キャラがまだ立っていない奴らばかりですが、ストーリーの中で「あぁ、こういうキャラなのね」と掴んでいってください!
では、どうぞ!
俺は、
程良い温かみが俺の身体を包みこみ、俺もそれに身を任せる。
あぁ、何て気持ち良いのだろう。
これがただの夢だとは分かっているけれど。
この夢がずっと覚めなければいいのに......。
...............お兄ちゃん。
......む、飛鳥か。もう少し眠らせてくれ......お兄ちゃんはまだまだ寝ていたいんだ......。
...............起きて下さい、お兄ちゃん。
ん......?『起きて下さい』?
どうしたんだ飛鳥、急にそんな他人行儀になって。敬語だなんて俺に使ったことなんてないじゃないか。さぁ、いつもみたいに『おーきーてー!』と可愛く起こしにきておくれ......。
...............起きないと、
「うおおおおおおおおお⁉︎」
微睡みの中で聞こえた声に、半ば反射的に意識が反応し、強制的に覚醒する。
そ、そうだ、この声は俺の
「やっと起きましたね、お兄ちゃん。まったく、お兄ちゃんはいつもお寝坊さんです。イタズラしたくなってしまいます」
「待て、俺が寝坊常習犯なのは認めるが、だからといってイタズラをするのはおかしい。絶対におかしい。そうだろう......
俺は今までの似たようなモノを含めると、これでもう三度目になる朝のやり取りを
* * *
3日前。
あの日、雨宮詩音が俺たちの家族となった日。
いきなり自身の義妹を名乗り出した目の前の少女に、俺と飛鳥はただただ困惑し、状況を把握出来なくなってしまっていた。飛鳥などは最早思考機能が停止でもしたのか、固まったまま動かなくなっていた。その風体はまるで電源の切れたロボットのようだった。
「......?どうかしましたか?お兄ちゃん」
「⁉︎......あ、あぁ......」
今まで飛鳥以外には呼ばれたことのない呼称で呼ばれ、困惑にさらに拍車がかかりそうになったが......何とか持ち堪えた。偉い。俺偉い。
とにかく、まずは向こうが名乗ってきたんだし......。
「えっと......君がお袋......じゃねーや、母の再婚相手の娘さんかな?」
「はい、その通りです」
「お、おぉう......あっ、すまん。あー......俺は楠祐介っつー者だ」
「はい、知っています。そちらがお姉ちゃん......楠飛鳥さんですね」
「お姉ちゃん⁉︎飛鳥がお姉ちゃん⁉︎」
飛鳥も呼ばれ慣れていない、というか初めて呼ばれたであろう『お姉ちゃん』という言葉の響きの影響か、現世に戻ってきたようだ。おかえり。
それにしても......俺は雨宮詩音に声をかける。
「......何つーか、落ち着いてるんだな」
「私は前以て聞かされていましたから。確かに再婚のことを聞かされた当初は多少驚きましたが、ここに来る間に心の整理はつきました」
「はぁ」
無表情のまま淡々と話す雨宮詩音。
その顔立ちは整っており、光を反射して煌めく艶やかなミディアムヘアーは亜麻色。眠たげに半眼に近い形をとっている眼は、覗けばそのまま吸い込まれてしまいそうな不思議な美しさを醸し出していた。くびれたウエストに程良い大きさの胸も相まって、飛鳥に負けず劣らずの美少女であるという事実が視界いっぱいに広がってくる。
俺が思わず見惚れていると、雨宮詩音が話し出した。
「お兄ちゃん」
「っ。あ、あぁ、何だ?雨宮」
「......私は今日からお兄ちゃんの義妹なのです。名前を」
「お、おぅ。何だ?......詩音」
「お兄ちゃん、私は与えられた義務や仕事は絶対にやり遂げるのです」
「へぇ、真面目なんだな」
普通に立派なことだと思う。で、それがどうかしたのだろうか。
「今日、私は『義妹』という役職を与えられました」
「うん......うん?」
「なので、私は今日を以って、お兄ちゃんを心の底から愛すことを誓います。そう、私は......」
「"ブラコン"になります!」
『はい⁉︎』
突然の詩音のブラコンになる宣言に、俺と、俺と詩音のやり取りを見ていた飛鳥の驚愕からの声が見事にシンクロした。
そのまま飛鳥が焦ったように詩音に言う。
「ちょ、ちょっと待って詩音ちゃん!ブラコンになるって⁉︎」
「言葉通りです、お姉ちゃん。兄を愛せない妹など妹ではありません。あ、もちろんお姉ちゃんのためにシスコンにもなるのでご心配なく」
「そんな心配してないよ⁉︎ていうか、ならなくていいよ!ブラコンにもシスコンにもならなくていいよ!普通で良いんだよ!」
「笑止ですお姉ちゃん!兄妹たるもの、イチャイチャベタベタして、そこらのカップルたちがただの他人同士の馴れ合いに見えてしまうほどに成らなければならないのです!」
「詩音ちゃんの中の『兄妹』ってどうなってるの⁉︎」
