妹がいましたが、またさらに妹が増えました。   作:御堂 明久

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テストでしんだみどうです。
おいおいなんだよアレ。こてん26てんて。やべぇ。

......いや、うん。それとこれとは関係ありませんね、はい!すみません、投稿が大幅に遅れたのはテスト及びシャドバにハマったり私的な理由でして......。
次回は早めに更新致しますので!もうストーリーは考えてありますので!

で、では!どうぞー!



楠兄妹と(普通の)趣味探し2

前回までのあらすじを一言で。

 

妹趣味否定故体育競技体験八雲庭球用器具破壊。

 

................。

 

................まとめたつもり、だったんだけどなぁ......。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

何か凄い無駄な行を使った気がする。

......ひょんなことから始まった飛鳥+インドア三人衆によるスポーツ体験。目的は俺らの新たな趣味として、スポーツ系の趣味を見つけること。

正直なところ、飛鳥に否定された“妹”を止める気はほぼ無いが、かの天使、飛鳥嬢は俺たちと共にスポーツで楽しめたら良いな、と仰った。コレは断れない。断れたらソイツはお兄ちゃんじゃないね!

そんな訳で、最初はルールの大半を省略したテニス体験を行っていたのだが。

 

「......で、何?つまりお前はさっきみたいなスーパープレイをする度にMPとやらを消費すると」

「うん。M(3日前に適当に思いついた嘘っこ)P(ポイント)をね」

「いやルビ長ぇよ。しかも嘘っこって言った?じゃあお前、無制限にあのラケット破壊ショット使えんじゃねーのかよ」

「......クスノキくん」

「何だよ」

「ラノベでも、その場限りの設定って......あるよね」

「おい、止めろ。何か怒られそうだから止めろ」

 

俺&八雲vs.飛鳥&詩音によるダブルス対決。

先程、八雲が初撃として飛鳥のサーブを打ち返し、それを受けた詩音のラケットを粉砕した所である。

しかし、今の会話の通りもうあんなぶっ壊れショット(フレームがプラスチック製だったため、もしかしたら誰かが再現可能なのかもしれないが、一般の女子高生は普通は不可能のはずだ)は打てないらしい。いや、一回でも十分化け物なんですけどね。妹たちがバイトをしていたあの頃から兆候はあったが、八雲もとっくに人外への扉を開いてやがる。怪物への扉(ノッキン オン モンスタードアー)の二つ名をくれてやろうかと思ったまである。パクリ臭ぇ。

と、そこでネットの向かい側にいる飛鳥が。

 

「お兄ちゃーん。ちょっと今詩音ちゃんの代わりのラケット探してるから待っててー?」

「あ、あぁ」

 

......え、何。八雲の超絶ショットに対するリアクションはそんなモンなんですか。もうこんなことは日常茶飯事っつー事ですか。確実に妹たちに悪影響が出ている気がする。諸悪の根源はたぶんあの悪魔()

 

「まぁ、どうでもいいや。寧ろアイツの存在にそこまで気を向ける必要が無いまである」

「え、何の話?」

「何でもない。さて、と。八雲のMPとやらが切れた分、俺も気合入れましょーかね」

 

先程は八雲のプレイに圧倒され一歩も動くことが出来なかったが、今度はそうはいかない。飛鳥たちが詩音のラケットを補充し、コートに戻ってプレイが再開されると同時に彼女たちは俺のスペックの高さを思い知るだろうぜフハハハハァ––––ッ‼︎

 

 

 

 

 

 

––––なんて思ってた時期が俺にもありました。

 

「てーいっ!」

「そげぶっ⁉︎」

 

飛鳥が放ったフラットサーブが俺の足元でバウンドし、的確に鳩尾へと吸い込まれて行った。激痛。

 

「う、うわわっ!大丈夫、お兄ちゃん⁉︎」

「お、おう......大丈夫だ......」

 

