はい、今回のお話はクリスマス回でございます。
今更かよ、と思った読者の皆様。それは僕自身も感じていることです。執筆速度もっと上がんないかなー!
......えー、それでは。
時間をかけた割に短めなクリスマス回。どうぞ!
以前の温泉旅行の日から2ヶ月ほど経過し、12月に入った。冬の寒さもピークに達した今日この頃、放課後の高校の教室にて、帰宅の準備を進めていた俺に柊が突然こんなことを言い出して来た。
「ねぇねぇクスノキくん」
「何だよ」
「噂で聞いたんだけど、クスノキくん、ちーちゃんにクリスマスデートに誘われたんだって?」
.................
「......は?デート?誰と、誰が」
「だから、ちーちゃんがクスノキくんをクリスマスデートに誘ったー......って」
柊も不思議そうな表情でそう言うが、俺自身そんな幸せな出来事があった覚えは無い。仮に本当にそんなことがあったとしたら、俺はとりあえず周りの非リア共に「フハハハ!どうだ?羨ましいか?フハハハハハ‼︎」と自慢しまくっていたことだろう。んで、奴等の怒りを買って
まぁ、実際にそうなる前に否定しておくべきだろう。俺は柊へ視線を向けつつ答えた。
「その噂、尾ひれどころかジェットエンジンが付けられてんぞ......ガセネタにも程がある」
「そーなの?」
「あぁ。......しかし、成る程な。最近やたら八雲のファンクラブの連中に命を狙われると思ったらそういうことか。後で奴等のリーダーに誤解だと伝えておかねーとな」
「......ちーちゃん可愛いし、ちーちゃんのファンクラブが校内に出来てたのは知ってたけど......今しれっと凄いこと言ったね」
最早慣れ始めていたのでしばらく思い出せなかったが、そういえば結構前からすれ違い様に血走った目をした
「つまりアレだ、俺が八雲からデートに誘われたという噂を聞いたファンクラブのメンバーたちが嫉妬心から凶戦士化していたということだな」
「みたいだね。えっと、いつくらいからこの噂が流れ始めたんだっけなぁ......確か......2ヶ月前くらい?」
「2ヶ月前......」
2ヶ月前、つまりは温泉旅行の前後の期間だ。で、その辺りでの八雲からのクリスマスデートのお誘い(と勘違いされるような話)というと......まさか。
「小学校のクリスマス会の手伝いを頼まれた時のことか......?......だとしたら、噂として広まるまでの過程で内容捻じ曲がりすぎだろ、伝言ゲームかよ」
「おっと、何か今聞き逃せない単語が聞こえたね!クリスマス会が何だって?詳しく!」
やべぇ、やぶ蛇った。
.......数分後、俺が2ヶ月前に八雲から説明されたことをソックリそのまま柊に説明すると、柊はニヤァ、とそれはそれは邪悪極まりない笑み(個人の感想です)を浮かべ。
「へー。ふーん。クスノキくんったら、そんな楽しそうなイベントのこと、ボクに黙ってたんだー♪」
「何故お前にいちいち話す必要があるんだ......」
「でもでもー、今回のことをボクにも話してくれていたら、クリスマスデート云々のことは誤解なんだよーって、皆にボクが説明してあげることも出来てたでしょー?」
いや、多分話してたら、お前は面白がって周りの連中を煽りに煽りまくると思うんだが。
「それ以前に、あの場に俺と八雲しかいなかったにも関わらず、曲解されているとはいえあの話が流出していることがおかしいだろ......恐らく発信源も八雲ファンクラブの連中だろうが、何なのアイツら?八雲をストーキングでもしてんのかよ」
「んー......まぁ、ストーキングくらい普通じゃない?」
「人選を間違えたな。盗聴盗撮ストーキング全てを網羅するお前に言っても無駄なことだった」
その行為を日常の一部としてしまっているアホには何を言っても無駄だろう。というか、盗聴盗撮が日常になってる女子高生って何なの?
