紅 -kurenai- 武神の住む地   作:ヨツバ

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連続更新3話目です。
先に述べますが義経ルートのメインである一騎打ちにはこの物語では書きません。
既に決着がついている状態で物語が進みます。
どんな内容か知りたい方は原作をどうぞ。

タイトル関してですがそれはオリジナルの暁光計画です。
そっちがこの物語のメインです。


プランAからプランBへ

270

 

 

日常も非日常も変わらずに時間が過ぎていく。時間を超越できる存在なんて神様くらいのものだろう。

裏闘技場での事件は終わったが、川神学園では日に日にある事が大きくなっていた。それは義経と旭もとい義仲の源氏合戦だ。最初は小さな競い合いくらいであったのにいつの間にか学園を巻き込んだ選挙戦まで膨らんだのだ。

そして最後には一騎打ちの決闘までもつれ込んだ。

 

これはまさにお互いを高め合う勝負だろう。義経自身、真剣に義仲と真向に戦っていた。しかし最後の決闘だけは絶対に負けられなくなったのだ。

絶対に負けられない理由は義仲からある事を聞いてしまったから。それは暁光計画というものだ。

 

暁光計画の内容だけを聞いたら良いものかもしれないが、裏の中身が異常であった。

何で義仲もとい旭が世界のために人柱にならなければならないのか。義経はそれが理解できなかった。

世界のために自分が犠牲になるなんてフィクションではよくあるかもしれない。だが彼女に関してはまさに本物である。人間の命1つで世界が良くなるなんて間違っている。義経はそう思った。

 

だが義経の言葉は義仲に届かない。暁光計画の発動条件は義仲が義経に勝つことで自分がより優れていると確定させることだ。ならば義経が義仲を倒せば暁光計画を崩すことができるはずだ。

だから絶対に負けられなかった。

 

「義経が勝ったんだ。なのに何でだ義仲さん…」

 

最後の一騎打ちではお互いに満身創痍になりながらも義経が勝利した。これで暁光計画は崩れるはずだったのだ。だが現実は自分が思い描いた通りにはならない。

 

「暁光計画が続いているってどういうことなんだ!?」

 

暁光計画は瓦解なんてしていなかった。

義経が義仲に勝っても暁光計画自体を瓦解できるわけではなかったのだ。暁光計画の中の1つのプランが潰れたに過ぎなかったのだ。

 

「暁光計画はプランAからプランBに変更しただけよ義経」

 

プランAが源氏合戦によるものでメディアや取材、九鬼財閥を利用したものだ。特に最後の一騎打ちでは義仲が勝ったとすれば全世界にクローンとして最高の傑作として知れ渡るはずだったのだ。だが結果として義経に負けてプランAが崩れた。

だからプランBに変更したのだ。

 

「プランB?」

 

プランBとは義仲の価値を既に理解している者に義仲とクローン技術を引き渡すものである。このプランは裏オークションで発動する。

プランAはもっと義仲の価値を理解してもらうためのプランだが、プランBは最初から義仲の価値を理解されているのでただ引き渡すだけ。

義仲の運命は最初から決定していたのだ。義経がどう頑張ろうが意味は無かったのである。

 

勝とうが負けようが運命は変わらない。

 

「世界はより良くなるわ。義経も今より世界が良くなったと思ったら私を思い出してね」

「義仲さん!!」

 

義経が大声で訴えても届かない。

 

 

271

 

 

義仲もとい旭が死んでしまうかもしれない。

義経は出来る限りのことをしたが何も変えられなかった。源氏合戦で勝利しても意味は無かった。もう自分だけではどうにもならないのだ。

だから義経は彼に頼った。

 

「真九郎くん。力を貸してほしいんだ」

「義経さん?」

 

揉め事処理屋の真九郎。揉め事処理屋ならば今回のことを解決に導いていくれる職種だ。

彼女の判断は間違いではないだろう。そして暁光計画に関しては彼も知っている。彼だけではなくて大和たちも知っている。

源氏合戦では大和や真九郎も関わっていたのだから知っているのだ。暁光計画に関してはみんながみんな理解できなかった。

ありえない、馬鹿げている、等だ。だが暁光計画は本気。真剣なのだ。

 

「みんなの力を貸してほしいんだ」

 

義仲もとい旭を助けるには力が必要だ。人が必要だ。だからこそ義経は大和や冬馬、九鬼に声を掛けていった。

相手は最上幽斎だけではないだろう。裏オークションだって関わってくるかもしれない。

学園生だけでは駄目だ。大人の力がいる。だからこその九鬼だろう。

 

「義仲さんを説得できなかった…でも諦めたくはないんだ」

 

義経のやっていることは旭にとっては迷惑かもしれない。でも世界のために人柱になるのは間違っている。

 

「揉め事処理屋の真九郎くんに依頼する。義仲さんを最上幽斎さんから奪ってほしいんだ」

 

 

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川神市の何処か。その何処かに紅真九郎は柔沢紅香と待ち合わせていた。

