妹がいましたが、またさらに妹が増えました。   作:御堂 明久

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どうも、ほぼ毎月あるテストに精神が病んできた御堂です!

ついにタイトルが略されてしまった。だって無駄にキャラが増えたんだもの!仕方ないじゃないっ!
そろそろこの登場人物の情報をタイトルにねじ込むスタイルは変えた方が良いかもしれませんね。

まぁ、そんなことは置いといて。
一応今回は温泉回のつもりです!どうぞー!



楠兄妹とボクっ娘と筋肉(ry のプチ温泉旅行♨︎

10月となり、段々と肌寒くなってきた。

高校の制服も夏服から冬服に変える生徒もまだまだ少ないが出てくるようになり、女子はスカートの下にジャージを履く生徒も出てきている。

......女子生徒の生足を見れなくなってしまったことで、滂沱の如く涙を流す男子生徒もいた。おい、お前ら落ち着け。まだスカートだけの女子は沢山いるから。あ、そうだ!スマホで生足の写真でも撮っておけば良いんじゃないかな(セクハラ)!その写真は後で何枚か僕にも下さい。寧ろ何枚か自腹で買うまである。

 

俺がそんなことをボーッと考えつつ朝の高校の教室で文庫本を広げていると、視線の端にそれはそれは綺麗な生足、もとい女子生徒が入り込んで来た。

やだ誰かしら。そう思い視線を上げてみると。

 

「おっはよー!クスノキくんっ♪」

「......お前は間違いなく美少女なのにな。なのに何故こんなに萎えるんだろうな。魔王だからだろうな」

「朝からデリカシーの欠片も無い台詞を......」

 

目の前に現れたのは災厄の根源(トラブルメーカー)こと万能美少女の柊伊織。いつも俺の神経を逆撫でしてくるストレッサーである。コイツと絡んでるだけで健康状態が日に日に悪くなっていく気がするんですけど。

俺がありったけの負のオーラを身体中から噴出させつつ柊に視線をやると、彼女は華やぐような笑顔でこちらに身を乗り出しながら言って来た。

 

「ねぇねぇクスノキくんっ。今度の休日、温泉に行ってみない?飛鳥ちゃんとか詩音ちゃんも誘っ「おい何モタモタしてんだ早く行こうぜマイシャンプーの持ち込みは良いのか?」流石早いね」

 

妹たちと温泉。その言葉を聞いた瞬間に俺の身体は動いていた。亜空間からバスタオルと着替え、マイシャンプーを取り出し、小さく折り畳んだタオルを頭にちょこんと載せる。ノリで載せてみたけど、この風呂の時に頭の上にタオルを載せるのって何の意味があるんだろうね。今じゃアニメでもあまり見ない光景だけど。頭頂部のハゲ隠しかな?

 

「言っとくけど、混浴とかじゃないからね?」

「ハン、馬鹿め。俺ほどの上位お兄ちゃんともなると、壁の向こう側から聞こえてくる妹の声からその裸体を想像、もとい創造することが出来んだよ」

「上位お兄ちゃんって何さ」

 

他にも下位お兄ちゃんやG級お兄ちゃんが存在する。それどこのモンスター◯ンター?

 

「そんなことより。少し落ち着きなよクスノキくん。ここには他のクラスメイトもいるんだし」

「......お、お騒がせしました」

 

そうだった。いつもの柊との会話だったからごくごく自然に亜空間だのを発現させてしまっていたが、他のクラスメイトは紛れもないただの一般人なのだ。こういう行動は少し自重しないとね!

(注)一応私もただの一般人です

 

「......で、温泉っつーのは?詳しく説明してくれ」

「おやおや、いつになくクスノキくんが乗り気だね?もしかしてボクとの温泉が楽しみだったり?」

「いや全然?妹しか眼中にありませんが?」

「むぅ......そんなにハッキリと言わなくても良いじゃんか......クスノキくんのばかっ」

 

柊が頰を膨らませながら言ってくる。あざとい。

と、俺たちが話していると柊の背後から二人の人影がひょこっと現れた。......まぁ、誰かは予想がつく。

 

「おぅ祐介、伊織!おはよう!」

「......二人共、何のお話してるの?」

「にゃはっ♪待ってたよ二人共ー!実はね––––」

 

