お兄ちゃん争奪戦、ついに完結!
というのも、これ以上競技の内容を考えるだけのネタが無くなったというのが大きな要因でございます!はい!
え、えー、とにかく!
最後のお兄ちゃん争奪戦、どうぞ!
『お兄ちゃん争奪戦、決勝せーん!!』
「い、いえーい!」
コレで何回目になるか、
お兄ちゃん争奪戦、第3回戦の競技である『掃除』が終了した。
俺は、笠原亡き今、一人でオーディエンスの役割を果たそうと奮闘する俺たちの義父にあたる
「4回戦で全部なのな。キリが悪いというか」
「いやぁ、何か引き分けっていうのも中々良い感じだと思わない?お互いを認め合う、的なっ?」
応えたのは柊だ。なるほど、俺としてもここで二人の妹が俺を取り合って争うよりも(字に表すと俺がリア充みたい!妹だけど!)引き分けで平和的に終結するならそれに越したことはない。
「ま、それも最後の競技次第だけどな」
『その通り!さぁ、では発表します、最後の競技は......!!』
『愛情表現、ですっ‼︎』
『何それふわっとしてる』
マイクを通した柊の声に、
* * *
『最後の競技、“愛情表現”のルールを説明しまーす!......愛、それは何物にも変えられない尊いモノ!愛さえあればかのリオレ◯スも小指一本で塵芥にすることが出来ると言います!』
「言わねぇよ」
『その愛を!どんなカタチでも良いので二人にはクスノキくんに見せてあげてください!言葉でもハグでもキスでもOK!大丈夫、クスノキくんなら受け止めてくれるさぁ!』
「お前決勝戦だからってテンションおかしくなってね?中学生の妹とキスとか結構犯罪じみてるからね?そこんとこ分かってる?」
『おっと、中学二年生の義妹とキスしようとしてたクスノキくんが何か言ってますね』
何で知ってるんだお前は。
しかし事実なので俺は閉口するしかない。......とりあえず、コレが終わったら盗聴器の捜索を始めることとしよう。専門家呼ばないと。
と、飛鳥と詩音が困ったような表情で。
「あ、愛情表現って......ど、どうすれば......」
「私もお兄ちゃんに私の愛を行動で表そうとすると最短で3日ほどかけることになるので......」
重い、愛が重い。
俺がげんなりしていると、飛鳥の制裁によって二度目の昏倒状態に陥っている笠原にこれまた再び熱湯をかけながら光男さんが話しかけてきた。
「いやぁ、祐介くんが羨ましい。まさか詩音にそこまで好かれているとはね」
「好かれているのは嬉しいんですが、いつか義兄妹の境を越えてしまいそうで怖いですね」
「仲人なら引き受けますよ?妹萌えキタコレ」
「俺の義妹と言えど、貴方にとっては娘ですからね?」
この人は自身の娘にまで萌えを追求するモノだから始末に負えない。立場的には義父ではあるが、感性はそこらのオタクとそう変わらないのではないだろうか。義父(笑)である。
俺と光男さんが他愛もない会話を交わしていると、柊が心底楽しそうに声を上げた。
『さぁー!最終競技の“愛情表現”!二人とも、思い思いの方法でその愛をクスノキくんに示しちゃって下さいねっ!ではでは、また後ほど〜!』
そう言ってトコトコ歩いていく柊。またモニター室に出向き、カメラ越しにここの様子を見るのだろう。高みの見物決め込みやがってあの野郎。いつかアイツの部屋にも盗聴器か何かを仕込んで、アイツのプライベートを笠原辺りに晒してやろうか。......いや、そんなことしたら数十倍くらいの規模で報復を受けそうだからやっぱやめとこう。
と、俺がそんなことをボーッと考えていると。
「......お兄ちゃん」
「うひゃあっ⁉︎」
急に詩音が背中に抱きついてきた。突然のことであったが、すぐに俺の脳内には第二回戦の“看病”の時の出来事がフラッシュバックする。貞操の死守に全力を尽くさねば。相手は義妹なんですけどね?
「な、何だ?詩音」
出来るだけ動揺を表に出さないように応対する。しかし声は少し震えてしまう。そしてソレを見ている飛鳥は頬を膨らませ俺をジト目で睨みつけていた。いや、何で俺なんだよ。実行犯は詩音ですよ?
