紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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こんにちわ。
ついに悪宇商会との決闘です。どんな戦いになるかは物語を読んでってください。

では、どうぞ!!


松永燕VSビアンカ

072

 

 

松永燕VSビアンカ

 

「悪宇商会所属。『八角杖』ビアンカ」

「川神学園3年F組。松永家の娘、松永燕!!」

 

先に仕掛けたのはビアンカであり、棍棒を真っすぐに突き出してきた。次に斜めに振り払い、回転させながら連続で振るう。

 

「おわっと!?」

 

燕は相手が棍棒を使う戦闘屋と既に情報として得ているので、どう攻撃してくるかが大体予想できるので何とか避けることが可能だ。

だが相手は戦闘屋のプロ。攻撃に一切の遠慮が無く、鋭い一撃ばかりである。一発でも食らえば大ダメージだろう。

 

(ちょっと相手ってば本気で殺しにきてない!?この決闘は一応不殺でしょ!?)

 

これに関しては燕の考えが少し甘かったと言うしかない。相手は戦闘屋。決闘でも相手を本気で壊しに来る者なのだ。

燕も考えが甘えてたわけでは無いが、戦闘屋との決闘は初めてで予想を外していたのだ。すぐに考えを切り替える。

 

(もう考えた策を全て出し切るつもりで戦わないとマズイね)

 

そう思った瞬間に彼女も一手を繰り出す。蜘蛛型の籠手から電撃が走る。

 

『スタン』

 

機械音が響き、バチチッと電撃が走る音も聞こえてきた。ビアンカは痺れた手を見て何度も握っては開いてを繰り返す。

 

「ふーん。その籠手にいくつか仕掛けがあるみたいだね。でも電撃くらいじゃ効かないよ」

 

棍棒を再度握ってビアンカは走り出す。

 

「次!!」

『スモーク』

 

今度は煙幕が放出され、川神学園のグラウンド場が煙で埋まる。これは当たり前のように目くらまし。

どんな人間も煙幕の中では目に頼ることができない。実力のある武人ならば相手の気を察知して何とかするが相手は武人では無くて戦闘屋だ。この隙をつく燕。

平蜘蛛の籠手からは先ほどよりも高圧の電撃が走る。

 

(もらった!!)

「もらってないよ」

 

スレスレで避けるビアンカ。そして容赦なく振るわれた棍棒は燕の腹部に痛すぎる衝撃が走った。

ミシミシと軋る音が聞こえて煙を吹き飛ばしながら後方へと転がる。

 

「ゴホゴホッ…とんでもなく効いた」

「あは、煙幕で目くらましなんて効かないよ。戦闘屋をナメないでよね」

 

なぜ燕の位置が分かったのか。それは殺気による感知であるビアンカが分かったのだ。彼女は悪宇商会の戦闘屋で日常的に、仕事で殺し合いをしている。

ならばそこらの武人以上に殺気の感知に長けているのは当たり前だろう。正直な感想を言えばどちらが戦いの経験があればと語るならばビアンカだ。

 

「やっぱり簡単には上手くいかないか」

 

よろよろと立ち上がり、腹部を擦る。ダメージはやはり大きく、一発で重症だ。骨は折れていないが次に同じところ打ち込まれたら骨がボキリといくだろう。

 

『キュア』

「へえ、回復機能もついているんだ。ま、微々たるものだと思うけど?」

「どうかな?」

「強がりだね」

(う、正解)

 

煙幕はモウモウと舞っている。特別製なのかまだ消えない。これはせめて少しでも回避率を上げるためでもある。

 

(まあ他にもあるけどね)

 

歯を食いしばってビアンカに突撃する。平蜘蛛の籠手からは高圧電流が走る。

 

「やああああ!!」

 

連続攻撃。一息させる間も無く連続で攻撃していく。奇襲も何も無いが煙に潜みながら攻撃していくがビアンカには避けられる。

やはり相手の方が殺気の感知に長けているのだ。だが避けられるとしてもスレスレの状況ならば1つ流れが変われば攻撃は直撃するはずだ。

 

『ショット』

「おっとお!?」

 

いきなり放たれた弾幕を棍棒で弾き飛ばす。平蜘蛛の籠手には様々な仕掛けが施されている。

多種多様に使う燕は強いと思うビアンカ。しかし所詮はただの学生で戦闘屋に敵うはずがない。仕事はキッチリこなすがこの決闘で少し遊んでしまおうかと思ってしまう。

 

「連続発射!!」

「当たらないよ。下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるってことわざがあるけど、実際はそうでもないよね。当たらないものは当たらないの」

 