笠原信二と八雲千秋。いつもの四人が集結した。

......そして、この四人が集まるといつもロクなことが起きないということは俺が身を以って知っている。

どうしよう、何か急に温泉行きたくなくなってきたなぁ......頭と胃が痛いなぁ......。

 

そんなことを楽しげに話す三人を見ながら考えていると、朝のHRの開始を知らせるチャイムが鳴った。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「そんな訳で。この前商店街の福引きを二回引いたら、何と二回とも特等の温泉旅行チケット4名様用が当たっちゃったのさ!ボクって強運なのかな⁉︎」

「お前のことだし買収か何かしたんじゃねぇの」

「クスノキくんは本当にボクのことをどう思ってるのかな......ボクだって女の子なんだけど......」

 

この会話もそろそろパターン化されてきたな。柊の発言に俺が毒を吐き、そして柊がそれに軽く凹むというパターンである。因みにやり過ぎると俺が柊にえげつない報復を受けるルートに突入する可能性も出てくるので注意が必要である。プレイ次第でどれでもよりどりみどりのバッドエンドがお楽しみ頂けます。何この最悪の売り文句。

 

「しっかし、本当に普通の方法で当てたなら伊織はスゲー幸運の持ち主なのかもしれねーな!」

「羨ましいよねぇ。私もソシャゲのガチャで100回に一回くらいの確率でSSRが出るくらいの運が欲しいよ。万単位で課金してSSR出ないのホント辛いし」

「でしょー?まぁ、商店街の人は泣いてたけどね」

 

だろうね。特等を連続で奪取された訳ですしね。

商店街の人への同情の気持ちが湧いて来るが、まぁ柊が実力で当てたものだ、今回は諦めて貰おう。

で、温泉の話に戻るのだが......。

 

「四人用×2ってことは、飛鳥と詩音入れても二人分余っちまうな。どうせならあと二人くらい誘いたいところだ」

「まーね。まぁ一人は保護者的な人が良いよね。この温泉旅館結構遠いし、飛鳥ちゃんたちはまだ中学生な訳だし、そのためにもやっぱり必要だよ」

「それでもあと一人余るぞ?」

「うーん......楠くん、どうしよっか?」

「保護者の方は一応アテがある。もう一人は......飛鳥たちにも誘いたい人が一人や二人いるだろ」

「そっか。そだよね」

 

その飛鳥たちが誘いたい人が男子だったら男湯で俺流の洗礼(拷問)を受けてもらい、二人以上誘いたいと言うのならば笠原辺りを除外すれば良いだろう。

 

「......何か祐介から不穏な空気を感じたんだが」

「安心しろ。ただのお前への殺意だ」

「微塵も安心出来ねぇよ⁉︎」

「いや、基本的に俺は常時お前に殺意抱いてるし......今更って感じしねーか?」

「しねーよ!ってか常時殺意抱かれてたのオレ⁉︎」

 

いかん、ジョークが黒過ぎた。いや、ブラックジョークって中々人気があるって聞くじゃん?

少しブラックの度合いが強過ぎたみたい!てへっ☆

 

そんなこんなで、今度の休日に俺たち高校生組と妹たち+αの多分中学生組、そして保護者一人で一拍の温泉旅行へ行くことになったのである。

まぁ、まだ飛鳥たちに確認は取ってないけども。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「––––という訳だ。どうだ、行ってみないか」

 

俺は高校から自宅へと帰還し、しばらくすると詩音と飛鳥も帰ってきたので高校で話していたことを二人に説明、温泉旅行へと誘ってみた。

 

「温泉?まだ少しシーズンには早くない?」

「だからだろうな。まだ混み合ってもない時期だろうから二枚も福引きの景品に出来たんだろう」

「でも、温泉に入りたくなるような気温でもありますよね......くしゅんっ」

 

詩音はそう言うとくしゃみを一つし、恥ずかしそうに鼻の辺りを抑える。もう死ぬ程可愛い。俺の将来の死因がキュン死にになりかねないまである。

俺が詩音の可愛さに身悶えしていると、飛鳥がニコッと笑いながら俺の方へ言ってきた。

 

「うんっ、お兄ちゃんたちが良ければ飛鳥も温泉旅行に行きたいなっ!」

「私もです。......勿論混浴ですよね?いえ、混浴でなくても良いので女湯に来ませんかお兄ちゃん」

「喜んで」

「はいはーい、そこまでにしてねー」

「「頭が割れるぅ!」」

 