彼女にはどうしても言わなければならないことがあるのだ。それは仕事に関することだ。

紅香から川神で裏オークションに関して仕事の手伝いを言われていたのだ。しかし、真九郎は義経から旭を救ってほしいと言われている。

これは真九郎自身も旭を助けたいと思ったからでもある。だがそのために紅香の仕事をキャンセルしてしまうのはやはり申し訳ないのだ。

 

「ん、そうか」

 

だが紅香は煙草をいつも通り吸いながら真九郎のキャンセル話を聞いていた。

 

「ちょうど良いや」

「ちょうど良い?」

「ああ。取りあえず理由は?」

「実は別の仕事が入ったんです」

 

その別の仕事が義経から頼まれた旭を幽斎から奪うことである。

 

「ああ、それな。本当にちょうど良いじゃないか」

「え、ちょうど良いって本当に何ですか?」

「私のところにな九鬼から最上幽斎をどうにかしろって話が来てるんだよ」

 

九鬼から紅香に幽斎と旭を見つけて捕まえてほしいという依頼が来たのだ。だけどこういうのは真九郎に任せるかっと考えていたからちょうど良かったと言ったのだ。

何故真九郎に任せようかと思ったのかはやはり彼女の直感である。紅香はこういう時の直感は全部上手くいくのだ。

紫の時もそうだった功績もあるのだ。

 

「な、ちょうど良いだろ?」

「…そうですね。なら任せてください」

「ああ。裏オークションの方は私に任せておけ。だから最上親子の方は任せたぞ」

「はい!!」

 

これで仕事に集中できる。紅香から正式に仕事を貰ったのだから。

この仕事だけは必ず達成しなければならない。必ず旭を幽斎から奪って救わなければならない。

 

「そういえば弥生に助けてもらったそうだな。後で礼を言っとけよ」

「はい、それはもちろんです。…何が好きですかね?」

「さあな。とりあえず手裏剣でもあげたら良いんじゃないか?」

「手裏剣がどこに売ってるか分かりません」

 

紅香は冗談で言っているので笑いながら真九郎をからかっている。彼女の冗談はどうも分からない。

煙草を吸って煙を吐く。その煙は妙に紅香をかっこよく際立たせるように見えてしまうのは錯覚だろうか。

 

「それにしても今回は悪役だな」

「悪役?」

「ああ、だって人さまから娘を奪うんだからな」

 

確かにそうである。見方によってはというよりも、よくよく考えれば真九郎側が悪かもしれない。

旭の命を助けるために幽斎から奪う。普通は真九郎や義経たちが正義に見えるかもしれないが実際は違うのだ。

幽斎の暁光計画について旭は理解しており承諾しているのだ。自分の父親を恨んでいないし、寧ろ感謝しており自ら暁光計画の要になって犠牲になろうとしているのだ。

どこから聞いても自分が助けられたいという気持ちはないのだ。そこに彼らの計画を理解できない義経が真九郎に依頼して旭を救ってほしいということになったのだ。

助けも求めていないのに旭は父親から引き離される。それを実行する真九郎たちはまさに悪ではないだろうか。

 

「…そうかもしれませんね」

 

義経たちは自分が悪だと思っていない。旭とは競い合った仲であるが敵とは思っていないのだ。

川神学園では頼りになる先輩であり、同じクローンであり、様々な学園生徒から慕われる人だ。だから助けたいと心から思った。

この本心に義経たちは偽りがない。だから自分たちが悪ではなくて正義だと思っているのだ。

 

「正義も悪も難しいですね」

「そうでもないぞ。結局は勝った奴が正義だしな」

 

正義と悪に考えても答えは出てこないものだ。

 

「でも紫が言ったように悪い奴が悪いことしてる。正義の人が良いことをしている。そんなものかもしれない」

 

難しく考えるな。心を惑わされるな。

やることは1つなのだ。旭を救うために幽斎から奪う。それだけだ。

「迷いはしませんよ」

「そうか。じゃあ努力しろよ」

「はい」

 

揉め事処理屋の仕事が始まる。

 

 

273

 

 

最上旭を無事に裏オークションに運んでいくには護衛が必要だろう。きっと彼らのことだから必ず旭を助け出しに来るだろう。

だがそれも試練だ。幽斎と彼らの試練だ。ならば幽斎がすることは決まっている。

 

向こうが旭を奪うことが勝利条件ならば、こちらは旭を守ることが勝利条件だ。

裏オークションの会場に向かって旭を出品すればもうどうしようもない。この勝負は大きな試練だ。

 

「あの傭兵団を雇うかな。それにある企業から護衛をしてくれるって話もきているし。でもあの企業はただクローンの臓物が欲しいだけだろうからね」

 

幽斎は来るべき試練のために準備を始めるのであった。




読んでくれてありがとうございます。
次回もゆっくりとお待ちください。

さてさて、暁光計画って義仲が義経に勝たなくても発動できると思うんですよね。
だってヒト・クローン技術って世界でとんでもない技術ですし。ならその価値が分かる者なら最初から義仲が完成されている傑作って分かると思います。
ならばいちいち義経と競い合わなくても関係ないと思うんですよね。

だから物語であるプランBは私が考えたオリジナルです。
義仲が義経に負けても関係ない。それが今回の物語でした。そしてついに最後の戦いに入ります。


てか、なんだかんだで100話目だこれ

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