棍棒を高速回転しながら弾幕を弾き飛ばす。そしてそのまま突撃して棍棒で連続の突きを繰り出してきた。

平蜘蛛の籠手を盾に連続の突きを受ける、避ける。この籠手が特別製でなければ砕けていたかもしれない。

 

(向こうの棍棒も特別製かもね。良い素材で作られている)

「あは、この棍棒を砕けるなんて思わないこと。これは悪宇商会で制作された特別製だからさ」

 

横に一閃、斜めに一閃、縦に一閃。棍棒を鋭くを振るう。空気を切る音が聞こえる。どれくらいの速さで振るっているか気になる。

 

(あの細腕で…)

「そら!!」

「がう!?」

 

平蜘蛛の籠手の上から無理矢理、棍棒を叩きつけてくる。まさに力任せだ。これ程の力は単に腕力だけじゃなくて遠心力も利用している。

その威力から横に殴り飛ばされたが初撃の時よりかはマシなので着地する。カチャリと籠手の様子を見ると異常は無し。

 

「まだ大丈夫みたいだね」

 

カチリと平蜘蛛の籠手を起動するとキュイインと機械音が鳴る。

 

「次はこう!!」

 

ビアンカは人間とは思えない跳躍で高く跳んで上から棍棒を突き刺してきた。

 

「危なっ!?」

 

ズガンっと地面には綺麗な穴が出来上がる。食らえば間違いなく肉がえぐれ、粉砕骨折だ。

 

「あは、外れちゃったか」

「まったく容赦無いね」

「戦いに容赦も何もありませんよ。ふふ」

「そうだね。私も容赦無くいくよ」

 

シュパッと平蜘蛛の籠手からワイヤーが放出される。キリリリと鋭く棍棒に絡みついた。

 

「棍棒を奪う…いや、電流を流す気か」

「正解。くらえ!!」

「あは、くらわないわ」

 

カシャリと音が聞こえた瞬間に棍棒が2つに分かれた。

 

「な、仕込みか!?」

「正解。終わりよ」

 

一瞬にして燕の間合いに入り込んで半分になった棍棒を首めがけて振るった。

 

「あぐあああ!?」

 

首にとてつもない衝撃が走った。ミシミシと嫌な音が聞こえてくる。

 

「あ、あぐ」

「あは、これはびっくり。首の骨が折れなかったんだね。柔軟に鍛えてたおかげかもね」

 

確かに折れてはいない。しかし思った以上にダメージが酷いのだ。痛みで目さえも開かない。

ビアンカはスタスタと燕から離れて半分になった棍棒を拾い直して元の棍棒に戻す。

 

「そろそろ終わりにしましょ。足を折っておしまい」

 

ビアンカが燕にトドメをさすために近づく。機動力である足を潰せば負け確定だ。しかし燕の目は諦めていない。

まだ秘策はあると思える目をしているのだ。彼女は諦めない。

 

「その目は不快。潰してあげる」

「でっきるかな?」

「ふん、つよがり…を?」

 

急にビアンカの身体がふらつき、眩暈もする。この症状に混乱したがすぐに理解できた。

 

「まさか…毒?」

「正解」

「いつの間に毒を。それらしい攻撃なんて…まさか!?」

「そのまさかよ」

 

周囲の煙幕を見る。その煙幕こそが毒であるのだ。そもそも燕はマスクを装着していた意味が分かる。最初はただの装備かと思っていたが全てこの為である。

煙幕を出した時に『ポイズン』も出したのだ。この毒は無色無臭。殺傷能力は無いが麻痺させることはできる効力はある。

 

「く、こんな毒くらいで」

 

ビアンカも毒の耐性はあるが全く効かないというわけでは無い。この毒は即効性があるわけでは無いため、徐々に時間をかけながら毒が侵すように戦っていたのだ。

作戦は成功したが時間をかけてバレないように戦っていた結果がこの体たらくなのだが。それでも成功したもの勝ちなのだ。

 

「うん。完全に効いていないのは予想できた。でも少しでも毒が効いてくれれば良いの」

 

燕は手を空高く掲げる。

 

「来て、平蜘蛛!!」

 

燕の切り札である平蜘蛛が起動する。

空高く、天高く、人がやっと進出した宇宙に九鬼専用の武器庫衛星が形態変化する。

平蜘蛛の扉が開き、勢いよく放出された。目的地は燕のいる川神学園だ。隕石の如く落下する。

 

「あれが平蜘蛛」

 

ポツリと誰かが呟く。燕の下には精密、芸術とも言える出来である武器の平蜘蛛が降り立った。

ガチャリと平蜘蛛を装着して、ターゲットであるビアンカに標準を定める。

 

「決めるよ!!」

 