飛鳥が慌てて謝罪し、俺はそれに手を挙げ応える。

......忘れてた、飛鳥は運動神経に関しては俺を遥かに凌ぐ域にあるんだった。何今のサーブ。アイツ素でさっきの八雲のサーブより速いの打ち込んできたんだけど。通常攻撃がMP消費する技より強いって何だよ。「これはメラゾーマではない、メラだ」と同じ位の絶望感を感じる。

 

「チクショウ!おい飛鳥大人気ないぞお兄ちゃんにそんな本気出して恥ずかしくないのかよ⁉︎」

「えぇっ⁉︎だってお兄ちゃん普通に飛鳥より年上だし、男の人だし––––」

「酷い!男の子だからってボコボコにして良いと思ってるの⁉︎男女差別反対!ぶーぶー!」

「え、えぇ......」

 

飛鳥が困ったような表情で頬を掻く。うん、自分でやってて何だけどコレは酷いわ。駄々っ子そのままですもん、コレ。お菓子を買ってもらえなかった子供とほぼ同じようなことしてるもん。

しかし、俺も少しは男としての、兄としてのプライドというものがある。対抗策を練らなければ。

 

「飛鳥、もうちょっとフレームが大きめのラケットないか?コレじゃあ上手いこと球を捉えられん」

「あ、うん。どれくらいのが良いかな?」

「とりあえずコートを埋め尽くす程度の大きさで」

「お兄ちゃん、考えが卑怯だよ!何楽に完全防御形態取ろうとしてるの⁉︎そんな大きさのラケットがそもそも無いからね⁉︎」

 

だってお前のサーブ速過ぎるんだもん。最早ボールを視認することすら困難だから巨大ラケットで壁を生成する位しか対抗策が無いんだよ?

何しても、どうにかして飛鳥を止めなければ俺たちに勝利の目は無い。............いや待て。

別に飛鳥を攻略しなくても勝てんじゃね?

 

「八雲、詩音を狙うぞ!相手の脆い所を攻めていくのが勝負の定石だガンガン打ち込め!」

「お、お兄ちゃん酷いです!私のラケットはプラスチック製なんですよ⁉︎」

「すまん詩音、そうも言ってられないんだ!下手に飛鳥に打ち込んだらどんな殺人カウンターが飛んで来るか分からん、俺は命が惜しい!」

「私の波動球は百九式までしかないんですよ⁉︎」

「本家越えしてんじゃねぇか!」

 

そういえば詩音も俺と同じ、体力は無いがスキルがあるタイプだった。しかもそのスキルは俺よりかなり上のレベル。完全な俺の上位互換的存在だ。

そうなると、最早俺に奴等を打倒する術は無い。そしてMPとやらが切れた八雲にも二人を止めることなどは勿論出来ず––––。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「女子中学生二人に惨敗ってどうよ」

「妹さんたちが二人共ハイスペック過ぎたね......」

 

まったくだ。あれから俺たちはロクにボールを捉えられないままひたすら二人にボコられることとなってしまった。高校生が中学生に良い様に弄ばれるのは絵面的にかなりキツいものがありました、はい。

 

「あ、千秋さん。飛鳥のことは名前呼びで良いですよー。呼びにくいでしょ、『妹さん』だと」

「......ん、そう?だったらそうさせて貰おうかな」

「では、私のことも詩音と呼んで頂いて......」

「うん。分かったよ、詩音ちゃん」

「はいっ」

 

女子勢が親睦を深めている間、俺はテニスが自身の趣味として相応しいか否かの判定をしていた。

ぶっちゃけ相手が世界ランカーレベルの奴等だったために本来のテニスの面白味が理解しづらかったのもあるが、テニスは俺に合わないようだ。何せ疲れる。ボールを追ってあちらこちらに動き回るこの競技は、体力が常時レッドゾーンの俺には酷である。

その旨を飛鳥に伝えると。

 

「......お兄ちゃん。これはお兄ちゃんのアウトドア系の趣味を見つけるためのイベントなんだよ?疲れないないスポーツなんて趣味にしたら、お兄ちゃんはあの手この手でサボり出すでしょ」

 