「まぁ、とにかくそのクリスマス会のお手伝いとやら、ボクも参加させて貰うからねっ♪」
「......いや、決めるのは八雲だかr「今LINEでお返事が来たよ。OKだって!」......仕事早いっすね」
かくして。
未だ俺も詳細を聞かされていないのだが、八雲の妹も通っているという小学校で開かれるクリスマス会の手伝いに柊も参加することとなった。......嫌な予感しかしねぇ。
◆ ◆ ◆
柊のクリスマス会の手伝いへの参加が決定してからまた更に1週間程経ち、クリスマス・イヴまであと2日となった頃。朝、俺が登校すると、いつもならもう少し遅く登校しているはずの八雲が既に自分の席に座っているのを発見した。そして、彼女は俺の姿を認めると席を立ち。
「......あ。楠くん、おはよ」
「あぁ、おはよう。......どうした、何か用か?」
「うん......明後日のクリスマス会のお手伝いの話なんだけど、イベントの準備が全部出来たみたいで。お手伝いしてくれる人も一応内容を把握しておいてくれないか、だって。明日の休日に小学校に行ってみる予定なんだけど、大丈夫かな」
「明日か......随分急だな」
「......う。......ごめんね、もっと前から連絡出来てたら良かったんだけど、私が知ったのも昨日で......」
「い、いや、責めてる訳じゃない。前日に知らせてくれる分、まだマシな方だ。うん、本当に」
あの神出鬼没で存在自体がサプライズな某大魔王に比べたら、寧ろ八雲が女神に見えるレベルである。
「それは誰のことカナー?クスノキくん♪」
「言わなきゃ分かんねーか、柊」
ほら、また突然背後から現れる。もう脳内を勝手に覗かれたことを注意することすら面倒ですわ。
「はぁ......まぁ、俺は勿論のこと、恐らくこの悪魔も明日は暇だろう。別に何か不都合が起きた訳でもない、気に病むことはないぞ、八雲」
「......もしかして、気遣ってくれてるの?」
「......ん、まぁ」
「クスノキくん、ちーちゃんを気遣うのは良いけど、その際に女の子を悪魔扱いするのはどうかと思うんだ」
「......女の子(笑)」
俺は頰を膨らませつつ襲いかかってくる柊を迎撃しつつ......あっあっ、すみません柊さん、俺の肘の関節はそっちには曲がりません痛い痛い痛い!ナマ言ってすんませんっした柊さん許して下さぃあああああああ‼︎
閑話休題。
「さて、話は未だこの話に登場していない笠原のことになるわけだが、アイツは今回の手伝いに参加しないのか?」
「唐突なメタ発言止めなよ。......まぁ、カサハラくんもちーちゃんが前に誘ってたんだけどねー?」
「......イヴの日は予定があるんだって。何かその日には寒中水泳の大会があって、冬の海で500km程泳がないといけないんだとか何とか」
「それ
不謹慎極まりない発言であるが、高校生がこんな真冬に海で500km泳ぐとかもう死にに行くのと同義だと思うんです。でも、大会開くくらいなんだし、それが出来るレベルの人たちが何人も集まるんだろうな......その方々は本当に俺たちと同じ人類なのだろうか。
俺が驚愕から額に汗を滲ませていると、柊が。
「まぁ、笠原くんが人間辞めてるのはいつも通りだから良いとして、ボクはクスノキくんが飛鳥ちゃんたちのことを話に出さないのが驚きだよ。誘わないの?」
「誘ったよ当たり前だろう。......詩音は『勿論私はお兄ちゃんに着いていきます!』って即答したよ。ただ、残念ながら飛鳥はクラスメイトたちとクリスマス会をやるから来れないらしい」
「......へぇ。中学にもそういうの、あるんだね」
「ある、というより飛鳥のクラスが独自に行うモノらしいな。クラス会と変わらん。で、飛鳥は一応級長らしいし......そういう催しに参加しない訳にもいかんだろう」
俺も流石に折角の飛鳥のクラスメイトたちとの交流を止めさせてまでクリスマス会に誘おうとは思わないしな。......本当だよ?別に断られた直後三時間くらい涙目で落ち込んでたりしてなかったよ?ぼくには詩音がいるからいいもん!さみしくなんてないもんっ!
