妹がいましたが、またさらに妹が増えました。   作:御堂 明久

17 / 38
どうも、課題が終わらず、段々涙目になってきた御堂です。

えー、コレで喫茶店ストーリーは終わりますが、少しだけ不良共がイラッとくるかもしれませんのであしからず。

その部分を踏まえて......どうぞ!




妹たちの〇〇〇初体験♡2

前回までのあらすじ。

我が最愛の妹たちのバイト(笑)先に、ガラの悪そうな不良共がログインしました(適当)。

飛鳥と詩音がバイトをしたいと言い出した翌日。

俺はクラスメイトの柊と八雲、そして某世紀末救世主並の戦闘力を持つ筋肉達磨(かさはら)と共に、二人がバイト......もとい、その喫茶店の娘の九条(くじょう)莉菜(りな)さんの初業務への緊張を和らげるために手伝いに向かった喫茶店へと、二人の様子を見に来たのである。

だが......そこで。

 

「おいおい嬢ちゃん、早く案内してくれよ」

「案内するのにもこんな遅ぇのかよココは!」

「ホラ、固まってねぇでさぁ!」

 

この制服姿の不良共が3人、やって来たのである。

......ラノベでは、ヒロインがバイトする回では何かしらのトラブルが起こるのはテンプレと言える。が、実際に起こるとなると凄まじくウザったい。見ているコチラも不快になるレベルである。

と、飛鳥が意を決した様に歩き出す。

 

「......はーい!何名様ですか?」

「おっ、来たな」

「ポニテの子だァ......可愛いなぁオイ」

 

よし、飛鳥のことを下衆な目で見た奴はココで始末してしまおう。俺はそのまま隠し持っていた釘バットを肩に担いで歩き出––––そうとしたところで、八雲に手を掴まれて止められた。何なんだ一体。

とりあえず小声で応答する。

 

(おい、いきなり何すんだよ。急に掴まれたモンだから手首が脱臼しちまっただろうが)

(貧弱すぎない⁉︎ていうか何する気⁉︎その釘バットはどこから出したの⁉︎)

 

今まで見たことないレベルで慌てながら言う八雲だが......どこから出したって、ソレお前が言うこと?

現在、俺たち4人は八雲がどこから出したかも知れない様々な衣装を身に纏い、変装している。

柊、八雲、笠原は普通のオシャレな服装。

俺は黒スーツにグラサンの不審者スタイルである。

こんな変装でも飛鳥にはバレてないのだから不思議である。うん、きっとこの変装が高度だったんだな、決して飛鳥が鈍い訳ではない。

 

「どこから出したって......2次元ポケットからだが」

「ペラッペラじゃん⁉︎」

 

全く五月蝿い奴だな。妹のためなら空間法則すら捩じ曲げることが出来る、ソレが......お兄ちゃんってヤツだろ(イケボ)?

と、そんなことをしている間にも不良共は席に着き、メニュー表を見ていた。チィ、逃したか。

だが、気づいたことがある。ソレに笠原も気づいたのか、嫌そうな顔で俺に問いかけて来た。

 

「オイ祐介。アイツらって......」

「......あぁ。あの制服どこかで見たなーって思ったが、やっぱりだ。薙原(なぎはら)高校の不良共だな」

「ん?クスノキくん、薙原高校って何?」

「あぁ、薙原は––––」

 

私立薙原高等学校。

俺らが通う高校、東峰(とうほう)高校の最寄りにある高校であり、真面目な生徒と不真面目な生徒の落差が激しいことで有名である。真面目な生徒は毎回部活動の大会で優勝するなどの快挙を挙げることも少なくないが、不真面目な生徒は、目の前の奴等のように、品性の欠片も無い言動で、校内外問わず暴れ回っているという。逮捕者まで出る始末だ。

そのせいで品行方正な生徒たちまで地域の方々に白い目で見られるのを防ぐため、教師陣は真面目と評された生徒には秘密裏にワッペンを配り、コレを付けることで「あ、あの生徒は薙原の中でも真面目なんだな」との判断を受けることが出来る様にした。

 

「––––とまぁ、もうそんなことまでして区別しないといけなくなるくらい、不真面目な奴はトコトン不真面目なことで有名な高校なのさ」

「へぇ。じゃああの3人は......」

「まぁ不真面目な方だろうな。ワッペンを付けてねぇし、何よりあの言動が既に証拠だろ」

 