流石飛鳥、お兄ちゃんのことをよく理解していらっしゃる。確かに競技中に少しでも暇が生じれば、俺は速攻でサボりにかかるだろう。問題としては俺は例え暇が無くても競技中にサボり出す可能性があるということくらいだろうか。我ながら自分の怠惰具合には呆れる。魔女教に入信しちゃいそう。

しかし俺には一つ案がある。

 

「なら、複数のスポーツを同時にやることにしないか?趣味にするならともかく、体験で疲れたりするのは効率が悪いだろ。出来るだけ沢山のスポーツに触れていきたいしな」

「複数のスポーツを同時に......?」

「まぁ、物は試しだ。スケートリンク行こうぜ」

「えっ。あっ、ちょ、お兄ちゃん⁉︎」

 

俺は他の二人も呼び、スケートリンクへ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「––––という訳で。スケートと剣道を複合し、氷上にて防具姿で演技をしながら対戦相手と打ち合う競技というのはどうだろうか」

「「「バカなの(なんですか)?」」」

 

俺が改めて全員にそんな複合スポーツの提案をしたところ、これまた全員にそう真顔で言われた。ひでぇ。詩音までそんなことを言うなんて。

意外と良い案だと思ったんだが......ホラ、二つの競技を合わせれば、1競技分の体力消費量で2競技体験出来ることになるでしょう?え、ならない?

 

「まぁまぁ。試しにやってみようぜ?八雲」

「......何で私?」

「一番勝てそうだから」

「......良い度胸してるね」

 

とりあえず八雲を煽って実践してみることにした。それにしてもコイツチョロいな。将来悪い男に引っかかりそうで心配だ。煽った本人が何言ってんだ。

 

「んじゃ、剣道の方の有効打は公式と同じで。......あー、スケートの審査はどうすっかな......こればっかりは素人とかにやって貰うのもな」

「あ、それなら伊織さんが作ってくれた『フィギュアスケート演技採点機』があるよ?」

「用途が限定的過ぎんだろ」

 

そもそもそんな機械を作るコト自体が無駄だと思うのだが。アイツが何かを作るのならもっと便利なモノを作れるだろうに。何故フィギュアの採点以外の機能を付けなかったのだろうか。

 

「まぁ、折角だし使わせて貰うとしよう。さて八雲、そろそろ準備は良いか?」

「うん。楠くんをシバく準備は万端だよ」

「八雲さん?ちょっと言葉遣いが悪いわよ?」

 

思いの外八雲は煽り耐性が無かったらしい。

 

「んじゃ、行くぞー」

「良いよー、かかって来なさいー」

 

そのまま俺と八雲は互いにスケートリンクに上がり、向かい合う形となった。ルールとしては、予め決めておいた時間内で演技及び打ち合いを行い、それらの総合ポイントで競い合うというもの。総合ポイントは柊作の機械が付けるので、実質飛鳥たち(マイエンジェルス)は見学となる。お兄ちゃんの勇姿を見ててね!

 

「では......競技スタート!」

「たー」

「やー」

 

詩音の試合開始のコールと共にリンクへと飛び出す俺と八雲。俺はそのまま体を捻り飛び上がる。

ぶっちゃけ最低難度とされるトゥループ位しか満足に出来ないが、何か適当に飛んどけば点数が稼げそうな気がしないでもない。これが俺の舞だ!

 

「とくと見るがいい!これが世界のお兄ちゃんたる俺の「面!」いっづぁ⁉︎」

 

モロに脳天を竹刀で打たれた。防具越しでも痛ぇ。

......まぁ、ですよね。目の前で呑気にクルクルしてる奴がいたらそりゃ殺りますよね。

 

「ええい、まずはお前を始末するのが優先だ!お前の屍の上で飛鳥たちに俺の勇姿を見せつける!」

「......受けて立つよ、シスコンの楠くん」

「「喰らえぇぇぇぇッ‼︎」」

 

互いに絶叫しながら氷上を滑って行く。防具のせいで機動性及び視界がえげつない程阻害されているが、滑れない程ではない

 

「(ツルッ ゴンッ)げふぅ––––っ⁉︎」

 

––––と思ったが、やはり駄目だった。俺はつまづいて凄まじい勢いで横転する。改めて考えると防具姿のままスケートするとか頭おかしいわ。誰だこんな欠陥競技考えたの。一族諸共滅んでしまえ。

俺がそんな醜態を晒している間に八雲は危なげなくこちらに接近してくる。クソッ、インドア派っつー設定はどうした滅茶苦茶アクティブじゃねぇか!