俺と詩音のランデヴーをアイアンクローで阻止しにかかって来る飛鳥。え、ていうか頭蓋がミシミシ言ってるんですけど。どこのフリッツ・フォン・エリックだよ。因みにアイアンクローの基本形態は顔面の正面から鷲掴みにするものらしい。後頭部かと思ってたわ、プロレス全く詳しくないから知らんけど。某バカテスの霧◯翔子さんがよくやっているので参考にしよう。

 

「いってぇ......あ、そういえばまだ定員が一人余ってるんだが、誰か誘いたい人いるか?二人でも良いぞ、笠原を代わりに置いてくから」

「ひ、一人で良いよ......うーん、どうしよっかなー」

「あ、だったら九条(くじょう)先輩はどうですか?以前、喫茶店のお手伝いをさせて貰ったお礼も改めてしたいですし、お姉ちゃんと仲が良いみたいですし」

「うんっ。やっぱり莉奈(りな)ちゃんが良いなー」

 

九条莉奈。以前飛鳥と詩音が手伝いをさせてもらっていた喫茶店の娘である。容姿は一言でいうとロリっ子ツインテール。小さな体躯で喫茶店内を落ち着きなく走り回っていた姿が印象的な、少し慌てん坊っぽさが目立っていた子だ。

あの子を誘うのか。礼儀正しそうな子だったし、少々人見知りが激しそうだったが、飛鳥と詩音がいるのだ、他のメンバーとも仲良くなれるだろう。

さて、あとは保護者の確保だが......。

 

「ちょっと行ってくるわ」

「え?どこに?」

「書斎に」

 

俺は飛鳥たちと話していたリビングを出て、階段を登り二階へと上がる。そのまま真っ直ぐ進むと、書斎が見えてきた。そこに入ると一人の男性が。

 

「......おや?帰ってきたんですね。お帰りなさい、祐介くん。何か用ですか?」

「いえ、一つ頼み事がありまして」

 

光男(みつお)。少し細めの眼鏡を掛けたスーツ姿の仕事の出来そうな、というか実際出来る男性である。俺と飛鳥の義父であり、詩音の実父。何故か未だに敬語で話す仲であるが、何となくコレが一番しっくりくるのである。

 

「頼み事、ですか?僕に出来ることなら何でもしますが「報酬は妹たちの湯上がり浴衣姿です」命に代えてもご命令を遂行いたしましょう」

 

これで光男さんは仕事を休んででも協力してくれるだろう。しかし娘たちに萌える(オブラート)父親って相変わらず酷ぇ。それこそ父親じゃなかったら捕まってるまである。

 

「して、内容は?」

「簡単ですよ。俺たちの保護者として今度の休日に行く温泉旅行に同伴してくれれば良いだけですし。折角なんで、ついでに日々の疲れを癒して下さい」

 

因みに、母親である楠千歳(ちとせ)は誘わなくても良いのかという話なのだが、あの人は現在広島へ出張しており家には居ない。

 

「それだけで飛鳥ちゃんたちの浴衣姿を拝めるというのですか!勿論引き受けましょう!貴方たちの保護者は僕が立派に務め上げますとも!」

 

貴方は保護されないように気をつけて下さいね。どこの国家権力に、とは言いませんけども。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

しばらくして。

休日となった今日、俺たちは集合場所として設定されていた柊の家の前へと集まっていた。コイツの家に来るのは初めてではないが、改めて来ると我が目を疑う程の大きさである。柊の自宅は3階建ての屋敷であり、柊は一人暮らしを望んでいるようだが、この屋敷の主たる彼女の父親が娘が居なくなることを泣きながら拒むので出るに出られない状態なのだと彼女本人がいつぞやか言っていた。何かシンパシーを感じる。主に父親の娘の溺愛っぷりで。

 

「クスノキくんクスノキくん。今日はキミのお義父さんが車に乗せてくれるんだって?ありがとね」

「礼なら光男さんに言っとけ。多分飛鳥と詩音がいるこの旅行、光男さんは全身全霊を以って俺たちの安全を守る保護者(ガーディアン)になってくれるだろうからな」

 

光男さんはその命を失うこととなっても必ず俺たちを守ってくれるだろう。妹の為に行動する人類は最強で最高なのだ。勿論僕もねっ(自画自賛)!

