妹がいましたが、またさらに妹が増えました。   作:御堂 明久

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どうも、英語&数学のテスト追試ダブルパンチでグロッキーの御堂です。いやぁ、自分に合わないレベルの高校は選ぶモンじゃないっすね。
......あと、すみません。予想以上にテストなどの用事がキツくて......年越しストーリーはもう来年に書くことにしました。来年も書いてるか分かりませんが、ネタ被りは避けられますしね!ポジティブ!

そんなわけで1月になってもまだまだ続きますクリスマス。
どうぞー!




兄と義妹とクラスメイトのクリスマス会(のお手伝い)2

前回までのあらすじ!

クラスメイトの千秋に頼まれ、彼女の妹の千春(ちはる)ちゃんが通っているという来栖(くるす)小学校のクリスマス会の手伝いをすることになった我が親友、祐介!

 

千秋さんに加えて毎度お馴染み何でも出来ちゃう凄くて可愛いお兄ちゃんのクラスメイトの伊織さんと、お兄ちゃんに誘われて一瞬で同行を決めた飛鳥とお兄ちゃんの妹の詩音ちゃんと共にクリスマス会のお手伝いをすることになったお兄ちゃんの運命や如何に⁉︎

 

 

「「わー!ぱちぱち!」」

 

 

(しばしの沈黙)

 

 

「じ、自己紹介?......えと、今回のあらすじ担当、楠飛鳥です。よろしくお願いしまーす......?」

「いきなり変なところに連れてこられたと思ったら何なんだろーな?笠原信二だ、よろしくなー」

「......というか、ホントに何で飛鳥たち、こんなところにいるんでしょうね?」

「んぁ......オレと妹ちゃんの共通点なんかあったっけか?うぅむ、思いつかんぞ......」

「飛鳥もです......って、あれ?あんなところに紙が落ちてますよ。えっと、読んでみましょうか?」

「おー。頼むー」

 

 

※楠飛鳥 様 笠原信二 様 へ

今回、お二人は本編にて出番がございません故、埋め合わせという形であらすじ説明のパートに出演して頂きました。ご了承下さい。 by 作者

 

 

「「..................」」

「......まぁ、自分の作品に自分自身を出すのが割と痛い行為の内の一つに数えられるということはともかく」

「オレ達、今回出番が無いからここに呼ばれたってことだよな?なんつーか、情けみたいな感じで」

 

「「......何か、複雑な気分ですね(だな)......」」

 

 

本編、始まります。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「....................はっ」

「? クスノキくん、どしたの?急に立ち止まって」

「いや......今一瞬飛鳥の気配を感じてな」

「クスノキくん......キミがシスコンなのは今に始まったことじゃないけどさー......」

「おい、俺に可哀想な人を見る目を向けるのを止めろ。幻覚とかそういう系じゃないから。マジで」

 

 

クラスメイトの八雲千秋に頼まれ、小学校のクリスマス会の手伝いをすることになった俺は、その詳細を学校側の人たちから聞くため、柊と詩音と共に、件の小学校へと歩を進めていた。

その最中に飛鳥の気配を感じたのだが......気のせいだったのだろうか。

 

 

「お兄ちゃん、恐らく気のせいではないと思いますよ。私もお姉ちゃんの気配を感じますし」

「だよな。だが、どこにいるかが掴めない。いつもなら気配からその位置まで把握出来るんだが」

「そうなんですよね......」

「怖い!ボクこの兄妹が怖いよ!」

 

 

柊が何故かえらく怯えているが一体どうしたと言うのだろう。この程度、兄妹ならば普通のことだろうに。

まぁ、柊がおかしい(どこがとは言わないが)のはいつものことなので放っておく。それはそれとして、もうそろそろ目的地である小学校に着く頃だと思うのだが......お?