 

「もう一発喰らえっ」

「そう易々と喰らうか馬鹿め!」

 

俺は尻餅をついた姿勢のまま、竹刀を横に薙いで八雲を足元を狙う。竹刀は見事八雲のスケートシューズに直撃、彼女の足を氷上から浮かす。

 

「むぎゅっ⁉︎」

 

八雲を顔から転倒させることに成功した。

 

「い、いったぁ......それは反則じゃない⁉︎」

「卑怯汚いは敗者の戯言だ」

「外道!楠くんはとびきりの外道だよ!」

 

八雲のそんな言葉に俺は立ち上がりつつ、さながらどこかの魔王のように仁王立ちをしつつ哄笑する。

 

 

「フハハハ!この程度で外道とは片腹痛い!我が勝利の糧となr「えいっ」(ツルッ ゴンッ)」

 

竹刀での足払いを喰らった。

 

「酷い!何て外道なことをするんだお前は!」

「数秒前の自分の発言を思い出してよね」

俺と同じ面の奥から絶対零度の如き冷え切った視線を向けてくる八雲。やだ怖い。主にその視線によって何かに目覚めそうで怖い。

 

「......こうなったら私も本気でいくからね。泣いちゃっても知らないよ」

「言っとくがコレは剣道とスケートの複合スポーツだからな。演技もしないと勝てねぇんだからな」

 

多分コイツ忘れてんだろ。絶対俺のこと竹刀で滅多打ちにすることしか考えてねーだろ。

 

だが、そこに勝機がある。

 

何故か俺の周りの人間はやたら戦闘力が高い傾向にあるが、今の八雲のように冷静さを欠いているならば話は別。彼女が荒れ狂って俺を叩きのめし、剣道の方で惨敗したとしてもフィギュアの演技で点数を稼げば勝てる。故に––––

 

「––––演技しながら逃げ続ける」

「待てーっ!」

 

それから暫くの間、先程までの偉そうな態度はどこへやら、某銀盤の女王の如く華麗に舞いながら逃げ回る男と、それを鬼気迫る表情(面で表情は見えないが)で追いかける女子という珍妙な光景がスケートリンク上に展開されることとなった。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

「結論から言おう。剣道もスケートもつまらん」

「アレはもう別のスポーツだったと思うけどね」

 

剣道&スケートの複合競技が終了した後、八雲と共に防具を脱いだ俺は開口一番そう言った。

いや、だって防具はクソ暑いしいつまでも慣れないスケート靴でコケまくるしで散々だったしね。しかもよくよく見ると八雲の一撃で面の一部が割れてるんですよ?こんな安全性に問題があるスポーツはやってられないね。え?八雲が異常なだけ?

 

「とにかく、スポーツを趣味にするならあの二つ以外のスポーツが良い。他にオススメって無いの?」

「まぁ、まだ沢山スポーツの種類はあるけど......」

「片っ端から試していこうぜ。とりあえず汗かいちまったからシャワー浴びてくるよ」

 

そう飛鳥に断り、俺はシャワールームへと向かう。

この後すぐに、何故かシャワールームの中に潜んでいた詩音から自身の貞操を守り抜くための戦いが幕を開けたのはまた別の話である。

 

閑話休題。

 

それから俺たちはバスケやサッカー、野球などのメジャーなスポーツに始まり、クリケットやペタングなどのマイナースポーツにも挑戦してみたのだが、どれもイマイチしっくりこなかった。いや、ちょっと触れた程度でそんなことを言うのも何だが、コレはあくまで趣味探しのための体験だ。短い時間で楽しめるモノを探すべきなのだ。よって、そのスポーツが上手い下手ではなく、楽しいか否かで判断する。その観点から、今までのモノはボツとなった。

