妹がいましたが、またさらに妹が増えました。   作:御堂 明久

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義妹、詩音の強キャラに呑まれる実妹、飛鳥!
今回は彼女に焦点を当てていきます!
今回はっていうかまだ3話目ですが!

では、どうぞー♪


実妹の対抗策!

 

「いっつ......飛鳥(あすか)のヤツ、マジで引っ叩きやがったな?」

 

俺は、実妹である飛鳥渾身の一撃によって少し赤くなった頬をさすりながら服をパジャマから制服に着替える。......頬痛ぇ。

何故ただの平手による一撃でここまでダメージが通るのだろうか。あれか、某忍者漫画の日向一族の八卦掌でも習得しているのか、アイツは。

などという超どうでもいい妄想(結局、俺の肉体が常軌を逸してひ弱という結論に落ち着いた) をしている内に着替えを終了させる。

さぁ、今日も一日頑張りましょーか。......やっぱ学校メンドいわ。

 

 

* * *

 

 

今日の朝食はパンにハムにスクランブルエッグにサラダ、にしようと思う。まだ作ってねーよ、気が早いぞ。そういうヤツが「作んのおせーよ!」つってレストランで騒ぐんだ。ごめん、言いすぎた。だから怒らないでね?俺腕っぷしは実妹(あすか)にすら劣るんだから。

字面だけ見ると、朝からこんなに飯食うとか馬鹿かよ、と思うかもしれないが、量は調節するつもりだ。いわゆるモーニングを想像していただきたい。と、いうかこのメニュー自体モーニングをパクったものだ。俺ガイ◯で修学旅行回で食ってたのを見て美味そうだと思ったからね。

 

「さて、じゃあ作るか......」

「お兄ちゃん」

「ん?おぉ、詩音(しおん)か。どした」

 

雨宮(あまみや)詩音(近々『楠』詩音になるらしい)。つい3日前に我が家にやってきた義妹(いもうと)だ。......所々思考がぶっ飛んでいる所はあるものの、普段はとても品行方正で、非常に出来た娘であることが最近分かってきた。その証拠として......。

 

「朝食の調理を手伝います」

「ん、お願い」

 

こうして朝食の調理の手伝いをしてくれる。当初は断ったのだが、『妹たるもの、いかなる時もお兄ちゃんと一緒に作業すべし』という詩音の謎理論に押され、あれから3日経った今ではすっかり甘えさせて貰っている。と、そこで不満そうに揺れているポニテが目に入った。

 

「......むー」

「どうした飛鳥?そんなに腹減ってんのかよ」

「お兄ちゃんは寝起きといい今といい、飛鳥を食いしん坊キャラに仕立て上げたいのかな⁉︎」

「実際俺よりは食うだろう。んで、どうしたんだよ、不満そうにして」

 

朝食のメニューが気に入らなかったのだろうか。いや、コイツはほとんど好き嫌いは無かった筈だ。ガキの頃、『あのおすしに入ってる葉っぱみたいなの、あすかきらい!』と言っていたが、そもそもアレは食い物ではないのでノーカンだろう。あぁ、あとは板チョコの銀紙も嫌いと言っていたな。うん、だからどうしたってことなんだけど。

すると、飛鳥はちらっと俺の横の詩音を一瞥し......。

 

「ね、ねぇ、お兄ちゃん。飛鳥も......一緒に朝ごはん、作って良い?」

「駄目だ」

「うわーん!まだ駄目なのー⁉︎」

 

俺が飛鳥の要求をバッサリ斬り捨てると、飛鳥はわっと泣きながらうずくまってしまった。そんな飛鳥を見てか、詩音が遠慮するように言ってくる。

 

「あの、お兄ちゃん。何故お姉ちゃんだけ駄目なのでしょう。料理が苦手でも、私なら恐らくカバーは出来ますよ?だから......」

「詩音は良い娘だな。......だがな、アレは最早人の力ではどうにもならないんだよ」

「............はい?」

 