 

 

「見えてきたな。アレだろ?」

「んー?......うん、だね。Googleマップ先生もあそこだって言ってるよ。ていうか、校門の横にしっかり『来栖(くるす)小学校』って書いてあるじゃんか」

「お前どんな視力してんだ?」

 

 

俺が捉えたのは目的地である来栖小学校の校舎のみ、しかもかなり朧気(おぼろげ)なレベルだったのだが、コイツは校門の横の更に小さい、学校名が記されたプレート(もしかしたら正式名称があるのかもしれないが、俺は知らない)すらも視認することが出来たようだ。コイツ本当は鳥か何かなんじゃないだろうか。

 

 

「.....あ。アレ、八雲さんではないでしょうか」

「んぁ......あぁ、そうだな。校門前に立ってるようだが......横にもう1人誰かいるみてーだな」

 

 

更に歩いて行くと、校門前に人が2人立っていることを確認した。1人は後々合流する予定だったクラスメイト、八雲千秋。そしてその横にもう1人、シルエットからして女性が立っている。恐らくココの教師とかその辺だろう。

と、そんなことを考えていると、いつの間にか校門前に到着していた。

 

 

「......おはよ、楠くん。伊織ちゃんと詩音ちゃんも、おはよう。......皆、今日はありがとね」

「あぁ、おはよう」

「ちーちゃんおはよーっ!」

「おはようございます。......八雲さん、こちらの方は?」

 

 

トコトコと歩み寄って来た八雲と軽く挨拶を交わし、詩音が八雲の隣の女性に視線を向けた。すると、八雲がその女性を紹介する前にその人が前に進み出る。先程までは遠くて分からなかったが、眼鏡を掛けたその女性はスーツを着ており、顔立ちは整っている。年齢は見た目から判断すると20代後半。イメージ的には光男さんの女体化バージョンと言ったところだろうか。字面的に汚い感じがするがもう1度言おう、顔立ちは整っている。いや汚いて。

 

 

「初めまして。来栖小学校の教師の羽原(はばら)(ゆう)という者よ。今回はよろしくね」

「「「宜しくお願いします」」」

 

 

そう言った後、俺たちも軽く自己紹介をする。

 

 

「......先生は私がココの生徒だった頃の担任だったんだ。今回の私たちの案内も先生がしてくれるんだって」

「「「へぇ」」」

「貴方たちのことはある程度ヒツジちゃんから話は聞いてるわ。期待してるわよ」

「「「ヒツジちゃん?」」」

「あぁ......千秋ちゃん(この子)のことよ。この子、小学生の頃はよく眠っていたから。眠る時に羊を数えたりするでしょう?だからクラスメイトからヒツジちゃんって呼ばれていたのよ。可愛いし彼女も気に入っていたようだったから、私も呼ばせて貰ってたわ」

 

 

どことなく無理がある気がしないでもないが、小学生のネーミングセンスに口出しするのは野暮というものだろう。うん、可愛くて良いんじゃないかな。

 

 

「で、この設定は今後重要になってくる伏線だったりするんですか?」

「いいえ、全く関係無いわ」

 

 

無いんかい。

 

 

「......さて、とりあえず中に入りましょうか。学校の応接室が空いてるから、そこで貴方たちにやってもらう仕事を説明するわ」

「「「分かりました」」」

 

 

見た目通りというか何というか、ハッキリとした口調ではそう言い、そのまま肩口まで伸ばした黒髪を揺らして校舎へと歩いて行く羽原先生。

 

 

「......あの、先生。高校生にもなってヒツジちゃんは少し恥ずかしい、かな」

「昔の呼び方で定着しちゃったのよ。我慢なさい」

「......じゃあ、私も昔呼んでたみたいに先生のこと『夕ちゃん』って呼んでいい?」

「羽原先生と呼びなさい。デコピンするわよ」

「......不公平」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

場所は変わって校内の応接室。

俺たちは備え付けられたソファに座らされ、羽原先生に当日の動きを丁寧に教えて貰った。基本的には俺たちは裏方役らしいのだが......。

 

 