決着をつけるために燕は走り出す。

 

「くらええええええええええええ!!」

 

平蜘蛛はビアンカに直撃する。最初の一撃の後に追撃で二撃目がガシャンと打ち込まれた。

 

「ああああああああああ!?」

 

平蜘蛛の攻撃は超撃とも言える威力。切り札ならば当然の威力である。

ビアンカは平蜘蛛の攻撃で数メートル先まで殴り飛ばされた。その威力は電車の突撃の如く。

 

「どうだ!!」

 

決着。

 

「そこまで。勝者は松永燕!!」

 

 

073

 

 

松永燕VSビアンカの戦いは松永燕の勝利。

なかなか一方的な決闘であったが彼女の策で何とかビアンカを倒すことに成功した。ボロボロで痛みが酷いが勝ったことの方が気持ち的に上回っている。

 

「痛たた…まったく酷いや」

「お疲れさまです。燕さん」

 

真九郎は手を貸す。燕の身体はもうボロボロであるのでがから手を貸さねば上手く立ち上がれないだろう。

燕も遠慮なく真九郎の手を借りて立ち上がる。致命傷では無いがすぐに治療すれば完全回復するはずだ。そう思っているといつの間にか九鬼の医療班が駆け付けていた。

 

「戦闘屋って強いや…いや、正直に言うと怖かったよ」

 

武人でも燕は学生。プロの戦闘屋と戦うにあたって恐怖がまったく無いなんてことは無かった。

 

「それでも燕さんは勝利しました。凄いですよ。それに怖いっていってますが俺にとっては勇気をもって戦った。素敵ですよ」

「あはは、ありがとう真九郎くん」

「松永燕様の治療はお任せください。最高の治療を致します」

「ありがとうございますクラウディオさん。でも治療は病院じゃなくてここでお願いします。この決闘を最後まで見届けたいんです」

「分かりました。ですが絶対安静ですよ。致命傷はありませんが重症であることはありません。特に首へのダメージは酷いのですから…痛みが引くまで不自由な生活になるでしょう」

「気にしませんよ。それより勝ったんですから義経ちゃんたちは?」

「はい。この勝利で弁慶を取り戻すことができました。ありがとうございます」

 

横を見ると弁慶がヒュームに連れられて戻って来た。見るとケガ等はなく無事そうだ。

 

「弁慶さん」

「弁慶ちゃん」

「姉御、無事か!!」

「ああ無事だよ。でも先に私じゃなくて義経か清楚先輩を戻した方が良かったのに」

 

やはり臣下として主である義経の無事を確保したいが、これは決闘で決められたルールであるため仕方が無い。義経を救うにはユージェニーを決闘で倒さねばならないのだ。

 

「無事で良かった弁慶さん」

「心配してくれてありがとう。それにしても私が主を守れなかった…」

「落ち込まないで弁慶さん。貴女は何も悪くない。ここは俺らに任せてください」

 

真九郎に力ある目を見て信じられる気持ちが溢れる。

 

「義経を救うのは俺の役目だ。任せろ姉御」

「与一…そうか、じゃあ頑張れ!!」

 

弁慶が応援という名の気合いを与一の背中に注入する。紅葉である。

 

「痛ってええええええ!?」

「行け与一。必ず主を救え」

「ったく、言われるまでもねえ」

 

与一が愛用の弓矢を握り、グラウンド場にへ堂々と歩く。決闘2戦目が始まる。

既にグラウンド場には悪宇商会のユージェニーが立っている。彼女からは静かに闘気、殺気が滲み出ている。彼女の鉤爪がギラリと鈍く光る。

 

「来たか残りのクローン」

「那須与一だ。お前を倒して義経を救う」

「ビアンカがやられたのは予想外だった。だがお前を倒せば元に戻る。そしてプリムラが紅を倒せば良し」

「俺は負けねえ」

「そうか。なら特に話すことは無い。仕事を完遂させる」

 

2戦目は那須与一VSユージェニーの決闘が始まる。

 




読んでくれてありがとうございました。
感想などあれば気軽に下さい。

それにしても本当に戦闘シーンが大変でした。
何せ、戦闘屋のプロVS学生の武人の戦闘シーンは難しいですよ。
燕の策は毒による動きを止めて、切り札を叩きこむというシンプルなものになりました。
流石の戦闘屋もあの『平蜘蛛』が直撃すればただじゃすまないですからね。
でも『平蜘蛛』を叩きこむには相手の機動力を削ぐ必要があります。あれだけの大振りならプロの戦闘屋は避けるでしょうから。そのための毒でした。


次回は与一VSユージェニー
どんな戦闘にするかまた悩みますので次回もゆっくりとお待ちください。

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