 

「もう駄目だなこりゃ。俺たちにスポーツは合わねーよ。なぁ詩音(すりすり)」

「ですねお兄ちゃん。やっぱり私たちは家の中でお互いを弄り合う方が合ってます(ぺろぺろ)」

「何やってんの二人共⁉︎頰を擦り合わせない首筋を舐めない!まだまだ色々種類はあるから!」

 

飛鳥がそう言ってくるが、もういい加減体力も限界だ。ほら、八雲が早々にダウンして床にうつ伏せで倒れてるし。あと詩音がやたら淫靡な舌使いで俺の首筋を舐めてくる。そろそろコイツに日本国憲法第24条の内容を説明してやる必要があるだろう。

 

「まぁまぁ飛鳥。そんなスポーツばかりしてても仕方ないだろ。少し休もうぜ」

「むー......でも、お兄ちゃんたちの趣味探しなんだから、お兄ちゃんたち自身のやる気が無いのに押し付けるのも......うん、少し休憩しよっか!」

 

そう言い「こっちに休憩室があるよー!」と俺たちの前を歩いて案内をしてくれる飛鳥。可愛くて優しいとかウチの妹の嫁の適正が高すぎてヤバい。料理の腕については全力で目を逸らすが吉。

 

とりあえず疲労でへんじをしないただのしかばねと化した八雲を背負って飛鳥に着いて行く。

しばらくすると、『休憩室』と書いてあるプレートが付いた扉の前に到着した。ソレを開けると。

 

「......おぉ」

「物凄く広いですね......」

 

眼前にやたら広々とした休憩スペースが広がってきた。適当に目測してみても大体40畳くらい。一学生が作り上げた建造物の休憩室にしては十分過ぎる位の広さだろう。というかそもそも一般の学生はこんな建物を建造する事自体が不可能なのだが。

と、背中で何かがもぞもぞと動く感触。八雲だ。

 

「......うぅ。ここ、どこ......?」

「起きたか八雲。ここで少し休んでこうぜ。いい加減お前も限界だろ。ほら、あそこに据え置きゲーム機まであるぜ。無駄に設備が充実してるよな」

「......ゲームっ!」

 

俺が休憩室の奥に置かれた80インチのテレビ及びその側に置かれたゲーム機の数々を示してやると、八雲がまるで水を得た魚のように俺の背中から降りてそれらに飛びついた。うわっ、怒涛の勢いで電源入れてる。落ち着けバカ。まだ皆疲れてるから。WiiUとプレステ3は同時起動出来ないから。

しかし何だ、八雲にとってゲームは自身の生きる源みたいなものなのかもしれない。俺が妹から摂取可能な成分であるイモウトニウムを生きる糧とするように、彼女もゲームをすることで生き永らえているのだろう。そう考えると八雲を止めるのも忍びなく思えてくるというものだ。

 

「ゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲームゲーム!」

 

「うるせぇ!テレビから離れろ八雲ォ‼︎」

 

物事には限度というものがある。

俺は八雲をテレビから引き離し、さながら猫のように背後から服の襟部分を掴んでズルズルと引きずっていく。どう考えても女の子へ対する扱いではないが、そんなことを気にしていてはコイツら(柊&笠原含む)の行動を抑制することなど不可能である。

 

「ま、まぁまぁお兄ちゃん。千秋さんも今まで頑張ってたんだし......ね?少し長めに休憩時間を取るからさ。八雲さんの好きにさせてあげようよ」

「ですね。かくいう私もしばらくは足がまともに動きそうにありませんし、足が回復するまでの間、ゲームでもしましょうか」

 

やだ二人共優しい。こんなん僕だけ器がちっちゃい感じになっちゃうじゃないですかー。やだー。

仕方ないので八雲を解放する。すると再び八雲は数多のゲーム機へと両手を伸ばし、瞳をキラキラと輝かせながらそれらを物色し始めた。

 