「たった一つだけ、貴方たちメインで動いて欲しい企画があるのよね。こればかりは教師たちにはどうにもならなくて。というか、貴方たちを呼んだ理由の9割はこの企画のためよ」

 

 

そう言って羽原先生が示したプリントには、こんな文字が大きく記されいた。そう......。

 

 

「『鬼ごっこwithサンタクロース』?......何ですかコレ?クリスマス会の企画なんですよね?」

「えぇ......確かに他の学校ではやらないのかもしれないけど、生徒達にアンケートを取った結果なのよ。『クリスマス会でどんなことをしたいですか?』ってね」

「それで鬼ごっこですかー。ふふ、やっぱり小学生って純粋で可愛いよねー!ね、クスノキくん!」

「詩音の方が可愛い」

 

 

一瞬でそう返す俺に「シスコンだなぁ」と苦笑する柊。おい、羽原先生が軽く顔を引き攣らせてるからそういうこと言うの止めろ。

 

 

「......つまり、私たちが鬼役になって生徒達と鬼ごっこすれば良いの?それくらいなら先生たちにも出来そうだけど......」

「違うわ。貴方たちは逃げる方。生徒達が貴方たちを追いかけるのよ」

「んん......やはり口頭ではルールなどが把握しにくいですね。羽原先生、何かルールが纏められたプリントなどはありませんか?」

 

 

詩音のその言葉に、「あるわ。ここにルールが載ってる」と俺たちに人数分のプリントを手渡す羽原先生。そして、俺たちはそれぞれプリントに目を通し始める。......ルールを纏めると下記のようになる。

 

 

・基本的なルールはごくシンプルな鬼ごっこと同じです。鬼役と逃げる役に別れ、鬼役が逃げる役を全員捕まえたら終了です。

・逃げる役(高校生組)はサンタのコスプレをし、プレゼントの詰まった袋を担ぎながら逃げて貰います。

・生徒たちは3グループに別れ、グループで捕まえたサンタクロースの人数で競います。

・1位のグループには豪華プレゼントが贈られます(1位以外のグループも、サンタクロースが個人で持っていたプレゼントは獲得出来ます)。

 

 

......簡単に言うと、プレゼントを担いだサンタクロースを複数人の小学生が追いかけ回して捕獲、プレゼントを強奪するといったゲームらしい。純粋とは一体何だったのか。

 

 

「生徒達もこの企画を楽しみにしてる子たちは多くてね。中にはサンタクロースを捕獲するために警察の逮捕術を習得していた子もいたわ」

「小学生の話ですよね?」

「小学生の話よ。......あぁ、あと、鬼ごっこの舞台は学校の敷地全体なんだけど......サンタを捕らえるためのトラップが既にいくつか確認されているわね」

「小学生の話ですよね?」

「小学生の話よ」

 

 

羽原先生の淡々とした説明に俺は真顔で質問し、それに羽原先生も真顔で応対する。いや、それ絶対小学生じゃありませんから。多分ハンターとかその辺りですから。

しかし成程、そんなハイスペック小学生たちが相手では、体力も落ちてきているであろう教師の皆さんでは少々荷が重いのかもしれない。だからまだ若く、運動能力に長けた高校生の俺たちを......いや、ちょい待ち。

 

 

「そもそもそんなに必死で逃げる必要あります?小学生たちのクリスマス会なんだし、適当に捕まってプレゼントをあげた方が良いんじゃ......」

「中途半端な気持ちで逃げてると死ぬわよ?」

「おっとクスノキくん逃がさないよ!良いじゃん面白そうじゃん、サンタになって逃げてやろうぜー!」

「HA☆NA☆SE!チクショウ聞いてないぞそんな危険なイベントだったなんて!こういうのは柊や笠原の方が適任だろ、詩音、八雲!逃げるぞ!」

 

 

