妹がいましたが、またさらに妹が増えました。   作:御堂 明久

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ひゃっはー!皆様のお陰ですありがとうございますありがとうございます!
まさかこんな僕の妄想を書き殴っただけのSSが......感無量です!
これからも精進いたします!

ではでは、どうぞー(上機嫌)!



楠兄妹+クラスメイト@闇鍋2

「し、詩音––––ッ‼︎」

 

前回までのあらすじ。飛鳥作のつくね(劇薬)により。

––––––––詩音、轟沈。

俺は光源が失せ、暗闇と化したリビング内にて、ピクリとも動かない詩音のシルエットを抱き起こす。

 

「詩音ッ‼︎くそっ、駄目だ!意識が飛んでる!」

「......かゆい、うま......」

 

え、コレマジでただのつくね?

その内詩音が人外に変異しそうな勢いなんだけど。

......現在、俺たちは柊の提案によって“闇鍋”と我慢大会を並行して行っている。暖房器具がガンガンに効いている室内で得体の知れない具材が投入されている鍋をつつくという、どこの国の拷問だろうと疑問を抱かざるを得ないイベントである。そして、最後まで生き残れた者は、あの万能大魔王柊に何でも言うことを聞いて貰えるという、中々汎用性のある豪華商品が用意されている。

俺が相変わらずの『飛鳥シェフの3分で昇天クッキング』の破壊力に恐れ慄いていると、柊が言った。

 

「クスノキくん。気持ちは分かるけどいつまでも引きずってちゃ駄目だよ。そんなの......詩音ちゃんだって悲しむはずだよ、きっと」

「だから何でお前は詩音を死んだヒロインみたいに扱うの?生きてるから。瀕死なのは間違いないが」

「瀕死⁉︎飛鳥のお料理食べただけなのに瀕死⁉︎」

 

十分過ぎる要因じゃないか。

 

「まぁ、義妹ちゃんは口直しにアイスでも食わせてやろうぜ。さて、次は俺の番だな!」

 

気が狂いそうな程どうでもいいが、一応笠原もこの闇鍋in我慢大会の参加者の一人なのだ。どうせすぐに具に当たって退場するだけの噛ませ要員だろうが。とりあえず詩音は冷房が効いた俺の部屋のベッドに寝かせておく。そして笠原は鍋の中の具材を一つすくい、口に運んだ。

 

「むっ!コレは......ッ‼︎」

「何だったの。早く言えお前に割く時間は無いぞ」

「もっと俺のターンに幅を持たせてくれよ!全く......コレただの魚だな。普通にうめぇぞ」

 

はぁ。笠原の反応からして、その魚は笠原本人が入れたものではないらしい。つまるところ、消去法でこの魚は柊が入れたものとなるのだが......。

 

「何だ、柊。お前の事だから殻を取ってないウニとかまだ生きてる電気ウナギとかを入れてると思ってたが、案外マトモなの入れてたんだな」

「キミはボクをどう思ってるのさ⁉︎いや、ていうか確かに魚は入れたんだけどさ......」

 

少し引いたような声音で言う柊。俺はソレを見てうん?と首を捻り、鍋の方に視線を向け......。

 

「ゴフッ⁉︎」

 

––––いつの間にかそこから立ち上っていた、凄まじい悪臭にむせ返った。一瞬意識が飛びかける。

 

「な、何だこの匂い⁉︎うわ臭ぇ!ちょ、柊テメェの仕業か!何入れたこの野郎、毒か!毒なのか!」

 

コレはヤバい。

元々笠原のアホの所為で異様な臭気を放っていた出汁が、さらにえげつない匂いとなっていた。アイスの甘い香りとプロテイン独特の理科の薬品的な臭気。ソレに加えられた謎の悪臭がプラスされることで、何とも言えない嘔吐物感を醸し出していた。

 

「いやだから、魚を入れたんだよ、魚。まぁ、ただの魚じゃなくてシュールストレミングっていう、魚の缶詰なんだけど......」

「あ、飛鳥聞いたことありゅよ......」

 

鼻を摘んだままそう言う飛鳥。微妙に言えてない。

かく言う俺も、その名前には覚えがある。

シュールストレミング。世界一臭いと称されるニシンという魚の缶詰である。勿論食べた時にも鼻から抜ける匂いで死にかける上、味自体も不味い。昔一度食べる機会があったのだが、「え、コレ飛鳥が作った缶詰じゃないの?違う?」などと失礼な感想を抱いた程には不味い(個人の感想です)。

いや、しかしソレを食ったとして......。

 

「何でお前はそんなに平然としていられるんだ......」

「えっ、これそんな不味いのか?マジで?」

 