俺の発言の、意図が読めなかった詩音が首を傾げる。当たり前だ、俺だって飛鳥の『アレ』を知らずにこの言葉を聞いていたら同じ反応をするだろう。

仕方ない、実際に見せた方が早そうだな。

 

「飛鳥、飛鳥」

「ううう〜......何?」

「喜べ、お前に朝食の調理権をやろう。メニューは目玉焼きだ」

「本当⁉︎......アレ?今日のメニューって目玉焼きなんて無かっ......」

「良いから。俺が作っちゃうぞ?」

「わっ!待って待って!飛鳥が作る!一緒に作ろっ、お兄ちゃん!一緒に!」

 

俺に調理権を与えられた飛鳥は嬉々としてキッチンに立つ。そしてエプロンを着け、フライパンを握り、卵を割って......約5分後。

()()()()完璧な目玉焼きが完成した。

 

「完成ー!」

「......何の問題もなく目玉焼きが出来ましたよ?」

「まぁ見てろ。もうすぐだ」

 

5......4......3......2......1......0。

ボンッ!という音がキッチンに鳴り響いた。

 

『ひゃあっ⁉︎』

 

そしてその音に驚いた飛鳥と詩音が身を震わせ、詩音は近くに立っていた俺に抱きついてきた。と、それを見た飛鳥がトコトコ歩いてきたと思うと、ぎゅっ、と俺に抱きついてきた。いや、何でだよ。絶対ワザとだし、この音の発生原因お前だし。

と、詩音が軽く涙目で俺を見上げてくる(可愛い)。

 

「な、何ですか今のは......!?一体どこから......」

「あそこだよ、あそこ」

「えっ......?」

 

困惑する詩音。そりゃそうだ。だって俺が指し示した場所は......先程まで飛鳥が完成させた目玉焼きが乗った皿があった場所なのだから。

今やそこに目玉焼きは無い。ちょっと表面が焦げた皿がそこにポツンと置いてあるだけである。そして、その状況から見て詩音は仮説を立ててみたのか、ぽつりと呟いた。

 

「目玉焼きが......爆発した......!?」

「正解。飛鳥、やっぱまだお前にフライパンは握らせられねーな」

「うぅ......上達したと思ったんだけどなぁ......」

 

ここでネタバレ。

先程の音は、詩音の仮説通り......いや、少し違うかもだが、『目玉焼きが破裂』した音である。膨らんで、爆ぜた音である。風船に近い現象だ。

......時は三年前までに遡る。

 

ー 三年前 ー

 

当時、俺は中学三年生、飛鳥は一年生だった。

 

『おにーちゃんおにーちゃん!飛鳥お料理作りたい!』

『えぇー?俺もそんなに料理したことないんだが......まぁ』

 

その時は俺も料理なんてものは、学校の調理実習くらいでしかやったことがなかったため、料理に対しての認識が甘かったのだろう。まだロクに調理器具を使ったことのない飛鳥に料理することを許可してしまった。

 

『良いんじゃね?俺が見ておくからよ』

『わぁい!ありがと、おにーちゃん!』

『何作んの?』

『んー?肉じゃが!女の子のひっしゅー料理だって!』

 

肉じゃがが必修なんて話は聞いたことが無かったが、まぁ、別にソレをどうこう言う気は無かった。そして俺と飛鳥はキッチンに立ち、30分後。

 

『できたー!』

『うおっ、メッチャ美味そうだな!俺より上手いぞ、飛鳥!』

『えへへー......おにーちゃん、一緒に食べよ?』

『え?良いの?』

『うんっ!だってその為に作ったんだもん!』

『あ、飛鳥......』

 

その言葉を聞き、俺は思わず肉じゃがから目を離して飛鳥を見た。すると、飛鳥もこちらを向いており、にこっと笑う。

 

『いつもありがとうっ、おにーちゃん!これはそのお礼だよっ』

『......うっ』

『え⁉︎ど、どーしたのおにーちゃん?泣かないで⁉︎』

『いや......肉じゃが内の玉ねぎが今になって効いてきただけさ......食べよっか』

 