詩音は飛鳥の視線も気にせず続ける。
「お兄ちゃん。私はお兄ちゃんと出会ってからまだまだ日は浅いですが、お兄ちゃんのことが大好きです。優しくて、いつも私たちのことを一番に考えてくれるお兄ちゃんが大好きです」
「............」
「だから、そんなお兄ちゃんと私よりも長く一緒に暮らしてきたお姉ちゃんがとっても羨ましいです。だから、これからはもっと濃く、1日1日、より多くお兄ちゃんを感じていたいんです」
「私は、詩音は誰よりもお兄ちゃんを愛しています」
そして、背中から前に回り、頬に軽く押し付けられる詩音の唇。
......やべぇ、一瞬義兄妹の垣根を躊躇いなくぶち壊しそうになった。破壊力ヤバい。もうコレ下手な恋人より恋人っぽいんじゃないの?
俺の『恋人が出来たら一度は言われてみたい言葉ランキング』の上位に位置する『貴方が好き好きラッシュ』をぶちかましてきた詩音。事実、俺の心はメッチャ揺れた。具体的に表現するとマグニチュード8。震災レベルである。これには飛鳥も......と。
「むー......えいっ!」
「ひでぶ!」
飛鳥は真正面からぶつかるように抱きついてきた。その際に飛鳥の頭が俺の鳩尾にめり込んだ。
「う、うわわっ。大丈夫、お兄ちゃん⁉︎」
「げふっ!ごっは!だ、大丈夫だ......」
咳き込む俺の背中を慌ててさする飛鳥。......何というか、コイツらしい。伊達に付き合いも長くない、コイツがそこまでラブコメチックなアピールをしてこないのは承知済みだ。
「え、えっとね?お兄ちゃんと飛鳥は、兄妹でしょ?」
「そうだな」
「だから......その。詩音ちゃんみたいに積極的にすきんしっぷをとったりするのって、ちょっと恥ずかしいんだ」
そもそも詩音の行動を基準にするのが間違いであると思ったが、それは口には出さない。だってアレはアレで嬉しいし。飛鳥は続ける。
「だから、言葉だけだけど......伝えるね?」
そこからは。
飛鳥は、俺への感謝の気持ち。
俺への好意(やはり兄妹間の域は出なかったが)。
そして、これからもずっと一緒でいたい旨を。
決して頭がよろしくない彼女は、少ない語彙で必死に伝えてきた。時間にして五分ほどであったが、俺にとってはソレが永遠にも思えた。
やはり、こうして好意を真正面から向けられるのに俺は弱いらしい。
「–––––だからね?飛鳥も、詩音ちゃんに負けないくらいにお兄ちゃんのことが大好きなんだ」
「......ん」
..........................。
うあああああああああああああああああ‼︎
何だコレ!何だコレ!
どう反応するのが正解なんだよ!詩音といい飛鳥といい、その言葉は多分兄に向けるものじゃないぞ!あんな真正面から好きとか言われてどうすりゃいいのよ⁉︎いや、実の妹にこんなこと思ってる時点でOUTなのかもしれない。
俺の懊悩を知ってか知らずか、今度は詩音も加わりつつ。
「「大好きだよ」」
「がはっ‼︎」
吐血。
俺は何の比喩でも無くその場で吐血し、うつ伏せの状態で倒れる。何か意識が吹き飛ぶ前に飛鳥たちの慌てた声も聞こえた気がしたが、俺はそのまま目を閉じた。
* * *
「.....................知らない天井だ」
俺はベッドの上で目を覚ました。
そして、横からひょこっと柊が顔を出してくる。
「あ、気が付いた?ここは保健室でーす」
「......俺ん家に保健室なんて部屋はねぇ」
無いはず、なのだが......点滴や治療器具などが置いてあったり、俺が寝転がっているモノ以外にもベッドがいくつか備え付けられていたりと、どう見ても保健室である。......いや、だから勝手に俺ん家を改装するなとあれほど。
「いやぁ、キミったら飛鳥ちゃんたちに愛の言葉を囁かれただけで赤面して倒れちゃうんだもんねぇ。キミの純情さには流石の僕もビックリさ」
「うるさいよ。アレ、実際に体験したら誰でもああなるからね?アイツらの声を録音して敵地に大量に送り込めば簡単に戦争に勝てるまである」
「勝てないよ」
微塵も慈悲を感じられないツッコミである。
「まったく......キミってば結構危なかったんだからね?血を吐いて倒れて、そこから前世に犯した罪の懺悔をし始めた時はもう駄目だと思ったよ」
「参考までに聞くけどどんな罪だった?」
「『絶対に言うなよ⁉︎』って言われてたクラスメイトの好きな人の名前を学校中に言いふらした罪」