どうやらコイツの味覚と嗅覚は常人のソレより遥かに鈍いらしい。普通なら口に入れた瞬間三途の川が見える可能性を内包しているこの闇鍋の具を食しても無事なのはその影響か。

簡単に言うと『アンタ舌も鼻も死んでる』だ。

 

「とりあえずコレでカサハラくんはクリアだね!さてさて、次は飛鳥ちゃんの番だよっ」

「は、はい......うっ、酷い臭い......」

「しかもドンドン臭いが強まってるようだぞ......段々具と出汁が馴染んできてるのか」

 

ふと気になったので、スマホの電源を入れ、画面の明かりで鍋の周辺のみを照らしてみた。

......鍋のビジュアルがジャイ◯ンシチューみたいな感じになっていた。何か泡立ってきてるし。どう見ても沸騰によるものではない。

俺は戦慄しつつ、スマホの電源の再び落とす。

 

「こ、怖いなぁ......じゃあ、コレでっ」

 

暗闇で動作は確認出来ないが、どうやら飛鳥は具材を箸で皿に取り分け終わったようだ。

後はソレを口に運ぶだけである。

 

「い、いただきますっ!はむっ!」

『おおっ』

 

躊躇いなく一息で具を口に運んだ飛鳥に感嘆の声を漏らす一同(詩音除く)。そして飛鳥はしばらく具を咀嚼し......一度ビクンッ‼︎と激しく震えた。

––––そして同じく震える声で。

 

「ダイジョウブダッタヨ」

「嘘こけコラ。お前モロHITしてたよな。今完全に我慢してるよな」

 

その証拠に顔色が半端なく悪い。しかし、それでも意識を保っていられるのは大したものだと思う。恐らく反応から見て、飛鳥が食したのは自身が作った毒物(つくね)であろうが......。

フグが自分の毒で死なないのと同じ原理だろうか。

 

「......何か今、凄い失礼なこと考えてなかった?」

「ハハハ何を馬鹿な。ハハハハ」

 

シレッと人の心を読むんじゃねぇよ......。

俺は額に汗を滲ませつつ必死で話を逸らす。

 

「ほ、ほら!次は柊の番だぜ早く食えよ!」

「フッ、分かってるよ。ボクはまだこんなところで倒れるわけにはいかないしね(クスノキくんが苦しむ姿超見たい)。サクッと終わらせてあげるよ!」

 

何か一瞬不吉なカッコが見えた気がするが、とにかく柊が鍋から具を取り出す。ていうか、微妙にフラグだよな......今の言葉。

 

「クスノキくん」

「何だよ」

「ボク、この具食べたら結婚するんだ」

「フラグ建設雑過ぎんだろ。ていうか誰とだよ」

 

この後、自身が仕掛けたシュールストレミングに当たり、早々にこのイベントの発案者が脱落したのは言うまでもない。フラグ回収も雑だったな。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

俺は意識を失った柊を背負い、これまた冷房を効かせてあった飛鳥の部屋に運び込んだ。

俺だけが涼むのを防ぐため、すぐにあの暖房がガンガンに効いた地獄に舞い戻らなければならない。

 

「頭がクラクラしてきた......」

 

鍋の破壊力に加え、気温もいよいよ身体を蝕んできた。心なしか視界も霞んできた気がする。

これも景品の為......さて、二巡目だ。

 

炬燵に再び身を入れ、残りの生存者を確認する。

 

「一周して、残りは3人か」

「いきなり二人も消えるとは予想外だぜ。特に伊織とかは味覚遮断とか出来ると思ってたからなぁ」

「いや、そんなの普通の人には出来......あぁ」

「「アイツ普通じゃねーし」」

 

とにかく次はまた俺だ。もういい加減暑さで限界だし、とっとと次に回してソイツの脱落を願おう。

 

「いただきます」

「おっ、躊躇いなくいった」

「お、お兄ちゃん......どう?」

 

俺は形容し難い臭気を放つ出汁が染み込んだ具をゆっくりと咀嚼する。一気に飲み込めば良いのにという意見もあるかもだが、もしコレが飛鳥のつくねだったらどうする?今回のは何故か一拍置いて爆発する仕様らしいし、すぐに飲み込んだら胃が破裂するんだぜ?闇鍋で命落とすとかもうね。

しかし、どれだけ咀嚼しても食材は爆発しない。微かに感じる味から判断して、これは俺が入れた......。

 

「......うん、ただのクソ不味い白菜だな」

「やっぱり不味いんだね......」

 

だから具材は全て汚染されているんですよ。

換気も出来ないのが辛い。もう何なら今外に出てもソコが天国に思えてくると思う。

俺は苦々しい顔で具を飲み込む。今まで俺は普通の具材しか引き当てていないにも関わらず、もう倒れそうだ。次が限界か......。そして、笠原のターン。

 