現在ここにいるのは俺と柊、八雲と笠原の高校生組のみである。九条さんが柊の家の場所を把握していないため、飛鳥と詩音で迎えに行きそのまま一緒に来ることになっており、光男さんは全員が乗れる車を調達した後、車と共に来ることになっている。

 

「ねぇねぇ楠くん」

「あ?どうした八雲」

 

俺が自身の三半規管を弱さを自覚し前もって用意しておいた酔い止めの錠剤を服用していると、八雲が背後から話しかけてきた。

 

「今日はあの喫茶店の女の子が来るんだよね?あの子、どんなゲームが好きかな?」

 

そう言うと八雲はパンパンに膨らんだ自身のリュックサックをぺしぺし叩く。おい待て、まさかその中全部ゲームソフト及びハードじゃねぇだろうな。浴衣は旅館で貸し出されるが、持ち物がゲームだけってのもどうよ。

まぁ、九条さんを歓迎しようとしているのは好ましいことではある。そうだな......。

 

「出来るだけシンプルなやつが良いんじゃないか。マ◯オとかシンプルそのものだろう」

「あー、マリ◯も良いよね。一応シリーズは全部持ってきてるけど、ちゃんと希望のモノを持って来れていたら嬉しいな。一緒にプレイしたら仲良くなれるかもだし」

 

そもそもゲームに興味が無いかも、という可能性を考えないのが彼女らしい。この広大な地球という土地全体を見ても、ゲームに興味が無い人類など存在しない、それがコイツの中では前提条件なのだ。

と、しばらくすると飛鳥と詩音がやって来た。彼女たちの後ろには、飛鳥に手を引っ張られて若干身体のバランスを崩しながら歩いてくる九条さんがいた。身体が小さく軽いので、ちょっと引っ張られただけでも足がもつれてしまうのかもしれない。

 

「お兄ちゃーん!お待たせっ!」

「遅れました。もうお父さんは来てしまっているでしょうか......?」

「いや、まだだ。......それと」

 

そう言って俺は九条さんに視線を向ける。すると彼女はびくっ、と震え、飛鳥の背中に隠れてしまった。内気な性格なのかもしれないが、女の子にそんな反応をされると少し凹む。

 

「......な、何か御用でしょうか......!?」

「い、いや。改めて挨拶をと思ってだな。えっと、飛鳥と詩音の兄の祐介だ。よろしく、九条さん」

「ひゃ、ひゃいっ!く、くくく九条と申しましゅよろしくお願いします!」

 

そう言って凄まじい速さで(ひざま)ずいて地面に額を擦り付ける九条さん。見た目が小学生並みに幼い彼女がそんな行動を取っていると、まるで俺が小さな子を虐めているような構図になってしまう。止めて!高校生組が凄い冷たい目で俺を見てるから止めて!

 

「クスノキくん......」

「それはちょっと......」

「絵面的にアウトだ、祐介」

「誤解だ!ちょ、九条さん顔を上げてくれ!このままでは俺が幼女虐待の容疑で通報されてしまうかもしれない!顔を上げてくれ!」

 

周りに視線をやると、柊の家の近所の方が何やら固まってヒソヒソと話していた。手に携えたスマホの連絡先が死ぬ程気になるところだが、ここはスルーする。というかせざるを得ない。

 

「あ、あはは......ごめんねお兄ちゃん、莉奈ちゃんってば凄い人見知りだから......」

「九条先輩、お兄ちゃんは良い人ですよ。何てったって私の将来の伴侶となる人なのですから何も心配事はありません」

「ふぇ......?伴侶......?」

 

顔を上げた九条さんが涙目ながらも困惑したような表情で詩音を見つめるが、アレは詩音なりに軽い冗談で九条さんの緊張をほぐそうとしているのだろう。......冗談ですよね?

その後高校生組がそれぞれ九条さんに自己紹介を済ませ、九条さんは便宜上「苗字〜先輩」と俺たちを呼ぶことにした。何やかんやで誰かに先輩と呼ばれることは少ない俺なので、ちょっと気分が浮つく。

 

「あのっ、楠先輩。私のことは九条と呼んで頂いて貰って......さん付けは少し、むず痒いです」

「ん。分かったよ、九条」

 

俺がそう言うと、九条は少し照れたようにはにかむ。すると彼女の背後から黒い影が–––。

 

「わーい!じゃあボクは莉奈ちゃんって呼ぶね!莉奈ちゃん可愛いー!莉奈ちゃーん!」

「ひゃあっ⁉︎」

 