命を落とす危険性があるイベントなんぞに可愛い妹と大切な友人を参加させる訳にはいかない。柊は放っておくとしても、この二人だけは逃がさなくては。

そう思い、俺が二人を連れて逃走すべく俺の腕を万力の如き握力で掴む柊の手をどうにかして振りほどこうと抵抗していると、当の詩音と八雲が苦笑しながら俺の肩を叩いてきた。

 

 

「......まぁまぁ楠くん。夕ちゃn(ビシッ)......羽原先生は昔からちょっと大袈裟に物事を伝える癖もあったからね、今回も先生がう言う程危険じゃないと思うよ」

「それに、私だってお兄ちゃんに頼ってばかりというのもアレですし......女の子は守られてばかりが幸せではないのですよっ」

 

 

片方は羽原先生にデコピンされつつ、片方は優しげに微笑みつつそんなことを言ってくる。えぇ......何で二人共そんな乗り気なんですか......。

 

 

「クスノキくん、覚悟を決めなよ。危険って言っても相手は小学生なんだし、キミが二人を守ってあげれば良いことじゃんか!ついでにボクも♪」

「お前は自衛出来るだろが。......まぁ、所詮は小学生レベルだから心配する必要は無い......よな?」

「......さっきはああ言ったけど、怪我をするレベルのトラップなどは仕掛けないように言い聞かせてあるわ。ちょっと脅かし過ぎたかしら」

「はぁ......」

 

 

まだ何となく納得いかないが......まぁ、一度受けた話を無闇に投げるのも正直心苦しいし、無責任といえば無責任だ。.......だけどさ、こんな大切なことをイベント当日の二日前にいきなり言うのって何かおかしくない?まるで直前に伝えることで考える時間を削り、俺たちの退路を塞いだかのような......。

 

 

「...............」

「あら、どうしたの楠くん、私の顔をジッと見つめて。......私の顔に何か付いてる?」

「......いや、何でも無いです」

 

 

ふと思い立った俺が疑惑の視線を向けても微塵も動揺した様子を見せない羽原先生。本当にただ連絡が遅れただけなのかもしれないが......もしそうでないのなら、中々に食えない人である。

まぁ、ここまで来たのなら仕方ない。少々不安もあるが、その鬼ごっことやらのサンタ役、引き受けることとしよう。最悪柊に守ってもらえば良いや。え、プライド?そんなモノはとっくに握り潰して捨てたけど?だって柊のスペックってば俺どころか人間越えてるし、張り合っても仕方ないよね。

と、そんなことを考えていると、端から柊たち三人の会話が小さく聞こえてきた。

 

 

「ねぇねぇちーちゃん。クスノキくんってばまだ羽原先生のこと見てるよ」

「......羽原先生、凄い美人さんだからね.....」

「ま、まさかお兄ちゃんは年上好きだったりするのでしょうか......うぅ、歳ばかりはどうしようも......」

「いや、そんなことないよ?昔ボクのお着替え中の姿を見た時には恥ずかしがってたし、同年代にも興味はあるはずだよ」

「「!?」」

 

 

止めろ柊、俺はそんなラッキー(?)スケベに遭遇したことはない下らない嘘をつくな訂正しろ!

 

 

「......お兄ちゃん、少しお話しませんか?」

「だから違うって!そんな悲しそうな目をしないでくれ!柊テメェ、とっとと誤解を解けぇ!」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「じゃあ、今日のところは一度帰るか」

「......うん。もうお昼だしね」

「はい。お姉ちゃんも待ってると思いますし」

「んー、そうだよねぇ。皆でお昼ご飯でも食べに行きたかったけど、飛鳥ちゃんも待ってることだし!クスノキくんたちは早く帰ってあげなよ」

 

 

言われるまでもない。

......あれから結局、俺たちは羽原先生にクリスマス会の手伝いに参加することを改めて承諾した。その際に羽原先生が「計画通り......」という声が聞こえてきそうな程の黒い笑みを浮かべたのは気にしないことにした。

 

 

