この作品がオリジナル作品の週間ランキングの第6位に入っていたことに驚きました(笑)皆様の応援のお陰です!ありがとうございます!
えー、今回は祐介へのスポットを多めにした話となっています!
妹たちの方が良いという方々、すみません(汗)
ではでは、どうぞ!
–––––《聖典》。
それは、齢十八になった男性が初めて所有することを許される(ちなみに俺は16歳である)書物であり、用途としては、専ら我ら男性の荒ぶる
なお、《聖典》には多様な種類があり、俺が
当然、これらは
...........................。
段々言い訳が虚しくなってきた。もうやめよう。
とにかく、現状を把握しなければならない。俺は今、クラスメイトにして超ハイスペックボクっ娘、
「くそっ、どこだ......どこだ......!?」
無論、その理由は、行方不明になった俺の所有物である同人誌を探すためである。本来ならば俺の部屋に隠してあるのだが、今日の柊たちの訪問によって別の位置に動かした上、さらに柊たちのセット建設の影響でどこかに移動させられ、行方不明になってしまったのである。...... っていうか、ほぼ柊たちのせいじゃねーか、コレ。ギルティ。
......まぁ、見つからないのはエロ本だけじゃないんだが。
ー数分前ー
『お兄ちゃん争奪戦、第3試合目のお題は......《掃除》!ルールは簡単!今から
柊が高らかに更なるお題を出した。しかし掃除か。......何というか、もう妹としてのスキルを争うモノじゃなくて、花嫁修業みたいな内容になってね?
「クジ、ですか......?」
「それで大吉引けば勝ちなんですかー?」
『うん、飛鳥ちゃん、これはおみくじじゃないんだよ。これには、今から二人が掃除する部屋の場所が書いてありまーす!』
柊が、そう言いながらクジを見せてくる。そこには、『キッチン』『クスノキくんのお部屋』『書斎』『モニター室』など、我が家の様々な部屋や、本来我が家に存在すらしていなかった部屋の名前が記載されていた。いや、テメーが造った部屋はテメーが掃除しろよ。
『そして、二人は引いたクジに書いてある部屋を掃除してもらい、部屋の広さや、掃除のし易さなどを考慮し算出した点数で競ってもらいます!』
「いや、そんなの比較しようがないだろ......」
『大丈夫、こんなこともあろうかと《お掃除スキル練度算出くん》を作ってきたから!ボクが!』
「名前だけで機能が分かるのは素晴らしいが、相変わらずのスペックの無駄遣いだな!」
その機械はこの競技以外に使い道があるのだろうか。......いや、意外と役立ちそうだな.......。例えばシンデレラのお姉様たちが「あらやだ!スキル練度34ですって!シンデレラ、もっとちゃんとしなさいな!」ってシンデレラをいびる用とか。例えがメルヘン過ぎて気持ち悪いぜ、俺!
そんな脳内自虐を俺がしている間にも話は進む。
『ささ、二人ともクジを引いちゃってねー』
「よ、よーし!引くぞっ!」
「......『リビング』。え......この改装の極みを施された部屋を掃除しろと......?」
「『クスノキくんのお部屋』......お、お兄ちゃんの部屋かぁ......な、何か緊張しちゃうなぁ......」
それぞれの部屋が決まったようだ。二人は思い思いのリアクションを取るが......俺には別の懸念があった。
(俺のエロ本、どこにいったんだっけ......!?)
