妹がいましたが、またさらに妹が増えました。   作:御堂 明久

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どうも、GWに何の予定も入っていない生粋の非リアインドア民の御堂です!
前回のあとがきに記した通り、今回は番外編となっておりますので、本編と違う設定がチラホラ。実は僕は恋愛モノを書くのが少々下手でして、若干くどい部分もあると思いますがこれからまた特訓を積んでいきますので何卒ご容赦を·······。

少し短めですが、どうぞ!



番外編
ifルート:もしも柊伊織が彼女だったら


 

〜 茶番 〜

 

 

開口一番に万能魔王こと柊伊織が言い出した。

 

 

「今回のお話ではボクとクスノキくんが恋人同士になるんだって!おめでたいね!」

「初耳なんですけど?」

 

 

コイツは一体何を言い出すのだろうか。コイツの頭のネジが二、三本吹き飛んでしまっているのを加味してもちょっと何言ってるのか分かりませんねハハッ(乾いた笑い)。

 

 

「言葉の通りだよ?まったく、今の若者には一を聞いて十を知る理解力が求められているというのに、クスノキくんは今の説明では理解出来なかったみたいだね」

「えぇー······俺が悪いの······?」

「今回は本編とは関係無い番外編なの!いわゆるifルート!つまり本編に無い設定も出し放題って訳さ!」

 

 

柊がそう言うが、じゃあ今ここにいる俺たちは何なのだろうか。当たり前だが俺に柊と恋人関係になった覚えなど無いのだが。

 

 

「あぁ、そのことなら大丈夫。番外編って言っても要はパラレルワールドみたいなモノだからね。ボクの能力でその世界の映像をお茶の間に流せば良いだけだし」

「しれっと脳内読んだりパラレルワールド云々を操りだしたり、いよいよ本格的に人間辞めて来てるなお前。もう異能バトル系の物語に出れば?何となくお前なら一◯通行(アクセ◯レータ)さんも倒せそうだわ」

「全力出せばあるいは」

「マジでいけるのかよ」

 

 

そんなことをぐだぐだ話していると、突然地面からテレビがニュッと生えてきた。生え方が妙に生物的で気持ち悪い。その上そのビジュアルが何故かブラウン管を使用した厚型テレビ。コレちゃんと映るのん?

俺が訝しげに厚型テレビを見ていると、とことこと柊がテレビに近付いてそれをガッと横から鷲掴みにする。おい、まさか······。

 

 

「それじゃあ映すね!······隠◯の紫(ハーミットパー◯ル)!」

「お前マジでいい加減にしろよ⁉︎ うっわ本当に映りやがった!ちょ、お前流石に盛り過g」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「柊伊織、楠祐介ッ!貴様ら!見ているなッ!」

「うっわビビった。何、いきなりどしたの」

 

 

とある休日。俺が我が家にて四人掛けのソファに座りながらラノベを読み(ふけ)っていると、俺の隣に座って恋愛小説を読んでいた少女······柊伊織が突然やたらスタイリッシュなポーズで虚空を指差しながらそう叫び出した。何事。

 

 

「いきなり俺とお前の名前を叫んで見ているなッ!って······なに、ドッペルゲンガーでも見えたの」

「んー?まぁ、そんな感じカナ?······それよりも祐介クン、そろそろ読書タイムも飽きたよー」

「お前が提案し出したことだろう······伊織」

 

 

······説明が必要だろうか。

あー、まず俺と柊伊織は付き合っている。いわゆる恋人同士、カップル······そういう関係だ。付き合って劇的に何かが変わった訳でもないのだが、あえて一番変わったコトを挙げるのならば。

 

 

「うぅー······最近祐介クンってばボクに冷たい······もっとイチャイチャしようぜー」

「急に抱き着いて来るな心臓に悪い······!」

「ちゅっ」

「首ッ······ええい離れなさい!」

「きゃー♡」

 

 