「......凄いっ。凄い、凄いよ楠くん!見て見て、ファミコンとかセガサターンとかの古いのからPS4とかの最新機まで全部揃ってる!て、天国だー!」

「キャラ変わりすぎだろお前」

 

恐らくコイツはもうスポーツ趣味云々のことは忘却しているだろう。多分ほっといたら夜が明けるまでここでゲームをしてる気がする。まぁ、折角なので俺も何か探すとしよう。妹モノのは......っと。

 

「あっ、お兄ちゃん見て見て!」

 

と、俺が八雲の横でゲームソフトを物色し始めた時、飛鳥が俺の肩を叩いて一本のソフトを示してきた。そのタイトルは、

 

「『Wii Sports Club』!コレ皆でやらない?」

「...............」

「うぇっ⁉︎お兄ちゃんの顔が今まで見たことの無い程のレベルでやつれていく⁉︎お、お兄ちゃん⁉︎」

 

いや、だってお前......スポーツやって疲れたっつってんのに何でゲームでもスポーツすんの.......。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで断れない俺もどうかと思うよね、うん」

「よーし!負けないよ、お兄ちゃん!」

 

数分後、俺はコントローラーを握り締め飛鳥と共にテレビの前に立っていた。ていうか数分で陥落する俺のチョロさ加減がヤバい。多分歴代のとっチョロインと肩を並べられる位にはチョロい。具体的にいうとアニメ版IS(インフィ◯ット・ストラトス)のセ◯リア様とか。いや、もうほぼ言っちゃってんじゃねぇか。

 

「......で、何すんの」

「んー、テニスでもする?」

「またかよ。もう現実でやったから良いじゃん......」

 

一応説明すると『Wii Sports Club』はタイトルの通り、ゲーム内で様々なスポーツが出来るという、どちらかと言えばパーティゲームに分類してされるもので、プレイ可能なスポーツの種類もそこそこ豊富であるので複数人で遊ぶのに適しており、その中にはテニスも勿論含まれている。

 

「いやー、飛鳥もさっきので少しテニスに目覚めちゃって。......駄目、かな?」

「お兄ちゃんの妹のお願いに対する答えはYes以外あり得ないんだよ。テストに出るぞ覚えとけ」

「わーい!」

 

某落第騎士の英◯譚(キャバ◯リィ)のヴァーミリオン皇国第二王女に匹敵するチョロさを発揮して飛鳥の頼みを聞き入れてしまう俺。いやだからもう言っちゃってるよね。某って付けてるだけだよね。

などと絶望的に下らないことを考えつつ、俺は飛鳥と共にテレビの前に立ち、コントローラーを握る。

ちなみに詩音と八雲は別のテレビでシューティングゲームをプレイしていた。二人共えげつない勢いで標的を撃ち抜いており、軽く引いてしまう程には上手かった。ていうか指先どうなってんのアレ。残像が見えるんですけど。

 

「よーしお兄ちゃん!勝負だよー!」

「あ、あぁ」

「わざと負けたりしちゃ駄目だからね?お兄ちゃんってば毎回ゲームだと手加減してくれるけど、飛鳥だってたまには真剣勝負したいんだから」

 

俺は飛鳥や詩音と何かしらの勝負をする際、オートで手を抜いてしまう癖がある。ことスポーツにおいては飛鳥に、チェスなどの頭脳戦では詩音の方が俺より上手なのだが、それでも手を抜いてしまう。お兄ちゃんは妹に対してオートで接待モードが発動してしまうのである。だって勝った時に喜ぶ二人が可愛いんだもん。仕方ないよね、うん。

しかし、その妹が手を抜くなというのならば躊躇いなく従うのもまた俺である。

 

「分かったよ。んじゃ、全力でいかせて貰うぜ」

「ふふん、望むところだよっ!」

 

そんな訳で飛鳥vs.俺のテニスゲーム開始。

 

「最初のサーブは飛鳥からだね。じゃあ......それっ」

「よっ」

 