「つまり、今回の参加メンバーは俺と詩音、そしてお前たち二人ということになる訳だな」
「わぁ、クスノキくんハーレムだよ。良かったね」
「あぁ、飛鳥がいればもっと良かったのにな」
「......楠くん、気づいてないかもだけど、凄い量の涙が出てるよ。......ハンカチ、貸したげる」
「ありがとう......ッ」
はい。という訳で、明日は先程挙げた四人のメンバーで小学校に伺わせて頂きます。よろしくです。
◆ ◆ ◆
翌日。時刻は午前8時。
俺は柊との待ち合わせ場所に設定された駅へと向かうべく詩音と共にバスへと乗り込み、そこの座席に腰を下ろしていた。ちなみに、八雲は俺たちが向かう予定の小学校が地元にあるため、俺たちが降りる予定の駅にて待って貰っている。
「くぁ......」
「お兄ちゃん、まだ眠いんですか?」
「まぁな......」
座席に身体を預け、小さく欠伸を漏らす俺。
いつもならこの時刻には既に脳も覚醒している頃なのだが......昨日は授業中に居眠りをかました罰として数学担当の教師から特別課題をPresent for meされたために、それの消化に追われていたのである。おかげでまたも深夜まで起きていることとなり、ご覧の有り様という訳だ。
それを説明すると、詩音は。
「いくらお兄ちゃんでもそれは駄目ですよ......最低限授業はちゃんと受けていないと、後々困りますよ?」
「いや、分かっちゃいるんだけどな......昼飯の後の授業とか殺人的に眠くなるんだよ。アレには抗えない」
「それでも、ですっ。気持ちは理解出来ますが、それで将来困るのはお兄ちゃんなんですからね?」
「はい......(´・ω・`)」
義妹に説教される兄の図である。
情けないにも程があるが、これは全面的に俺が悪いし、怒っている詩音も可愛く、もう少し見ていたいので何も言えない。でも、皆昼飯の後の授業とか凄い眠くならない?出来れば昼飯の後はお昼寝タイムみたいな時間を設けて欲しいものだね。ちなみに、これを担任の先生に言ってみたら「馬鹿なことを言っていないで早く課題を消化しろ馬鹿」と言われた。言葉の頭と尻で馬鹿扱いしなくても良いじゃないですか......。
「ま、まぁ、俺のことは今は良いじゃないか。ホラ、あともう少しで駅に着くからな。忘れ物するなよ?」
「むー......。もう......お兄ちゃんは仕方ない人ですね......まぁ、そんなお兄ちゃんも好きなのですが」
「やだ何この天使。落としてから上げるなんて、そんな高度な口説き方いつ覚えてきたの」
「口説いたつもりは無いのですが......けど、今のでお兄ちゃんがドキッとしたなら、これからお兄ちゃんを褒める際には必ず一度、お兄ちゃんを
「褒める時には素直に褒めてくれると嬉しいな!」
褒められる度に一々貶されていては、流石の俺も心が折れてしまうだろう。いつも通りのエンジェル☆スマイルを俺に向け続けてくれればそれだけで俺は幸せです。
と、そんな他愛も無い雑談を詩音と交わしていると、バスが小さなブレーキ音と共に停車した。
「着いたか。よし、降りようぜ詩音。まだ時間に余裕はあるけど、柊も待ってるだろうしな」
「はいっ」
「荷物は持ったか?」
「はいっ」
「そうか。では俺も自分の荷物を......」
「お兄ちゃん、何故お兄ちゃんがミニスカサンタのコスプレ衣装を持っているのでしょう。というか今までどこに隠し持っていたのですか」
「気にするな」
「気にするなと言われても!」
詩音が珍しく......いや、最近はそうでもないか。とにかく狼狽したようにそう叫ぶ。しかし、降車寸前とはいえバスの中で大声を出すのはマナー違反なので軽く注意をすると、詩音はとても釈然としていなさそうな表情をしながらも静かになった。やはり出来た妹である。
そしてバスを降りると。
「クスノキくんたちおっそーい」
「......ん、おはようさん」
「おはようございます、柊さん」
「あら、ボクの抗議はスルーな感じ?」
白いニットのワンピースの上にベージュのコートを羽織り、下はゆったりとした黒いパンツといった出で立ちの柊が、首に巻いたタータンチェックのマフラーを弄りながらバス停の側に立っていた。コイツ、いつも思うけど性格がぶっ飛んでる割に、私服は大人しめな色調なのが多いよな......っていうか。
「スルーも何も......今は待ち合わせ時間の10分前じゃねぇか。どんだけ早く来てたんだよ」
「今から2分くらい前かな」
「大して待ってねぇ......」
何なのコイツー。2分くらいでうだうだ言わないでよちっちゃいなー。何、女の子を待たすなんてイケナイことなんだゾ☆みたいなノリなのー?