というか柊だった。流石コミュ力の怪物、早々に九条を下の名前で呼び、ガバッとその小さな身体を抱き締める。九条は突然の魔王襲撃によって大いにビビり、なすがままになってしまっている。

 

「じゃあ私も莉奈ちゃんって呼ぶねー」

「ひゃあ––––っ⁉︎」

 

そこに八雲の追撃(抱擁)。最早九条は気を失うのではないかと思う程に怯えてしまっている。家に初めて来た猫みたいだ。我が家に初めて来た頃の飼い猫もこんな感じで身体中の毛を逆立てていた気がする。こちらは威嚇をする余裕すら無さそうだが。

 

「うむ......なぁ祐介。男子のオレがあの子を名前で呼ぶのは少し馴れ馴れしいだろうか?」

「ほぅ、お前にも一応そういうとこを気遣う頭はあったんだな。見直したぞ」

 

コイツはそんなのを気にせずに異性にガンガン近づいて行くノンデリカシーの馬鹿かと思っていたが。

 

「お前はオレをどんな風に思ってんだ⁉︎......ちなみに、どの程度見直したんだ?」

「ふむ......そうだな、具体的にはゴミからカスにランクアップした程度だ。頑張れ、あと少しでクズへとランクアップするぞ」

「大して変わんねぇ!というかソレはランクアップなのか⁉︎寧ろランクダウンじゃね⁉︎」

 

喚く笠原を華麗にスルーしつつ光男さんを待っていると、柊の家の向かって右側からバスが走って来るのを確認した。光男さんは車を調達してくるとしか言っていなかったが、まさかアレが......?

と、俺たちがそのバスに視線を向けていると、やはりというかソレは俺たちの眼前で停車し、バスの扉が開いて運転席から光男さんが手を振って来た。

 

「やぁ皆さん!僕が今回皆さんの保護者役を務めさせて頂きます、楠光男と申します!気安く“みっちゃん”と呼んで構いませんよ!さぁ温泉旅行へと行きましょう乗って下さい!」

 

妹(あの人にとっては娘だが)との温泉旅行ということでテンションがMAXなのだろう、いつもの五倍くらい輝いている笑顔をこちらに向けながら光男さんは言った。因みに、それを見た九条は怯えて飛鳥の元へと駆けていき、詩音は実父のハイテンション具合を俺たちに見られるのがはずかしいのか頰を赤らめ、他の連中は苦笑を浮かべるばかりであった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

俺たちはバスに乗り込み、旅館へと出発した。

中学の修学旅行などで乗ったバスと設備は大して変わらない、ごく一般的なバスである。だが、問題は何故そんなのを光男さんが運転しているのかというところなのだが。

俺は少し身を乗り出し、運転席の光男さんの背後から声を掛けてみる。運転席が少し遠いので声を張らなければならない。

 

「光男さん、このバスって」

「あぁ、これですか?買ったんです。3000万もあれば新品でも良いのが買えますからね」

「............は?」

 

え、何だって?バスを買った?俺の耳がおかしくなったのかこの人がおかしくなったのか、それをハッキリさせておきたいのだが。

 

「そんなことより祐介くん。聞きたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

3000万の買い物をそんなことで済ませないで頂きたいのですが。しかし光男さんは構わず話を続ける。

 

 

「............覗きは、するのですか?」

 

.................................................................。

 

運転席に座り前を向いているため、光男さんの表情を知ることは出来ない。が、声質から至極真面目な表情であろうということは察することが出来る。

 

それを理解した上で言おう。

 

何言ってんだコイツ。

 

この人やべぇ。何がヤバいって自身の娘たちの裸を見たがるところとかあの超人たち(メンバー)相手に覗きなんかが出来ると思っているその思考回路がヤバい。ちなみに、前者の方は考えてみると俺も普通に自分の妹の裸が見たいと思ってるので俺も大してこの人と変わらないなと思いました。まる。

そんなことより。

 

「何言ってんすか光男さん。アイツら相手にそんなこと出来るわけないでしょう?しかも、柊や詩音ならともかく、飛鳥にバレたら殺されますよ」

 

エロ本の所有だけでも地獄を見たのだ、覗きなんかを行なったことが知れてみろ、まず間違いなく明日の日は拝めなくなってしまう。

と、俺が光男さんを説得しようと試みていると、隣に席で出発早々に眠りこけていた人物の肩がぴくっと動き、その身体を起こした。笠原である。

 