飛鳥操る1Pアバターがこちらに打ってきたボールを特に苦もなく打ち返す2Pアバターwith俺。

現実(リアル)での飛鳥のサーブは軽く人命を消し飛ばす程の威力を誇るが、流石にゲームでは普通の威力のようだ。ていうかゲームキャラより強い人間って何なの。ス◯ランカーとかの例外を除けばゲームキャラって大抵人類超えてるはずなんだけど。

んでもって、俺が打ち返したボールを飛鳥のキャラが追いかけてラケットで捉えようとするのだが。

 

「とりゃっ、って、ああっ!空振りしたー......」

「先取点は俺のもんだな」

「うぅ〜......しょ、勝負はここからだもんっ!」

 

俺がちょっと勝ち誇ったように口の端を僅かに上げた笑みを飛鳥に向けてやると、心底悔しそうにコントローラーをぶんぶんしながら飛鳥が言う。......やだ新発見。悔しがる飛鳥も可愛いわ!

 

「次は俺からのサーブだな。......ほい」

「ていっ!」

「そら」

「うくっ......あー!また取られたー!」

「まだまだいくぞ。ほれ」

「たー!」

 

俺が打ち込み、それに飛鳥が食いつく。そんな感じで俺が優勢のまま試合は進んで行き......結果。

 

 

1P ASUKA 0 ー 40 2P YUSUKE

 

 

「あれ......?」

 

圧勝。6ゲーム完封、一点たりとも飛鳥に奪わせることなく勝利することに成功した。......っべー、ちょっとやり過ぎたかな......手を抜くなって言われてたのと、悔しがる飛鳥の姿が可愛いのとで完璧にリミッターが外れてたわ。大丈夫かな...... 泣いたりしてないかな......もし飛鳥を泣かせるようなことがあれば俺は死を選ぶかもしれない。

しかし、しばらくして顔を上げた飛鳥は、真っ赤な顔でぷるぷるしていながらも特に涙目になっているとかはなかった。が、彼女は指をピッと俺に突きつけたと思うと、突如叫び出した。

 

「も......もーいっかーい!」

 

どうやら、俺の妹は存外負けず嫌いだったようだ。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

突然だが、俺はゲームが得意な方である。

当初はあまり上手くなく、オンラインゲームなどをやっていても勝率は調子が良い時で八割、酷い時はやればやるだけ負け続ける......そんなレベルだった。

が、今現在も凄まじいレベルの闘いを詩音と繰り広げている、俺が知る限り最強のゲーマー、八雲千秋と一緒にゲームで遊ぶようになってからソレは変わった。というのも、手加減というものを知らない八雲は対戦型ゲームを共にプレイすれば、一切の慈悲無く俺を叩き潰してくるのである。それはもうえげつないレベルで。危うくゲームを生涯やらないと決めてしまう程完膚なきまでに叩き潰された。

しかし、流石の八雲も少しは悪いと思ったのか、ある日を境に俺にゲームのレクチャーをしてくれるようになったのである。

格ゲーやレースゲー、果てはパーティゲーなどの必勝法、バグ、ハメ技テクなどなど。

それらを八雲に伝授された俺は、いつしかそこらの一般人にはまず絶対に負けない程度の強さを誇るゲーマーと化していた。

 

故に......。

 

「にゃあああーっ⁉︎まーたーまーけーたー!」

「......いや、もう諦めた方が良いでしょ......」

「うぅ〜!」

 

......故に、俺がマジでゲームをプレイしたら最後、飛鳥に勝ちの目はほぼ無いということで。

 

「す、凄いですお兄ちゃん......こんなにゲームが上手かったんですか......?」

「うんうん、私の教えたことをしっかりと活かしてるね。弟子が立派になってくれて師匠は嬉しいな」

「誰が弟子だ」

 

あれから約一時間が経っている。

俺が飛鳥を何度も負かしている内に、二人は一旦ゲームにキリをつけたようである。てこてこと俺を挟むようにやってきてテレビの画面を覗き込む。

 

