紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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こんにちわ。
もしかしたら今回の物語はタイトルで少し展開が分かるかもですね。

では、どうぞ!!


強者の集まる梅屋

027

 

 

川神の案内をされながら夕方の河川敷にて真九郎たちは歩く。時間的にもお腹が空くものだ。ここで紋白が何か食べたいと言い出したので何処かで食事することが決まる。

 

「何が良いですか紋様?」

「そうだな。梅屋とやらが良いな。紫も良いか?」

「構わぬぞ」

「分かりました。案内しましょう」

 

大和に案内されて梅屋へと到着する。商店街の一角のようで、今の時間帯は稼ぎ時だろう。

 

「ん?」

 

いきなりバサバサと鳥たちが飛び立つ。それは鳥たちが梅屋から異様な気を本能的に感じ取ったからだ。近くにいては危険と察知したから逃げたに過ぎない。野生動物の危機感の察知は人間より上だ。

 

「うお、急に鳥たちが飛んでいった」

「うーむ。あの梅屋からとても強い気を感じるな」

「この気の大きさは尋常じゃありません。私が確認して参ります。リン・チェンシン様。私が離れている間は紋様と紫様をお願い致します」

「分かった。引き受けよう」

 

クラウディオが尋常じゃない気の量を発している梅屋へと入っていった。

 

 

028

 

 

夕乃は百代に川神の案内をしてもらっていた。せっかくの心遣いを無下には出来ないので、喜んで百代と川神を観光する。

更にメンバーは燕に由紀江もいる。元々、燕は百代と一緒にいたが由紀江は途中で確保されたのだ。

 

「ありがとう百代さん」

「良いってことよ夕乃ちゃん。その代わり私と勝負しないか?」

「遠慮しておきます」

 

笑顔で決闘を申し込むが、同じく笑顔で断られる。

 

「むう・・・駄目か」

「アハハ。振られちゃったね百ちゃん」

「なら燕。決闘しよう!!」

「まだダメ」

「むう・・・」

 

2人にフラレた百代をタイミング良く松風がからかうが、逆に由紀江が百代に可愛がられる。

 

「あわわわ!?」

「黛さんをイジメては駄目ですよ百代さん」

「だってだってー」

「だってもさってもありませんよ」

 

母親が娘を注意しているように見えるとクスクス笑ってしまう。

バトルマニアも母親的な存在には頭が上がらないのかもしれない。

尚、真九郎は夕乃には絶対に頭が上がらない。

 

(それにしても百ちゃんは相当夕乃ちゃんを気に入ってるね。まあ、彼女から感じる強さは私も気になるけど)

 

燕は夕乃から感じる強さが気になっていた。それに微かな動作は同じ武術家なら分かるのだ。

知り合ってから少ししか経っていないが、燕は夕乃を百代と同じくらい興味対象としている。

 

(じゃれあいとは言え、百ちゃんの絡みを避けるのは並みの者はできない。でも夕乃ちゃんは簡単にやってのけた。どれくらい強いんだろう?)

 

もしかしたら、ある依頼の成功の手助けになるかと思う。それに戦うことになるかもしれないので、何か弱点を見つけておきたい。

 

(うーん。百ちゃんの心を揺さぶるなら大和くんとかかな。夕乃ちゃんは・・・真九郎くんかなあ?)

 

確かに百代の心を揺さぶるなら大和を利用すれば効果はある。しかし夕乃の場合、真九郎を利用したら叩き潰されるだろう。しかも真九郎もろとも。

いろいろな意味で容赦が無いのだ。

 

(真九郎くんにもちょっかいだしてみようかなー)

 

燕はまだ知らない。真九郎に恋する夕乃は敵対者に容赦が無いことを。しかも相手が老若男女関係無い。真九郎を利用して敵対した場合は相当の覚悟が必要である。または後悔しかないだろう。

 

「そう言えば夕乃ちゃんはどんな武術をやっているの?」

 

大和やクリスから聞いた話だと真九郎と同じ武術を習っていると知っている。情報は多いに越したことはない。

 

「それ私も聞いたな。崩月流だとか。なあ、まゆっち?」

「はい。そうですね」

 

武術の名前が『崩月』と言うことから夕乃の家系で教えていることが分かる。

 

「すいません。詳しくは教えられないんです」

「そっか。うちと同じかー」

 

川神流は門外不出の武術。同じように門外不出の武術があってもおかしくない。だから詳しく教えられないのなら理解はできる。

燕は情報が得られなかったのが少し残念だと思っているが仕方ない。

 

(何か燕さんは探りをいれてる感じですね。彼女のようなタイプは確実に勝利への策をいくつか用意しないと戦わないでしょう)

 