「まぁ、2分程度あまり気にしてないんだけどね」
「じゃあ何で言ったの......」
「何となく、カナ?」
「何となくで文句つけてくるとか生粋のクレーマーかよ。お前みたいな奴が将来モンスターペアレントになるんだぞ」
まぁ、もしコイツが親になって子供が通う学校に不満を持ったとしたら、クレームなんてつけるまでもなく学校そのものを潰しそうな気がするよね。何か裏でゴチャゴチャ非合法なことやって。
「......ボク、そんなにクレイジーな思考回路してない気がするんだけど。何さ非合法なことって」
「さ、そろそろ行こうぜ。電車に乗り遅れる」
「あっ、待ってよー!」
「ついに心を読まれることに反応すらしなくなりましたね、お兄ちゃん......慣れって恐いです」
あぁ......そういや普通の人はクラスメイトに心読まれたりしないんだよね......恵まれてるなぁ。
◆ ◆ ◆
数分後、俺たちは切符を購入して電車に乗り込み、八雲の妹が通っているという小学校––––
「お兄ちゃん、クリスマス会では一体どんなことをするのでしょうね。私、とても楽しみですっ」
「まぁ、それを今から聞きに行くんだがな。参考までに言うと、俺が小学生の頃はビンゴとかやってたな」
「あー、ボクのとこもやったなぁ。アレ、景品は大体学校側が用意してくれるから、結構豪華なのもあるんだよねー」
「っつーか、詩音は小学生の頃、クリスマス会とかに参加してなかったのか?」
「参加しなかった訳ではないのですが......私が通っていた小学校はそもそも全校生徒の数が少なくて。クリスマス会もささやかなモノだったんです。今回はかなり大規模なモノらしいので......」
成る程、そういうことか。
......というか、もう詩音はウチに馴染み切っていたので、昔は俺たちとは違うところに住んでいたという設定すら忘却していた。おい、設定とか言うな。
「詩音ちゃんは純粋で可愛いねぇ」
「だろ⁉︎ほんっと詩音は可愛いよなー!」
「お、お兄ちゃん。こんな人が沢山いるところでそんな......恥ずかしいですよ、もう......」
「詩音ちゃん、顔がニヤけてるよ。これがシスコンとブラコン同士の兄妹のやり取りか......見ているコッチが恥ずかしいね、コレ。兄妹なのに」
「「ふっ......」」
「何で二人共誇らしげなのさ」
俺たちがお互いの愛を認識し合っていると、電車が停車した。あらやだもう着いたの?もっと詩音とランデヴーしてたいんだけど。
「着いたみたいだね。さ、ちーちゃんも待ってるだろうし、早めに行こうか。というかボクの疎外感が半端じゃないから早くちーちゃんと合流したい」
「本心が出てるぞ柊。別にお前をハブった気は無いんだがな......ただ詩音が可愛過ぎただけで」
「お兄ちゃん......」
「やっべ無限ループが始まりそうな予感がする。早く行くよ二人共!レッツゴー!」
「手を引っ張るな......分かったから」
電車から降りた途端に俺と詩音の手を引っ張って駆け出す柊に着いていくような形で俺は走り出す。
......さて、読者の皆様の方ではもう大晦日だ。
とっととクリスマス会とやらも片付けましょうかね。
1 話 で 終 わ る と は 言 っ て い な い 。
......はい。1話に纏めようとすると長さ云々より投稿日が死ぬ程遅くなりそうだったのでいくつかに分けます。
体感だとあと2話といったところでしょうか。年越しストーリーを投稿する時には2月くらいになっていそうですが気にしない。いや、気にします申し訳ありません。
えっと。
とにかくクリスマス回はあと2話程で完結します、多分。なのでそれまで気長に待って下さると幸いです。
ではまた次回!感想待ってます!