「......ん?アレ、スマホが無い。応接室に忘れてきちまったかな......悪い、スマホ探してくるから皆先に帰っててくれ。電車が来るまでギリギリだし」

「えぇー。クスノキくん、スマホとかお財布とかの大切な物の管理はちゃんとしないと駄目だよー?まったく、応接室だよね?ボクも付き合うよ」

「お兄ちゃん、私も一緒に探します」

「......私も」

「いや、そこまで時間を食う事でも無いからな。先に行ってろ、すぐ追いつく」

 

 

そう言って校舎の方へと歩を進める俺。折角手伝ってくれようとしてるのに少々申し訳ないが、この程度のことに三人もの人手を割かせて貰うのはより申し訳ない。さっさとスマホを回収して三人と合流しよう。

そうして校舎の中に再び入り、応接室の方へとしばらく歩いていると、向こうの方から人影が。

 

 

「あぁ、楠くん」

「羽原先生。あの、すみません、俺......」

スマホ(これ)、貴方のでしょう?貴方たちが出てった後にソファの上に置いてあったものだから」

「す、すみません......」

 

予想通り、人影の正体は羽原先生。その上、紛失していたスマホまで保管していてくれたようだ。ありがてぇ。感謝を意を示すために軽く頭を下げ、羽原先生からスマホを受け取る。

 

 

「じゃあ、私は仕事に戻るわね。休みの日だからって気を抜き過ぎてたりしちゃ駄目よ?」

「あはは......了解です」

 

 

んでもって、羽原先生が身を翻して廊下を歩いていくのを再度頭を下げた後見送る。......さて、羽原先生のおかげで思いの外早くスマホを回収出来た。軽く走って行けば柊たちと合流出来るかな......と、考えつつ出口へ向かって歩いて行くと(廊下は走っちゃ駄目だからね、仕方ないね)。

 

 

「......................んぁ?」

「...................................」

 

 

............小さい八雲と遭遇した。

 

......こうして文字だけで伝えるのはとても難しいのだが、とにかく小さい八雲だ。俺の知る八雲千秋が、まるで小学生だった頃まで退行したような感じの女の子......いや待てよ、小学生ってことは......。

と、俺が驚愕で硬直しながらも妙に冴えていた脳をフル回転させて考えていると。

 

 

「ピリリリリリリリリリ!!(防犯ブザー)」

「待て落ち着け落ち着け待て!話をしよう!」

 

 

ミニ八雲が躊躇いなく防犯ブザーを鳴らした。

 

 

「......きゃー。たすけてー、おかされるー」

「真顔で何を言い出すんだ、というかどこで覚えてきたんだそんな言葉!」

「......『おねえさんといっしょ』で」

「幼児向け教育番組でそんな卑猥な言葉は流さない!嘘を吐くのはやめなさい、というかその前に防犯ブザーを止めて下さいお願いします!」

「................ふしんしゃに、じんけんはない」

「違う不審者じゃない!俺は......!!」

 

 

判断材料はこの容姿と前以て聞いていた情報!もし違っていたら俺はこのまま冤罪で捕まりそうだが、一か八かで言っててみるしかない!

 

 

「俺は八雲千秋のクラスメイトだよ!君のお姉さんの友達だ、八雲千春(ちはる)ちゃん!」

「......おねーちゃんの?」

 

 

俺の言葉に動きを止めるミニ八雲、いや......。

この子の名は八雲千春。

前に聞かされていた、八雲の妹だ。

 

............あの、そろそろ防犯ブザー止めてくれません?洒落になりませんから、ソレ......。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「......ごめんなさい。てっきり、小学生たちをにくよくに身をまかせてむさぼる、ろりこんさんのふしんしゃかと思ってた」

「ハハハ、難しい言葉を沢山知っているんだね。だけど、それらの言葉は全て忘れた方が良いと思うな」

 

 