そして百代に関しては毎回決闘のアプローチを受けているので性格は理解している。

何度も思うが彼女はバトルマニアだ。

 

「いや~それにしても私の周りは可憐な華ばかりだ。テンション上がっちゃうなー!!」

 

戦えないけど可憐な美少女に囲まれて満足のようだ。そしてそのまま商店街通りに入る。

 

「・・・んん!?」

 

梅屋と言うファーストフード店から強い気を感じた。百代だけじゃなくて夕乃たちも気づいている。

これは気になって梅屋に入ると粋の良い挨拶が聞こえてきた。

 

「ラッシャイ!!」

「って、じじいたちか」

「おお、モモじゃないか」

 

何故、鉄心たちが梅屋にいるかと言うと自由人である刑部が働いていると聞いたからだ。

何も問題無いか確認しに来たのだ。結果は良好であり、刑部自身も天職だと認めている。

 

「悪いなじじい。奢ってくれるなんて。私はチーズ牛飯。夕乃ちゃんたちも頼んで良いぞ」

「こらっ誰も奢ると言っておらんじゃろ」

「良いじゃねえか。奢ってやれよ」

「ったく・・・仕方無いのう」

 

ヤレヤレと思いながら百代たちの分を奢る優しい鉄心である。

 

「私は豚丼、単品とろろで!!」

「おっ、分かってるねお嬢ちゃん!!」

 

好きなメニューを頼む。すると新たなお客が入店してきた。その人物とはヒュームだ。

 

「この店から強い気を感じたから入ったが、お前たちか」

「おお、ヒュームまで」

 

ヒュームは梅屋にいるメンバーを見て苦笑する。

彼らはただ客として集まっているだけだ。それを聞いたヒュームは「赤子の群れか」と笑ったのだ。

するとクラウディオが新たに入店。これにはリーも「危険なレベルの人間が増えた」と口を動かす。たしかに梅屋には強者ばかりが集っている。

 

「フ・・・赤子共はすぐ怒るということだ」

「喧嘩を売るのが好きな人ですね。高く買いますよ?」

「お前はすぐに挑発に乗るでない」

 

一方、燕は豚丼に単品とろろを貰って、マイペースと思わせながら腰の武器に手をかけている。これには松風も「やりよるわい」と呟く。

そして今度の視線は夕乃へと移す。彼女は普通に食事をしていた。無警戒と言うわけでは無いが、辰子に次ぐくらいヒュームの威圧感を無視している。

 

『この2人パネェ』

「あわわわ。2人とも冷静ですね」

 

コトリと箸を置いて口元を優雅に拭く夕乃。

 

「大丈夫ですよ黛さん。ここは食事をする処ですから」

『ほえ?』

「ここは食事する場所。戦う所ではありません。それにヒュームさんは九鬼の従者部隊序列零位。そんなお人が暴れて九鬼の評判を落とすなんてことしませんよ」

 

冷静に状況を分析して適格な言葉を言う夕乃。何も間違ったことは言っていない。

 

「むう・・・しかし俺が敵だったらどうする赤子共?」

「どうするもこうするもないでしょう」

 

パチンとヒュームの頭を叩くクラウディオ。

 

「むう」

「何を言っているんですかヒューム。ここは崩月夕乃様が言うように食事をする場所です」

「むう・・・おいっ牛焼肉定食ダブルでライス大盛だ」

 

闘気を抑えて食事を始める。ここは闘技場では無く、食事処である。

クラウディオは安全を確認してから外に出て紋白たちを中に入れる。

 

「おや、見知った顔が」

「あれ夕乃さん」

「真九郎さんじゃないですか。まさか会えるなんて私たちはやっぱり運命・・・」

 

ここで夕乃は真九郎にベッタリとくっ付いている紫、紋白、切彦を見て目を鋭くする。

何故か真九郎は汗がダラダラと垂らして動けない。やっぱり夕乃には逆らえないのであった。

 

「真九郎さん」

「はい何ですか夕乃さん」

「説明してください」

「はい」

 

真九郎に向けられる威圧感にいつもハンパない。これには百代たちも少しビックリ。




読んでくれてありがとうございます。

梅屋にはとんでもない強者たちが集まって店長びっくりですね。
さて、夕乃さんは真九郎に誰か女性が一緒に居たら取りあえず威圧感を出して説明させるのがパターンだと思ってます。

そして、原作でも燕は百代を倒すために大和にちょっかい出します。
逆に夕乃と戦うこととなったら真九郎にちょっかいを出すと思いますね。でもそれは逆効果だと思ってます。なんせ浮気は許さない精神で夕乃は真九郎もろとも叩き潰しそうですしね(愛の稽古)

ではまた次回!!

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