そう、俺は自身が移動させた同人誌たちの場所が分からなくなっていた。もし、飛鳥たちが掃除する部屋に同人誌があり、なおかつそれらが見つかったら......?うむ、絶対零度の視線を向けられる未来しか見えんな。非常にマズい。
「え、コレヤバくね?」
* * *
そして、現在に至るわけだ。
あれから、詩音はその場で掃除を始め出し、飛鳥は俺の部屋に向かった。そして俺は柊と共にモニター室へと移動することになっていたのだが、俺はお腹が痛いと嘘を吐き、トイレに行くと見せかけ、再度リビングへと足を運ぼうとしていた。していたのだが......。
「ああああ、何なんだよ!ここはどこなんだ畜生!」
俺は自分の家の中で迷っていた。
そう、先ほど俺は「どこだ......?」と呟いていたが、それは同人誌を探す前に、そもそもリビングの場所が分からなくなっていたか故の独り言だったのである。見事な伏線回収。捨ててしまえそんな伏線。
何せ、柊のスーパーハイスペックによる設計に
「そういえば、これまでの移動も全て柊の案内で動いてたんだっけな......」
何で自分の家の中で案内されないといけないんだろうと思っていたが、なるほど理解。設計者のアイツでないと、この家、もとい迷宮の中を迷わずに進むことはほぼ不可能なのだろう。現に今メッチャ迷ってるもん。どうするのコレ......。と、その時。
「あっづあああああああああ‼︎」
「うおっ⁉︎」
俺が前を通った部屋の中から、大きな悲鳴が聞こえてきた。例によって全く見覚えのない部屋ではあったが、そこにいたのは......。
「ぐああああ‼︎親父さん、何で俺に熱湯ぶっかけてんすか!あづいああああああああ!」
「ご、ごめん。祐介くんがお湯を掛ければキミが蘇ると言ったもので、つい......」
「俺はカップ麺っすか!」
俺らの義父であり、重度の妹萌え変態である
* * *
「......と、いうわけだ。もう一人の建築者のお前なら案内も出来るだろ。案内しろ」
俺は笠原に事情を話し、とにかくリビングに案内してもらうことにした。すると、話を聞いた笠原は......。
「あー、エロ本だろ?お前もあーゆーのは見つかりたくないだろうと思ってよ、ちゃんと隠しておいたぜ!」
「何.....,!?」
おいおい、何て使える奴なんだ笠原!まさか前以て妹たちに見つからないように同人誌を隠しておいてくれたなんて!今回ばかりは本当にお礼を言わないといけないかもな。
「ちゃんと元あった場所に戻しておいたぞ、お前の部屋に。あ、あと量が多かったから、あとは覚えやすいようにリビングにも置いたな」
「くそったりゃああああああああああああ‼︎」
前言撤回。やはりコイツは使えない(八つ当たり)。
何にせよこのままではマズい。飛鳥たちが念入りに掃除すればするほど、俺の聖典が見つかる可能性が高くなってしまう。
一刻も早く聖典を回収しなければ、お兄ちゃんの信頼はガタ落ちである。冗談じゃありません。
「ええい、行くぞ笠原!まずはリビングからだ!」
「お、おうっ⁉︎」
俺は笠原の手を引いて走り出した–––––。
* * *
場所は変わり。
俺は笠原を部屋の前に待機させてリビングに入っていった。
柊と笠原の手でビフォーアフターさせられたこの部屋は、クジを引いた詩音の手によって掃除され、ピッカピカに輝いていた。まさか木製の椅子まで光るとは思わなかった。ワックスでも塗ってるのん?
「あ、お兄ちゃん。来てくれたんですね!」
「お、おぅ。詩音の頑張りをモニター越しじゃなく、ちゃんと肉眼で見たかったからな」
「そ、そうですか。......ありがとうございます、お兄ちゃん。嬉しいです」
「お、おぅ......」
そう言って無邪気な笑みを浮かべる詩音。
やべぇ、良心の呵責が半端ない。
これで実はこの部屋に隠されているエロ本を探しに来ています、なんて言った日には俺はお兄ちゃん失格となってしまう。いや、もう今の時点で結構際どいね。分かってます、分かってますよ。
それにしても、嬉しいです、か......。
「何か最近、詩音ってば素直に物事を言ってくれるようになったよな」
「え?そうですか?」
「少なくとも初めにこの家に来た時よりかはな。いや、初めっからお前はかなりアグレッシブだったんだが......」
とにかく、詩音は当初よりも自分の気持ちをはっきり言ってくれるような気がする。ほぼ無表情だった顔も、段々バリエーションも増えてきたし。
っと、悠長に話している場合じゃないな。出来るだけ自然に、さりげなく聖典の捜索をしなければ......。
「......ん?」
「どうかしましたか?」
詩音が天井に吊り下げられたオブジェに積もった埃をハタキで落としながら聞いてくる。そして、俺は。
(見つけたー!)