今もメニュー表を見ながら、禁煙席であるにも関わらず喫煙をしている。そもそもココは全席禁煙なのだが。他の客も横目で彼等を睨んでいる。

と、そこで不良共は店員を呼びつける。

 

「オイ!」

「はい。––––ご注文ですか?」

 

不良共の声に詩音が反応して向かった。だが......。

 

「お、おい。義妹ちゃんの後ろ......」

「やべぇ、詩音の奴、既にキレてる......」

 

その詩音の制服の後ろには、外国でも人気が高い拳銃、《コルト・ガバメント》が突っ込まれていた。......俺よりよっぽど武闘派じゃないですか。

 

「う、うわぁ......改造エアガンだよ、アレ.....」

 

柊もコレには引いた表情だ。......あの柊を引かせるとか、詩音さんマジパネェわ。ていうか銃刀法違反にならないの、アレ。改造エアガンって殺傷能力があるものも多いんだし......あぁ、ご都合主義ですかそうですか。ご都合主義ってこういうモンなの?

 

「おう、注文だ」

「そうですか。くれぐれもお気をつけ下さい」

「は?」

 

マズい、心配するべき人物が一気に不良共にシフトした。ココで再び詩音の意に沿わないような行動をとった暁には、彼等の額に綺麗な風穴が開けられるだろう。飛鳥を侮辱したら死ぬし、飛鳥の大切な友達である九条さんを侮辱したら死ぬ。彼女の家でもある喫茶店を侮辱したら死ぬだろうし、詩音本人を侮辱したら俺が奴等をSA☆TU☆GA☆I する。

何てこった。彼等が急に今までの行いを悔い改めない限り、彼等の生存確率は0%じゃないか。

 

「ね、ねぇ楠くん。気のせいかな?今楠くんの義妹さんが拳銃のハンマーの場所を後ろ手で確認している様に見えるんだけど......」

「..................」

 

気のせいではない。なんならもう引き金に手を当てている。アイツは普段は無表情ながらも温厚なのだが、万が一俺か飛鳥が誰かに馬鹿にされると、すぐに狂戦士(バーサーカー)化するから......。

 

「では、ご注文をどうぞ」

「あー。アイスティー1つとアイスコーヒー2つ。あとナポリタン三つ頼むわ」

「......かしこまりました。少々お待ち下さい」

 

おぉ、生き残った......。

詩音も流石に何も言ってこない奴を断罪する程、理性が飛んでいるわけではないらしい。だから、アイツらが普通の注文をした時に「チッ」って舌打ちの音が聞こえたのは幻聴ですよね、詩音さん?

 

「詩音ちゃん、かなり怒ってるね......」

「入店時から態度悪かったし、詩音も薙高の悪評は知っているだろうからな......」

 

が、直接的な報復行為は、この喫茶店へどんな悪影響を及ぼすか分からない。あの喫茶店には暴力を働く店員がいる、などと噂を広められたら、詩音たちの手伝い期間が終了したとしても、客足はまず間違いなく遠のいてしまうだろう。

それが分かっているから詩音は動かない。

 

「あーあ。オイオイ、注文してからもう1分経ってんぜ、おっせぇなぁ!ヒャハハハ‼︎」

「ギャハハ、1分って!そりゃ早過ぎんだろ!」

「いやいや、あの貧乳の嬢ちゃんは『少々お待ち下さい』っつってたんだぜ?1分は少々だろ?」

「ギャハハハハ‼︎流石だぜコウキ!」

 

あ、他の席で接客していた詩音が注文票にヒビ入れた。握力凄ぇ。......あと自分の胸触ってる。

と、詩音が早足に厨房に向かい、厨房を担当していたらしい九条さんと、詩音と同じく接客をしていた飛鳥を集めて何かを話し始めた。当然何を言っているかまでは聞こえないが、コチラには万能魔王がいるのだ、大抵のことはやってのける。

 

「柊、頼む」

「オーケー。とりあえず全員の唇読んじゃうねー」

 

柊の百八の特技の一つ、読唇術。人の唇の動きを見ることで、声が聞こえない状態でも何を言っているかを理解する技能だが、コイツの場合はマスクなどで唇が隠れていても、付けているマスクの動きだけでも発言が分かるほどに読唇術の精度が高い。コイツなら詩音たちの会話の内容も分かるだろう。え、プライバシー?知らない子ですね......。

