦いたかったなー。でも決闘なら勝手に対戦相手を奪うわけにはいかないし。困った)

 

そもそも鉄心は百代に悪宇商会の者と戦わせるつもりはない。彼女はまだ本当の死闘を知らない。

もし悪宇商会を知って戦闘屋と戦いたいなんて言い出したら鉄心の胃のダメージがハンパないだろう。世間を知らなすぎるし、常識がずれている。

だが、それも今までの人生と彼女の才能のせいかもしれないのもある。

 

(燕のやつ、身体中にダメージが残ってたな。燕にあそこまでダメージを与えるとは相手が気になる)

 

百代は考える。

 

(与一なんかは目に見るようにボロボロだ。あの与一があんなんになるまで戦うとはな)

 

どんな相手と戦ったのか。

 

(とくに紅は顔に痣があったな。でも消えかけてた…紅も回復力があるのか?)

 

普通の者なら分からないかもしれないが百代は真九郎の顔の痣は分かっていた。そんなのがあれば気になる人は聞いてくる。

だけど答えは決闘した傷痕だとかで納得させられてしまう。川神ならばその答えでほとんどの者が納得するからだ。決闘が多い市だからこそだろう。

 

(強い奴と戦いたいー、死闘をしたいなー)

 

彼女の戦闘欲求は収まらない。収まらせるには彼女を発散させるくらいの戦いをするか、彼女の鼻っ柱の叩き折るかだろう。

鉄心もそうさせたいところだが、相手がいないので難しいと思っている。だがヒュームは、九鬼側は何かしら用意しているらしい。そのことが百代にとって楽しみではある。

 

「今日はもう挑戦者が居ないし変えるかワン子」

「はいお姉さま!!」

 

仲良く走り込みで川神院まで戻ろうかと思っていた矢先、元気でハイテンションな感じの声が聞こえてきた。

 

「ハイハーイ!! 最後にアタシ挑戦したーい!!」

「お、挑戦者か」

「おやおや、飛び入り参加ですね」

 

今回の九鬼家から出た審判役である桐山鯉は最後に出てきた挑戦者を見る。

 

(…酔っ払い。いえ、これは!?)

 

鯉は名乗り出た挑戦者を観察すると強さのレベルを感じ取って驚く。戦わなくても間違いなく義経たちと戦うに値する者であると。

だが酔っ払いなのがいただけない。でも相手が女性なので口にはしない。

 

「川神様がよろしければ決闘は成立しますがどうですか?」

「構わない。それに相手は美人のお姉さんだ!!」

「でも酔っ払いよお姉さま」

「ああ。酔っ払いだな」

 

酔っぱらいの環が武神の百代に勝負を仕掛けてきた。

 

 

086

 

 

武藤環VS川神百代

 

酔っ払いと武神の決闘が急遽始まった。お互いに真剣なんてものではなくお遊び感覚の決闘だ。

環は観光の記念に。百代は酔っ払いだけど美人のお姉さんの相手ができると思って。もし本気で決闘するならこんな状態で決闘あんてしないはずだ。

 

「では挑戦者はお名前をお願いいたします」

「はーい。武藤環。女子大学生でーす!!」

「では決闘を始めますので酒瓶は置いてください」

 

普通ならこんな者を決闘なんてさせるつもりはないが百代自身が勝負しても良いと言うので不問となる。

ふらふらと百代の前に立って構える環。

 

(あの構えは空手家か?)

 

正解である。環はこれでも町の空手道場で師範をしている程の実力者だ。道場に来てくれている教え子にちゃんと教えているかが気になるところではある。

 

「では、両者共に名乗りを!!」

 

百代も構える。

 

「川神院所属。川神百代!! 拳で戦う美少女!!」

「武藤環でーす!!」

「では、始め!!」

 

百代は環の様子を見る。相手が如何に酔っ払いとはいえ、武神である自分に決闘を仕掛けてくるのだから多少は実力があるのだろう。

 

「うー、ひっく」

「…酔拳でもつかうのか?」

「ひっく…」

 

なかなか仕掛けてこない環を見て百代は考えを変更する。どうやら相手もこちらの動きを様子見をしているらしい。ならばこっちから仕掛けてやると改めた。

 

(うっぷ、飲みすぎたかな。急にちょっと気持ち悪くなってきた)

 

だが百代の考えは的外れで、ただ少し気持ち悪くなったから動かないだけである。

 

「いくぞ。川神流無双正拳突き!!」

 

武神の無双とも言える拳が環に向けられて突かれる。その突かれる速さは常人では見切れない。そう常人ならば。

 

「なっ!?」

「わー、すっごい良い突きだね!?」

 

環は何なく百代の突きを受け止めていた。いや、何なくと言う表現は武神を軽んじる言葉になってしまう。

彼女が武神の拳を受け止めたのはそれほどの度量を鍛え上げたからの代物だからだ。環は女性でありながら大男の拳を指2本で受け止められる。

ならば腕1つならば怪力男の拳だって止められるだろう。だから武神の拳をも止められる実力までは完全に達している。

 