············伊織(コイツ)からのスキンシップが付き合う前と比べ異様に増加、そして過剰になったことだろうか。

元々告白は伊織からのモノで俺はそれを受ける形だったのだが······付き合い始めてからというものの、まるでそれまで抑制していた何かが爆発したかのように積極的にスキンシップを取ってくるようになっていた。当初は詩音からの嫉妬が酷く、それに真っ向から対立した伊織とで、俺の彼女と義妹が修羅場すぎる。状態だったのを覚えている。

 

 

「······で、今日はどんなロクでもないことを企んでるのかな······い・お・り・さ・ん?」

「最初からロクでもない扱い⁉︎す、少しは彼女を信用してくれったって良いじゃんかー!」

「いや、既に今に至るまでの行動からロクでもない感じがするんだよなぁ······」

 

 

つい30分前に大量の本を携え「今日は気分を変えて読書デーにしよう!」と我が家を訪れた(飛鳥と詩音は伊織が来る前に気を利かせて外出していた。やはり将来は出来た嫁になりそうだ。誰にもやらんがな!)伊織だが、既に飽きてこのザマである。堪え性無さすぎだろ。

こんな謎の行動を取られては怪しまざるを得ないというもの。俺の彼女を見つめる目は既に刑事のそれと化していた。どんな悪事も企みもスケスケだぜ!

 

 

「何も企んでないってば!ただ、そろそろ祐介クンを完全に籠絡してボクだけのモノにしちゃおっかなーって思ってただけで」

「想像以上にロクでもねぇ!」

 

 

瞳を鋭く光らせながら言う伊織から自らの身を抱いて距離を取る俺。何!一体私に何をする気なの!エッチなことする気じゃないでしょうね!エロ同人みたいに!エロ同人みたいに!

そんな俺の様子を見た伊織は。

 

 

「~〜〜♡♡♡」

 

 

······何故か赤らめた頬に手を当てながらその均整のとれた肢体をくねらせていた。······オイ、まさか本当にR15〜18くらいのこと考えてたんじゃねぇだろうな。

 

 

「まぁ、まずはボクの話を聞いてよ。ほれ、近う寄れぃ近う寄れぃ。何もしないからぁ」

「言動が変態オヤジのそれなんだよなぁ······」

 

 

そう言いながらもソファの上で肩を並べてしまう俺は相当コイツに調教されているのか惚れた弱みなのか何なのか。どちらにしろ自分に対して溜め息が出る。

伊織がコテンと頭を俺の肩に軽くくっつけながら話し始める。あの、何か女の子特有の良い匂いが香って来て集中出来ないんで離れて良いっすかね。

 

 

「いやさー?改めて見ると、何故か祐介クンの周りって物凄く可愛い子が多いじゃん?」

「飛鳥と詩音、そして八雲辺りのことか」

「そこでボクの名前を出さないのは減点だぜぃ」

「え、今の台詞自画自賛してたの?」

 

 

素直に驚く。あんな自然に自分を物凄く可愛い子扱い出来る女子がいるだなんて思いも寄らなかったんですもの。

俺が頰を引きつらせていると。

 

 

「いやいやぁ、別にボクは自分のこと可愛いだなんて思ってないよ?それに、ボクの一人称で自分のことカワイイカワイイ言ってたらキャラ被りしちゃうじゃん」

「誰の話だよ」

「で、話を戻すんだけど」

「ガン無視は心に来ますわぁ」

 

 

淡々と話を進めていく伊織に俺もまた真顔で淡々と返す。しかし内心では仮にも好きな女の子に無視されたことによる心の傷は決して軽いモノではなかったことをここに記す。具体的には頸椎粉砕骨折くらいのダメージ。致命傷じゃねぇか。

 

 

「祐介クンの周りには可愛くて魅力的な女の子が多い!ならさ、その子たちがキミとよくしてることをボクもして、なおかつその子よりもキミを楽しませてあげればキミを独占出来るんじゃないかって思ったわけだよ!」