「中々のクズだが、俺の前世ってそんな小学生みたいな罪を懺悔してたの?」
などとくっだらねー話を柊としていると、保健室の扉(無論引き戸である。保健室の常識)が開き、飛鳥と詩音が入ってきた。
「お兄ちゃん。大丈夫でしたか?」
「ん、あぁ。すこぶる快調だよ」
「良かったあ......お兄ちゃんが前世に犯した罪を懺悔し始めた時はもう駄目かと思っちゃったよ」
「お前もか。どんな罪だった?」
「『お姉ちゃんが冷蔵庫に入れてたプリン食べちゃってごめんなさい』って」
「だから小学生か!」
どうやら俺の前世はロクでもない存在だったらしい。そもそも、俺の前世が生きていた時代に学校などという概念があったのだろうか。死ぬほど胡散臭いが、正直どうでもいいよね。
そう、今は......。
「で、どうだったの?クスノキくん」
「ん......」
「どっちの愛情がより多く伝わってきたかな?」
柊がいたずらっ子のような表情で聞いてくる。
くそ、性格悪ぃ。
選べるわけないじゃないか......。
「っあー......あのさ」
だから、俺は。
屁理屈を突き通すことにしてみた。
「飛鳥たちってば、何で俺を幸せにしようとしてたんだ?」
『えっ?』
飛鳥、詩音、柊の声が重なる。
「確かに、料理とか看病とか.......そういうスキルは持っていてもらって損はないけどさ、俺としてはそこまで妹に求めてないんだよ。俺も出来るし」
「求めてないってのは要らないってワケじゃなくてな?俺はどんな飛鳥たちでも......愛してくれるのなら、それだけで嬉しいんだよ」
「それが、例え料理を作れば爆散される妹でも。それが、例え看病の際に俺の貞操を奪いかける妹でも。愛してくれるのなら、それで良い」
「柊も言ってたじゃん、愛さえあればナル◯クルガだって一瞬で細切れに
出来るって」
「言ってないよ」
空気読め柊。
「.....,とにかく、俺は別に全知全能の妹だろうが無知無能の妹だろうが、そこに愛があればいい。お兄ちゃんってのは、自分を愛してくれる妹が好きなんだよ。よって重視されるのは最終競技のみ。OK?」
「「......!!」」
コクコクと赤面しながらも首を縦に振る二人の妹。話していることは今までやってきた競技には大して意味がありません!という無茶苦茶なことだったのだが、大体俺の言いたいことは伝わったようだ。
そして.................。
「んでもって、最終競技は全くの互角でした!もしあそこで告白されてたらどちらに対しても答えはYesだったね、多分。......二人の愛は凄く伝わった。だから......二人共俺の一番だ! ......ってことで、どう?」
「...............」
我ながらえげつない理論だと思う。いや、だってどちらか選べなんか無理だもん!二人共それぞれの良いところってあるじゃん⁉︎どちらか一方だけとかそれどういうSMプレイ?
しかし、そんな俺の気持ちも察してくれるのが俺の出来の良い妹たちなのである。
「......うんっ!そうだね!じゃあ、飛鳥も詩音ちゃんもお兄ちゃんの一番だ!」
「いわゆる共有財産です。お兄ちゃーん」
世界を照らすような笑顔を浮かべる飛鳥と薄く微笑みながら抱きついてくる詩音。俺はそれを受け止めつつ、朗らかに笑い、呟く。
「あー......やっぱ妹っていいなぁ......」
曰く、妹とは女の未来と書く。
つまり、妹とは女性が行き着く最果てであり、未来である。即ち妹とは、全女性、果ては全人類の頂点に立つ存在なのである。
そんな妹二人に慕われ、ここまで愛されている俺は幸せ者と言えるだろう。いや、もう何ならリア充よりリアルが充実してる。スーパーリア充人2である。俺は壁を越えた。
「うーん!何かドラマみたいな終わり方したねぇ、クスノキくん♪」
「アレだな、それは多分俺がドラマの主人公のような性格も見た目も超絶イケメンだからだな、うん」
「ア、ハイソウデスネ」
クラスメイトから冷め切った視線を向けられつつ。
第一回お兄ちゃん争奪戦は、二人の妹の同時優勝で幕を閉じた。
何か終わり方が最終回みたいで自分がビビる。
次回はぬるっとした感じで日常を描こうと考えています。
ネタバレすると水着回です。
もう限界です、妹たちの水着を書きたいです。
では、壮大なネタバレをかました後で!
ありがとうございました!感想待ってます!