「嘘っ、あの人お姉さまの突きを受け止めた!?」

 

一子だけでなく周りにいる観客たちも驚いている。あの武神の拳を受け止めたという事実はそれだけで人を驚かせるものだ。

事実、百代自身でも驚いている。自分の拳が止められる相手なんて指で数えられるくらいしかいないから新に自分の拳を止めた環に強い興味を抱いた。

 

「ハハハ、これは面白い。私の拳を止めるとはな!!」

「こりゃあ強い突きだね」

 

環も武神である百代の一撃に驚いている。おかげで酔いが少し覚めたほどだ。

拳をはらって、構え直す。どうやら百代は環のことを強者として認めたのだ。もう義経たちと戦う資格は十分にあるが、寧ろ自分が思いっきり戦いのだ。

 

「これは久々に楽しめそうだな」

 

ニヤリと笑う百代。やっとまともに戦えそうな相手が久しぶりに現れたのがとても嬉しいのだ。

つい張り切って闘気を滲み出してしまう。

 

「お姉さまが少し本気出してわ」

(武神が少し本気を出した。と言うことはやはりあの女性は相当の実力者ですね)

「仕切り直しだ!!」

 

百代は瞬時に間合いを詰めて連続で必殺の突きを繰り出すが環は何とか避けて、受け止める。武神の猛攻とも言える攻撃に環は焦る。

決闘とはいえ本気で相手をするつもりはなかったお遊びだったが何故か百代が急にヤル気を出した。最初は百代だって遊び感覚だったと感じていたのに急な変わりようである。

 

「ハハハッハハハ、良いぞ良いぞ。もっと楽しませてくれ!!」

「元気だね!?」

 

どんどんと突きの速度が速くなる。環がクリーンヒットをさせてくれないのが嬉しくて、ついギアを上げてしまう。

これならもっと本気を出せる。もっと力を出せる。もっと楽しめる。もっと戦える。

 

「防いでばかりじゃ詰まらないぞ!!」

「じゃあこっちからも行くよ!!」

 

素早い突きをかわしながら拳を作る。酔っていてもしっかりと相手を見定めて狙う。

 

「むむっ!?」

「ふうう…」

 

環から一瞬だけ出た闘気を感じ取った百代はすぐに守りに入る。

 

「正拳!!」

 

正拳突きが百代に放たれた。すぐに守りに入ってたのでクリーンヒットはしないが正拳の威力はとんでもない。

彼女の拳は屈強な大男でさえ一撃で沈める。しかもまだこれで本気では無い。

 

「へえ。突きの威力も申し分無し!!」

「あちゃー、防がれちゃったかー」

「まだまだ終わりじゃないぞ!!」

 

鋭い蹴りが一閃するがしゃがんで避ける。そして環はその瞬間に目を光らせた。

 

「むむ、見えなかった!?」

「私のスカートは鉄壁だ!!」

 

何故か急にエロオヤジの才覚が出るのであった。しかもこの時に百代は何故か環に似たようなモノを感じ取った。

それは同じエロオヤジ属性があるからだろう。今は決闘中だが、話し会いでもすればすぐにでも仲良くなれるだろう。

 

「うらららららら!!!!」

「よ、はっと!!」

「やるな。ならこれはどうだ!! 川神流畳返し!!」

 

畳ではなくて地面がひっペ返して壁となった。そして壁を殴って破片が飛散した。これは防御のためでなく攻撃ためだ。

 

「痛たたた!?」

「もらった!!」

「もらっちゃやだ!?」

 

またも拳を受け止める。激闘が繰り広げられる。

観客たちや負けた武術家たちは固唾を飲んで決闘を見ている。何せあの武神である百代と対等に張り合っているからだ。

 

「す、凄いぞあの酔っ払い!!」

「あの武神とまともに!?」

「あ、ありえないわね。名のある武術家だったりするのかしら?」

 

拳同士がぶつかり合う。鋭い蹴りが繰り出される。

 

「ハハハハッハ。面白いぞ!!」

「いやーやるね。こりゃあ、ちょっとヤバイか……うぷっ」

 

決闘のボルテージも上がってきたがここで環のボルテージが下がってしまう。決闘のボルテージというよりも酔いの許容量に限界が超える。

 

「どうした。急に動きが悪くなった…ぞ!?」

「えろろろろろろおろろおろろろろろろ」

 

環は決闘中、盛大にリバースした。しかも百代の目の前で。

 

「吐いたぁぁぁぁぁ!?」

「おろろろろろろろろろ」

「やれやれ。限界だったか」

「あれ、何か黒い服の女性が出てきたわ」

「何やってんですか環さん!?」

 

ここで保護者の真九郎の登場である。




読んでくれてありがとうございます。

今回は環さんたちが登場で軽く百代と決闘しました。
でも環さんは相手が武神でもいつもどおりです。そしてまともに戦えます。

なんせ原作の作者様が環さんが能力とか無しならば最強と認めるくらいですからね。

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