以下が彼女たちの会話内容である。

 

『うぅ、他のお客さんたちが怖がって帰っちゃってるよ......どうにかしないと......』

『でも、私たちじゃどうにもならないよね......』

『九条先輩、店長さんは今どこに?』

『今は別件でいないの......』

『......お兄ちゃんさえいれば、何か良い方法を思いついてくれたかもしれないのに......』

『え、お兄ちゃんはさっきから.....え?』

 

止めてやれ詩音。もういい、飛鳥だから。

 

『と、とにかく。私に良い考えがあります』

『『良い考え?』』

『はい。とりあえず......』

 

『お姉ちゃんが厨房を担当して頂けますか?』

 

なるほど、詩音は奴等を毒殺するらしい。

しかし、良案だと思う。飛鳥の料理を食えば記憶も軽く飛ぶ可能性もあるのだし、悪評を広められることは無いかもしれない。まぁ、記憶云々の前に命の危険性があるのだが、自業自得だろう。

 

『うーん......よく分かんないけど、分かったよ!』

『はい。よろしくお願いします』

『じゃ、じゃあ私が接客に回るねっ』

 

ヤバい。なにがヤバいって飛鳥が何故自分が急に厨房担当にされたか理解していないところがマジでヤバい。このままではアイツはいつにも増して張り切り、下手したら作るだけで周囲に害を及ぼすモノを完成させてしまうかもしれない。

 

「......柊。ちょっと飛鳥の調理中も見ててくれ」

「う、うん......読める範囲で読んでみるよ」

 

やはり心配だったので監視を継続することにした。本当に危険そうならば詩音に合図でも送って教えよう。さて、調理の様子は......。

 

『えっと、まずはナポリタンからかな。パスタとケチャップと歯磨き粉とウィンナーと......』

 

待て、今何か不吉な単語が聞こえた気がするぞ。

 

『塩酸とオレンジ、塩化バリウムとイチゴ......』

不吉な単語しか聞こえないぞ。

何故彼女は化学薬品とフルーツを交互に準備するのだろうか。何か良い感じの化学変化が起こると思っているのだろうか。多分、彼女はカレーに入れるリンゴのような発想でフルーツを入れているのだろうが、圧倒的に元が悪い。起こるのは悲劇のみだ。

 

『あとはアイスコーヒーとアイスティー......ありゃ、アイスティーの氷どこにあったんだっけ』

 

ふむ、元々厨房担当になる予定では無かった上に、ただの手伝いだった飛鳥にはそこまで知らされていなかったのかもしれないな。だが、それくらいならすぐに見つかるだろう––––

 

『じゃあ、代わりにドライアイスを......』

 

––––と、思った俺が愚かだったのだろうか?

分からない、俺には飛鳥の考えが微塵たりとも理解することが出来ない。料理以外の時は正常な思考能力を持つ飛鳥が、何故厨房に立った瞬間にああなってしまうのだろう。厨房の神に呪われでもしているのだろうか。帰ったらお祓いして貰おう。

そんな感じで調理が終了した。

ちなみに、この料理で被害が及ぶのは不良共だけっぽいので、詩音に合図は送らなかった。とりあえず他の客へのガスマスクの配布は促したが。

 

「お待たせしました。ナポリタンでございます」

「おぅ、来たな」

 

そして、そのまま詩音が料理を運んでいった。

 

「そして、アイスティーとアイスコーヒーでございます。では、ごゆっくり」

「ちょっと待てやコラ」

「何か御用でしょうか、お客様」

「アイスティーから立ち上るこの煙は何だ?」

 

ドライアイスから立ち上る水蒸気(諸説あり)。

アイスティーからもうもうと途切れること無く発生しているその煙は一瞬で不良共にバレ(当たり前だ)、詩音は追求を受けることになってしまった。

そして詩音はこう答える。

 

「私共がお客様に込めた愛です」

 

その言い訳は酸素ボンベ無しで5分間潜水した状態よりも苦しいモノだと俺は思う。

 

「は?何言ってんだお前」

「ですから、愛です。私共がそのアイスティーをお客様方のために美味しくしようと込めた愛が具現化したのでクスクスクス」

「誤魔化すんならもっと真剣に嘘つけや‼︎」

 

そう言いつつも不良は意外にも詩音に暴力を振るわなかった。ふむ、懸命な判断だろう。

不良共は舌打ちをしながらナポリタンを食すため、フォークを握る。そして、そのまま口に入れ......。

 

「「「.................(ガクン)」」」

 

......3人纏めて無言で机に突っ伏し、二度と起き上がることはなかった。......ご愁傷様です。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

あの後、俺と笠原が不良共を静かに店から離れた公園に放置し、詩音は手段は不明だが、不良共を店から追い出したヒーロー(ヒロイン?)として多くのお客さんから感謝されていた。やはり、迷惑に思いつつも声に出せなかった人々が沢山いたようである。上手いことあの3人の記憶も消し飛んだようだ。何か飛鳥さんの料理、殺傷能力上がってない?