「三行にまとめると?」

「目指せ!あらゆる女の子の!上位互換!」

 

 

なるほど、したいことは分かった。

 

 

「じゃあさっきの読書タイムも」

「キミ、詩音ちゃんとよく二人で本を読んでるって言ってたしねー。······どうだった?どっちと本読むのが楽しかった?」

「どうも何もただ本読んでただけだったし······お前すぐに読書放棄して絡んで来たし······」

「ぶー。それじゃあ分かんないー」

 

 

頰を膨らませてくる伊織だが、そもそも彼女には恋人として、詩音には大切な家族として愛情がカンストしている。ベクトルは違えど、既に好感度MAXの二人に優劣など付けられるハズもないのだ。

 

 

「まったく。じゃあ次に移ろっか」

「次があるのか⁉︎」

「もちろん!さっきは詩音ちゃんとしそうなことをしたわけだから、次はー······」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「飛鳥ちゃんとしそうなこと······お料理ターイム!」

「はぁ······」

 

 

俺と伊織はソファから立ち上がり、二人揃ってエプロンを身に付け、キッチンの前に立っていた。飛鳥としているのは料理ではなく兵器の錬成とそれの矯正という感じなのだが······大して変わんねぇかな(感覚麻痺)。

 

 

「なるほどな······L◯NEで昼ご飯を少し減らせっつってた理由がようやく知れたぜ」

「ボクの愛が篭った料理をお腹一杯で食べられませんなんて言われた日には、ボクは多分ちょっと涙目になっちゃってただろうからねー」

「メンタルが鋼なのか豆腐なのか······」

 

 

相変わらず色々とよく分からん彼女だ。

俺が少しの間呆れたように笑っていると、伊織がその場でくるんっと回転し、俺に話し掛けてきた。

 

 

「で、祐介クンどぉ?このエプロン、この日のために買ったんだよ?似合ってるー?」

 

 

そう言われたので伊織が着用しているエプロンに視線を向ける。大小様々なマカロンの柄が散りばめられた白を基調とした生地に、黒のフリルが差し色となっている。キュートではあるのだが少し甘さを控えめにしたという印象のエプロンだ。ふむ······。

 

 

「滅茶苦茶似合ってる」

「だろうね!」

 

 

俺の賛辞に全力で胸を張る伊織。やっぱりコイツ自分のこと可愛いとか思ってません?

 

 

「さーて、祐介クンからのお褒めの言葉を頂いたことですし、調理を開始しましょうかー」

「え、何作んの」

「とーぜん、キミの大好きなオムライス(サイズは小さめに調整する予定)だぜ☆」

「······俺の今日の昼ご飯、オムライスだったんだが」

「···················」

「···················」

「······仕方ない、記憶を飛ばすか······」

「ああああそういえばオムライスは先週の昼ご飯だったなー!いやぁ最近記憶の混濁が酷くて困るぜ、だからその金属バットを下ろせ伊織ィ!」

 

 

恐ろしい。明らかに自身の彼氏を見る目じゃなかったぞ今の······金属バットも演技だとは思うが寿命が縮みかねないので止めて頂きたい。

 

 

「材料は用意してあるからねー。祐介クン、玉ねぎと鶏肉お願い出来る?」

「へいへい、こうなったらとことん付き合わさせて頂きますよ······料理自体は好きだしな」

 

 

伊織から玉ねぎと鶏肉のパックを受け取り、それぞれ包丁で微塵切りにしたり一口サイズにしたりする。玉ねぎが目にきます。隣ではウィンナーを輪切りにし、既にフライパンを取り出してバターを入れ始めている伊織の姿が。はっや、材料切ってるの俺なんですけど?