千春ちゃんの誤解を解いてしばらく。

とりあえず落ち着くため、近くの階段に腰を降ろし(迷惑なので、校内でロリコンさんの不審者と間違われるなどのトラブルに巻き込まれない限りは止めておこう)、クリスマス会云々の事情を千春ちゃんに伝えると、理解力に長けている子なのか一度の説明であらかたの事情を把握したらしく、防犯ブザーを止めて素直にぺこりと頭を下げ、そのまま言葉を発した。

 

 

「......つまり、おにーちゃんはおねーちゃんにこいをしてると。える、おー、ぶい、いー、だと」

「君はさっきまで何を聞いていたんだ」

 

 

前言撤回。理解力は乏しいらしい。

 

 

「......だって、それなりにその人のことがすきじゃないと、ここまでてつだってあげないきがする」

「まぁ、それもそうかも知れないが......それにしたって、俺が八雲に抱いてる感情は同じ好きでもライクの方だ」

「......じゃあ言い方かえる。おねーちゃんのこと、ラブになって。ライクから、ラブに」

「は、はぁ?」

 

 

突然何を言い出すんだこの子は......と、俺が訝しげに眉をひそめると、千春ちゃんはふぅ、と溜息を一つ吐き。

 

 

「......おねーちゃんは、げーむ大すき。この前も、にんげんがねるひつようの無いせいぶつだったなら、その間ずっとげーむしてたいってゆってた」

「アイツらしいな」

「チハルが『......おねーちゃんは一生だれともつきあわないの?』って聞いたら、『......今はゲームと付き合うので精一杯だからねー』って」

「アイツらしいな」

 

 

本当にアイツらしい。別に二次元のキャラと結婚したいとかそういう思考の持ち主なわけでは無いらしいが。

 

 

「チハルは、おねーちゃんがしんぱい。このままだと、おねーちゃんが一生ひとりみになっちゃう」

「いや、アイツに限ってそんなことは無さそうだがな......可愛いし良い奴だし、本気になればいくらでも「おにーちゃん、おねーちゃんのことかわいいってゆった」......あ?」

 

 

俺の言葉の途中で、突然千春ちゃんが身をぐいっ、と乗り出して顔を近づけてきた。何何何。

 

 

「......おにーちゃん、おねーちゃんのことかわいいって思ってるんでしょ?ならケッコンしてもいーはず」

「な......おいおい、それは流石に......」

「......ケッコンしないと、チハルがせんせーに、ろりこんさんにおそわれたってゆう」

「君ってもしかして柊の妹だったりしない?」

 

 

この理不尽な脅し方、まるであの悪魔のようだ。まぁ、千春ちゃんは「ひーらぎ......?」と首を捻っていたので妹とは違うようだが。というか、こんな脅しに屈してたまるか.......所詮は小学生、どうとでも言いくるめられる「......あ、チハルこれからぶかつどーなんだった......きょうしつに忘れ物してて.......ちこくちこく。じゃ、おにーちゃん、またね」やっべぇ。

 

 

「ちょ、千春ちゃん待っ......速ぇ!ホントに八雲の妹か⁉︎ 待って止まって行かないでぇ!」

 

 

慌てて千春ちゃんを追いかけるが、アホ程速い。流石に部活動中に割り込むことは出来ないし、部活動が終わるまでずっと千春ちゃんを待ってたらまた不審者に間違われそうだし......!!

 

 

「ああああもう!何で俺の周りで起こるイベントはどれもこれも円滑に進むことがないんだよ!」

 

 

千春ちゃんの姿がそれはそれはあっという間に視界から失せたところでそう叫び。

俺は千春ちゃんの追跡を諦めた–––––––。

 

 

 

 




いかがでしたか?
と、ここまで書いて気づいたことなのですが、主人公たちが通う学校に冬休みらしい期間が全く無いことに気づきました。エグい。そんなわけで、この前の学校内の描写は冬季学習会の帰りとかその辺で解釈して頂きたく......後々改稿する予定です。

では、今回はここまで!ありがとうございました!感想待ってます!

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