飛鳥の優しさに心打たれ、幸せな気持ちのまま、肉じゃがを食べようと皿に視線を戻す。そして、視界に入ってきたのは......。

 

『...............は?』

 

パンパンに()()()()()、今にもはち切れそうな肉じゃがの具材たちだった。その風貌はまさに破裂寸前の風船。

野菜や肉が膨れ上がるという奇異極まりない光景に一瞬硬直してしまったが、とにかくここにいては危険だということだけはすぐに察知した。まぁ、最も......その時には既に手遅れだったのたが。

ドカァン!と。肉じゃがが皿を粉砕しながら飛び散った。

 

 

* * *

 

俺は三年前のその悲劇を詩音に説明し終わり、息を吐いた。

 

「......んで、飛鳥は普通にクッ◯パッドに従って作っただけっつーから、今度は味噌汁を作らせてみたんだ。でも、結果は同じだったよ」

「爆発したんですか......」

「した。だけど最近は目玉焼きとか卵を焼くだけっつーシンプルな調理方法の料理だったら今みたいな小規模な爆発で済むようになってきたけどな」

「いや、料理が爆発すること自体異常なのですが」

 

詩音はそう言うが、あの時の肉じゃがは皿を粉砕し、さらには飛び散ったジャガイモが壁を凹ますほどの規模で爆発したのだ。三年で料理だけが消滅する規模程度に落ち着いたのは奇跡だろう。努力の賜物だ。

 

「と、いうわけで。飛鳥、ありがとな。気持ちは嬉しいが、もう少し上達したらまた手伝ってくれ」

「............うん」

 

少し落ち込んだ様子の飛鳥。まぁ、コイツもあの悲劇からどうにか料理技術を習得しようと頑張ってきていたのだ、それで目玉焼きが消し飛ぶという結果は少し堪えたかもしれない。

......仕方ない、また明日コイツの料理の練習に付き合ってやろう。

 

 

* * *

 

 

「......うし、席着いたな?では、いただきまーす」

「いただきます」

「いただきまーす!」

 

あれから少し経ち、無事朝食が完成した。いつもより時間が押している状態での朝食だが、まぁ、高校に遅刻することはあるまい。

 

ひょーひょほはんはほひひーへぇ(今日もご飯が美味しーねぇ)...」

「そうか、良かった。取り敢えず飲み込んでから話せ、な?」

「え、今ので何言ってるか分かったんですか?」

「付き合い長いからな」

ふぃっふぃんほーはいはへ!(一心同体だね!)

「そうだな」

「......私もいつかその領域に......!!」

 

三人で食卓を囲みながら過ごす朝。

今まで飛鳥と二人で朝食は食べていた。正直、それだけでも楽しかったし、幸せだったのだが......詩音が来てくれたことで、さらにこの家には笑顔が増えた気がする。まだ詩音が来て3日しか経っていないし、俺らの新しい父親......詩音の父親にも会ったこともない。

まだまだ色んなことはあるだろうが......今はこの時間を楽しんでも良いだろう。

と、飛鳥がまだ口にサラダを詰め込んだまま詩音に言った。

 

ひほんひゃん(詩音ちゃん)

「?私ですか?お姉ちゃん」

ほひーひゃんは、ははははわははひゃいよ!(お兄ちゃんは、まだまだ渡さないよ!)

「......すみません、お兄ちゃん通訳をお願いしていいですか?」

「......俺も今のは分かんなかったなー」

 

義妹が来てから3日目の朝。

特に何もなく、俺たち三人の時間は過ぎていく。

 

「んくっ......負けないよっ、詩音ちゃん!」

「えっ?」

「まずはお料理からだー!」

「ちょっ、お姉ちゃん、さっき何言ってたんですか?お姉ちゃーん?」

 

 




定番の料理下手キャラ(笑)。
まぁ、家が消し飛ぶ程の爆発ではありませんが......。
次は主人公の高校生活でも書こっかなーと思っています!

では、今回はここまでということで。
ありがとうございました!


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