 

 

「ほらよ」

「流石、慣れてるねー」

 

 

まぁ、それでも間に合っちゃうんですけど!俺の主婦力が高くて震える。わぁ伊織の自画自賛癖が感染(うつ)った。

 

 

「じゃあまずは玉ねぎを中火で炒めて······飴色になったら鶏肉とウィンナーをINしちゃうからね」

「米とケチャップの準備も万端だ。卵も既に皿に移して箸で溶かしてある」

「ボクよりノリノリじゃんか」

 

 

いや、やっぱり楽しいよね料理。更に彼女と一緒にするとなると中々にテンションが上がってくる。

······しばらくして、フライパンに入れた米にケチャップが投入され、ケチャップライスが完成した。すると、フライパンを持っていた伊織が一旦IHの火を止めてスプーンでそれをすくい、俺の口元に持って来る。

 

 

「祐介クン、味見してみて?感想が聞きたいな」

「了解。スプーンくれ」

「あーん」

「·················」

「あーん」

「······あーん」

 

 

コイツは······。俺が仕方なく口をその場で開けると、そこに伊織がケチャップライスをひょいと入れて来る。ふむふむ、まるで水を吸ったスポンジのような不快で瑞々しい歯ごたえ。咀嚼の度にゴリッ、グシャッとこの歯ごたえからはあり得ないような異音が響き、容赦無く口内を蹂躙していく。味としてはそう、例えるのならば死神たちの舞踏会––––––ごプャっ。

 

 

「美味いぞ、流石は伊織だ(ビクンビクン)」

「ご、ごめん······折角だしフライパンの隅で飛鳥ちゃんのレシピを基にケチャップライスを作ってみたんだけど、やっぱり駄目だったみたいだね······」

「一つのフライパンで別々の料理を作るその技量は評価するが、兵器を遊び半分で錬成するのは止めろ!ぐああああ不味い!否、最早痛い!激痛だ!」

 

 

何てことをしてくれるんだ。最近は飛鳥の料理の特訓に付き合う過程で耐性が付いてきたとはいえ、未だにそのダメージは大きいんだぞ······!まぁ、爆発しない分流石は伊織と言ったところだろうか。

 

 

「ご、ごめんね?責任取って残りの飛鳥ちゃんライスはボクが食べるから」

「!? 待て!それは初心者がみだりに口にして良いモノじゃない、俺が全部食べる!」

「にゃははー、大丈夫だって。実はボク、最近味覚遮断が出来るようになってねー······はむっ」

「あっ」

「···············(バタン)」

「言わんこっちゃねぇ!伊織!伊織ー!」

 

 

フライパンの隅に残っていたと思われる兵器を口に入れた伊織が、そのままその場に倒れた。飛鳥の料理は味がアレなだけでなく、体内に入った瞬間身体機能を瞬く間に蝕んでいくのだ。耐性が付いた俺だからこそこうして手足の震えだけで済んでいるというのに······!

 

 

「······まぁ、伊織だし平気か」

「······愛を感じ、られない······」

 

 

何を仰る、激マジにラブってますよ伊織さん。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「美味いな」

「美味しいね。······飛鳥ライス(さっきの)と比べると、より美味しく感じるよ······」

 

 

軽く涙目になりながら完成したオムライスを()む伊織。空腹は最高のスパイスというが、ここに飛鳥の料理は最高のスパイス論を打ち立てたいと思う。異論がある者はとりあえず飛鳥の料理を食べてもらおう。きっと異論どころか発言すらもロクに出来なくなると思うから。

 

 

「······で、次は?」

「おっ、次もあると分かってたんだねー」

「詩音、飛鳥と来たら次は八雲だろうと推測するのが当然の流れだろうに。ゲームでもすんのか?」

「むー。そう簡単に見抜かれるとそれはそれで残念だねー······程よく鈍感であってよ」

「無茶言うな」

 

 

伊織が少し不服そうな表情でゲームソフトとハード、そしてコントローラーを服の下から取り出した。どうやって入ってたんだ。

 

 

「何やる何やるー?」

「協力プレイ系が良いな。お前と対戦して勝てるビジョンが浮かばねぇし」

「うん、ボクもキミに負けるビジョンが微塵たりとも浮かばないよ。悪いね全てにおいて優秀で」

「今日のお前のその溢れ出る自信は何なの?」

「にひひー♡」

 