「おし!俺の番だな!」

「早くしろ......うぷっ」

「お、おう......もう限界っぽいな、祐介。これは景品は俺の物かもな!500kgのバーべルブァッ⁉︎」

 

 

あっ、コイツつくねをすぐに飲み込んだな。

味覚とかの感覚は鈍いようだが、体内からのダメージにはさしもの笠原も耐え切れなかったらしい、笠原が小さな破裂音&悲鳴と共に机に突っ伏す。

ちなみに面倒なのでコイツは放置だ。

 

「さて......後は飛鳥だけだな」

「正直ココで食べるのを遅らせておけば、お兄ちゃんが暑さで倒れて飛鳥の勝ちになりそうだけど......」

「ばっかお前、そんなんで勝って嬉しいのかよ⁉︎正々堂々勝負して勝つから価値があるんだろ!」

「......お兄ちゃんが言うと、正々堂々(笑)だね」

 

コイツ俺のことどんな風に思ってんの?実兄だよ?

確かに勝負内での姑息さには定評のある俺だが、流石にこんなところで何らかの工作を行うことなんて不可能だろうに......。精々、自分の具を取る際に笠原の手前に飛鳥のつくねを寄せておく位である。

...............例えばね、例えば。ホラ、だって暗闇で見えないじゃん?目が慣れたとかじゃないよ?

 

「じゃあ......いただきますっ‼︎」

 

飛鳥が具材を口に入れたのが分かる。

暗闇の中、飛鳥は––––。

 

「.......鶏さんの、ささみ肉?」

 

笠原お前、普通の具材入れてんじゃねぇよ......。

俺の横で倒れている、どこまでも使えない筋肉バカを睨みつけつつ、俺はついに暑さに耐え切れなくなり、その場に倒れ......意識を失った。

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

目を覚ますと、俺はベッドで横になっていた。

仰向けで寝ていたので、その部屋の天井が俺の目に入ってくるのだが......。

 

「......何で俺が天井に張り付いてんだ」

「そりゃ私の部屋ですから。お兄ちゃんのポスターくらいありますよ。......おはようです、お兄ちゃん」

 

割と衝撃的なことを言いつつ、俺を覗き込むように見つめてきていたのは詩音。ここは詩音の部屋の様だが......一番最初に脱落したはずの彼女がこうして復活しているということは。

 

「あー、終わったのか」

「はい。私が起きた時には、既にお姉ちゃんが気絶したお兄ちゃんを部屋に運び込んだ後でしたね」

「飛鳥は意識まだ保ってたのかよ。凄ぇな」

「『お口直しー!』と言って父が送ってきてくれたアイスを鬼の様に食べた挙句にお腹を壊していましたが、まぁ。意識はありましたね」

 

馬鹿なの?と言ってやりたいところである。

まぁ、とにかく闇鍋は終了したようだ......辛かった。

と、ソコで丁度良いところに飛鳥がやって来た。

 

「おはよーお兄ちゃん。笠原さんと伊織さんはもう帰ってったよ。『またやろうねっ!』って」

「二度とやるか......あっ、そういえば。飛鳥お前、柊にどんなことお願いしたんだよ?」

「あ、そうですね。私も知りたいです。本来ならば私がお兄ちゃん写真集の製作を頼みたかったのですが......お姉ちゃんの願いというのも気になります」

 

俺も妹二人の写真集を作ってもらおうと考えていたのだが、それはもう夢物語......でもないな。アイツなら金払えば盗撮してでも作ってくれそうである。

そんな俺たちの言葉に飛鳥は何故か頬を赤らめ。

 

「お、お兄ちゃんたちと......一緒だよっ」

「あっ、おい⁉︎どこ行くんだよ飛鳥、教えてくれたって良いじゃんよー!」

「そうですお姉ちゃん、もしかしてお兄ちゃんのえっちぃ動画でも貰ったんですか!高校のプールの更衣室内の動画とか!私だけでも見せて下さい!」

 

「違うよー!」と言って走っていく飛鳥の手には。さっきまで背後に隠し持っていた為見えなかったのか、アルバムのようなモノが握られてきた。

 

そこに掘られた文字は––––。

 

––––『I love you brother(私の大好きなお兄ちゃん)』。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「2話で終わるんだったら前の話の最後にあった生存者カウンター要らなかったよな」

「作者もノリで書いたんでしょうね。浅はかな人」

「止めてあげて!お兄ちゃんも詩音ちゃんも!」

 

 




少し飛ばし過ぎた感じもしますが、いかがでしたか?
段々夏イベントのネタも消化出来てきたので、次回はどーでもいい緩い日常話となりそうです!
まだ1話しか出てないクラスメイトとか出落ち感が凄かった義父とかももう少し出せたら良いなと考えております。

意見、感想待ってます!
ありがとうございましたー!

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