詩音が言った光景を想像したのか、顔を真っ赤にしながら飛鳥が叫ぶ。ていうか本当何その兄妹像。情報源、多分エロゲとかラノベだろ。
「あー......なぁ詩音」
「何でしょうか、お兄ちゃん」
「いや、そのさ。飛鳥の言う通りじゃね?別に無理してブラコンやらシスコンやらにならなくても......そもそも義妹って役職じゃないしさ」
「.......もしかして、お兄ちゃんはブラコンの義妹は嫌いですか?」
「いや、超好きだけどね。ラノベでも買うのは妹モノばかりだし」
「お兄ちゃん⁉︎」
またも飛鳥の驚愕したような声が聞こえてきた。何だ一体。
と、詩音が少し思案するような素振りを見せ、言ってきた。
「なるほど......では、こうします」
「ん?」
「お姉ちゃんはシスコンの義妹は少しばかりお気に召さないようなので、やめることにします。お姉ちゃんの意志が第一ですから」
「詩音ちゃん......」
感動したような飛鳥の声。
「しかし、お兄ちゃんはブラコンの義妹が大好きなようなのでブラコン路線は継続していきたいと思います。はいけってーい」
「詩音ちゃん⁉︎」
絶望したような飛鳥の声。
というか俺も焦った。何だってんだ、まったく。
大体いきなり来た義妹が美少女でブラコンだなんて......。
だなんて........。
...........................................。
「何それすっげぇ萌える。良いじゃんそれ。それでいこうよ」
「お兄ちゃん‼︎」
憤怒の感情に彩られた飛鳥の声が聞こえた。
てなわけで、突如現れた俺の二人目の妹は、ブラコンとなって意外とすんなりと我が家にすむことになったのだった。
* * *
そして、時は現在。
「ブラコンってのは寝込みの兄を襲うものなの⁉︎」
「その通りですお兄ちゃん!そう、これこそおはようの義妹キス」
「すげぇ!今時のブラコンってすげぇな!」
俺は前傾姿勢をとりながら叫ぶ。てっきり恋人同士、いや、恋人同士でもほとんどやらないと思っていたおはようのキスなんてものを世のブラコンは普通にやっていると聞けばそりゃあ驚くさ。まさにカルチャーショック。世界の真実を知った気分である。
最初こそ驚き、拒否するような姿勢を取ってしまっていたが、俺はあの日、詩音のブラコンスタイルを受け入れると言ったのだ。ここは責任を持っておはようの義妹キスに応じるべきだろう。
「ふぅ......ごめんな詩音。ちょっと焦ってたわ」
「無理もないです。私もまだ少し恥ずかしいですから」
頬を染める詩音。俺はそんな詩音に微笑みを向け。
「詩音も恥ずかしがるんだな、ちょっと安心したよ」
「と、当然です。私も......初めてですから」
「そ、そうか。それじゃあ、しようか」
「は、はい。しましょう」
『おはようのキ「させるかーーーーーっ!」痛ぇ!」
詩音と唇を重ねようとした矢先、突如後頭部に衝撃が走る。
俺が衝撃が飛んできた地点に視線を向けると。
「お、おおおお兄ちゃん!今何しようとしてたのっ⁉︎」
「何だ飛鳥か。おはよう」
「おはようございます、お姉ちゃん」
「あっ、うんおはよー......じゃなくて!」
何故か興奮したような様子の飛鳥。一体どうしたというのだろうか、朝からそんなに慌てて。
..............あぁ。
「悪いな飛鳥。朝ごはんはまだ作ってない」
「違うよ⁉︎別に朝ごはん欲しさにお兄ちゃんを叩いたんじゃないよ⁉︎」
「お兄ちゃん。多分お姉ちゃんはキスを自分にもして欲しいと言いたいのだと思います。お姉ちゃんもお兄ちゃんからしたら私と同じ妹ですから、当然の欲求です」
「違うってば⁉︎むしろ止めに来たんだよ⁉︎」
顔を真っ赤にして叫ぶ飛鳥。なるほど。
「じゃあ二人にしてやろう。せーの」
「きゃーーーーーーーーーーーーーっ!」
俺が詩音の助言を元に最適と判断した行動を取ろうとした時、飛鳥が急に叫んだと思ったら、思いっきりビンタを放ってきた。クリティカルヒットである。俺の頬に。
「いってぇ!飛鳥痛いって!」
「わーっ、わーっ!ほ、ほら詩音ちゃん!下行くよ!」
「きゃー。お兄ちゃん、おはようのキスがー」
瞬く間に飛鳥と詩音が階段を下り、リビングへ降りていく。
俺は叩かれた頬を押さえながらベッドに倒れこみ、呟いた。
「妹って、二人になっただけでこんなに違うんだな......」
妹が二人になってまだ3日目。
これから先、色々苦労しそうである。
キャラは掴めましたかね?
個人的には
主人公は飄々としたシスコンキャラ、
飛鳥は二人を抑えるストッパーブラコンキャラ、
詩音はガンガンいこうぜ熱愛型ブラコンキャラ、
という感じで書いています。
さぁ、これから彼らの日常はやっと本格始動です。
次回も見てくださいね!ありがとうございました!