そして、彼女たちはそれからも2週間喫茶店で手伝いを続けて行き、ついに......。

 

「「おにーちゃんっ」」

「おっ、二人共お帰り。今日が最後のバイト日だったよな。2週間お疲れ様」

「うんっ!とっても楽しかったよ!」

「初日を始め、色々ありましたけどね」

「あぁ。初日の不良共を追い返した時、二人共カッコ良かったぞ。あの喫茶店の伝説になっているし」

 

ウチの高校でも、「最寄りの喫茶店に、ナポリタンを出しただけで3人の男を沈めた必殺仕事人がいるらしい」という噂が流れていた。原因は出した方ではなく作った方なのだが。

 

「えっ、そんなことになってるの?......まぁ、あの人たち急に倒れたし、不思議ではあったけど......」

 

しかしそちらには自覚は無いというね。はぁ......。

 

「というか、カッコ良かったって......その時お兄ちゃん来てたの?3日目とかに来てたのは知ってたけど、初日......いたっけ?」

「......いや、いなかったぞ」

 

俺は溜息を吐く。アレ以降、俺は変装をせずに一人だったり柊たちと一緒だったりで喫茶店に出向いていたのだが、意外にも飛鳥の作業効率は落ちたりしなかった。逆に、俺たちに良いところを見せようといつもより頑張っていた位である。

すると、苦笑していた詩音が言い出した。

 

「それより。お兄ちゃんにプレゼントがあります」

「へぇ、そりゃ嬉しいな」

 

まぁ、ある程度予想はついていたし、詩音もそれくらい分かっていただろうけど。それでも、妹たちがバイトをして手に入れたプレゼントとともなると、やはり貰えるのは嬉しいものである。

と、二人は一冊の本のようなものを手渡してきた。

 

「ん、コレは......」

「え、えっとね。それはね......」

「お兄ちゃんが以前欲しいと言っていたので、私たちが独自に用意してみました」

 

それは––––––––

 

「詩音と飛鳥の......写真集ッッッ!!!!!」

「あ、あぅあぅ......やっぱり恥ずかしい......!」

「この日のために、店長さんには私たちの仕事風景を撮影して貰っていたのです。2週間分の写真なので、たっぷりありますよ」

 

店長さんに何やらせてんだ。

 

「もちろん他の写真もありますし、お姉ちゃんは恥ずかしがって撮らせてくれませんでしたが......」

「が?」

「............私のサービスショットも、少々」

 

血が滾る、早く見よう。

 

「ちょ、ちょっと詩音ちゃん⁉︎それどういうことなの⁉︎ていうか、そんなのいつ撮ったの⁉︎」

「ふっふっふ。私の手に掛かれば、一流カメラマン(柊さん)にお願いしてコッソリ写真を撮ることなんて造作も無いことなのですよ」

「だ、駄目だよそんなの撮っちゃ!」

「笑止!自分の写真集を渡すというだけで恥ずかしがっているようじゃ駄目なのですよお姉ちゃん!もっと!もっと積極的にいかないと!」

「ああっ、お兄ちゃんが妄想して鼻血出してる!こらっ、お兄ちゃん!ちょっともう一回その写真集を渡しなさい!あ、逃げた!待てー!」

 

詩音のサービスショットを抜こうとする飛鳥の魔手をかわした俺は、自分の部屋へと逃走しつつ。

 

「この写真集は家宝にしよう......」

 

多大なる幸福感と共に、そう呟いたのだった。

 

 

 




いかがでしたか!
困った時の飛鳥の料理オチ!便利ですねー。
このままだとオチが単調になりそうなので、ちゃんとストーリーを練らなくては。頑張ります!

えー、次のストーリーはまだ全く考えていませんが。
次回も頑張ります!感想待ってます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。