「なぁ、もう休憩は十分じゃないか?」

「そうですね。お姉ちゃん、そろそろスポーツ体験に戻りましょうか」

「まだゲームはしたいけど......ま、もう少しだけ私も頑張ってみようかな」

 

俺の言葉に詩音と八雲がそう反応する。

どうやら彼女たちインドア組もやっと自発的に運動することを覚えたようだ。これだけでも大きな進歩。あとはスポーツ系の趣味を見つけることに成功すれば、立派なアウトドア系少女が錬成されるだろう。え、俺はどうだって?......さ、さぁ......。

 

と、そんな二人の言葉に飛鳥は。

 

「ちょ、ちょっと待って!あと一回!あと一回だけこのゲームやらせて!」

「お前がインドア趣味に目覚めてどうすんだよ」

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

あれから更に三時間が経っている。

 

「お、お兄ちゃん...... 既に外が真っ暗です......」

「今は......夜中の9時だね。で、まだ飛鳥ちゃんは勝てないの?楠くんも手加減してあげなよ」

「それがコイツ、俺のいつものプレイングを知ってるからか少しでも手を抜くとバレるんだよ......」

「手加減はだめーっ!」

 

頑固者かコイツは。

飛鳥はあの後「飛鳥が勝つまで待って!お願い!」と俺たちに頼み込んできた。飛鳥のお願いとあれば断れない俺や詩音はもとより八雲も快く了承してくれたので、またゲームを再開したのだが。

 

「......いかんせん飛鳥が下手過ぎる......」

「うぐっ」

 

そう、当の飛鳥のゲームの腕が壊滅的と言って良い程にへっぽこなのである。CPUの最低レベルと良い勝負が出来るかどうかのところだ。

 

「ううう......もういっかい––––!」

「仕方ないな......」

 

......まぁ、それでも付き合ってあげちゃうんですけどね!やだ、祐介お兄ちゃんってば激甘!

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

ー とある記録 ー

 

9月某日。楠飛鳥主催のインドア勢を対象とする、スポーツ体験会が開催された。

参加者は彼女の兄、楠祐介。

彼女の義妹、楠詩音。

楠祐介の友人である、八雲千秋。

 

柊伊織が夜中の23時頃にスポーツ体験会が行われていた施設へ、建設者として様子を見に来たところ、休憩室にて倒れていた上記の四人を発見した。

当時、楠飛鳥と楠祐介はゲームのコントローラーを握ったままうつ伏せに倒れており、テレビの画面には飛鳥氏が敗北した旨の文字が映っていた。

柊伊織がそのテレビで行われていたゲームの履歴を遡ってみると、八時間ぶっ続けで彼らはゲームを行なっており、その全てにおいて楠飛鳥が楠祐介に対して敗北を喫していたという。

 

四人が倒れた原因は極度の疲労によるもの。

学生という未成熟な身体のために起こったアクシデントであり、特に大事には至らなかったが、楠飛鳥以外の三人は共通して「ゲームは嫌だ......もうゲームは嫌だ......」とうなされていたという。

楠飛鳥は「もういっかーい......もういっかーい.....」と三人に懇願するように呻いていた模様。

 

後々彼らは目を覚まし、楠飛鳥は深く反省。他の三人も彼女を責めることなく彼女を許し、極めて平和的に当問題は収束した。

 

......が、今回のスポーツ体験にてインドア三人組は「外に出てもロクなことがない」と学習、結局アウトドア系の趣味を見つけることは無かったという。

 

 

 

 

......ご、ごめんなさい......(CV:楠飛鳥)。

 

 




......スポーツ?(困惑)
い、いやまぁ、彼らは脱線しやすい性格ですしね、えぇ。コレは必然の流れですよ。決して日を跨ぎ過ぎて収集がつかなくなったとかではないんですよ、えぇ。

......すみません。

お、お詫びの意を込めまして次回は温泉回にしてみよっかなー、なんて......サービスシーンの有無はともかく。

こ、今回はここまで!ありがとうございました!感想待ってますっ!


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