聖典が本棚の横に積み重なって置いてあるのを発見した。あの
まぁ良い。出来るだけ自然に回収しよう。僅かでもこの聖典の存在を悟られてはならないし、ここで手こずっていては飛鳥の方が聖典を発見してしまう恐れもある。
「え、えーと......俺も手伝おうか?」
「え?い、いや、大丈夫ですよ?そもそもこれは勝負なのですし......」
困ったように笑いつつも、どこか嬉しそうに応える詩音。その表情は大変可愛らしいのだが、違う、そうじゃないんだ......。お兄ちゃんは早くお前の後ろのソレを回収したいんだ......。
こうなったらなりふり構っていられない。多少強引ではあるが、とにかく聖典さえ回収することさえ出来れば決定的証拠は出ないのだ。
俺は全力であらぬ方向を指差しながら叫んだ。
「あーっ!あんなところに詩音の下着が!」
「ッ⁉︎」
詩音が赤面しながら俺が示した方向を見たのを確認し......素早く聖典の山に駆け寄り、服の中に忍ばせる!明らかに不自然なレベルで服が膨らんだが、んなことはどうでもいい!
脱出ー!
そうして、俺は聖典の回収に成功し、リビングを後にした......。
「まったく......。今回は義妹モノがあったことに免じて許しますが、ああいうのは出来るだけ目に付かないようなところに置いておいて下さいね......?」
何かとんでもない呟きが聞こえた気がする。
* * *
回収した聖典をとりあえず物置の奥に押し込み。
「おう祐介!無事だったみてぇだな!」
「あぁ。そんなことよりも早く次だ。俺の部屋に行くぞ」
俺は笠原の後ろに付く形で走り出す。
笠原の話だと俺の部屋に隠された聖典は、机の引き出しの中にしまっておいたらしい。先程は丸見えも丸見えだったが、それなら大丈夫だろう。
「よし、お前の部屋が見えたぞ!」
「早く!早く回収して天井裏か何かにしまうぞ!」
やっと俺の部屋に着いた。そのまま笠原が俺の部屋に入ろうと......。
......しようとしたところで、笠原の身体が強烈な衝撃波によって吹き飛ばされた。
「............えっ」
吹き飛ばされた笠原はピクリとも動かない。さっき蘇生したばかりなのに......。というか、この衝撃波って。
「なーんだ、お兄ちゃんじゃなかったんだー」
「あ、飛鳥......?」
「んー?なぁに、お に い ちゃ ん」
「ヒッ......!?」
違う、コイツは飛鳥じゃない!
俺の知ってる飛鳥はこんなドス黒いオーラなんて纏ってないもん!俺の妹がこんなに怖いわけがない。
と、飛鳥が薄めの本のようなものを掲げてきた。
「......お兄ちゃん。これ。なぁに?」
「なっ......聖典⁉︎馬鹿な!それは俺の机にしまわれていたんじゃ......!?」
「うん。でも、鍵も閉めずにそのまま入ってたし、若干端が出てたから」
「笠原あああああああああああああああああ‼︎」
相変わらず使えねぇ‼︎
......飛鳥は、規則には厳しい娘だ。地平線の彼方まで車が見当たらないような道路でもキチンと赤信号の時は待つし、学校の校則もかなり形骸化しているにも関わらず、一度も破ったことはないらしい。
嗚呼、だからだろうか。
––––––飛鳥は、18禁の規則を破った俺には、その行いがバレる度にとてもお厳しい罰を与えてくるのである。そう、具体的には––––。
「もー!またお仕置きが必要みたいだね、お兄ちゃん!デコピン100回の刑だよ!」
「やめっ、やめろぉ!お前自分の腕力分かって「デコピン!」ぎゃあああああああああ‼︎デコが砕ける!」
具体的には、飛鳥の類稀なるパワーによる肉体的制裁である。......俺はその後、宣言通りデコピンを100回かまされ、今日一日湿布をデコに貼らなければいけない羽目となった。
あ、ちなみにこの騒動で俺の部屋はホコリまみれになったので、お兄ちゃん争奪戦第3回戦は詩音の勝利となったそうですよ?
はい!いかがでしたでしょうか!
お兄ちゃん争奪戦編は次回かその次の回で終了する予定です!
あと、季節は夏ということでプールでの番外編も書けたら良いな、と思っていますので、ご意見を頂けると嬉しいです!
ありがとうございました!感想待ってます!