 

こんな雑談でさえも心底楽しいと言わんばかりに満面の笑みを浮かべる伊織。俺はそれに釣られるように薄く笑い、適当に選んだ見たこともないシューティングゲームのディスクに「協力プレイ可能!」と書いてあったので、それをハードに差し込んだ。そして一時間後、

 

 

「撃て撃て撃て撃て‼︎何だこのゲーム、難易度高すぎんだろチクショウ!ボスの耐久度が異常だ!」

「くぅ、テストプレイちゃんとしておくんだった!やっぱり一人で作ると色々(ほころ)びが出てきちゃうね!」

「このゲームお前が作ったの⁉︎」

 

 

伊織が制作したというそのゲームに熱中し、必死にコントローラーのボタンを連打する俺と伊織の姿があった。

システムとしては拳銃やショットガンなどの武器を駆使して敵を倒していくオーソドックスなシューティングゲームなのだが、いかんせん雑魚キャラからボスに至るまで敵の強さが尋常じゃない。しかも何で私服姿の一般人が襲って来るんだよ、ショットガンを片手でぶっ放しながらバク宙する一般人なんていねぇよ。

八雲の指導を受けた俺と最強のスペックホルダーである柊が一時間全身全霊でプレイした挙句、遂に辿り着いたボスキャラである二本の斬馬刀を振り回す巨人相手に攻めあぐねていると。

 

 

「うぐぐ······えーい!製作者を舐めるなよ!こうなったら隠しコマンドの行使だ!」

「隠しコマンド?······うおっ、アレは⁉︎」

「高威力武器がランダムで出現するコマンドだよ!カラシニコフAK47とRPG-7······上出来!祐介クン、拾って!」

「任せろ!」

 

 

突如対ボス戦のフィールド上に生成された銃火器を入手すべく走り出す俺が操作するキャラクター。銃の名前なんざ全く知らんが、伊織が言うのならば強い武器なのだろう。アレならあの化け物も倒せ

 

 

『ゴォアァァァァァァ––––––ッ‼︎(咆哮と共に斬馬刀でフィールドを薙ぎ払う巨人)』

『ガシャンッ(巨人の一撃で小規模の爆発を起こしながら粉々になる武器)』

 

「··················」

「··················」

「··················」

「······え、どういうこと······」

「············落ちている武器にも当たり判定を付けたのは失敗だったカナー、なんて······」

「馬鹿野郎ォ‼︎」

 

 

結局、これからまた40分程チクチクとヒット&アウェイを繰り返しボスを倒すことに成功した。エンドロールが流れた際には二人で抱き合って泣いた程だが、ゲームクリアの達成感よりもゲーム内のきょくの演奏や数十人に渡る登場人物の声も全て伊織が担当していたことによる衝撃の方が大きかったりしたのは内緒だ。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「どうでしたか」

「何が」

「読書に料理にゲーム······いやいや、他にも何でも出来るさっ。キミの周りにいる女の子が一緒にしてくれる全てを網羅するボクは······キミを独占するにふさわしい女の子だとは思わない?」

 

 

ゲームが終わった後、再びソファに腰を下ろした柊が、同じくソファに座った俺に身を乗り出しつつ言ってきた。あ、あぁ······そう言えばそんな考えがあったんでしたっけ······。

まぁ、適当にはぐらかすと怒られそうだし、何だかんだと聞かれれば答えてあげるが世の情けとも言う。答えてやろう。

 

 

「妹たちと同じか少し劣るくらいかな」

「シスコンめぇ!」

 

 

俺の言葉を聞いた途端に声を上げながら飛び掛かってくる伊織。俺はそれを躱すことなく彼女の身体ごと受け止め、もとい抱き留める。

 

 