「............覗きをすると聞こえたんだが」

 

コイツの耳どうなってんだよ。

光男さんは俺たちの後ろの席に座っている柊と八雲(そのさらに後ろに座っている飛鳥&九条、更にその後ろに座る詩音と談笑中)たちに声が聞こえないようにするために俺だけにギリギリ聞こえるくらいの声量で話していたのだが、笠原は睡眠中にも関わらず本能的な部分で察知したらしい。野生の動物そのものである。主に知能とか。

 

「......確かに言ったが、それを実行するのとは別問題だ。いくら何でもリスクが高過ぎる」

「祐介!やる前からそんなこと言っててどうすんだよ!諦めたら試合終了なんだぞ⁉︎」

「やる前からというか実行したら即死だから今言ってんだろうがボケ」

「大丈夫です祐介くん!私が立てた覗き計画に沿って動けば万事上手くいきます!」

「光男さんそれ死亡フラグ」

 

そんなこんなで女子は華やかなガールズトークを、男子は欲望溢れる愚か者たちの会話(フールズトーク)を行なっていると、バスが止まった。旅館に到着したようだ。

 

「さて、降りるか」

「「僕(オレ)たちは諦めないッ‼︎」」

 

俺は馬鹿共を横目で一瞥し、飛鳥たちの荷物を代わりに持ちつつバスを降りた。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「ようこそ『白峰館(はくほうかん)』へ。ご予約の楠様でいらっしゃいますね?お待ちしておりました」

「はい。お世話になります」

 

そんな感じで俺たちを迎えてくれたのは着物姿の女性。女将(おかみ)というやつだろうか、知らんけど。何ならそこそこ品のある着物姿の女性は皆女将に見えるまである。夏祭りとか女将が大量発生しそう。

 

「では、お荷物はこちらでお預かりします」

「あぁ、人数が多いので我々で運びますよ」

「ふふ、こういう仕事をしていると女性でも力が付いてくるものですよ。それに、他の従業員もいますしね。お客様はごゆっくりと」

 

少し砕けた口調でそう言われ、俺たちも大人しく引き下がる。まぁ、無理に女将さんの仕事を奪ってしまうのもかえって失礼に当たるのかもしれない。

 

「ふむ。ではどうしましょうか?温泉に行きますか?それとも温泉に行きますか?とりあえず温泉に行ってみますか?」

 

提案のように見せかけて一つの選択肢以外認めないという意志が透けて見える光男さんの言葉。ここまでくるといっそ清々しいとさえ思える。

そんな光男さんから溢れ出る気迫に気づいているのかいないのか、詩音が頰に指を当てて言い出す。

 

「そうですね。やはり折角の温泉旅館なのですから、先に入ってしまいましょうか」

「......そういえば、お昼に入るお風呂って何かリラックス出来るみたいだしね。最近ゲームのし過ぎで疲労が凄いし、入っておきたいかなぁ」

「ボクも賛成ー!」

「わ、私は先輩方が入るなら......」

「飛鳥も新しく買ったリンス試してみたい!」

 

詩音の言葉に女性陣が全面的に賛成、今から温泉に入ることにしたようだ。......そして、こっちも。

 

「......さて、我々も行きますか。笠原くん」

「了解っすよ親父さん。行くぜ祐介」

「だから勝手に頭数に入れるのを止めろ」

 

やはりというか、女子たちが温泉に入るタイミングを見計らい、光男さんと笠原(阿呆共)も入浴するようだ。

まぁ、俺は極力関わらずに温泉だけを純粋に楽しむことにしよう。皆が入ってる中俺だけ部屋へ行くってのも暇を持て余しそうだしな。

 

少し早めの入浴タイム。

その中で、男二人の汚れた欲望に塗れた戦いが今まさに始まろうとしていた。

 




温泉に入ってないじゃんか......!!

......まぁ、流石に20話以上書いてると自己分析的なことも出来てくるわけで。どうやら、僕が腰を据えて何かを書こうとすると大体二部以上の構成になり。前編は起承転結の『起承』、後半で『転結』を書く傾向にあるようです、はい。

えっと、ガッカリしてしまった方は......すみません。
次回っ!次回に妹たちの艶姿を必ずっ!

こ、今回はここまでっ!ありがとうございました!感想お待ちしております!

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