「にゃっ⁉︎」

「躱すと思ったか?馬鹿め、お前からの攻撃を躱したところで追撃が飛んで来るのは読めてんだよ。だったら初撃をこうして受け止めた方が良い」

「そ、そういう問題じゃなくて!」

 

 

ジタバタと俺の腕の中で暴れる伊織を無理矢理胸の中に押し込みながら、ククッと嫌な感じの笑みを浮かべる。

––––––まぁ、口ではこう言いつつも。

俺の中では既にコイツは相当······いや、一番大きく、一番大切な存在となっている。

 

 

普段は飄々(ひょうひょう)として掴めない性格だけど、根は素直で繊細で、こんなに可愛くて。

 

ちょっと独占欲が強めのようだけど、俺のためにここまでしてくれて、精一杯愛してくれて。

 

何で俺なんだ?······そう聞いたことがある。

 

自慢じゃないが、俺はそれなりに出来ることが多い。妹に誇れる兄であろうとがむしゃらに突き進み、それなりに能力を得て来たと自負している。

しかし世の中とは広いモノで、それでも俺より遥かに優れた万能超人はいるし、容姿のみに焦点を当てれば、ぶっちゃけ俺よりイケメンな奴なんて学校の中にも沢山いる。

 

なのに何で俺を選んだのか、と。

彼女は一瞬キョトンとした表情を浮かべた後、いつものイタズラっぽい笑みではなく、何かを懐かしむ様な優し気な笑みを浮かべて言った。

 

 

「–––––––祐介クンだから、カナ?」

「······んぁ?どういうことだよ」

「別にボクは何でも出来るから、顔が良いからキミを選んだ訳じゃないよ?まぁ、何ていうか、口では説明し辛いんだけどさ––––––」

 

「キミの全部が好きになっちゃったんだよ。良い所も悪い所も、何もかもぜーんぶ、ね」

 

 

だから何にも出来なくても顔が福笑いみたいでもボクはキミのことが大好きー♡(口でちゃんと「はぁと」と言っていた。何なんだよ)と、そう言って朗らかに笑った伊織の姿は未だに記憶に残っている。······それを聞いて吹っ切れたのだろう、俺はその時に誓ったのだ。

 

これから何があろうとコイツのことを好きであり続ける。伊織の全てを好きになって、愛してやる。······と。

 

 

まぁ、こういうのはわざわざ決意することじゃないと思うんだが······と、そこまで長々と記憶を辿った所で、俺の腕の中に収まっていた伊織が静かになっていることに気付いた。どしたん?

 

 

「······あぅ······」

「? どうした伊織。体調が悪いのか?」

「いや······違くて。ちょっとすっごい照れ臭いというか何と言うか······ね?」

「············まさかお前、俺の脳内読んだ?」

 

 

いやいやまさかまさか。流石にあの中で俺の脳内を読む余裕なんか無かったハズですし。何よりあんなポエミーな回想を読まれてたら羞恥で生きていけなくなる「············(こくん)」チクショオォォ––––––––––––––ッ‼︎

 

 

「殺してくれ!もういっそ殺してくれぇ!」

「お、落ち着いて祐介クン!その、結構嬉しかったよ?うん。いやー、愛を感じたナー!」

「死体蹴り止めろ‼︎」

 

 

やだもう恥ずかしい!うわぁぁぁんもう最悪だよぉこのまま消え失せたいよぉもうお前帰れよぉ!

 

 

「······一生愛してくれるの?(ニヤニヤ)」

「楽しみ始めてんじゃねぇよ!」

 

 

––––––これからしばらく俺は最愛の彼女にイジられ続けることになるのだが······それはまた、別の話。

 

 

 




いかがでしたか?
僕は自分で書いた文に何かむず痒さを感じて軽く悶えてました。男の悶え姿とか誰得ですかぁ。
これからも本編では設定上どうしても書けないストーリーなど番外編で書くかもしれません。このifルートを続投するのもアリですね、恋愛描写の練習したいですし(自分本位)······なんて。

では、今回はこの辺で!感想待ってます!

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